ジョルジュの窓

乳がんのこと、食べること、生きること、死ぬこと、
大切なこと、くだらないこと、
いろんなことについて、考えたい。

『男のおばあさん』

2016-08-06 | 読書
以前、おすぎとピーコに
「男のオバサン」と呼ばれた人がいた。

永六輔氏だ。

「男のオバサン」。

う~~ん、そう言われてみれば、なんとなく、わかる(微笑)。

でも、住井すゑさんには
「あんた、男にしておくのが惜しい」
と言われていたそうです(笑)。(大晩年 p.142)

その「男のオバサン」が、年をとって、「男のおばあさん」になった。

83歳、「男のおばあさん」が亡くなった。










とうとう亡くなったか、という感じで受け止めた。

数冊、永氏の本を読んでいたので。

パーキンソン病という病気の事を、それとなく知っていたので。



2014年4月に『大晩年』という本を出している。

               

上の写真にはないが、真っ赤な帯がついており、

「『大往生』から20年――死ぬのが怖くなくなった」とある。

裏表紙側には、

「妻や友を見送り今だからわかること――若い頃は、
 死ぬのは怖い、寂しいことだと思っていました。

 『大往生』を書いた頃も、
 最期が近づくと怖くなるのかな、と思っていました。

 でも、実際にその時が近づくと、
 不思議なことにちっとも怖くありません。

 親しい人が亡くなっていくごとに、
 皆さんが先に行っているというだけの話なんだ、
 後から行けばいいんだ、
 と感じるようになったのです。」


という、本文(p.147)からの文章がある。



これは私の普段の考え方と同じだ。

ただ、私はまだ娑婆に居たいので、
怖いわけではないが、
我欲がたっぷりで、そんなに悟り澄ましてはいないのだけれど。

「先に逝ったのね。私はもっと後から逝くわ」
という感じなのだけれど。



2冊とも、パーキンソン病に関しては、
医師の説明部分を含めて、患者の心情がよくわかる名著だと思う。

『大晩年』(中央公論社、2014.4.25、1300円)

『男のおばあさん』(大和書房、2013.6.25、1400円)






永氏は、作詞家としても活躍し、
ラジオやテレビ、映画にも出演していたうえに
『大往生』などの著作も盛んにしていて、
かなり多忙だったろうと思う。

私も亭主も 若い頃からかなり影響を受け、
著書もかなり読んでてきた。

私たちは 日本に住んでいる限り、
必ず 氏の音楽を聴き、氏の影響を受けて 生きて来た
と言っても 決して大げさではないはずだ。



永氏が作詞した曲を書き連ねれば、
「それも そうだったのか?!」
と思う曲が、山ほどある!

それは、これまでもいつもそう思ってきたけれど、
今回、さらに その思いを強くした。

その中に、「いい湯だな」がある。

ね? 驚かない?(笑)



7月12日の朝刊24面に、作曲家小林亜星の言葉がある。

ドリフの「8時だョ!全員集合」についた触れたた部分がある。

「この番組を、俗悪なバラエティーだという人がいたけれど違います。

 戦争で心の傷を受けた僕たちにとって、
 他人と勝ち負けをつけるのではなく、
 楽しく時間を過ごし、子どもたちを幸せに育てることは 
 切実な願いでした。」

「いい湯だな」は、「楽しく、生きることを肯定している」
と小林氏は伝えてくれている。

番組を見て育ったけど、それは、知らなかったなぁ!(笑)






多彩な氏の才能は、多様な分野で花開いてきた。

鯨尺を復活させよう、とか(実際に復活した。快哉!)。

米穀配給通帳のような、全く不要なものを法律で定めたままでいる
怠慢を改めよう、とか(米穀通帳は、廃止になった)。

さまざまに 私たちの目の届かない、気の付かない所に
目をやり、気づき、
ラジオなどで訴え続けてくれた人だった。

そして 卓越したユーモアには 真似できないものがあった。



あ、「天皇に和服を着ていただこう(天着連)」という運動は、
まだ結果がでてないな。

退位なさったら、お着物を召してくださるのかな(笑)。






永さん、さみしいよぉ。








小沢昭一という人がいた。

永氏と同様、古くからラジオ・テレビで、
また映画でも活躍した、面白い教養人だった。

永氏のラジオ番組同様、テレビを持たないアパート時代から
小沢氏のラジオからの<語り>に耳を傾けながら、
アパートの隣人に気兼ねして 小さな声で笑ったものだった。

「~の、こころだぁ!」というそのダミ声は、
今でも耳に残っている(苦笑)。

貴重な研究もなさっており、私はその死を悼んだ。

小沢昭一氏は 先に(2012年)亡くなっている。

親交の長かった永氏は、そうとうに、寂しかったろう。





大橋巨泉氏も亡くなった。

2月4日放送の「徹子の部屋」に
永六輔氏と共に出演したのを最後に、
治療に専念していたそうだ。

82歳だった。

徹子さんも 寂しいだろう。