ジョルジュの窓

乳がんのこと、食べること、生きること、死ぬこと、
大切なこと、くだらないこと、
いろんなことについて、考えたい。

白血病という病気(2)

2005-11-12 | 考えたこと
彼女に会ったのは、たまたまの、偶然?

ふと出会って言葉を交わした。

身体の線が華奢なら、
心のほうも繊細な印象だった。

あれは いつごろのことだろう?

彼女の小柄な一人息子が小学生。

もう5年も前かもしれない。



そのままどこの誰とも知らないまま、
時々出会って言葉を交わすうちに
だんだん 会話の時間が長くなった。

名前も知らずに何年も薄いお付き合いをした。

実家が隣ムラだということだった。

私はいつも 相槌を打ちながら
ただ 彼女の悩みを聴いた。

こんな時は
ただ話を聴くだけでいいんだ、
へんに 提案をしたり 結論を出したり
しないほうがいいんだ、
と 何かで読んだし、
実際に 経験的にそう感じていたので。



どんな生活をしているのか。

何が根本の悩みなのか。

彼女はいつも 別れる時には
「私がもっと頑張らなければ。」
とつぶやくのだった。

私の
「そのままでいいんだよ。」
「頑張らなくてもいいだよ。」
と言うメッセージは
なかなか伝わらなかった。

たとえそれを言葉にしても
彼女の耳には届かなかった。

そのうち 亭主も顔を覚えたが
彼女の愚痴?悩み?のはけ口は私だった。





去年 闘病中だったお母様が亡くなった。

それから彼女の苦悩が増したようだった。

初めは 同じように話を聴いていたが
彼女の考えには‘思い込み’もあった。
(なかなか 頭の固い女性だった。)

苦しみが少しでも軽くなればと
私もだんだん
今までよりも積極的にアドバイスをするようになった。

別れる時にはそれなりに
ほっとしたような顔になるのだが
次に会う時には
同じ事を訴えてくる。



わざわざ私に会いにやってくるようになった彼女を
そうそう放ってはおけない。

長い時間をかけて 
話を聴いて
少しずつ 
私が思っていることを伝えるように話しかける。

初めて電話をもらって
長々と話した時に
フルネームを教えてもらったっけ。



私がビニールポットをたくさんかかえて
事務所の前に植えようとしていた時に
彼女が来て

話し込んでいるうちに暗くなって
息子が私を迎えに来たり、というようなことも
一度ならずあった。

と、息子が言っている。



突然の訃報だった。

急性骨髄性白血病だった、というのだ。

うそ・・・・・・。



病院に入院して 一週間だったという。

病気が判明して、一週間と少し。

抗がん剤を6回投与した、とも聞いた。

直接の死因は ‘脳内出血’。

白血病で内出血、というのは聞く。

脳の中にも 出血するのか?



白血病?

じゃあ、あの時の電話・・・。

半月ほど前に
彼女から 二度目の電話があった。

「わたし、もう、頑張れない・・・。」

気弱な内容だったけれど、
声はいつもと同じだと思った。

体調が悪いなんて 言ってなかった。

私は
頑張れない時は 頑張らなくていいんだよ、
頑張れない時は 休めばいいんだよ、
と、繰り返した。

いつもどおり彼女は
「わかりました。」「ありがとうございました。」
と受話器を置いた。

なにが、どう「わかった」か?
とは思ったが
一時的にせよ 彼女の心が軽くなれば、
と 思っていた。

電話を切る頃には 
気持ちが軽くなってくれたように思った。



あの時。

あの人は 死ぬほどだるかったのではないのだろうか。

熱があったのではないのだろうか。

苦しくはなかったのか。

自分でもまだ病名を知らないはず。

不安でいっぱいだったはず。



私は彼女に 何かの役に立てたのか?

ただの私の自己満足ではなかったか?

亡くなって初めて 私より3つくらい 年下だとわかった。

いつも一緒で いつもとてもおとなしくそばにいた彼女の息子は 
声変わりしていた。

ひとり残ってしまった息子さんは
彼女の実家に引き取られる事になった。

そうしたら、隣ムラだから、
自転車に乗ればすぐだから、
たまには遊びにおいでね。

そんな事ぐらいしか 言えなかった。



本田美奈子さん。

あの細い身体から 
どうやったら あんなパワフルな声が出るのか。

スリムな身体にクリクリの目。

先月なくなった あの女性も
負けないくらいスリムで
負けないくらい 大きな瞳で
とてもきれいな女性だった。

ブログに書くつもりはなかったけれど
本田美奈子さんが亡くなったというニュースに触れて
書かずにいられなくなった。

本田美奈子さんの記事に
「よくある病気なんだな。」
と亭主がつぶやいたのは
亭主にとっても驚愕の、
先月の出来事だったからだ。

今、書いておきたかった。