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経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

経済運営の技法

2011年09月30日 | 経済
 設備投資がリスクに強く影響される以上、経済運営においては、追加的な需要の管理が極めて重要になる。金利でコントロールできるのは教科書の中だけのことで、実際の経済データに通暁する者は、必ず、そういう結論に達する。これが分かるのは、理論と経験を併せ持つプロの世界なのだ。

 追加的あるいは限界的な需要の代表選手は輸出である。バブル崩壊後、設備投資の下落が底を打った1994年から、リーマン・ショック前の2007年まで、13年間に渡って、日本の設備投資は、2四半期前の輸出にパラレルに動いてきた。すなわち、この間の景気予測は、極めてシンプルな手法で、正確に行うことができたのである。

 ポイントは、輸入を差し引いた純輸出で見るのではなく、単純な輸出で見ることである。日本経済は、企業が輸出に合わせて設備投資を行い、生産が高まることで、資源などの輸入が増大し、純輸出が決まるという構造にあるからだ。

 一つ注意がいるのは、リーマン・ショックでは、タイムラグが縮んだことがある。通常は、輸出と整備投資の間には、2四半期のタイムラグなのだが、リーマン・ショックの際は、輸出激減の危機が企業には容易に予想できたためか、設備投資は、輸出とほぼ同時に激減している。なお、底打ちは、やはり2四半期後だった。

 第二の追加的需要の項目は、住宅投資である。2四半期前の住宅投資は、縁の下の力持ち的な影響を設備投資に与えている。強い影響力を持ったのは、1997年のハシモト・デフレ前の回復期であり、設備投資の底入れや押し上げに、輸出以上の力を発揮している。ただ、その後は、わずかずつ減りつつ、安定を保つのみであった。その重要性が再認識されたのは、耐震偽装問題で激減した2007年のときである。

 第三は、公共投資である。ハシモト・デフレ前は、設備投資に影響力を持っていたのだが、小渕政権が倒れた後は、ひたすら足を引っ張るだけであった。以上の輸出、住宅、公共三つを単純に足し合わせ、半年ずらして、設備投資に並べると、あら不思議、ほとんど同じ波形を描く。設備投資が追加的な需要で決定されることの実証がされた瞬間だ。

 こうしてみると、小泉政権下で、公共投資を抜くのを1年ほど遅らせていればと悔やまれる。輸出の急増と相まって、設備投資から消費に波及し、それが更に設備投資を呼ぶという好循環が起こって、デフレから脱出していただろう。まあ、そうなると、設備投資が追加需要で決まるという実証とは、くい違うテータが出てきただろうが。

 こうして見れば、昨日、KitaAlpsさんがコメントしてくれたように、経済運営で財政が極めて重要なことが理解できよう。特に、財政は、需要項目として重要なだけでなく、輸出と住宅投資にも影響を及ぼして、間接的にも経済を動かすことになる。

 日本は、欧米と比較して歴史的に低金利にあり、緊縮財政をしたときのデフレ効果による実質金利の上昇を、金融政策でカバーし切れない。すなわち、緊縮財政をすると、直接に需要を減らすだけでなく、円高を呼んで輸出を減らし、経済に打撃を与えてしまう。計量経済学的な実証は難しいが、緊縮財政の後に円高に見舞われることは、何度も繰り返されていて、とても偶然とは思われないのである。

 マンデル・フレミングモデルといって、財政出動をしても、通貨高になって、輸出減と輸入増により効果が相殺されるというものがあるが、さしずめ、日本では、緊縮財政によって、通貨高になり、景気が悪化して、財政再建の効果が相殺されるというモデルが成り立つのではないだろうか。

 まあ、財政による需要の増減について、計量すら行わない日本の財政当局に、経済運営の技法を教えたところで、意味はないのだがね。ハシモト・デフレ前後、消費増税の駆け込み需要による住宅投資の急増急減も、経済には大打撃だったのだが、まったく反省もないから、いまだに、そうした変動を緩和しようという意識すらない。しかし、経済データは、「需要は経済に影響しない」という財政当局の観念の誤りを冷厳に示しているのである。
 
(今日の日経)
 海外M&Aの隆盛期に、3兆円に倍増。都庁舎の電力を東ガスから3割。欧州危機対策を独が可決。医療費、09年度3.4%増の36兆円。年金減額の見送り累計5.1兆円。地方公務員削減を休止。来年度概算要求・震災復興3兆円超に。韓国・信用収縮の恐れ、伊仏が借り換え応じず。エリーパワーが川崎に新工場。経済教室・地域再生・林宜嗣。
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財政当局の理念と哲学

2011年09月29日 | 経済
 復興増税について、自民党の石原幹事長は、「理念も哲学も感じられない」と批判した由である。しかし、財政当局は、はっきり言わないだけで、明確な考え方で押し進めているように見える。それを踏まえると、自民党の対応は、なかなか難しいように思える。

