経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

戦後政治と災後政治(1)

2011年04月30日 | 経済
 よく司馬史観とか、城山史観というようなことが言われる。あえて題すれば、「どうすれば史観」ということかな。筆者は、ひねくれ者でね、日本の近代は、原敬なかりせば、明治維新を起こした軍事革命政権が、植民地主義にのめり込み、最後は無謀な対米戦争で破滅したという極めて分かりやすいものになったと言って冷やかしたりするわけだ。近代史家が、政党政治の崩壊や協調外交の破綻という「美しいテーマ」を選べるのも、たまたま現れた傑物が、それを一度は形作ってくれたからだよと。

 原敬の評価は、海外では極めて高いが、日本では今一つである。政府に代わり得る現実主義の政党を育て上げ、軍事政権から平和裏に政権を譲り受け、経済主義を据えて対米協調路線を打ち立てたのだから、もし、現代中国に、そんな政治家がいたら、ノーベル平和賞ものだろう。一方、日本では、原のリアリズムが嫌われるのである。

 例えば、原敬は、普通選挙制に消極的で、漸進主義的だった。原没後、普選による大衆化の下で金権腐敗の問題が生じ、政党政治を危うくすることになる。リアリストの原は、それがよく分かっていたのである。原は清廉な政治家としても知られているが、それは価値観だけではない。また、検察勢力を政党に取り込むことにも意を用いている。岩手の後輩政治家・小沢一郎なぞ及びもつかない脇の堅さだ。

 日本では、理想主義の政治家が評価されがちだ。普選などの民主化を高らかに叫ぶことが大切なのだ。おそらく、その流れなのだろう、緊縮財政も高唱される。民主化にまつわる腐敗や迷走の側面、緊縮財政に伴う国民の痛みや危険性は軽く見られがちだ。原敬政権も、積極財政でインフレ気味であったから、評価は下がってしまう。これを蔵相として担った、名高い財政家の高橋是清も、この時はダメだったとされがちだ。

 原敬の積極財政は、政党地盤の養成、軍備充実による懐柔、経済力による植民地支配と、経済政策だけでは語れない、政治・外交上の重要な要素を含んでいる。逆に言うと、緊縮財政によって不況を呼び込んでしまうと、これらをすべて失うことになる。実際、浜口雄幸が金解禁で失敗してから、日本は転落の道を歩むことになる。

 一般に、経済政策の失敗にも関わらず、浜口の評価は高い。金解禁に向けたデフレ政策は正しかったが、「不運」にも大不況に遭遇したというものだ。しかし、経済が外的ショックに襲われることは往々にしてあるもので、不運に遭遇したら経済が危殆に瀕するような政策を取ること自体が誤りなのである。経済政策に性急さは禁物なのだ。

 時代は下って、1997年のハシモトデフレへの評価にも似たところがある。財政再建は正しかったが、隠れた不良債権やアジア通貨危機に足元をすくわれたという話である。これも運のせいにしてはならないだろう。財政再建は緩やかに進めておけば良かっただけのことである。焦る必要がなかったことは、その後の経済が証明している。

 おそらく、日本人の財政への見方、「目標が正しければ、過激なことをしても構わない」という価値基準が反映されているように思う。逆に言えば、日本人の財政観が変われば、橋本、浜口、そして、原への評価も変わるだろう。それは、日本人が経済のリアリズムを理解するということなのである。

 残念ながら、日本人は、まだ、そこに到達していない。震災で経済ショックがあり、日銀は今年の成長率を大幅に下方修正した。復興予算を組んで、経済の浮揚を図らなければならない。しかし、復興の中身より先に、増税や歳出削減の議論をしている。子ども手当の廃止も、公務員給与の下げも結構だが、それを実行する秋頃に、果たして十分に成長が回復している保障はあるのか。

 そうなのだ、日本人は、またしても、「復興の勢いが弱い」、「米中の成長低下で輸出が伸び悩む」といった「不運」はないものと思い込んでいる。だから、復興と財政再建を一度に進めようとする。筆者は、増税や歳出削減に反対ではない。成長の回復を確認した後にすべきものなのだ。せめて、今年秋でなく、来年秋の実施で十分ではないか。日本人の懲りない悪癖がまた始まったのである。
(つづく) 

(今日の日経)
 国家公務員給与1割下げ復興財源に。人民元6.5元を突破。中国、夏の電力不足警告・石炭高で。内閣参与が原発対応批判し辞表。公的資金回収利益1.5兆円。ドーハラウンド白紙撤回の懸念。シリア混乱でパレスチナ和解。検証その時・原発対応。家庭自然エネで自給自足。東北新幹線が全線開通。

※中国は着実に成長力が殺がれている。 ※迷走の原発対応の背景には、今の体制を作った2001年の省庁再編がある。これもハシモトがしたこと。なんと罪作りな。 ※太陽光発電を有効利用するには、10戸以上が共同で蓄電池を備えるのが有効。マンションにはピッタリだが、かつての電力会社の反対で、ここが政策の穴になっている。
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現実化した民主党の年金案

2011年04月29日 | 社会保障
 民主党の年金制度の財政試算の概要が明らかになったようなので、戦後政治論はちょっと置いて、こちらの解説をしようかね。結論から言うと、「内容不明」と散々批判された民主党案だが、ようやく、議論が可能なレベルになったようだ。いずれ詳細なデータが出ると思うが、今日は日経の記事をベースにする。

