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経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

9/29の日経 ゆがんでいるのは日経の見識

2023年09月29日 | 今日の日経
 今回の「年収の壁」助成金は、人手不足の中、労働力を確保し、供給力を増強する産業政策と位置付けられる。厚労省の予算だから、すべて社会保障というわけではない。企業支援に予算を投入するのだから、日経が文句をつける筋合いではない。供給力を増強する設備投資の助成金について、「特定の者だけがもらうから不公平」と批判したりしないだろう。

 負担に応じた給付は、年金の社会保険の原則の一つではあるが、必要に応じた最低限の給付の保障もまた原則である。専業主婦の第3号被保険者制度は、婦人の年金権を確立するために作られた。廃止すれば、収入のない主婦は、基礎年金が半分になる。「壁」の不都合を正すのに、年金権を侵害してどうする。

 「壁」を抜本的に改めるなら、専業主婦に限らず、低所得者全般を助成することで、公平を図るのが正しいやり方だ。大して予算が必要なわけではなく、同じ勤労者なのに、非正規では厚生年金に入れない差別をなくすこともできる。そして、デフレ脱却で税収が急増して、還元が必要な状況にある。

 税収の還元は、インフレが低所得層を痛撃しているのだから、これを対象とし、税より社会保険の負担が重いのだから、社会保険料に連動した給付をすべきである。給付と言っても、雇用主に社会保険料を取らないでもらい、その分の助成金を社会保険料として収めてもららうだけだから、税制改正も要せず、事務負担も少なく、迅速に実現できる。

 7月の人口動態速報の出生は、前年同月比-2.3%であり、減少は緩んでいるものの、1-7月期は、合計特殊出生率だと過去最低だった昨年を下回る1.22人のレベルだ。婚姻も、前年の同期と比べ-5.5%の低さになっている。若い低所得層の社会保険料の負担を軽減し、結婚と出産の可能性を高めることも急務である。逆に、公平と称して専業主婦の負担増を図ったりしたら、ますます少子化を進めかねない。

(図)



(今日までの日経)
 社説・社会保障ゆがめる「年収の壁」助成金。企業、蓄える賃上げ力 労働分配率49年ぶり低さ。

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「壁」問題の本質

2023年09月27日 | 社会保障
 「106、130万円の壁」が現れるのは、社会保険料は一律の賦課をしていて、専業主婦が年収106万円を超えたら、いきなり、賦課対象になるからだ。その本質は、低所得にも一律に賦課している無理さかげんがある。30%の賦課は図の青線で、100万円のところの縦棒が「壁」ということになる。

 所得税は、そんな無理をしないから、課税最低限を設けている。これを100万円とすると、そこを起点に徐々に税額が増しているのが分かるだろう。実は、課税最低限に税率を乗じた額、ここでは30万円を定額給付するのでも、税額はまったく同じで、課税最低限と定額給付は、同じものだということが分かる。例えば、10万円の定額給付の制度を設けると、年収100万円以下の者には、10%の消費税を課さないのと同じになる。

 「壁」にしないためには、賦課対象となる100万円を起点に、段階的に重くしていけば良い。収入増の1/2だけ重くすると緑線になる。収入増の全額を召し上げる場合は、坂は点線のように急になり、軽課の財源は少なくて済むものの、働く意欲を萎えさせてしまう。

 「壁」をなくすには、専業主婦の保険料を負けてやらなければならないが、公平を言うなら、低所得者全員を負けるというのが正しい方向だ。勤労者皆保険を実現するには、低所得者に対象を拡げる以上、避けては通れない課題である。財源は要るにせよ、他方で、勤労者皆保険は人口増と同じだから、年金財政を改善する効果もあるし、若い低所得者の負担軽減は、少子化の緩和にもつながる。

 税収増の還元なら、ここしかないだろう、岸田さん。選挙ためにもね。

(図)



(今日までの日経)
 経済対策、成長力に重点 首相が策定指示「税負担など軽減」。成長底上げ、企業減税が軸。国民・玉木代表「所得減税を」。「誰でも通園」足りぬ保育士。