 財政当局の考え方は、「もう、財源なしに補正予算は出さない」というものである。震災の発生から、一次と二次の補正予算を通して、6兆円を用意したわけだが、よく考えると、一次は予算の組み換えで対応し、二次は決算剰余金で対応している。広い意味での借金の増大は、一次の年金財源を付け替えた2.5兆円であるが、これも復興増税の対象とされている。

 更にさかのぼれば、昨年11月の管内閣での円高対策の補正予算も、税収上ブレ分で賄っているので、これも国債増発はしていない。今回の三次補正では、増税か、資産売却かの宿題を、政治がこなさなければ、復興費は出さない構図にあることは、改めて言うまでもない。ある意味、財政学者の大好きな「ペイ・アズ・ユー・ゴー」になっているのである。

 こういう仕掛けを、政治に悟られないうちに嵌めてしまうのは、経済には無知でも、政治センスは抜群の日本の財政当局らしい立ち回り方である。筆者からすれば、被災地をよそに、こんなゲームにうつつを抜かしていて良いのかと怒りを覚える。あからさまに、「財源なしに、復興費は出さない」と言えば、誰しも嫌な感じを受けるのではないだろうか。

 こうして、震災復興という、深刻かつ稀な事態でも財源を求められてしまうのだから、今後は、経済対策の際、従来のように国債増発で対応することは、およそ政治的に考えられなくなった。それは、財政規律を守る点では良いが、経済運営の機動性が失われる面もある。もし、欧米でショックが発生すれば、さっそく試されることになろう。

 こうした構図にあるとき、自民党はどういう立場になるのだろうか。自民党はバラマキを批判してきたのであるから、財源と補正のリンク論を批判するわけにもいかない。今の経済情勢では、増税の上積みや早期化を求めるのは危険である。結局、政府資産の売却に付き合わされるのではないか。政治的争点を作って、独自色を出すことは難しくなっている。

 政府・民主党の増税プランは、党内議論で揉まれるうち、増税幅が圧縮され、時期も遅らされることによって、経済運営として無理の少ないものになってきた。今後の与野党協議では、公明党に対しては、増税期間を延ばすことで、更に増税幅を圧縮する道を残しているし、復興費の中身への批判には、あえて最終局面で膨らまして削る余地も作った。なかなか上手く作ってあるのだ。

 むろん、本コラムの主張は、経済状況に合わせて需要を管理するというもので、回復を決め打ちし、予め増税をセットしておくことは、危ういと申し上げておく。来年度、もし、欧米でシッヨクが発生したときには、予備費1兆円と自然増収2.5兆円などで、補正予算が組まれるだろう。そのときに、「こんな隠し財源があったのか、去年の増税議論はなんだったのだ」と思わないことである。政治に財源探しをさせる仕掛けを作るというのが、財政当局の理念と哲学なのだ。

(今日の日経)
 パナソニックが中国で5割の電池生産、戦略製品の移管止まらず。夫の厚生年金2等分・専業主婦見直し。欧州委員長が金融取引税の導入提案。社説・中国にらむ日比戦略関係。復興増税圧縮は多難。車生産プラス震災後初、輸出堅調。産業用金属が急落。福島廃炉に1.15兆円。韓国大手企業へ世論の不満強く。セブン、和牛を専用農場から調達。トヨタがPHVを1月投入。経済教室・有期雇用も賃金で保障を・鶴光太郎

※二等分で払った形式だけ作ってもねえ。※バローゾに日米英も乗ったらどうか、皆財源には苦しんでいるのだから。※韓国のプロ・ビジネスも束の間かも。※流通も車も着実に変わっている。
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9/28の日経

2011年09月28日 | 経済
 今日は休載します。

(今日の日経)
 復興増税9.2兆円に圧縮、税外収入2兆円増額、住民税14年6月から。増税一段の圧縮協議へ、JTは1兆円、エネ特保有株7000~8000億円。試練の大欧州・瀬戸際のドイツ。ラガルドIMF専務理事寄稿。トヨタ新型HVは1ℓ40㎞。普天間移設へ沖縄対策指導。総合エネ調が来夏までに新計画。富裕増税バフェット・ルール。車の国内需要3.3%減。自動車部品、増産対応、投資は慎重。経済教室・技術より需要把握・浅羽茂。ラグビー・日本勝利逃す。
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3か月の違いが意味するもの

2011年09月27日 | 経済
 復興増税で所得税の引き上げが13年1月からと聞いたとき、2006年1月と2007年1月に行われた定率減税の廃止を思い出した。2004年12月の予算編成で決められたものだが、このときも、デフレの状況では時期尚早という議論が出て、年度当初から、1月に遅らせたのであった。

 1月からの実施と、その後の4月では、3か月しか違わないが、増税の決定は、1会計年度早くしなければならない。経済の動きは早いので、状況に合わせて実施しなければならない経済運営の観点からすると、この差は大きい。むろん、理屈では、急遽、取りやめることもできなくはないが、実際には、なかなか難しい。