 新民主案だが、簡単に言うと、現行の基礎年金について、低所得者に広く厚めに給付する一方、中所得以上への給付を削減するという内容だ。中所得者への常識的な給付水準を確保すると、所得比例部分の保険料率は現状を維持せざるを得ないと思われる。したがって、財源としては、基礎年金の国庫負担の1.5倍ぐらいは必要であろう。

 現在の国庫負担は、約10兆円だから、あと5兆円、消費税率にして2%ということになるから、非現実的とまでは言えない。もっとも、現在の10兆円も、2.5兆円分の財源は未だ確保されていないわけで、消費税にして2~3%というのも、かなり大変なことではある。それでも、小沢氏の旧民主党案と比較すれば、雲泥の差だ。

 新民主党案をもっと現実的にするには、最低保障年金の水準を下げれば良い。4万円ぐらいまで下げれば、消費税の増税なしに賄えるのではないか。最低保障が低すぎるように思われるかもしれないが、低所得でも、まじめに所得比例の保険料を納めていれば、2~3万円の年金は用意できるのであり、保険料を納めなくても7万円というのは高すぎるのである。例の保険料を払わない専業主婦の年金問題にも突き当たることだ。

 旧民主党案は、基礎年金の税方式化を意味するものだと解され、それには巨額の財源が必要なので非現実的であり、保険料から税への転換にも受給権保護の観点から無理があると評された。それを換骨奪胎し、単に、中所得以上への国庫負担分の給付を削減し、低所得者へ回すというだけなら、十分に現実的で必要性もある。国民受けはしないが、無理のない方向へと変化しつつあるのだろう。

 ただし、少子化の下では、所得比例部分にも、税を入れて補わざるを得ないという本質的な問題は残る。これは現行制度でも同じことだ。そこまで完全に解決したのが、本コラムが小論で提案する「どうすれば案」である。まあ、最先端の設計技術を使っているのだから、民主党案であろうが、現行制度であろうが、合理性を求めていけば、「どうすれば案」に近づいてくるのだ。

 問題は、そのスピードだ。少子化で人口崩壊が始まってから、青くなって着手しても手遅れである。震災復興の財源のために、子ども手当をやめろと叫ぶ人は多いが、少子化はどうするね。引き継ぐべき次世代が激減するのでは、社会資本や住宅を再建しても、価値は半減するだろうに。まあ、目先の経済運営の舵取りもロクにできない日本人に、将来のことを諭しても始まらんのかなあ。

(今日の日経)
 上場企業1-3月期が前期比33%減、特損6000億円で阪神の1.5倍。米成長1.8%に鈍化、政府と住宅減、消費増も縮小。最低保障年金、年収700万円超は支給ゼロ。日銀、追加緩和に含み、西村副総裁の反乱。消費・輸出は夏まで低迷・エコノミスト予測。国際協力銀行が独立。原発、早期補償に課題。米国防長官、今夏に交代。中国、15年から労働人口減。韓台勢、液晶パネル不振。連休中も操業・製造業で拡大。ホンダ純利益2倍、トヨタ系最終増益。金利低下、景気への不透明感で。経済教室・電力料金に関する行動分析・依田高典・田中誠。

※大きい損害だが、ケタ外れではないね。やはり鈍化したか、ベストの時期は過ぎたね。西村さんは復興財源論に反応したのかな。 ※秋になると、日経が主張する子ども手当廃止で、足を引っ張られるかもしれん。回復を見極めてから廃止するという常識的な対応を、どうして日本人は取れないのか不思議だよ。 ※補償こそ政治が決める話ではないのか。輸出不振の記事は気になるね。2010年度税収は見込みを上回る可能性もあるなあ。 ※分析は良いが、政策提言を磨くべし。料金を上げれば節電するのは当たり前。前年度並みなら1000円ペナルティ、減らせば1000円フレゼントといった、シグナリングの「切れ味」が必要。
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もっと愚劣であれ

2011年04月28日 | 経済
 今日は重要なニュースが多かったね。まずはFOMC。予想通りとは言え、量的緩和は終了することになった。ゼロ金利は続くにしても、金融緩和が「進む」ということはなくなったわけだ。そして、EUの対中関税である。また一つ、中国の成長へのブレーキ要因が増えたことになる。当然、世界経済の減速は織り込んでおかなければならないだろう。

 現在、日本は震災のために輸出力が失われているが、半年先を眺めれば、輸出が復興の牽引力になるかどうかを考えておく必要がある。月並みな結論だが、サプライチェーンが回復すれば、V字で回復すると、決め込んでいてはいけないだろう。阪神大震災の際も、超円高で輸出には頼れなかった経緯もある。

 阪神大震災があった1995年は、復興だけでなく、円高対策まで行い、その年の成長の大半を占めるほどの規模の財政出動を行った。それが成長を途切れさせず、1996年の力強い回復へと連なった。ただし、それと引き換えに、1997年に消費税を上げると決めたことが、のちのハシモトデフレの一因になる。

 消費税だけならば、ハシモトデフレにならなかったかもしれないが、それと合わせて13兆円もの急激な緊縮財政を取るという、お話にならないほどの愚劣な財政運営をすることで、日本経済を「失われた15年」に放り込んでしまった。日本の財政当局の思い通りにさせたら、こうなるという見本である。