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「壁」問題と一律賦課の無理さかげん

2023年09月26日 | 社会保障
 「106、130万円の壁」について、社保審年金部会の議論が始まったが、説明資料を眺めると、あまりやる気を感じられないね。浮かんでくるストーリーは、「対象の人は限られるし、損得での誤解もあるし、制度を変えようとすると、公平性などで難しい問題が出てくるから、弥縫策で勘弁してくれ」というところかな。そして、最後に英国の例を出し、「本気でやるなら、こうなるが、再分配の強化なんか、政治はできないでしょ」と語っているかのようだ。

………
 「壁」は、低所得層にも一律に賦課することの無理さかげんの一つの断面である。なにせ、年金や医療等の社会保険料の計31.65%に、消費税が10%課された上に、所得税・住民税が1.5%程かかってくる。低所得で、こんなに取られると、生活は苦しいし、賦課から逃れようとするのも無理はない。こうした一律の重い賦課は、デフレ経済で賃金が上がらない中、引き上げを重ねてきた結果である。

 所得税は、一定の所得までは課税されず、超えた部分にだけ課税される。低所得に対して根っこから一律に税を取るのは過酷だと分かっているからだ。ところが、社会保険料や消費税は、それをやる。消費税なんて、財政当局は、定額還付を創設して、過酷さを緩めようとしたのに、政治が食料を低率にする所得一律を選択してしまった。ガソリンや電気代の補助も一律だ。所得税のようにしたり、それと同値になる定額還付をしたりすれば、そもそも「壁」は存在しなくなる。その一例が英国というわけだ。

 英国のようにするには、年金制度の大改革が必要になるが、本コラムが1/1で示したように、社会保険料に連動させて税を還付するなら、難しくはないし、勤労者皆保険の実現などの波及効果も大きい。財源はいるが、1.1兆円くらいのものだ。保険料減免ではないので、給付を調整する難しい問題も生じない。国年・国保の加入者との公平性も、所得チェックをした上で軽減するという方向で対処すれば良い。

(図)


………
 いまや、補正予算をやめさえすれば、財政が「黒字」になるところに来ている。脱デフレで税収が伸びる中、経済政策として再分配制度を作らなければならない時期でもある。アベノミクスでは、円安で輸出と設備投資を伸ばしたが、税と社会保険料で可処分所得を削り、消費を抑制して成長率を低くした。若年層の生活の苦しさで少子化も進む。成長戦略としても、少子化対策としても、再分配は必要である。年金官僚に狭い枠の中で「壁」の解決策を作らせようとしたって無理なんだよ。


※図の解説
 「手取りが減らないようにしろ」というお題なのだから、「壁」右のレ状の溝をどうやって埋めるかという制度設計になる。面倒なのは、保険料の減額で対処すると、「給付も減らすのか」という厄介な問題が出てくる。最も簡単な回避法は、補助金で対処するもので、いわば、「つなぎ」の暫定策の恒久化である。年金官僚には、暗に「保険料の減額でやれ」と指示しているようなものなので、頭を抱えてしまうのだ。つまり、政治が悪い。

 レの溝を埋めるピンク線の引き方には、いろいろある。本コラムの提案は、適用拡大の対象企業が限定される現状を前提に、年収が増えると、その半分は手取りが増えるようにしたものだ。減らないようにするだけなら、130万円以上の線の傾きを水平にする。働く意欲は萎えるが、財源は少なくて済む。また、適用拡大の対象を全企業にすると、屈折点は106万円に移り、必要な財源は3割くらい減る。つまり、政治の判断だ。

 「壁」の補助金は、設備投資の補助金といっしょで、供給力を確保する産業政策の一つと位置づければ、そもそも、社会保険の負担と給付の公平性の問題に関わらずに済む。産業政策は、補正予算で毎年措置されているから、財源も確保しやすい。産業政策の補正予算は、事実上、恒久化しているので、「壁」の補助金だって、名目では「当分の間」として、実態的に制度化すれば良いのである。つまり、政治の問題だ。

※日経の論評
 日経は、「保険料を負担せずに給付を受けるのは社会保険の原則に反する。少額でも働いて収入を得たのなら、それに応じた保険料を納めるのが本来の姿」とするが、社保審年金部会の説明資料を見てごらんよ。ドイツも、英国も、低所得者からは保険料を取らないようにしている。こんな理屈は、不公平感情を煽って負担増へと導く手口でしかない。