 それでは、早々と増税に踏み切った2006年から2007年にかけて、何が起こったか。2006年の秋に安倍内閣がスタートしたのだが、2006年には民間消費が揺らぎだし、2007年に入ると夏までに失速してしまった。前政権の置き土産ではあるが、選挙の年に大規模な増税を背負うという戦略が間違っていたとしか言いようがあるまい。

 2007年の夏頃と言えば、米国の住宅価格の下落が始まったところであり、サブプライム・ローン問題のはしりの時期である。輸出は、2005年の急激な伸びは過ぎたが、2006年から2007年にかけては、まだ勢いを保っていた。ところが、日本の設備投資は、2007年には、早くも停滞するようになった。

 また、2007年は、輸出に次ぐ設備投資の牽引役である住宅投資が、耐震偽装問題で激減するという不運もあった。ただし、こうした状況となれば、本来は、公共投資を増やすなどして、経済運営の調整をするものだが、そうした工夫はまったくなく、反対に削減を続けてしまう始末であった。

 こうして、日本は、2006年から2007年にかけてのデフレ脱却のチャンスをみすみす逃し、2008年秋のリーマン・ショックを迎えることになる。かつての定率減税の廃止は、所得税20%、住民税15%減税していたものを、半分ずつ廃止するものであり、現在、計画されている復興増税の大きさからすれば、かなり規模が大きく、並行して復興事業が行われるという違いもある。

 しかし、当初に打ち出された所得税の10%の増税幅といい、遅らせても年度内に拘って1月に始める手法といい、昔の手法にそっくりで、日本の財政当局が考えることは、ちっとも進歩がないように見える。増税幅こそ、猛反発を受けて圧縮させられたが、早くに増税を決めることの経済運営上の難しさの方は、意識にものぼってないに違いない。

 早々と増税を決めておくことが上手く行くかどうかは運次第である。幸運を祈るとしか言いようがない。まあ、アクシデントがあっても対応できるような「高度」な経済運営なんて、求める方が間違っているのだろう。これだけ欧米の経済が不安視される中で、過去の反省もなく、同じことを繰り返すのでは、運も離れようというものだ。

(今日の日経)
 復興増税・住民税を5年間で調整。電力・曖昧な責任。日経平均2年半ぶり8300円台。金・新興国株が急落、市場は現金志向。9月補正が急膨張6198億円37%増。車保険料平均2%上げへ。東電賠償最低3兆数千億円。サウジ国王、女性に参政権。ロシア・クドリン財務相は辞任。ユーロ圏利下げ観測。ペリーノミクス・矢沢俊樹。節電大口29%、家庭は6%。白物家電減速も09年は上回る。三陸の水産加工が本格再開。米銀の体力奪う住宅の病巣・藤田和明。大機・米国の日本化・希。経済教室・新製品開発・恩蔵直人。

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ワンコインの社会保険

2011年09月26日 | 社会保障
 今日の日経の社説は、非正規への年金拡大である。この問題は、要すれば、お金のない人から、どうやって保険料を取るか、そして、わずかな保険料しか払えない人に、どうやって老後の生活保障を与えるかである。その中には、形式上は収入ゼロである専業主婦も含まれる。

 結論から先に言うと、すべての人を対象に、月額500円の保険料を取るべきであると考える。非正規への拡大どころか、パート、アルバイト、専業主婦も含めて適用対象にする。払うのが原則となれば、払ったり、払わなかったりの切替え手続のミスによって年金権を喪失する問題は大きく減じるだろう。

 近年、思うのは、社会保険において、「タダより怖いものはない」ということである。長引く景気の低迷、それに伴う財政難から、負担のない専業主婦への風当たりは強い。実は、マクロ経済スライド完成後になると、高所得者への給付は、専業主婦がいる場合でも、夫の保険料に見合う分の給付しか受けられないようになるので、専業主婦のメリットはまったくなかったりする。タダで与えているのではなく、再分配の方法なのだ。

 しかし、そうしたことは、一握りの専門家だけが分かることであって、このままでは、世論は、専業主婦には年金を払うなというような方向へ突き進みそうな勢いである。やはり、わずかでも保険料を払い、権利を得ておくことは、政治的な発言力のために欠かせないのだ。それで行けば、日経お勧めの、保険料なしの税方式の年金は、長い目で見れば、危ういものである。

 問題は、給付をどうするかになる。月額500円では、給付は月額1100円くらいしか出せない。ただし、保険料さえ、しっかり収めていれば、年金の国庫負担分による3.3万円は、別途、もらえることになる。今でも、フリーターや母子家庭の母は、低所得の場合、国民年金保険料の減免を受けることができ、免除だと、この3.3万円になる。

 もちろん、老後の生活保障のために少ないことは分かっているが、ここから出発して、給付充実のために、保険料を引き上げるのか、増税して補完する年金を出すのかを議論していけばよい。いずれにしても、現在の経済状況からすれば、徐々に進めるしかない。そこは、日経も漸進主義である。消費税への態度とはえらい違いだ。

