設備投資がリスクに強く影響される以上、経済運営においては、追加的な需要の管理が極めて重要になる。金利でコントロールできるのは教科書の中だけのことで、実際の経済データに通暁する者は、必ず、そういう結論に達する。これが分かるのは、理論と経験を併せ持つプロの世界なのだ。
追加的あるいは限界的な需要の代表選手は輸出である。バブル崩壊後、設備投資の下落が底を打った1994年から、リーマン・ショック前の2007年まで、13年間に渡って、日本の設備投資は、2四半期前の輸出にパラレルに動いてきた。すなわち、この間の景気予測は、極めてシンプルな手法で、正確に行うことができたのである。
ポイントは、輸入を差し引いた純輸出で見るのではなく、単純な輸出で見ることである。日本経済は、企業が輸出に合わせて設備投資を行い、生産が高まることで、資源などの輸入が増大し、純輸出が決まるという構造にあるからだ。
一つ注意がいるのは、リーマン・ショックでは、タイムラグが縮んだことがある。通常は、輸出と整備投資の間には、2四半期のタイムラグなのだが、リーマン・ショックの際は、輸出激減の危機が企業には容易に予想できたためか、設備投資は、輸出とほぼ同時に激減している。なお、底打ちは、やはり2四半期後だった。
第二の追加的需要の項目は、住宅投資である。2四半期前の住宅投資は、縁の下の力持ち的な影響を設備投資に与えている。強い影響力を持ったのは、1997年のハシモト・デフレ前の回復期であり、設備投資の底入れや押し上げに、輸出以上の力を発揮している。ただ、その後は、わずかずつ減りつつ、安定を保つのみであった。その重要性が再認識されたのは、耐震偽装問題で激減した2007年のときである。
第三は、公共投資である。ハシモト・デフレ前は、設備投資に影響力を持っていたのだが、小渕政権が倒れた後は、ひたすら足を引っ張るだけであった。以上の輸出、住宅、公共三つを単純に足し合わせ、半年ずらして、設備投資に並べると、あら不思議、ほとんど同じ波形を描く。設備投資が追加的な需要で決定されることの実証がされた瞬間だ。
こうしてみると、小泉政権下で、公共投資を抜くのを1年ほど遅らせていればと悔やまれる。輸出の急増と相まって、設備投資から消費に波及し、それが更に設備投資を呼ぶという好循環が起こって、デフレから脱出していただろう。まあ、そうなると、設備投資が追加需要で決まるという実証とは、くい違うテータが出てきただろうが。
こうして見れば、昨日、KitaAlpsさんがコメントしてくれたように、経済運営で財政が極めて重要なことが理解できよう。特に、財政は、需要項目として重要なだけでなく、輸出と住宅投資にも影響を及ぼして、間接的にも経済を動かすことになる。
日本は、欧米と比較して歴史的に低金利にあり、緊縮財政をしたときのデフレ効果による実質金利の上昇を、金融政策でカバーし切れない。すなわち、緊縮財政をすると、直接に需要を減らすだけでなく、円高を呼んで輸出を減らし、経済に打撃を与えてしまう。計量経済学的な実証は難しいが、緊縮財政の後に円高に見舞われることは、何度も繰り返されていて、とても偶然とは思われないのである。
マンデル・フレミングモデルといって、財政出動をしても、通貨高になって、輸出減と輸入増により効果が相殺されるというものがあるが、さしずめ、日本では、緊縮財政によって、通貨高になり、景気が悪化して、財政再建の効果が相殺されるというモデルが成り立つのではないだろうか。
まあ、財政による需要の増減について、計量すら行わない日本の財政当局に、経済運営の技法を教えたところで、意味はないのだがね。ハシモト・デフレ前後、消費増税の駆け込み需要による住宅投資の急増急減も、経済には大打撃だったのだが、まったく反省もないから、いまだに、そうした変動を緩和しようという意識すらない。しかし、経済データは、「需要は経済に影響しない」という財政当局の観念の誤りを冷厳に示しているのである。
(今日の日経)
海外M&Aの隆盛期に、3兆円に倍増。都庁舎の電力を東ガスから3割。欧州危機対策を独が可決。医療費、09年度3.4%増の36兆円。年金減額の見送り累計5.1兆円。地方公務員削減を休止。来年度概算要求・震災復興3兆円超に。韓国・信用収縮の恐れ、伊仏が借り換え応じず。エリーパワーが川崎に新工場。経済教室・地域再生・林宜嗣。