 今回も、日本の財政当局は、重要情報を「説明しない」ことで世論操作を行い、地獄への道を着々と固めている。一つは、2011年度予算は、前年度補正後と比較して、4.3兆円の緊縮になっていること。二つは、地震から49日を迎えようというのに、積み上げの被害額を明らかにせず、復興予算が莫大になるというイメージを放置していること。三つは、3年程度の短期償還しかないと思い込ませ、一気の増税に誘導していることである。

 情報操作に惑わされなければ、前年度並みの予算にするだけで十分なことが見えてくる。それでも阪神大震災の1.5倍の被害に対応できるし、仮に、それより大きくなったとしても、この1年ほどの予算としては十分である。また、長期償還なら、増税するにしても数千億円で足りる。災害のような一時的な支出には長期償還で対処するのは財政学のイロハだ。

 笑えるのは、管政権が財政当局に「悪乗り」し、復興と社会保障改革を一体化させ、消費税に拘って延命を図ろうとし、猛烈な反発を受け始めたことである。震災ショックで不況色が濃くなってきたのに、いくら何でも無理だろうと、「素人でも」気づきだしたのだ。所得税の定率増税でとどめれば、実現の可能性もあっただろうに。

 今日の経済教室の中前さんは、財政当局の騙しのテクニックを見破っていないが、それでも、「復興予算に9兆円が必要でも、3年間なら3兆円ずつに過ぎない」ということくらいは見えている。筆者なんかは、最初から、日本の財政当局は情報操作をやってくるだろうと、どう来るか楽しみにしていたがね。

 ちなみに、筆者は、中前さんが言う金利正常化より、財政正常化が先だと考える。復興のために、予算を4.3兆円増やして前年度同規模に戻し、デフレ圧力をかけるのをやめ、それを3年続ければ、復興もデフレ脱出も成るだろう。そうなれば、金利も自然に正常化する。こんな平凡な財政なら、格付会社風情が信認を揺るがそうとしてもできない。

 むしろ、震災ショック時に緊縮なんてしたら、財政よりも、日本経済の信認の方が崩れてしまう。管政権には、もっと消費税の増税を強く打ち出してほしい。そして、誰もついていけないと思わせてほしい。それが日本のためになる。

(今日の日経)
 米量的緩和6月終了、ゼロ金利は維持。都市ガス網の地域間接続。社説・新しい巡幸が果たす役割。国会クールビズは上着着用。補正・自民賛成に傾く。社会保障給付抑制に軸足。ソニー7700万人分情報流出か。NTT被害1100億円、震災で発表相次ぐ。東電負担上限巡り攻防。東電から東北電へ融通。パレスチナ暫定政府合意。台湾野党候補に蔡氏。EU、中国に反補助金関税。ホテル営業縮小で雇用に影響。ルネサス応援1日2500人。放射能対応フォーク。長期金利横ばい。経済教室・金利正常化を・中前忠。那覇-グアム便就航。福島に応援旅行。

※連休中には「戦後政治と災後政治」と題して書いてみようかね。
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金融政策の裏の財政

2011年04月27日 | 経済
 浜田先生は米国に居られるから、金融政策を重視するのは分かるんだが、それがデフレ下での緊縮財政をのさばらせる結果になるんだな。中央銀行の統計数字は刻々と出てきても、日本の財政数字は粉飾だらけ。財政当局が2010年度、2011年度と、2年連続でGDP1%規模の緊縮財政をかけていると知ったら、先生も日銀だけを責めはすまいと思うのだがね。

 浜田先生ほどの碩学が「フリーランチはある」とか、「日銀引き受けでも」と言ったら、日本の経済学者は何と評するのだろうね。さすがに、「経済学を知らない者の言うことだ」と罵ることはできまい。むろん、これはデフレギャップがあるから言えることで、今の経済状況で必要なのは、金融緩和と財政拡張だと言っているに過ぎない。

 実際、日銀は、震災直後に、資産買取枠の拡大も行っている。問題は、財政当局が、一次補正後も財政中立まで持っていかずに、前年度比較で緊縮財政を続けていることだ。普通、そんなことをやっているとは、誰も思わないからね。財政が国債を増やさなければ、日銀は、それを買い上げて緩和することができない。極めて単純な理屈だ。

 また、浜田先生が、性急な消費税の引き上げに対して、「災害後の国民の苦しむ時期を選んで税負担をかけようもの」とし、あとで1%ずつ上げれぱ良いとするのも、ごく当然である。むしろ、デフレ下にあり、震災ショックに見舞われているのに、一気に引き上げようとする、日本での議論は異常である。浜田先生や筆者の見方は当たり前の話なのだ。

 日本では国債増発を非常に恐れ、今度の一次補正でも国債増発はないとしているが、年金積立金という「埋蔵金」の流用は、実質的に国債増発と変わるものではない。それにも関わらず、長期金利は極めて安定している。国債のディーラーは、こんなごまかしで、だまされるわけがないので、要は、資金需給は緩く、国債増発の余地は十分あるということだ。

 昨日の国会では、復興財源を何で賄うかという議論がなされていたが、それは、国債だろうと、年金や労働保険の「埋蔵金」だろうと、決算剰余金の会計操作だろうと、経済的には、どれも同じである。デフレで資金需給が緩和されていれば、どれを選んでも可能だし、逆に、インフレ気味なら、どれもできない。そのときに初めて増税が必要になる。