 さて、論点を整理すると、現在、政府で進められている議論は、保険料はそのままに、適用対象をどこまで広げるかといものである。これに対して、本コラムの提案は、全者を適用対象にした上で、新たに対象となった人には、大幅な保険料の減免を行うというコンセプトだ。今回は、ワンコインとしたが、保険料率を半分にするとか、方法はいろいろと考えられる。

 現在の年金制度は、負担面から言うと、月額3.3万円の税方式に、報酬比例の保険料方式が乗った形である。給付面は、これとは食い違うので、適用対象の拡大や年金の一元化をしようとすると、いろいろと難しい問題が生じる。筆者は、大きな流れとして、給付面を負担面に合わせていくことが課題だと考えている。

 年金に関しては、小論や基本内容で、いろいろと書いたから、参考にしてもらえば良い。今日は触れなかったが、一番年金で重要なのは、少子化の克服であり、次いで、払った分だけの給付にすること、最後に、生活保障としての給付水準である。蛇足だが、「最低保障7万円」といった、給付水準の議論から入っていることが、国民の関心事項だとは言え、問題を難しくしているように思う。

(今日の日経)
 震災復興減税、全体で数百億~1000億円超。復興交付金・インフラ整備枠を設定1.5兆円、ソフト0.5兆円。世界の新規上場の資金調達6割減。外貨確保へ大手銀動く。長期金利は低水準・FRB新政策が奏功。電力・監視役は米10倍。社説・「非正規」の年金拡大は公平性と両立を。武器輸出・前原氏突出。経済教室・企業統治・宮島英明。

※ソフトが少ないが、交付金の使い勝手は大丈夫だろうか。※ツイストは効果が意外にあったのね。※原発の監視まで、日本は「小さな政府」だったか。
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ゲーム理論で解く日本の大停滞

2011年09月25日 | 経済(主なもの)
 ケインズではないが、経済学者というのは、エッセイを書く力が非常に大切なように思う。そこへ、当代きっての理論家である松井彰彦先生が「不自由な経済」を出されたのだから、これは、読まずばなるまい。日経掲載当時から楽しませてもらっていたが、なかなか示唆に富む良い内容である。

 さて、松井先生はゲーム理論で知られるが、これを使うと、日本経済の長期停滞も解けるのではないかと期待している。まあ、掛け声だけではつまらんから、今日はちょっと書いてみることにしよう。理論があってこそ、現実は見えて来るということが、なんとなくイメージできるのではないか。

 日本は、金利も賃金も低い。なぜ、経営者は、これらを組み合わせる設備投資をして、儲けようとしないのだろう。それは、リスクがあるからだ。「やれば儲かるとは思うんだが、内需が後退したりで大損を被るのは避けたい」といったところだろうか。機会利益を捨てているのであり、不合理な行動がなされているわけだ。

 経営者は考える。他の経営者も機会利益があることは分かっているはずだ。みんなが合理的に行動するなら、設備投資は出てきてもおかしくない。しかし、みんなは本当に合理的なのだろうか。合理的かどうかは、少し疑問が残る。ここは、誰かが設備投資をし始めたところで、自分も追いかける戦略でいこう。

 こういう状態になると、みんながお見合いをして、ちっとも設備投資が出てこないことになる。市場が多数の経営者で構成されていて、他の経営者の分の融資枠を取り上げて、代わって設備投資をすることもできない以上、「様子をみる」という、不合理だが理由のある行動によって、経済全体に余資や失業が発生するのである。

 こういう困った均衡状態は、アニマル・スピリットの持ち主によって破られる。自己の正しさを信じ、みんなは後についてくる、先行者利益を獲るのはオレだという存在だ。とは言え、実際には、そうした国内の状態とは無関係に発生する外需によって、均衡が破られる場合が多いのであるが。

 ところが、日本には、せっかくのチャレンジ精神を持った経営者を挫いてしまうバカがいる。それが財政当局である。彼らは、蛮勇によって設備投資が始まり、景気が上向き始めたところで、これ幸いと財政再建をしだし、内需を吸い上げ、後に続こうとする者を萎えさせて、先行者を孤立させるのである。むろん、景気は元のもくあみで、財政も好転せず、挑戦者が潰されただけで終わる。日本にベンチャーが育たないのも道理だろう。

 このような「理論」でもって、改めて日本の財政運営を眺めてみると、1997年のハシモトデフレに始まり、森政権の緊縮、小泉政権の2004~06年の緊縮、そして、2010年の緊縮と、景気の立ち上がりを狙いすましたかのように、緊縮財政を打って回復の芽を潰し、それまでの多大な財政出動の犠牲を無に帰しているのが分かる。(本コラム9/17や特別版を参照)

 これで、日本の長期停滞の「謎」がゲーム理論によって解かれたわけである。また、停滞への処方箋が「十分な成長と物価上昇が得られるまで、無闇な緊縮財政は控える」という平凡な経済運営の実践にあることが分かるだろう。汎用性に優れた理論なのだから、実際に当てはめて、役立てたいものである。