 まさしく、「年収が106万円に満たない人にも等しく保険料負担を求めるとすれば大きな反発は避けられない」のであって、「より公平で納得感のある形で、持続可能な抜本改革を実現させる」には、再分配の制度化しかないわけだよ。その意味で、「つなぎ」としても、給付が実現する意義は大きい。

 国民も、「期待しない」なんて、はすに構えてる場合じゃない。もっとも、首相だって、「税収増、国民に還元」としている割に、自分がやっている「つなぎ」の重要な位置づけが分かっていないようだ。再分配を強調して、制度化するのだと言えば、人気が出るだろうに、みすみす逃している。


(今日までの日経)
 首相「賃上げ・投資で好循環」 半導体の国産化支援。年収の壁解消、最大50万円助成 抜本改革へ「つなぎ」。首相「税収増、国民に還元」 経済対策で減税強調。「コロナ貯蓄」近づく終焉 総額59兆円、消費下支え期待。注文の多い料理店、いつまで・滝田洋一。

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緊縮速報・ガソリンにバラマキつつも着実に緊縮

2023年09月24日 | 経済(主なもの)
 4-6月期の資金循環が公表になり、一般政府の資金過不足を、4四半期移動合計の名目GDP比で見ると、前期より+0.1改善して-3.1%となった。ガソリンと電気ガスの補助金は、既に6兆円超が使われ、年末までの延長には更に1.3兆円がいる。そんな中でも、財政赤字は着実に縮小しているのだから、これがなかったら、どれだけ急速に締まっていたことか。安定的な需要管理の上でも、やめるにやめられないのが悩ましい。

………
 改善の要因を部門ごとに見ると、中央が+0.3、地方が横ばい、社会保険が-0.2という内訳だ。社会保険は下がったと言ってもGDP比+1.1%もの黒字をキープしており、ここでのマイナスがなければ、もっと高かったわけである。社会保険に関しては、2023年度の年金給付は+2.3%、保険料は+4.3%と見込まれており、このまま収支が悪化する心配はない。あとは、中央の収支がどれだけ改善して来るかである。

 税収については、4-6月期は、納税が本格化する前で、前年度に大きな増収があった分、還付が多くなっており、前年同期比では、むしろ、少なくなっている。もちろん、名目成長率が高く、企業業績見通しも伸びているので、これから、昨年度を大きく超えていくのは必定だ。今のところ、一般会計の税収は、前年度比+4.9%の74.5兆円で、当初予算より5.2兆円の上ブレと見ている。

 他方、支出については、秋に編成される補正予算の規模次第である。昨年は、予備費を除いて24兆円であり、3.5兆円が純粋のコロナ対策であったから、昨年並みなら20兆円規模ということになる。そのうち、物価対策は、昨年が7.8兆円であったので、同じくらいが見込まれよう。昨年は子育て関係が0.2兆円と少なかったので、今後、少子化対策を本格化させる中で、このあたりをどうするかも課題だ。

 こうして見ると、20兆円規模という巨額の補正を組んでさえ、税収増で緊縮がすすむというのが現状だ。インフレ下の財政は、デフレのときとは違ったやり方が求められる。厚労相が社会保障の財源として「税収増を活用」すべしというのは、自然な成り行きだ。補正で出来るからと、ガソリンへの巨額の補助金をやめられない一方、若年層の負担軽減ができずに、少子化を止められない現状を何とかしなければならない。

(図)


………
 キシノミクスは、無手勝流でデフレ脱却を果たしてしまった。脱却したと宣言すれば、日銀は無闇な金融緩和をやめられる。そうすれば、円安にならずに、ガソリンや電気代の補助金をやめられる。そうして、補正予算を大きく減らし、その半分で良いから、自然増収を基に、若年層への新たな給付を打ち出したら良い。そういう前向きな政策を打ち出せば、支持率も上がるというものである。 


(今日までの日経)
 半導体・蓄電池など生産、長期で税優遇。「年収の壁」130万円超でも2年まで扶養に。日銀、早期修正観測けん制。「年収の壁」に保険料減免案 「公平性欠く」指摘相次ぐ。炊事・育児など無償の家事、賃金換算で年143兆円。中国、利下げでも短期金利上昇。