 金融政策や為替政策の動きは目に見えるが、財政政策は「見間違えるように」わざと作ってある。それに踊らされないことである。日本経済の「謎」は、特別編の「壮大なる愚行」で書いたように、隠蔽された財政数字を引っ張り出せば、簡単に解けるのである。

(今日の日経)
 被災工場7月9割復旧、既に6割。公明、財源法案に賛成。家庭の震災後の電力使用7.8%減。中古マンション価格回復の途上・東証新指数。主婦年金返還請求へ。欧州危機国にジレンマ。百貨店売上高14.7%減。経済教室・一層の緩和でデフレ打破・浜田宏一。
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インテリジェンスの欠如

2011年04月26日 | 経済
 政府・東電統合本部の会見を見ていると、それだけで日本は原子力をやめざるを得ないと思えてくる。高い技術力があっても、説明能力のある人材を排出できないのでは、それだけの理由で、事業は継続困難である。いや、そのような形で事業を継続させてはいけないのだ。

 よく、インフォメーションとインテリジェンスは違うと言われる。前者はデータや事実の羅列のようなもので、後者は、それを評価し、体系立て、行動へと結びつけるものである。端的に言うと、「それで、どうすればいいんだ?」というような説明には、インテリジェンスが欠けているのである。

 遥か昔のことだが、恩師に「説明ができないのは、理解ができていないこと」と諭されたことを思い出す。「教えることによって、真に理解ができるようになる」とも。「だから、研究を優先するあまり、講義を疎かにしてはいけない」と。我々は、ろくに説明のできない人たちに、命と国家を危険にさらす原子力事業を預けていたのだろうか。

 今回の原発事故で一番驚いたのは水素爆発である。専門家の言う「原子炉格納容器の破損」という「専門用語」の分かりやすい説明は「事実」がしてくれた。全電源喪失から1日以内に、ここに至ることが分かっていたのなら、多重防御のシステムは、まったく違ったものになっていたはずだ。爆発後の手段さえも準備されていただろう。全電源喪失は、津波以外の要因でも起こり得ることだからだ。

 管首相にしても、一番の誤算は水素爆発だろう。これさえなけば、現場に急行して危機を回避した英雄になっていたかもしれない。少なくとも、首相の周囲に居る、日本では最高のインテリジェンスを持つはずの人たちが、予期していなかった事態に発展したことは確かだろう。いまさら言っても、取り返しはつかないが。

 水素爆発は起こってしまった。今後の焦点の一つは、既に放射能によって汚染された土地は、どうなるかである。このまま9か月後に冷温停止になったとして、帰れることになるのだろうか。おそらく、その答えは、専門家なら分かっているはずだ。

 明らかにされないのは、社会的な意味づけをしての説明能力がないからなのか。それとも、衝撃的なので、噂が広まって国民の覚悟ができるまで待っているのか。その日になれば、「事実」が教えてくれるというのでは、無責任に過ぎる。もはや、広報の良し悪しという問題ではなくなっている。


(今日の日経)
 遺失物法で早期処分。統合本部会見延々4時間。3月の車生産、落ち込み最大、減収1兆円規模。生活保護費の減額を検討。東電株損失4000億円に迫る。欧州財政危機、職求め大量脱出。台湾生産指数が最高更新。ベトナム物価、消費波及前に収束か。米新築住宅が低迷。仙台のホテル満杯。被災地田植えをクボタ代行。一目均衡・東電投資家対納税者・三宅伸吾。経済教室・金融正常化・植田和男。カーシェア長時間パックで加速。
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原発被害の試算と財源論

2011年04月25日 | 経済
 今日は日経センターの復興への提案が掲載されていた。そのうち、無税特区はいただけないが、原発事故の処理費の試算は役に立つものだ。政府がしない中で、まともな試算は初めてではないかな。その賄い方の提案も傾聴に値する。本紙も、こちらの方を見出しにすれば良いのにね。クロウト好みなのかな。

 センターが試算する処理費は10年間で6兆円。これに対する財源は、東電の引当金と剰余金で3.7兆円を用意するともに、年間0.4兆円の原子力予算の中から、その半分を捻出。0.2兆円×10年=2兆円か。さらに、核燃料再処理工場の操業凍結で、12兆円の積立金の一部を充てるという内容である。増税や電気料金の引き上げは無用というのがポイントだ。「復興税だ!」と慌てふためいている人は、これを見て、少し落ち着いてはいかがか。

 無税特区の提案は、産業立地を知っている者からすれば、切り札になるような性質のものとは思われない。むろん、ペーパーカンパニーなら、いくらでも呼べるだろうが、それでは復興にならない。普通の企業立地でも、有力な案件には補助金などを使い、実質無税にすることは珍しくない。それでも、なかなか来てもらえないのが現実だ。

 来てもらうには、無税どころか、工場建屋を公費で作って賃貸するくらいまでしないといけない。だいたい、立地から数年は、なかなか利益が出ないもので、利益が出ていなければ、無税にしたところで何のメリットもない。だから、補助金などが必要とされているのである。実は、宮城県はその先進地であり、センターに教えてもらうまでもないのだ。