 他方、教科書的な経済学の理論で見ると、低金利や失業者が長く放置され、機会利益が捨てられているなんて、経営者が利益を最大化するよう行動するとしている以上、あり得ない話である。そこで、規制によって、投資や就業が妨げられているに違いないと思い込む。また、法人減税をして、利益率を高めれば、設備投資をするはずだと叫んだりもする。本質を外しているのだが、そうした側面もないわけではないので、そこから一歩も出られなくなる。

 いかがだろうか。理論がないと、現実が見えないというのが、なんとなくイメージできたのではないかと思う。筆者は、経済学の業界に間々見られる理論のための理論が嫌いである。現実の説明に役立ってこその理論であろう。エッセイには、経済学者の理論と現実の取り結びがよく表れるものだ。それもあって、エッセイを好むわけである。その割には、このコラムは適当なものだって? いやいや、これは申し訳ない。つれづれなるがままに毎日書いているのでね。お許しあれ。

(今日の日経)
 車軽量化に住金が新技術、骨格に鋼管で5割軽く。787が変える経営戦略。エックス線自由電子レーザーSACLAさくら。新興国が一転自国通貨買い。日・比が海上防衛で定期協議。プーチン氏が大統領復帰へ。電力・1%未満の市場競争。風見鶏・格付け転落の秋の宮澤。医療費、税・保険の負担増、高齢化で。中外・大和ハウス。IMFセミナー・消費税引き上げ。経済論壇・政府債務への過剰反応・シラー。読書・生命と自由を守る医療政策、売れているのがおいしい料理、私だけの神、評伝ジョージ・ケナン、昭和天皇と戦争の世紀。釜石ラグビー栄光の日々。

※日本の技術力を見るのは素直にうれしい。※ブラジルの利下げの奇手がこうなるとはね。※日米、日豪の次は、日比かと思ったりする。※電力は松井先生のいう買い手独占の弊害だ。※IMFも増税論者だけ集めてどうするのか。※シラーの言うとおり、過剰反応で財政への評価に歪みが生じているのでは。※今日の読書欄は評論自体が良かったね。
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国債非常事態のシナリオ

2011年09月24日 | 経済
 タイトルに引かれて、「国債・非常事態宣言-3年以内の暴落へのカウントダウン」(松田千恵子著)を読んだ。著者自身が初学者向けと断っていることもあり、読みやすいし、公式的な財政問題の概要をつかむには良い本だと思うが、それだけに物足りなさはある。

 私のような専門家も含め、一般の人も、一番知りたいのは、これから、「どうなる」と「どうする」だろう。「3年以内」の根拠は、財政当局がよく使う、国の債務が家計貯蓄を上回るという「例のもの」で目新しさはない。これは、切迫感を煽るのに手頃というだけで、いまや企業部門が大きな貯蓄主体になっていることを踏まえれば、家計貯蓄を超えたからといって、どうということはない。さて、それでは、この先、「どうなる」のだろう。

 一番ハッピーで、結構ありそうなシナリオは、「何も起こらない」である。国債の保有者は、突き詰めれば、国内の高齢者である。もし、彼らが、国債を抱えたまま、寿命を迎えるとしたら、国債は相続税で回収され、それで終わりである。これからすると、「どうする」は、相続税に穴を開けておいてはいけないということになる。

 次に、最も現実的なシナリオは、高齢者が徐々に貯蓄を取り崩して生活するようになり、国債を買わなくなるという事態である。こうなると、財政赤字は出せなくなるが、代わりに高齢者の消費が出てくるわけで、景気は良くなってくるだろう。問題は、消費が過熱しすぎる場合だ。その時には、冷却に絶大な力を発揮する消費税の出番である。これが財政再建になることは言うまでもない。

 そして、ほとんどあり得ないのは、パニックで国債が暴落、金利が急騰することである。どんな健全な銀行でも、うわさで取り付け騒ぎが起こると破綻してしまう。こんなときこそ、日銀の出番であり、市場で国債を買い入れ、事態の収拾にあたることになる。むろん、通貨供給が過剰になり、インフレに発展する恐れがあるが、その際は増税でマネーを吸収する。

 ちなみに、金利が急騰すると、利払いだけで財政が破綻するというような人もいるが、利子課税があることを忘れてはいけない。本当に、心配なら、消費税の計画を立てるより、税率を20%から25%に引き上げておくことだ。そうした工夫で、利払費以上に税収が上がるような仕組みにすることは可能なのである。

 おしまいに、何よりありがちなシナリオは、財政赤字への罪悪感と焦燥感から、無理な増税と緊縮を行って、経済を縮小させてしまうことである。分母が小さくなるために、財政赤字のGDP比は、かえって高くなり、家計と企業の所得が減少し、肝心の貯蓄が消えていく。「3年以内」と焦ってやった結果がこの始末である。企業の設備投資が弱り、成長の見通しも失われ、銀行には不良債権が発生して、パニックの引き金ともなりかねない。

 結局、「どうする」については、成長率や物価上昇率を見ながら、経済状況に合わせて財政再建を進めていくという平凡な結論なる。あわせて、将来に備え、法人税も含む資産課税の体系を整えておいたり、タイミング良く消費税を上げられるよう条件を詰めておいたりすることも大切である。