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9/20の日経

2023年09月21日 | 今日の日経
 8月の日銀・実質輸出入が公表され、輸出の7,8月の前期比が+0,4、輸入が-0.2となった。輸出は一進一退で、輸入は異様な高まりから徐々に正常化している。輸出が注目されるのは、景気回復の起点になるからである。金融緩和に拘る人がいるのも、円安による輸出がないと立ち行かないという感覚のせいだろう。しかし、景気を回復させるだけの輸出能力を、日本は今でも保持しているのだろうか。輸出が得られないのなら、円安も金融緩和も弊害ばかりとなる。

(図)



(今日までの日経)
 医療費の伸び抑制/少子化対策の財源。基準地価回復、地方に波及 全国4割超で上昇。気がつけば米国の一人勝ち。バス運転手、30年度3.6万人不足 都市部も相次ぎ減便。厚労相、社会保障の財源「税収増を活用」。農家が8割減る日。「しっぺ返しインフレ」英襲う。
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税収の上ブレと還元の方策

2023年09月17日 | 経済
 証券各社から9月の企業業績見通しの公表があり、円安を背景に上ブレしている。法人税収は、企業業績に連動するので、2023年度も上ブレが見込まれる。経常利益と同様に+8.7%の伸びとすると、予算からは1.6兆円の上ブレだ。他の税目も名目GDPに準じて伸びると、全体では、5.2兆円の上ブレになる。GDP比で1%近いから、こうした予定外の緊縮は、成長にも影響を与えることになる。正直、日銀の金融政策より影響は大きいように思うが、こちらは、全然、関心を呼ばない。

 予算での税収の見積もりは、従来から控えめで、景気回復時には乖離が拡がり、見えない緊縮となって、成長にブレーキをかけてきた。乖離は、コロナ禍以降、特に大きくなっている。2021年度は9.6兆円、2022年度は5.9兆円、そして、2023年度は、見込みではあるが、5.2兆円といった具合だ。厚生年金の保険料の収入にも、同様の傾向があり、予算と決算の乖離を見ると、2021年度が1.6兆円、2022年度が1.4兆円、次いで、2023年度は、1.1兆円になる見込みである。

 そうすると、好循環によって成長を高めるには、どれだけ還元するかが経済政策上の課題になってくる。とりあえずは、秋に予定されている補正予算をどうするかだ。昨年は、予備費5兆円を除くと、23.2兆円と大型で、物価対策6.7兆円、コロナ対応3.5兆円が含まれていた。さすがに、コロナ対応は必要性が乏しくなっているので、規模は縮小せざるを得まい。すると、歳出面でも、財政は締まることになる。還元すると言っても、兆円単位となると、なかなか容易ではない。

 税収の伸びを還元するのなら、正攻法は、減税なり保険料の軽減だ。社会保険料には定額還付がないので、「年収の壁」が邪魔をし、現役世代は膨張する負担に苦しんでいる。消費増税の際、軽減税率を選ばなければ、還元の制度インフラができていたようにも思うが、いまさら言っても始まらない。デジタル行政改革も結構だが、デジタルで作るべき制度インフラの構築が必要だ。政治課題に上げるべきは、それなのだが、結局、ガソリン代や電気代の補助制度で終わってしまいそうだ。

(図)



(今日までの日経)
 企業、4~7%経常増益 証券3社予想上振れ。医療保険、現役負担4割増 10年超で膨張。企業の稼ぎ、家計に届かず。第2次岸田再改造内閣 電気・ガス補助、継続方針。「年収の壁」問題の視点・近藤絢子。

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9/13の日経

2023年09月13日 | 今日の日経
 7月の毎月勤労統計は、常用雇用が前月比+0.1、現金給与総額が-1.2だった。当然、雇用×給与も下がったが、2023年度に入ってからの蓄積で水準としては高く、「屈折して上昇」の範囲内である。7月の消費も似たような状況なので、双方が勢いを保って伸びてゆけば、景気回復は本物で、デフレ脱却となり、マイナス金利も解除である。もっとも、お得意の可処分所得の削減をしなければである。

 日経はガソリン補助の歪みを報じたが、問題の本質は、実質的な所得の補填策が比例型になっていることだ。定額型の再分配のインフラがないから、こうなっている。比例型の典型が年金の社会保険料であり、定額の還付をして、実質的な課税最低限を設けることが必要になっている。記事のとおり「コロナ禍後の正常化の過程では低所得者向けの給付金への切り替えといった支援対象の絞り込みが欠かせない」のである。

