花熟里(けじゅくり)の静かな日々

脳出血の後遺症で左半身麻痺。日々目する美しい自然、ちょっと気になること、健康管理などを書いてみます。

靖国合祀と戦争責任

2010年08月28日 15時07分01秒 | ちょっと気になること
今年も8月末、マスコミなどの毎年の戦争特集もそろそろ終わりです。 戦後65年たち

戦争を体験していない国民が大多数になるにつれて、いかにして戦争の悲惨さを風化

させずに次の若い世代が頭の中だけでなく、肌で感じてもらえるか、8月の戦争特集以外

にもっと知恵を絞らなければならない時期に差し掛かって来ているように思えます。



今年は8月15日の終戦の日に菅総理大臣始め、大臣・副大臣・政務官の政務3役は全員靖国

神社に公式参拝をしませんでした。 

靖国神社には、日清・日露戦争での戦没者や、太平洋戦争の戦没者も約200万柱祀って

あります。 この中には東条英機など所謂A級戦犯で刑死・獄中死した14名、及びBC級

戦犯で刑死した方も含まれています。 

A級戦犯が合祀してあるという理由で中国、韓国が総理大臣や閣僚の靖国神社公式参拝に

反対しています。 太平洋戦争戦没者で靖国神社に合祀してあるのは、国家からの召集

令状(赤紙)で兵役に赴き、死亡した「一般人の英霊」がほとんどであり、この「一般人

の英霊」は、国家の指導者(総理大臣はじめ閣僚)が誰一人として、8月15日の終戦の日

に靖国に参拝しないのを見て、‘自分たちが命と引き換えに守った日本が我々を見捨てた’

と嘆き悲しんでいるのではないかと思います。 国家の指導者には、日本国民の代表と

して、平和を願って日本の礎となった戦没者にたいして心静かに祈りを捧げてもらいたい

と願っています。 



(靖国神社に祀ってある英霊)

日清戦争    13,000

日露戦争    88,000

満州事変    17,000

日中戦争    191,000

太平洋戦争  2,133,000

その他      24,000.

合計      2,466,000



「ポツダム宣言(1945年7月26日ポツダム会談、8月14日に日本が受諾)に基づき、

極東国際軍事裁判所条例が布告され(1946年1月19日)、その第5条に3種類の犯罪が規定

されました。


<条例第5条>

(イ)平和に対する罪――所謂『A級(A類型)』

   共同謀議して侵略戦争を計画し、準備し、開始し、遂行して世界の平和をかく乱

   した罪。 

   1945年8月8日のロンドン協定で「平和に対する罪」の定義が確立された。 


(ロ)通例の戦争犯罪――所謂『B級(B類型)』

   戦争の法規又は慣例に違反した罪。 「陸戦の法規慣例に関する条約(ハーグ条約

   :1907年)で定義されている。 


(ハ)人道に反する罪――所謂『C級(C類型)』

   非戦闘員に対して加えられた大量殺りく、奴隷的虐待、追放その他の非人道的行為

   を罰するもの。 ナチスドイツを裁くニュルンベルク裁判の根拠になる国際軍事

   裁判条例第6条に「人道に対する罪」の定義がなされた。


 *『ロ』は戦時における敵国民への犯罪であるのに対して、『ハ』は戦時だけでなく

  平時も含み自国民への犯罪も対象になる。旧日本軍の犯罪ではA級とB級が対象で、

  C級は対象とならなかった。 




(「BC級戦犯」田中宏巳著:ちくま新書)

        A級戦犯   B級戦犯

起訴    :  28      5644

死刑判決  :  7       934 

終身・有期刑:  18      3413

無罪    :  0       1018

死亡・棄却 :  3       279


* 1、A級戦犯は 東京裁判 で審理。

  2、BC級戦犯

    米(5法廷)、英(11法廷)、仏(1法廷)、オランダ(12法廷)、

    オーストラリア(9法廷)、中国(10法廷)、フィリピン(1法廷)の 

    7国 が主宰する 49 の法廷で審理された。

  3、BC級戦犯の死刑判決 934名の国別内訳

    米国140、英国223、仏国26、オランダ226、オーストラリア153、

    中国149、フィリピン17


* BC級戦犯裁判の根拠は各国が定めた法令による。裁判の基本的なあり方は、連合

  国戦争犯罪委員会でガイドラインをしたが、細部は各国に委ねられた。  



東京裁判には様々な意見があり、専門家の意見が百出していますので、この問題に素人が

意見を述べるのはなかなか困難ですが、ブログという気安さもあるので、少々思っている

ことを書いてみたいと思います。



A級戦犯を対象とした東京裁判では、インドのパール判事が次の理由で全員無罪を主張

しました。 日本では’裁判が不当であることの証しである’として称賛する意見が多く

あるようです。


(パール判事の意見)

