ジョルジュの窓

乳がんのこと、食べること、生きること、死ぬこと、
大切なこと、くだらないこと、
いろんなことについて、考えたい。

「明るいがん講座」

2006-12-11 | 乳がん
USAオンコロジーセンター長の 植松稔氏の
「明るいがん講座」が夕刊に連載されている。

前回の 【10】「欧米の治療法に縛られず」(11月24日)から
乳がん編となっている。

日本の乳がん治療成績は 欧米よりもいいんだそうだ。





12月8日の
【11】「乳房温存は自然の摂理」(17面)では
乳房温存の場合と 全摘手術との間には
生存率や転移の頻度に差がないと書かれている。

「全摘は 無意味に女性を傷つけるだけ」ということだ。

残念なことは 
温存療法に不向きな乳がんがある、ということだが。



人間の身体は
長い長い間に出来上がってきて 現在の形になったので
手術で変形させることは
「自然の摂理に背くこと」のように思われる、とある。

20年を越える 温存療法の研究結果が
それを証明している、というわけだ。



私は。

もう一歩 先へ進めて欲しくて、
この記事を読んで がっかりした。

温存なら、温存できたなら、それでいい、とは
思ってほしくはない。

メスを入れること それ自体が
自然ではないのだけれど

術後のおっぱいの形が
自然であるわけはないのだから。

そして
温存手術とセットになっている放射線治療、
これも 自然とはかけ離れている。

これがあったから 
私も命を長らえているのだろうけれども。



それは
汗じみのできない胸を隠して生きること。

そして
パッドをどう組み合わせて胸に入れても 
左右差が気になって
堂々と人前に出られないこと。

温泉に入る時はしょうがないとしても。



温存率が話題になったこともある。

温存でいいよ、と言ってくれる病院を求めて
さまよった乳がん患者もいるだろう。

あるのと 無いのとは
その違いは 確かに大きい。

けれど
あればいい、ってもんじゃあ、ない。

そのことを
治療する側の人たちには
認識しておいて欲しいと思う。



私のおっぱいは キレイな方なんだそうだ。

それでも、なお、
気を使わなければならない時がある。

こんな変なことについてだけは、
私は どうやら 完璧主義のようだ。





おっぱい。

それは 
柔らかくて ふにふにしていて
そして
左右は ほぼ 同じ大きさで
それから
凹みや 溝があってはならない。

おっぱい。

それは
垂れてても ちいさくても 外を向いてても
ふにふにして ほぼ同じ大きさで
まろやかな形であれば
完璧なもの。



だから 
温存できたから それでいいでしょ、
とはならないんだと 知っていてほしい。

そして
乳房の再建は
温存して 放射線治療をしちゃうと
難しくなってくる(もちろん、再建できるけど)、
ということを

治療前に もっとちゃんと
教えてほしかった、と思っている。



教えてもらったからといって
溢れる情報の中から 
冷静に自分に適した治療を選べたか?
と聞かれると
自信はまったくないけれど、

こんなはずではなかった、という気持ちは
今でも時々思い出さずにはいられない。

温存できれば それでいい、とは
医療者は 決して 思わないでいてほしい。



再建してさえ
思い通りにならなくて
泣いている患者も多いらしい。

再建手術のやり直しもある。

がんになったことは悲しいことだし
手術やその他の治療を受けることも
けっこう大変。

お金もかかるし 気持ちも萎える。

それでも 
元通りのおっぱいに 戻すことができたら
どんなにか 気が晴れるだろう。

乳がんの手術と同時に 再建手術をすることができたら
いくらかは 慰められるだろう。

少なくとも 喪失感にうちのめされることはなくなるだろう。

先生方、どうか、
完璧なおっぱいを愛する気持ちを
分かって。



それから

これらは 全て 早期(Ⅰ期 または Ⅱ期)で
乳がんが発見されて
10年生存率が80%とか95%とかって場合に並べているゴタクだから

どうか 
今 完璧なおっぱいをもっている女性たちが

もし 乳がんになったとしても
早期に見つけてくださるように。