 現実には、経済状況に関係なく、いつまでには消費税を引き上げるといった「計画経済」が繰り返されているし、歳出の状況も、税収の見通しも隠蔽・仮装され、財政赤字の恐怖感を煽ることばかりに熱心である。政治や有識者は、これに踊らされるばかりだ。日本経済の最大の問題は何かと言えば、これは本の著者の松田さんの主張とも共通するのだが、やはり、ガバナンスであろう。

(今日の日経)
 株価動揺、商品も下落、欧州危機の収束見えず。量販店・地デジ特需の反動大きく。電力の言い値追認のツケ。イエメン大統領帰国。タイ、内需拡大策に着手。スマフォ・蓋を開ければ日本製。ニュートリノ光より速い。東北新幹線が徐行運転を解消。

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入るを計りてという基本

2011年09月23日 | 経済(主なもの)
 所得増税は1年先送りにするらしい。経済状況からすれば、当然のことだ。日経は、9/17の社説で「増税から逃げられない」としていたが、どう評価するつもりかな。「先送りするな」と批判でもするかね。自身の経済観をもたず、財政当局の空気を読むだけでものを書くから、こんな体たらくになる。

 もっとも、筆者も、9/15に「復興増税は2013年度からとすべき」と書いておきながら、日本はできまいとしていたから、おみそれしたと言うべきかもしれない。まあ、合理的に経済運営を考えるならば、こうなるのだが、日本の政治が合理的な選択をしたのは驚きということだ。

 毎日によれば、タバコ増税で年間2000億円を確保すると、所得税の定率増税の幅は5.5%から4%に圧縮できるらしい。更に、2011年度に予定していた相続増税の年間2800億円を回すことにすれば、幅は2%にまで圧縮できるのではないか。そうすると、所得増税は、まったく必要がなくなってしまう。なぜって? 自然増収があるからだ。

 民間調査機関の予想では、2012年度は2%程度の経済成長が見込まれている。経済が成長すれば、所得も伸びるわけで、所得税の2%増収は堅い。所得増税を先送りして、1年後に2%上げようとしたとき、既に2%の自然増になっているのだから、「もう増税はいらないのではないの?」と考えても、ちっとも不思議ではない。

 このように、税の自然増収を考慮すると、増税の必要性は随分と薄らいでしまう。だからこそ、日本の財政当局は、税収見通しを絶対に示さないで、財政計画を立てようとするのである。「入るを計って、出るを制す」ということが言われるが、入るの部分を隠蔽するのだから酷いものである。

 代わりに出してくるのが「国債44兆円枠」である。常識的には、税収の足りない部分が借金だから、借金の大きさを抑えておけば、税収も把握したつもりになるが、それが狙い目だ。実は、国債枠は、「埋蔵金」の出し入れで容易に操作できてしまう。例えば、2011年度予算は、税収が前年度より3.5兆円も増えているのに、国債発行は44兆円のままだった。

 これは、埋蔵金を減らすことで実現した。「税収が3.5兆円も増える」なんて説明したら、国民の財政破綻への恐怖感が薄らいでしまう。埋蔵金を減らす際には、「もう底を着いた」という情報が流されたが、震災の補正予算で、次から次に出て来ているのは、御存知のとおり。そもそも、債務管理は、借金と資産取崩しを合わせて行うのが会計の常識である。日本の新聞と有識者の無知につけ込み、借金だけをプレイアッブしているのだ。 

 それでは、2012年度の自然増収は、どのくらいになるのか。本コラムでは、2010年度は2.3%成長で税収増が2.8兆円だったことから、2011年度は震災の影響で横ばい、2012年度は2%ちょっとの成長で、約2.5兆円と考えている。この数年は、リーマン・ショックからの回復期なので、成長率以上に税収は伸びるのである。

 これだけで、復興増税をする気なんて失せてしまうかもしれない。税収は、2007年度には51.0兆円もあり、2010年度の決算ベースでも、まだ41.5兆円なのだから、経済を順調に回復させるだけで、あと10兆円の増収が期待できる。国民がこれを知ったら、大いに安心するのではないか。むろん、それでは困る財政当局は、隠蔽・仮装に余念がない。

 財政当局は、41.5兆円の税収があった2010年度予算の税収見込みを、37.4兆円としていた。4.1兆円もの過少見積りである。これを、思いのほか成長率が高かったせいにできないのは、前年度である2009年度の税収は、決算ベースで、これより高い38.7兆円になっていたからである。

 こうしたことは、今年度も同様で、2011年度予算の税収見込みは40.1兆円なのだが、前年度の2010年度の決算数字である41.5兆円よりも少なくなっている。震災がなければ、今年度も大幅な見積り違いが生じていただろう。ちなみに、財務省のHPでは、いまだに、税収の推移のグラフが決算数字に差し替えられていない。2011年度が前年度より少ないという不自然さが知れてしまうためではないか。