・‘法の不遡及の原則違反である’

  ポツダ宣言が採択されたのが、1945年7月であり、この時点以降の戦争を裁判の

  対象にすべきでところ、東京裁判では、これ以前の満州事変や日中戦争も対象に

  しており、法の不遡及の原則違反である。


 ・‘裁判が不公正である’

   国際裁判であるならば戦勝国のみならず、敗戦国、中立国によって裁判が構成

   されるべきところ、判事や検事は戦勝国のみで構成されており不公正である。


  
日本における戦犯問題は、太平洋戦争で敗北したことに伴い、米国をはじめとする戦勝国

の処罰の考えにより発生しました。 特に、A級戦犯の罪状である「平和に対する罪」

は、ポツダム宣言で持ち出された考えであり、第1次世界大戦後のベルサイユ条約で 

ドイツ皇帝やオーストリア皇帝の「戦争開始責任」が問われましたが、結局、不問に終わ

りました。

従って、 この考えは、第2世界大戦開始以前には確立したものではありませんでした。 

また、C級戦犯の罪状である「人道に対する罪」は、ナチスドイツのユダヤ人への

ホロコーストを裁くために持ち出されたものです。



「平和に対する罪」は戦争開始責任とも言われていますが、要するに、敗北軍の将

(国家指導者)が、戦勝軍により‘平和を乱した’という理由で犯罪人として処刑される

ものです。

確かに、国際平和を乱した罪は考えられると思いますが、開戦に至った経緯の検証が重要

となります。 太平洋戦争は日本からの宣戦布告で始まりましたが、ここに至るまでの

米国との関係(ハル・ノートの評価 など)から、開戦責任を日本に一方的に押し付けて

よいものか、疑問が残ります。 開戦に仕向けたと見られる米国にも責任の一端はあるの

ではないでしょうか。


その意味で、パール判事が指摘しているように、国際裁判の公正さが問題になります。 

「東京裁判」は判事、検事が戦勝国で占められているので、不公正な裁判と指摘せざるを

えません。(法的な不遡及の原則違反は措くとして)

「捕虜虐待などのジュネーブ協定違反」を裁くB級裁判、「人道に対する罪」を裁く

C級裁判も同様で戦勝国のみで進められました。 もっとも、BとCは厳密に区別され

ずに、B級は将校、C級は一般兵士が対象とされたとの説明もあります。 ともあれ、

日本軍が戦勝国の将兵の捕虜に行った「捕虜虐待などの罪」で多くの日本軍将兵が公正さ

を欠く裁判で裁かれ、刑死させられましたが、 中立国も入った公正な裁判所が設置され

ておれば、逆に戦勝国が日本軍将兵の捕虜に対しておこなった拷問や虐待なども当然裁判

の対象になったと思いますし、米軍による原子爆弾投下や日本全国での無差別爆撃も、

「人道に対する罪」として断罪されたのではないかと思いまます。



なお、旧ソ連による日本人のシベリア強制労働は「捕虜虐待の罪」に問われるべきであっ

たと思っています。



法律論とは別に、国民感情的には、太平洋戦争の終結時期を誤ったことにより、一般国民

に悲惨な被害を与えたという事実あります。 

7月26日のポツダム宣言を「これを黙殺した」ために、結局は、原子爆弾投下という最悪

の事態になりました。戦争終結時の鈴木貫太郎内閣の責任は東条内閣と同等に重いと思い

ます。 



従って、靖国神社には少なくとも、「開戦当時の東条内閣の閣僚や軍の幹部、終結時の

鈴木貫太郎内閣の閣僚や軍の幹部は一般国民と一緒に祀るべきではない」と思っています。

速やかに、分祀の手続きをとっていただきたいと願っています。 戦犯は日本国内的には

名誉回復措置がとられていますが、 分祀するのは決して、戦犯だから(だったから)