 震災を機に特区をという声は強いが、特別な制度なぞ、そういくつもできるものではない。その中で一つ最優先で実現したいのは、被災地の公費での借上げ制度である。これは、元自治次官の松本さんが提案したもので、日経の記事にもあるように、復興会議部会でも取り上げられている。これで、被災者への生活資金の提供と計画的な土地利用が両立できる。

 センター提案の風力発電は、この土地ですれば良かろう。電力会社は、風力に後ろ向きだったが、それは原発で揚水発電を賄うためだった。風力に揚水を組み合わせれば、安定供給が可能になる。東電に変わって政府が投資し、発電で借地料を賄う枠組とする。売電価格と電気料金は、政府が決められるのだから、必勝ビジネスになるよ。

 さて、今日は、経済教室にも触れておこう。畑農先生の論は、筋が良いからね。まず、バローの課税標準化理論という基本をきちんと踏まえている。償還期間を長くすれば、増税幅が小さくて済むという指摘も的確だ。基本も踏まえずに、財政赤字におののき、復興費用を3~5年で償還しようという学者が多くて困っていたから、ありがたいよ。日本でも、異常でない、ごく普通の財政論をしてほしいものだ。

 この際、先生の論について課題を述べておくと、まず歳出抑制という「標準理論」を超えることだろう。法人税の動向をみれば、リーマンショック前の2006年レベルの成長を達成するだけで、10兆円もの増収になることが分かる。そこに到達するのに、どのような財政運営をすれば良いか「道筋」を考えるべきだ。単に「歳出抑制すれは良い」と唱えるだけなら、誰でもできる。筆者なりの方法は、基本内容の「雪白の翼」のとおりだが、他にもあろう。期待してますよ。財政学は実学でもあると思うのでね。

(今日の日経)
 パソコン3割節電、MS自動プログラム配布。イエメン大統領退陣へ。展望リポート成長見通し0.8%軸に。日経センター・東北3県を無税特区に。復興会議・水没地借り上げ提案。新興国通貨二極化進む、レアル高が国内圧迫。中国EVタクシー炎上。太陽電池変換効率75%へ構造解明。経済教室・財政再建、成長回復が必須・畑農鋭矢。

※危機になると知恵は出るものだ、民間では。日銀は強気だが、それでも2012年度で2%後半では消費税はムリだな。日本の技術は凄い、実用化は先でもここまで行くとは。

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年金積立金の生きた使い方

2011年04月24日 | 社会保障
 今日の日経は良い記事を書いてくれたね。年金の「積立金6.4兆円取り崩し」という記事だ。筆者の場合、「この情報は、誰がどういう意図で流したか」を、つい考えてしまうのだが、まあ、年金の国庫負担の財源2.5兆円を震災対策に流用されたことへの、厚生労働官僚のささやかな抵抗ということにしておこうか。

 さて、この数字、どう解釈すべきだろうか。2011年度は、公的年金の給付増で6.4兆円、震災への流用で2.5兆円、合わせて8.9兆円も取り崩されて、120兆円の積立金は、その分だけ減ることになる。将来の年金給付が減ることにならないかと心配したり、年金を支える若年層の負担が重くならないか不安に感じる人もいるのではないか。

 「カネは貯めるだけでなく、生かして使うべし」とは、よく言われる人生訓だが、これは年金の積立金にも言える。実は、積立金のような巨大なものは、個人の貯金のように、自由に出し入れできないのだ。例えば、将来、高齢化が進んで、積立金を取り崩して給付に充てたくなったとしよう。もし、そのとき、インフレ気味であるとすると、これは若年層が減って供給力が限られる高齢社会ではありそうなことだが、不思議なことが起こる。

 積立金を取り崩して年金を給付すると、それだけ需要過多になり、物価が上昇して、思うような購買力が得られなくなるのだ。そうならないようにするには、増税を行って、所得を削減しなければならない。つまり、将来の負担増を避けようと積立金を用意したはずなのに、やっぱり増税は必要になってしまうのである。

 結局、積立金を意味ある形で取り崩せるかどうかは、その時の経済状況次第ということになる。積立金というのは、インフレ気味の時に所得を吸い上げて積み増すことには意味があるが、デフレを我慢してまでする価値はない。そうして苦労して用意しても、将来がインフレ気味なら、必要なときに役立たない。むしろ、デフレを我慢することは、成長を抑制して、供給力を低くするため、むしろ、将来のインフレの素にすらなりかねない。

 そういう観点からすれば、今、復興のために用いるのは、生きた使い方になる。すべてが生産的なものに使われるわけではないにしても、三陸の漁業施設に使われれば、末長く海の幸をもたらしてくれるだろうし、被災者用に公営住宅を建てれば家賃収入として還元される。風力や太陽光発電に投じて電力不足を補えば電気料が入り、道路などの公共施設も便益をもたらす。

 ただし、これは積立金の取り崩しでなくても、赤字国債の発行でもできることである。両者は、経済的にまったく同質のものだからである。今は、デフレ気味であり、失業率が高く、低金利にある。したがって、震災対策のために財政を拡大することは十分可能だし、それが資源をムダにしないことにもなる。国債残高の大きさを無闇に恐れ、デフレ下で緊縮財政をする方が不合理なのである。

