花熟里(けじゅくり)の静かな日々

脳出血の後遺症で左半身麻痺。日々目する美しい自然、ちょっと気になること、健康管理などを書いてみます。

「メーカーは技術の継承に若手の教育と雇用の維持を図るべき」

2012年04月03日 11時42分03秒 | ちょっと気になること
「メーカーは技術の継承に若手の教育と雇用の維持を図るべき」

半導体関連企業のニュースが目に付きます。 一つは、シャープが台湾の鴻海
(ホンハイ)精密工業からの出資を受け入れると報道されたこと、二つ目は
、DRAM世界2位で会社更生手続き中のルネサンスの支援に韓国(ハイニクス)
、米国(マイクロン)、台湾、日本(東芝)などが入札参加の意向を示している
ことです。日本企業の花形だった電機・電子分野で日本企業の苦戦が報じられて
いますが、この様な事態は最近になって起こったものではありません。

例えば繊維産業。合成繊維の躍進により戦後の日本経済の推進役の一角を占めて
いましたが、途上国の追い上げにあい、あえなく苦境に陥りました。現在の電機・
電子産業の様子と全く同じです。 しかし、日本の繊維業界は、培った技術を応用
するなどして、しぶとく生き延びています。社名からは想像もつかないような業態
に転換している企業もあります。  この要因は長年培ってきた先端の繊維秘術と
伝統的な繊維の技術の融合だろうと思います。 

電機・電子産業ではどのような進展があるのか分かりませんが、シャープのように
国際分業を進めるのも一方法でしょうし、自主技術を大事にしていく方法もあるで
しょう。しかし、いずれの場合でも、これまで培ってきた技術が基盤になることは
言うまでもありません。 日本の電機・電子産業で懸念されるのは、技術者を終身
雇用で育成してきたものの、企業体力の低下と共に、折角育て上げた技術者をつな
ぎとめてお置くことが出来ず、みすみす韓国などの外国企業に流出させてきた現実
があります。 技術とはつまるところ、「人材の育成と人材の確保」にほかなりま
せん。 繊維産業の場合は、技術者の海外への流出がほとんど無かったので、技術
が継承されてきたことと併せて、伝統的な繊維産業が根を張っていたことが挙げら
れると思います。

ものづくりには、我が国では長い伝統を持っています。 ものづくりに執着するの
は国民性かもしれません。刀鍛冶、織物、金属工芸品、からくり、仏像、寺社建築
、等々、独自の技術を育ててきました。 先端技術を開発するのと同時に、伝統的
な技術を見直す中に、新しいものづくりヒントが隠されているのかもしれません。

3月27日の日経新聞の夕刊「明日への話題」に日立製作所の川村会長が人材の育成
の重要さを欠いています。100年前に、日立の創業者が会社をスタートする時に、
技能教育のための学校も同時に立ち上げたと言うことです。
昔の日本企業には、社内に技能者育成の組織を持っていたところが多々あったと思
います。

近年の例では、豊田工業大学があります。豊田工業大学は豊田自動車㈱が社会貢献
の一環として設立された学校法人であり、所謂企業内の技能教育の枠を超えた組織
で、一般学生や企業からの入学を認めています。
私の知人が勤務している会社も、社員の子弟や地域の子供を教育する学校を持って
いたそうです。 彼が入社したときにはすでに学校は廃止されていたそうですが、
ここで育った人材が、管理職や専門職に登用されていたということです。

今の企業に求められているのは、“いかにして先端技術を開発していくか”、
“技術をいかにして若手に継承していくか、即ち、若手技術者をいかにして育成し
ていくか”、だと思います。 すぐ辞めていく忍耐力の無い若者を粘り強く教育し
て、技術を教え込まなければなりませんし、若い感性で新しい技術を開発させなけ
ればなりません。



日経新聞:2012年3月27日
明日への話題 「子供さえしっかり育てば」日立製作所 会長 川村 隆

『私の会社の創業者は、約100年前に電機機械を自主技術で作るベンチャー会社を
茨城県の山の中に立ち上げた。感心するのは、技能教育のための学校も同時に立ち
上げたことである。当時は人力車の時代であり、技能教育に行く前に読み書きから
教えなければならず、学校存続には苦労が絶えなかった。それでも、人材教育の
大切さへの信念は、いささかも揺るがず、それがそのまま今日まで社内で伝えられ
ている。わたしも、「会社は何時の時代でも成長戦略が必須。その中で、長期成長
戦略は教育・人材育成に尽きる。」と社内外で言い続けている。家庭でも、会社で
も国でも、子供や若い人さえしっかり育てば、未来は明るいのである。』


(2012年4月3日  花熟里)
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