(図)



(今日までの日経)
 輸入小麦価格11%引き下げ。ガソリン消費、地方で伸び ゆがむ「受益と負担」。NY原油急伸、迫る90ドル。植田総裁発言で長期金利0.705%。建設費、軒並み最高 東京8月。

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4-6月期GDP2次・名目消費は屈折したのか

2023年09月10日 | 経済
 4-6月期GDPの2次速報では、実質成長率が年率+4.8%と大きめの下方修正がなされた。設備投資が前期比-0.1%、家計消費(除く帰属家賃)が-0.4%と内容が良くない。日本の景気は輸出次第というのが通例だが、今回に限っては、名目とは言え、消費が主導する珍しい形である。今後は、どう動くのか。もしかすると、構造に変化があった可能性もある。今日は、期待も込めつつ、眺めてみよう。

………
 GDPは実質での分析が多いが、名目で消費を眺めて見ると、下図のとおり、1997年の橋本デフレから2013年のアベノミクスまでの15年程は、年率0.14%のトレンドにあったことが分かる。それがアベノミクスで、年率0.65%のトレンドに加速した。実質だと、反対に年率0.80%から0.25%に減速しているのがミソで、名目消費のトレンド以上に物価のトレンドが上昇していた。

 そして、2023年1-3月期と4-6月期は、このトレンドを飛び出している。つまり、トレンドが屈折して加速したかもしれないのだ。消費が増えていくためには、可処分所得が増えているという裏付けが必要である。アベノミクスでの屈折も、可処分所得の向上があったことが図から読み取れよう。足下の雇用者報酬は、4-6月期が前期比+1.1%と高かった。コロナ後の消費増の勢いが雇用者報酬へ映った形である。

 あとは、雇用者報酬と消費がともに高い伸びで並進してもらえれば良いということになる。4-6月期の消費は前期比-0.4%だったが、高過ぎた1-3月期の反動の範囲内にも見える。次の7-9月期が大事なところだが、7月の統計局CTIは4-6月期より+0.5と心強い。8月の景気ウォッチャーの現状の「方向性」は前月比-0.8と前月のプラスを戻したが、「水準」では小売りが高まっているところだ。

 アベノミクスの失敗は、雇用者報酬が伸びているのに、税と社会保険料の負担増をやって、可処分所得を抑制し、消費を伸ばせなかったところにある。財政を不用意に締めないことが肝要だ。その点、4-6月期GDPでは、政府消費と公共投資がともに実質で前期比0.0となっており、成長にまったく貢献していない。公的需要の寄与度は限られるとはいえ、波及もするのだから、基本をゆるがせにしてはいけない。

(図)


………
 物価高は、必需品を中心に、名目の消費を強制的に増やす側面がある。それで売上げが伸びれば、賃金を上げられるようになり、上がった賃金が今度は消費を増やすことになる。7月の毎月勤労統計では、常用雇用×現金給与総額が前月比-1.1と下がったものの、水準としては5月の高い伸びが効いている。夏の雇用者報酬と消費の伸びがクリアできれば、景気回復は本物だ。のちに転換点はここだったと分かるだろう。かつてない内需からの成長加速が実現するのか興味は尽きない。


(今日までの日経)
 半導体支える黒子に死角 買収リスク。コロナ特例終了、8月の企業倒産、最大の54%増。旅行収支最大、3368億円。GDP年4.8%増に下げ 4~6月改定値。冷めぬ景気、遠のく利下げ。海外と金利差拡大22年ぶり 147円後半。サウジ、原油減産継続。

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9/6の日経

2023年09月07日 | 今日の日経
 デフレ脱却には賃上げが必要で、それには労働生産性の向上のためにリスキリングだなんて言われる。こういう言説は、サービス業の生産性がどういうものか分かっていないように思う。先日、日経は「都心ホテル、料金急上昇」と報じたが、当然、付加価値が増して、労働生産性が向上しているはずだ。人数や拍数という物的生産性が変わっていなくても、付加価値はカネで測られるからである。 