 年金積立金は、少子化によって発生する「支える子のない人」の年金給付のために必要になるものだから、本当は、出生率の回復のために使いたいところだが、健全なマクロ経済運営のために役立てられるのなら、次善の策として容認できる。赤字国債も、積立金の取り崩しに代表される「埋蔵金」の利用も、あるいは、かつて行われていた決算剰余金の操作による作りも、マクロ経済的には同じことだが、それで、震災ショックの中で増税をするような愚が避けられるなら結構だ。

 さて、今日の積立金の記事は、もう一つ大事なことを教えてくれる。それは、09年度の取り崩しが4兆円で、10年度は6~7兆円、11年度もほぼ同じという数字だ。つまり、昨年度は消費税1%に相当する2.5兆円程度の所得追加の効果があったが、今年度は、それが消えるということである。

 昨年度、財政は、補正後で比較して、約5兆円の緊縮財政を行った。そのため、年度後半に景気対策が次々に期限を迎え、回復の動きが鈍ることになった。その中でも、年金は2.5兆円分だけ景気を押し上げていたことになる。それが無くなるというのは、相対的に2.5兆円のデフレ圧力がかかることである。そして、財政は、一次補正後でも、未だデフレ予算である。

 すなわち、日本経済は、震災ショックだけでなく、年金の推進力の喪失、デフレ予算の継続と三つの重荷を背負わなければならない。それにもかかわらず、社会保障や財政の動向をろくに把握もしないで、復興税なんてのに、うつつを抜かすトップリーダーの様子を見ると、日本の国民は本当に救われないなあと思えてくる。 

(今日の日経)
 被災工場再開相次ぐ、素材は遅れ。JX最終純利益は落ち込まず。復興会議、農地漁港の国有化を。賃上げ率1.8%前年並み、一時金は4.7%増も、危機前なお下回る。積立金6.4兆円取り崩しGPIF計画。風見鶏・やせ我慢・伊奈久喜。インドネシア新車月8万台。ミサワホーム社長、資材高で見直し。謎・セシウムの生物学的半減期は110日。読書・三井財閥とその時代。次代を担う3000人の小中学生は生きていた。

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建設的議論とジャーナリズム

2011年04月23日 | 経済
 かたや、財政当局は震災ショックにも緊縮財政を改めないし、他方、国債の日銀引受けを主張するものもいる。極論と極論なんだな。なかなか建設的なものにならない。原発だって、推進派と反対派に妥協の余地なんてないからね。日経ビジネスオンラインでも読めるが、武田徹さんの「賛否の対立が生んだ悲劇」には同感だよ。

 武田さんの論は、両者が折り合って、安全性を高めながら、当面は使っていくというものだ。そして、その調整役を果たすのがジャーナリズムというわけだが、そう言われてもなあ。推進派と反対派いずれかから情報をもらって流すというのが最も楽な処し方で、間に立てるほど知識を持つのは大変だし、持てば持ったで立場は微妙になる。センセーショナルでもなくなってしまう。かなり力量がないとできないことだ。

 昨日の産経の一面トップは「傑作」で、震災で深手を受けた日本経済に増税では、成長低下で国家を潰しかねないとする。ここまでは良いが、他方で、バラマキをやめろと言う。増税も歳出削減も成長には同じくブレーキになるのだがね。現状が前年度補正後より4.3兆円の緊縮だという事実が政府から示されないから、方向感が失われているのだ。そして、法人減税と規制緩和で成長力を高めろと言う。それらに即効性があったら、苦労はせんよ。

 このように、原子力工学と違って、常識でも判断がつくような経済運営についても、ジャーナリズムが示すものは、各種の主張の切り貼りでしかない。調整役を果たせるような見識を求められても無理がある。経済運営の基本は難しいものではなく、「デフレの時には増税や歳出削減はできず、成長や物価がある程度高まったところでする」というだけなのに。

 原子力発電の唯一のメリットは、安いことである。もし、太陽光発電と蓄電のコストダウンが進み、他方、安全対策のために、原子力がコスト高になっていったら、もう必要とされないだろう。ただでさえ、廃炉や放射性廃棄物の最終処理まで含んだライフサイクル・コストで見れば、決して安くないとされてきた原子力である。

 原発の安全性は議論で決着をつけられない性質のものだが、コストは目に見える。指摘を受けていながら、津波の想定を引き上げることができなかったのは、コスト上の余裕がなかったことも背景と考えられる。そして、今回の災害をコストに含めれば、もはや勝負はついた。あとは、どう撤退するかである。撤退も、相当に難しい作戦になる。

 今回の震災は、国の在り方を変えるというような大仰なことにはならないだろう。ただ、「安い」電力は失われた。電気料金の上昇に伴って、ライフスタイルは、ゆっくりだが着実に変わる。家庭用の電力料金の体系は、一定量以上を超えると急上昇するものとなり、太陽光発電+蓄電やガスとのコジェネが普及するだろう。普及によって蓄電池の価格も大きく低下し、電気自動車も普及するに違いない。高コストだが、持続可能なライフスタイルへと、世界の先頭を行くことは確かである。

 また、日本では、低コストにも関わらず、風力発電は貶められていた。出力が安定しないためである。しかし、ピークカットのために、高品質電力が必要な企業は、自家発電なり、蓄電設備を備えなければならなくなり、ある程度、質を落とすことが可能になるだろう。また、風力で夜間に揚水を行って蓄電することには、原子力というライバルがいたが、これが消えた。風力を伸ばすことが、これからはまじめに考えられるだろう。