 財政当局の人は、したり顔で、「入るを計りて…」と話し、歳出抑制の必要性を説くのだが、肝心の計り具合は、こんなものである。税収を的確に見積もるのは、財政運営のイロハなのだが、まったくできていない。これでは、経済状況に合わないデフレ財政をやってしまうのも当然であろう。日本の新聞や有識者も、自然増収くらい、わきまえてほしいものだ。

(今日の日経)
 所得増税は13年度からに1年先送り。NY株一時400ドル安。米金融緩和・リスク回避止まらず。限界示した米金融緩和策、動かぬ政治、打つ手縛る・矢沢俊樹。郵政株売却が検討項目に。ギリシャが追加財政再建策、市場になお不安。中小金融支援10兆円、リース料を補助。東北に地熱17万kW。大機・ユーロ危機・山河。経済教室・国債金融機関規制・河合美宏。

※復興増税は、宿題になっていた税制改正や政府保有株式の売却を実現する、財政当局の道具と化している。被災者のために、早く予算を用意しようという気持ちはあるのかね。
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殺し文句による財政の欺瞞

2011年09月22日 | 経済
 日本の財政当局の殺し文句は「子供達に借金を残すな」である。そんなことは誰もしたいと思わないから、非常に効果的である。そこで「増税が必要」と来るわけだが、経済にどれだけの負荷をかけられるかは、その時々の状況による。財政当局は、それを無視して、とにかく増税だと主張し、「論点のすりかえ」を行う。これがダマしのテクニックである。

 本当にしなければならない議論は、借金の是非ではなく、今の経済状況で、どの程度の増税が可能かを推計し、それを基礎に財政運営を決めることである。ところが、日本の財政当局に、そういうつもりは毛頭ない。次世代への罪悪感や財政破綻の恐怖感を植え付け、財政当局が与える増税案を、そのまま呑んでくれれば良いという方針なのだ。

 その証拠に、彼らは、本当の姿を示す補正後の財政規模を、説明の基礎にすることは絶対にしないし、税収の見通しを示すこともしない。前面に出してくるのは、いかようにも操作可能な「史上最悪の国債発行44兆円」である。こんな簡単なごまかしに、手もなく捻られる日本の新聞や有識者もどうかとは思うが。

 今日の日経社説は、その典型である。当初予算ベースだけを見て、財政悪化に歯止めがかからないとし、国債発行を44兆円に抑えることを当然とする内容だ。現実はどうかというと、9/17に書いたように、2010年度は、「決算」ベースで、9.6兆円も収支が改善している。予算は「予定」でしかないのだから、それで評価したって仕方なかろう。

 しかも、昨年度は、11月に円高対策の補正予算を4.4兆円追加して、そういう結果になったのだから、当初、財政当局は14兆円ものデフレ財政をするつもりだったことになる。これはGDP比で2.6%にもなるのだから、2010年度の成長率が2.3%だったことを踏まえれば、いかに無理なものだったかが分かる。実際、日本経済は、年度後半にマイナス成長になっているのである。

 また、国債44兆円枠にしても、2010年度決算を見れば、42.3兆円で済んでいることが分かる。2011年度予算では、この44兆円枠の形を維持するため、あえて、2010年度補正後より1.3兆円も国債費を多く積み込む操作をして「作った」ものなのである。これを基準にすることがいかに無意味が分かるだろう。現下の低金利を考えれば、今年度も国債費に大幅な不要が出るのは必定だ。

 このように、日本は、デフレとそれに伴う円高という高い代償を払いつつ、財政再建を行っている。こうしたことは、昨年度ばかりでなく、本コラムの特別版で指摘したように、2004~2006年度にかけても行われた。GDP統計の一般政府ベースで見て、GDP比で平均1%もの財政デフレをかけており、この時期の成長率は2%少ししかなかったのだから、財政がデフレの持続に大いに貢献していたことが分かる。

 火曜日の日経ビジネスO.L.では、「借金の是非」に関する論考に、多くのコメントが付けられていたが、こうした議論は虚しいように思う。「借金の是非」論は、「埋蔵金」なら良いとか、ムダ削減が先だとか、社会保障で若者が搾取されているとか、あらぬ方向に広がりがちである。そして、肝心の来年度の財政運営、すなわち、経済成長と財政再建をどう両立させるかの数量的議論は見えなくなってしまう。それは財政当局の思う壺なのだ。

 日本のオピニオン・リーダーは、お忙しいことだとは思う。原典に当たらず、財政当局が持ってくる出来合いの資料で論評を済ませたくなるのは分からないでもない。しかし、英エコノミストやFTは、ソブリン危機が言われる中でも、単に緊縮を訴えるのではなく、財政の「適量」を考えるだけの力量を持っている。日経は、日本経済の木鐸たらねばならない。こんな社説を書いた今の論説陣には猛省を求めたい。

(今日の日経)
 社名は新日鉄住金。EUの銀行の損失21兆円・IMF推計。きしむ株式・年金は売り手。外国人の国債保有急増・過去最高67兆円。円、最高値うかがう。社説・来年度予算こそ歳出抑制の正念場だ。被災学校・病院を土地信託で再建。東ガス・火力会社に出資。787が国内関連会社の収益に寄与。国債商品、相次ぎ下方修正。経済教室・東アジア直接投資・高阪章。