ではなく、日本の一般国民に多大な犠牲を強いた戦争責任者(戦争開始・戦勝終結)と

一緒に合祀されるのは、一般国民として納得できないという素朴な理由によるものです。



以下は東条英機の遺書です。

東条英機は、開戦時の責任者で、敗戦したことにより国民に大き犠牲を強いたこと、戦場

でたおれた人その家族にこころから詫び、そして同僚や下級者にまで刑が及んだことを

残念に思い、死刑を受け入れています。 これを知り、ほっとしています。 今までは

東条英機は国民にたいしてどのように思っていたのかというわだかまりがありましたので。

だからと言って、東条英機が免罪されるものではありません。 国際的犯罪(戦犯)に

ついては無罪と主張しています。裁判中も清瀬一郎弁護人ともども、一貫して無罪を主張

していました。

パール判事の論理に支えられていると思います。 確かに、法の不遡及違反や裁判の構成

が偏っているなど純法律的には東京裁判は問題がありますが、太平洋戦争を開始して、

国民に悲惨な犠牲を強いた責任者という事実は消えることはありません。 




「祖父東条英機 一切語るなかれ」 東条由布子著(文春文庫)


「遺書  東条英機

開戦当時の責任者として敗戦のあとを見ると実に断腸の思いがする。今回の刑死は個人的

には慰められておるが、国内的の自らの責任は死を以って償えるものではない。

しかし国際的の犯罪としては無罪を主張した。今も同感である。ただ力の前に屈服した。

自分としては国民に対する責任を負って満足して刑場に行く。ただこれにつき同僚に責任

を及ぼしたこと、又下級者にまで刑が及んだことは実に残念である。 


(略)


この度の戦争に従事してたおれた人及びこれ等の遺家族に対しては、実に相済まぬと思っ

ている。心から陳謝する。

今回の裁判の是非に関しては、もとより歴史の批判を待つ。もしこれが永久平和のためと

いうことであったら、も少し大きな態度で事に臨まなければならないのではないか。

この裁判は結局は、政治裁判でおわった。勝者の裁判たる性質を脱却せぬ。 


(略)


東亜の諸民族は今回のことを忘れて、将来相協力すべきものである。東亜民族もまた他の

民族と同様に天地に生きる権利を有つべきものであって、その有色たるを寧ろ神の恵みと

して居る。印度の判事には尊敬の念を禁じえない。 これを以って東亜諸民族の誇りと感

じた。

今回の戦争により東亜民族の生存の権利が了解せられ始めたのであったら幸いである。

列国も排他的の感情を忘れて共栄の心持以って進むべきである。

現在の日本の事実上の統治者である米国人に対して一言するが、どうか日本人の米人に対

する心持を離れしめざるよう願いたい。また日本人が赤化しないように頼む。

大東亜民族の誠意を認識して、これと協力していくようにされなければならぬ。

実は東亜の他民族の協力を得ることが出来なかったことが、今回の敗戦の原因であったと

考えている。


(略)


なお言いたきことは、公・教職追放や戦犯容疑者の逮捕の件である。今はすでに

戦後3年を経過しているのではないか。従って、これは速やかに止めてほしい。日本国民

が正業に安心して就くよう、米国は寛容の気持ちをもってやってもらいたい。

我々の処刑をもって一段落として、戦死傷者、戦災死者の霊は遺族の申し出あらば、これ

を靖国神社に合祀せられたし。

出征地にある戦死者の墓には保護を与えられたし。従って、家族の申し出あらば、これを

内地に返還せられたし。戦犯の家族には保護を与えられたし。

青少年の教育は注意をようする。将来大事なことである。近時、いかがわしき風潮あるい

は、占領軍の影響から来ているものが少なくない。この点については、我が国の古来の

美風を保つことが大切である。今回の処刑を機として、敵、見方、中立国の国民罹災者の

一大追悼慰霊歳を行われたい。世界平和の礎石としたいのである。勿論、日本軍人の一部

に間違いを犯した者はあろう。これらについては衷心謝罪する。

しかし、これと同時に無差別爆撃や原子爆弾の投下による悲惨な結果については、米軍側

も大いに同情し憐憫して悔悟あるべきである。

最後に軍事的問題について一言する。

我が国従来の統帥権独立の思想は確かに間違っている。あれでは陸海軍一体の行動はとれ

ない。  


(略)   


 辞世

 我ゆくもまたこの土地にかえり来ん国に報ゆることの足らねば
 さらばなり苔の下にてわれ待たん大和島根に花薫るとき

                              」
 
(2010年8月28日  ☆きらきら星☆)

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