 ゆっくりとだが、原子力の発電量は減らしていかざるを得ない。それには、代替電力の技術開発が必要になるが、従来、日本の科学技術開発予算の大きな部分は原子力で占められてきた。これをシフトしていくことにもなろう。主要国立大の原子力工学科、既に名前は変わってきているが、これも原子炉研究以外のものへと変わっていこう。

 原子力の未来としては、小型、分散、メンテナンスフリー、そして、ローコストの原子炉が開発できるかどうかだが、道は険しい。やはり、事故が起こると悪化を止め難いという基本的性質と巨大システムの組み合わせは、技術として筋が悪い。スリーマイル、チェルノブイリ、フクシマと、過酷事故が定期的に起こることを前提にする必要もある。「石棺」や汚染処理装置の事前の用意もいるということだ。

 さて、日本のジャーナリズムに、こうした議論ができるであろうか。正直、言って、見通しは暗い。それでも、今週の日経ビジネス「東電の罪と罰」は頑張っていたね。山川龍雄編集長の「抵抗があったが、あえて取り上げた」という趣旨は理解できたよ。田勢康弘さん風のタイトルにも意味があるのだろう。

 今回の震災で、本当に将来構想が必要なのは、原子力発電だけなのだが、政府の復興構想会議は、これは対象から外すらしい。これでは、ジャーナリズムもやりにくい。財政でも原子力でも、本当に大事な問題は、政府は基礎的情報や数字を示さない。それを抉り出すのは、ジャーナリズムでも難しい。日本は、こういう国なんだよ。

(今日の日経)
 原発保障国が負担も「異常時」。セブンがコメ調達で被災農家を支援。トヨタ正常化11月以降。復興予算綱渡り。本格冷却へ課題多く。岩手銀、公的資金は不要。米景気緩慢コーン前議長、まず償還金の再投資しないことから。被災FCオーナー支援。薄型テレビ販売上昇。新日鉄最終黒字900億円、予想やや下回る。
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復興院に権限は無用

2011年04月22日 | 経済
 管政権は震災関係の会議や本部がやたらに多いと批判されているが、世間では「復興院」を創設すべしという主張が盛んだったりする。「実質より、組織いじり」という日本のトップリーダーの悪癖は、どこも変わることはない。自民党も同様のものを出してきたからといって責められはしないが、辟易とさせられる。

 日本の政治家、マスコミ、有識者は、組織というものが分からないらしい。会社では社長がすべての権限を握るが、それで社員を思うように動かせるかというと、幻想だろう。各省庁の「既存」の権限を一つにまとめたくらいでは、とても動きそうにない。おまけに、復興までの時限組織では忠誠心も得られまい。しかも、肝心の使える予算額があやふやだ。

 そんな中、朝日によれば、国交省が被災者に賃貸住宅をあっせんしようとして、トラブルになっているらしい。厚労省が災害救助法に基づいて家賃を出せるかどうかで揉めているのだ。厚労省はカネのない役所なので、おおかた、財政当局からOKをもらえないのだろう。これを「復興院」なら解決できるのか。それは一体「いつ」のことなのか。

 大事なのは、組織よりカネである。被災者の住居対策として、復興基金を用意して1000億円ほど割り当て、復興構想会議でも、本部でも構わないから、そこで了承したら、県や市町村に流せるようにすれば良い。これなら、地元の要望に沿って、すぐに実行できるし、使い途をオープンで決めることができる。これが政治主導というものだろう。

 本来、復興会議や本部の役割は、地元の要望を聞いて、臨機応変にカネを流すことであり、自治体に思う存分に腕を振るわせることである。抽象的な構想など、何の役にも立たない。構想なら、地元の発想を超える雄大なものを「予算つき」で示すくらいでなければ無意味だろう。組織いじりとは、責任を押し付ける先を作るだけのものである。

 現実の政治主導は、増税計画ばかりのようだ。しかも、消費税を上げて3年という短期間で償還することを目論んでいるらしい。災害復旧の期限は3年間となっているから、おそらく、財政当局の入れ知恵だろう。しかし、これほどの大災害で、単なる復旧ではなく、新たな姿へ「復興」させるのなら、5年以上かかるだろう。現に、宮城県知事は、そうした発言をしている。

 そうなると、せっかく復興税で集めたカネが、執行上の制約で一時滞留することにもなりかねない。経済に大打撃を与えかねない大幅な増税で用意するにも関わらずである。日本の財政当局は、どうして、これほど愚劣で現場を見ないないのであろうか。いやいや、復興のために無理なく財源を用意しようという気はさらさらなく、財政再建への増税の下心があるだけなのだ。国債に合わせた10年償還では、増税幅は1/3以下になるからね。

 今日の経済教室では、OECDのグリアさんが日本経済の見通しを語っている。震災からの再建が強い推進力を与えるとするが、2011年の成長率は1%を下回り、2012年でも2%を超える程度である。これでは、どう考えても物価上昇率は1%以下であり、消費税を1%引き上げることも難しい。上げるにしても2013年以降になるだろう。

 今回の震災で、東北地方の農林水産業は大打撃を受けたが、日本全体でもGDPの割合は1%以下である。他方、観光業のGDPはその2倍はあり、消費の停滞により、全国規模で大打撃を受けている。足元の需要減少による経済への悪影響は大きい。日経が実報中で指摘するように景気の先行きが焦点なのだ。復興院や増税の論議で遊んでいる場合なのか。