※ギリシャなどの小国分だけでも大きいね。※株式は売られ過ぎ。いかにリスクに対して機会利益を取りに行けないか分かる。※最高でも、たったこれだけ。※信託は事業費に収益を組み込める。※東電は火力を売って賠償に充てるべきだろう。買い手の有力候補は東ガスだ。こういう案はタブーなんだろうね。
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ギリシャを救う道と日本の経験

2011年09月21日 | 経済
 景気の「遅行指数」と言われるIMFの世界経済の見通しが出た。大幅な下方修正であり、「危険な新局面」だと言う。各国の経済運営の担当者は、当然、これを織り込んで政策を立てていく。「これは国内消費を大事にしておかないと危ないな」と考えるわけである。日本の財政当局以外は。

 米国のQE2は一時的に景気を押し上げだが、通貨安と資源高の副作用が自国の消費を削ることになり、元に戻ってしまった。景気を牽引していた新興国は、インフレ抑制のために引き締めを余儀なくされ、緩やかに減速している。こうして世界貿易が衰えれば、米欧の成長率が低下するのは避けられない。

 輸出に頼れないとなれば、成長を確保するには、内需がカギになる。日本では、子ども手当を削減し、年少扶養控除を廃止し、更に、所得税に復興増税をかけるようで、徹底的に家計の所得を落とし、消費を削減する路線に突き進んでいる。他方で、復興予算の方は、どれほどの実需に結びつくか分からない曖昧なものだ。

 欧州不調の震源地であるギリシャだが、緊縮財政を敷いたものの、経済がマイナス成長になり、目標としていた財政赤字のGDP比率が達成できない自体となっている。緊縮財政が成長を低下させて、更なる緊縮財政を必要にさせる悪循環にある。緊縮財政が財政を再建しないという見本のようなものだ。こんな実例も、日本人には、目には入らないのだろうね。

 日本もかつて、財政赤字に苦しみ、外国から援助を受けていた時代があった。戦後まもなくの頃である。これに対する処方箋は、ドッジ・ラインという大幅な緊縮財政であった。ところが、これは復興への片面でしかなかった。ドッジ・ラインによる不況から日本を救ったのは、朝鮮戦争に伴う特需である。大規模な需要の発生が日本を復興させたのである。

 本当にギリシャを救おうとするのであれば、緊縮財政をさせると同時に、それによって減少する需要を補うため、EUはギリシャに輸出需要を与えるなり、観光収入を与えるなりしなければならない。生活費を切り詰めさせるだけでなく、働き口を与えて稼がせなければ、借金を返させることはできないのだ。

 ここが実際の経済政策の難しさである。教科書経済学では、緊縮財政をするたけで、それを補完するように、自然と民需が国内から出てくることになっているが、現実は違う。設備投資は、需要を見ながらされるものである以上、需要を外部から与えなければ、設備投資を引き出し、成長を高めることは難しい。

 だからこそ、2000年代に入って新興国が勃興したのは、米国が大幅な貿易赤字を出して、世界に消費需要を提供したからである。さかのぼれば、中国が、韓国・台湾が、そして、日本が高度成長へと離陸できたのは、いずれも輸出需要をつかみ、設備投資を呼び起こし、それをスターターにして内需を拡大していったからである。

 現実にギリシャが求められているのは、縮小均衡の道である。均衡点は、どれほど景気が悪くても、生きていくには消費を落とせないほどのレベルになるから、本当に底がしれないし、もの凄い痛みとなる。1930年代の米国の大恐慌のような悲惨な社会が再現されることになるのではないか。

 経済学は、大恐慌に対する無力さに直面し、金利と賃金を下げれば設備投資が復活するという理論を脇に置き、需要を管理するという政策へと舵を切った。平時には不要だが、社会をリスクが覆っているときには、需要の提供が欠かせないというのが歴史の教訓なのである。その教訓を活かして高度成長を果たした日本が低迷を続けているのは、教訓を忘れたということなのである。

(今日の日経)
 IMF予測・米欧、成長率1%台に、危険な新局面。きしむ株式市場・新興国でも停滞。欧州不安でアジア通貨安。ギリシャ・赤字削減策を再表明へ。概算要求基準を閣議決定。米企業の自社株買い急増、膨らむ手元資金は投資には回らず。中国商業銀の融資が大量焦げ付き。中国製あふれ輸入規制。地球回覧・米地方のギリシャ化。軽リッター30キロ発進。半導体の先行き不安て投資抑制。経済教室・毅然だけでは・添谷芳秀。

※概算要求基準には経済危機対応・地域活性化予備費が9600億円も含まれている。これを復興財源に充てれば、10年で9.6兆円にもなる。これが復興増税ができなかった場合の調整財源だろう。※添谷先生には、求めるだけでなく、中長期戦略を示してもらいたいなあ。
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