追加的あるいは限界的な需要の代表選手は輸出である。バブル崩壊後、設備投資の下落が底を打った1994年から、リーマン・ショック前の2007年まで、13年間に渡って、日本の設備投資は、2四半期前の輸出にパラレルに動いてきた。すなわち、この間の景気予測は、極めてシンプルな手法で、正確に行うことができたのである。
ポイントは、輸入を差し引いた純輸出で見るのではなく、単純な輸出で見ることである。日本経済は、企業が輸出に合わせて設備投資を行い、生産が高まることで、資源などの輸入が増大し、純輸出が決まるという構造にあるからだ。
一つ注意がいるのは、リーマン・ショックでは、タイムラグが縮んだことがある。通常は、輸出と整備投資の間には、2四半期のタイムラグなのだが、リーマン・ショックの際は、輸出激減の危機が企業には容易に予想できたためか、設備投資は、輸出とほぼ同時に激減している。なお、底打ちは、やはり2四半期後だった。
第二の追加的需要の項目は、住宅投資である。2四半期前の住宅投資は、縁の下の力持ち的な影響を設備投資に与えている。強い影響力を持ったのは、1997年のハシモト・デフレ前の回復期であり、設備投資の底入れや押し上げに、輸出以上の力を発揮している。ただ、その後は、わずかずつ減りつつ、安定を保つのみであった。その重要性が再認識されたのは、耐震偽装問題で激減した2007年のときである。
第三は、公共投資である。ハシモト・デフレ前は、設備投資に影響力を持っていたのだが、小渕政権が倒れた後は、ひたすら足を引っ張るだけであった。以上の輸出、住宅、公共三つを単純に足し合わせ、半年ずらして、設備投資に並べると、あら不思議、ほとんど同じ波形を描く。設備投資が追加的な需要で決定されることの実証がされた瞬間だ。
こうしてみると、小泉政権下で、公共投資を抜くのを1年ほど遅らせていればと悔やまれる。輸出の急増と相まって、設備投資から消費に波及し、それが更に設備投資を呼ぶという好循環が起こって、デフレから脱出していただろう。まあ、そうなると、設備投資が追加需要で決まるという実証とは、くい違うテータが出てきただろうが。
こうして見れば、昨日、KitaAlpsさんがコメントしてくれたように、経済運営で財政が極めて重要なことが理解できよう。特に、財政は、需要項目として重要なだけでなく、輸出と住宅投資にも影響を及ぼして、間接的にも経済を動かすことになる。
日本は、欧米と比較して歴史的に低金利にあり、緊縮財政をしたときのデフレ効果による実質金利の上昇を、金融政策でカバーし切れない。すなわち、緊縮財政をすると、直接に需要を減らすだけでなく、円高を呼んで輸出を減らし、経済に打撃を与えてしまう。計量経済学的な実証は難しいが、緊縮財政の後に円高に見舞われることは、何度も繰り返されていて、とても偶然とは思われないのである。
マンデル・フレミングモデルといって、財政出動をしても、通貨高になって、輸出減と輸入増により効果が相殺されるというものがあるが、さしずめ、日本では、緊縮財政によって、通貨高になり、景気が悪化して、財政再建の効果が相殺されるというモデルが成り立つのではないだろうか。
まあ、財政による需要の増減について、計量すら行わない日本の財政当局に、経済運営の技法を教えたところで、意味はないのだがね。ハシモト・デフレ前後、消費増税の駆け込み需要による住宅投資の急増急減も、経済には大打撃だったのだが、まったく反省もないから、いまだに、そうした変動を緩和しようという意識すらない。しかし、経済データは、「需要は経済に影響しない」という財政当局の観念の誤りを冷厳に示しているのである。
(今日の日経)
海外M&Aの隆盛期に、3兆円に倍増。都庁舎の電力を東ガスから3割。欧州危機対策を独が可決。医療費、09年度3.4%増の36兆円。年金減額の見送り累計5.1兆円。地方公務員削減を休止。来年度概算要求・震災復興3兆円超に。韓国・信用収縮の恐れ、伊仏が借り換え応じず。エリーパワーが川崎に新工場。経済教室・地域再生・林宜嗣。