(今日の日経)
 自家発電150万kw拡大、関東1640万kwの設備、昨夏稼働率5割強。いすゞ・VW提携交渉。復興再生院を創設・自民党。品不足で値上がり続々・需要盛り上がらず。計画区域の退去説得へ。漁業保険940億円。対日輸出、アジアで停滞。コニカ・フィリップスEL照明を販売。隠れ電源生かせ・西條都夫。経済教室・復興の課題・アンヘル・グリアOECD事務総長。被災船再出港に壁、かさむ移送修理費。

※自家発電容量は思ったより大きい、西條さん解説も良いね。年間20ミリシーベルを1時間当たりに割れば2.3マイクロになる。大熊町で毎時100マイクロ超とは。
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危険性を伝えるということ

2011年04月21日 | 経済
 今回の原発事故では、国民への情報の出し方が問われている。リスク・コミュニケーションと言われるものだ。基本は、より早くということになろうが、本当に早く出した方が良いものなのか、事故の初期対応の状況が明らかにつれて、そんな疑問も湧いてきた。

 原子力の専門家にとっては、原子炉の冷却のための電源装置が失われたとき、どのような時間的推移で、何が起こるかは承知のことだったはずだ。報道されているように、原子力安全基盤機構が昨年10月に報告書をまとめているから、専門家は読んでなければおかしい。実際、そこに書かれていることが起こった。

 それを踏まえると、電源喪失の段階において、炉心溶融が起こり、核燃料が崩落し、圧力容器や格納容器の損壊に進み、大量の放射性物質が放出されることは、十分に予想されたことであり、それを国民に伝えることも可能だったはずだ。早い段階で、記者団にそうした「背景」説明をしていた技術系の審議官が居たとも言われる。

 むろん、原子炉の中で何が起こっているか、確かめることはできないのだから、十分な「可能性」があったとしても、口を噤むことが、間違った行為だとは責められない。今回の震災で落ち着きぶりを賞賛されている日本国民にしても、さすがに、そうした深刻な事態を短時間のうちに聞かされていたら、パニックになっていたかもしれない。

 政府は、技術系の審議官をスポークスマンから外し、文系の者に代えて、「余計なこと」を説明しないようにした。管首相が国会で「評価を歴史に待つ」と発言するのも、あながち、強がりばかりではなく、世間が思う以上に、早くから深刻な事態を認識していて、「全力」で事に当たっていたのだと言いたいようにも見える。 

 先の報告書には、容器が破損するとあったわけだが、その意味するところは、大量の水素の発生による、原子炉建屋を吹き飛ばすほどの爆発であった。そこまて明確に書いてあったのなら、報告書は原子炉の安全管理の方法を変えていただろう。そこは惜しまれるところである。しかし、確率的である巨大な損害の危険性を、どのように伝えるか、その答えは、筆者にも分からない。

(今日の日経)
 LED照明に節電需要、リコーが参入。社説・景気と貿易収支の悪化に細心の注意を、家庭の節電意欲をどう高める。素材、復興需要は夏以降、回復ピッチ遅く。「稼ぎ」減り起こること・滝田洋一。公営住宅を被災者に6万戸計画、払い下げも可能。夏の電力供給さらに積み増し5500万kw。三洋、店舗・家庭向け蓄電装置。東ガスが風力発電を強化。金利1.230%に低下。経済教室・生産性向上に健康もカギ・河野敏鑑・齊藤有希子。


※本コラムが示してきた方向に、ようやく日経が気づいてくれたように感じる。本コラムでは、電力供給力を最重要情報としてきたが、今日も詳しく報道してくれて、ほぼ夏の需要を賄えるところまで来たことが判明した。また、今日の社説では、節電策への踏み込みも見られる。

 そして、もう一つ、今日の社説にあるように、震災後の経済指標で出始めたことで、景気を心配するようにもなった。これで、反バラマキ、増税歓迎の態度を、少し改めてくれれば良い。こうしたことは、一定以上の成長率を実現してからのことなのだ。それを肝に銘じなければならない。

 滝田さんは、貿易収支の悪化を気にしているようだが、真に恐れるべきは、景気を失速させ、所得の減少を通じて、国債を引き受けている家計や企業の貯蓄を減らしてしまうことである。日本の財政当局は、こうした「自爆」をハシモトデフレの時にしているので要警戒だ。ハシモトデフレも、阪神大震災の時の村山政権で消費税増税を仕掛けたことが伏線になっている。

 震災による輸出力低下は一時的なものであり、復興資材の輸入増も然りである。これに驚いて緊縮財政を取り、デフレにして短期的に輸入を抑えても意味がない。むしろ、それは国内の設備投資を停滞させて生産力を弱め、中期的な輸出力を低下させてしまう。そうなると、構造的な貿易赤字国になり、外債に頼る国へ転落することになる。単に財政再建をすれば済むという単純なものではない。

 滝田さんが言うところの「財政再建の道筋」は、4/17に書いたとおりである。日経の編集委員ともなれば、この程度のイメージは持っておかなければならない。要は、経済状況に合わせることを第一とし、必要最小限の増税を着実にするということである。派手な歳出削減や一気の増税は、非常に巨大な危険を伴うもので、大自爆を起こしてからでは遅いのである。さてと、リスクコミュニケーションになったかね。

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