 ホテルの料金が急上昇したのは、インバウンドという輸出の増加による。デフレ下の日本では、せっかく製造業が輸出で稼いでも、税や社会保険料の負担増で消費を減らしたため、サービス業の生産性が上がらなかった。いわば、政策的にサービス業の生産性向上を阻害していたようなもので、成長率も高まらなかった。物的なものしかイメージできない成長戦略は虚しいものだ。

 賃上げは、供給ができれば売上が取れる状況において、供給力を確保しようとして生じる。目下、ホテルでは、労働力が十分に確保できず、部屋数を用意できないので、高い部屋を売ることが行われている。これこそがサービス業における生産性向上だ。4-6月期の法人企業統計を見ると、人件費が伸びているが、それ以上に売上が伸びて、比率は下がっている。売上を抑制しない政策を取ることがポイントになる。

(図)



(今日までの日経)
 市場予測と会社想定の差額、主要企業8割で上振れ。概算要求の目玉変われど 例年似た内容。未婚率、年収で格差4倍。「医師不足」は本当か? 数は先進国並み、地域・科に偏り。文理横断教育の必要性 大学共通テスト前倒しを。中国「暗黙の保証」のツケ 融資平台、債務2000兆円に。

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キシノミクス・消費のポジティプサプライズ

2023年09月03日 | 経済(主なもの)
 今回の景気回復の焦点は、名目であれ、消費が伸び、売上げが増し、賃金も上がる循環になるかである。7月の商業動態・小売業は、前月比+2.3と、ここ数か月の頭打ちを抜ける伸びとなった。インバウンドのせいか各種商業が伸び、衣服等も強く、飲食も値上げに付いて行っており、燃料の高さは値上げのせいだろう。サービスが好調なのは分かっているので、消費の強さは間違いなく、ポジティブなサプライズだった。 

………
 7月の鉱工業生産は前月比-2.1となり、前月のプラスを戻す形であり、基調判断が下方修正されたように、一進一退の状況だ。ただし、8,9月の見通しは+2.6と+2.4であり、期待が持てるものだ。資本財については、8,9月を見通しても、水準が下がるものの、建設財と消費財については、水準を上げる動きとなる。円安でも輸出が停滞する中、内需の財で伸びを確保したいところである。

 7月の労働力調査は、就業者が前月比-10万人だったが、前月の+19万人の反動であり、緩やかに増加している状況だ。世の中では人手不足が言われるが、年齢別の就業率を見ると、男性の30歳前後、40歳前後は、前年同月がマイナスで、まだ拡大の余地がある。新規求人倍率は、2か月連続の低下となり、除くパートの全体の水準は前年並みだが、製造業や建設業の水準が低くなっている。

 住宅着工は、4-6月期が前期比-6.6%と低下していたのに続いて、7月も4-6月期比-4.6%という水準だ。資材高が影響していると考えられる。金融緩和をすると住宅は増えるものだが、日銀の金融緩和は、円安を通じて住宅を減らす皮肉なことになっている。公共事業も、資材高で実質での水準が低くなっており、実質を保って雇用を増やすよう、補正予算でゆるがせにしないことが求められる。

(図)


………
 日銀の金融緩和の維持によって、輸出も住宅も増えないのに、必要以上に円安となり、輸入物価高で苦しみ、ガソリン代や電気代に補助金を出すハメになっている。円安は、資源高と違い、メリットもあり、企業収益からの税収や公的年金の海外資産からの利益を還元することも必要だ。ただし、こうした比例的な補助金より、低所得層に定額給付をする方が望ましい。

 コロナ禍では、定額給付の制度インフラがなくて困ったが、その不備は、今に至るも変わっていない。勤労者皆保険を実現するのに必要なものとして、社会保険料に連動して還付する制度があれば、これを使えたはすだ。今更ながら、補助金をやめる出口として、導入を考えてはどうか。いつになったら円安が戻るのか、あるいは、もう戻りはしないのか、分からないのだから。


(今日までの日経)
  EC輸入急増、揺れる競争。都心ホテル、料金急上昇。中国テック、消えた繁忙期。需要不足、15期ぶり解消 脱デフレの4指標プラスに。ガソリン・電気・ガス補助、年末までに1.3兆円 政府試算、予算未使用分で。ガソリン15年ぶり最高値 円安要因が8割。

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