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中長期の経済財政の夏の試算が公表になり、めでたく2026年度に基礎的財政収支が黒字になることが明らかとなった。それで、これからどうするのかだけど、もっと黒字にしたいみたいなんだよね。明らかに目的を失ったようだ。黒字を深めるのは、成長を抑制しようということなので、いつのまにか、あらぬものを目指すようになったわけで、戦略がないにもほどがある。
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本コラムは、長らく中長期試算を批判してきたが、その主要な論点は税収の過少な見積りだった。そのために、実際には緊縮がきつく、想定以上に成長を抑制してしまうというのが問題だった。ところが、2024年度補正から税収の見積もりが現実的になり、2025年度予算も適正だったことで、中長期試算も妥当なものとなった。低い発射台から名目成長率だけ伸ばしていくという悪癖が是正されたわけである。
本コラムの分析の売りは、本当はこんなに税収の上ブレがあるよと示してきたところにあったが、今回については、上ブレがほぼなく、ある意味、面白味はない。政府の国の税収の見積もりがどう変わったかを確認していくと、2026年度は前年度比+5.1%であり、名目成長率の2.7%を大きく上回っている。消費税などは名目成長率並みにしかならないので、法人税収を+10.0%程度に高く見積もっていると考えられる。
法人税収の伸びを大きく感じるかもしれないが、証券各社の企業業績見通しでは、そのくらいあり、不自然ではない。2025年度の企業業績見通しは、トランプ関税の影響で伸びが低く、2026年度に反動で高まっているのもある。2027年度の税収も3.7%と、名目成長率の2.4%を上回るが、企業業績の好調ぶりが続いていると考えれば、納得できる範囲だ。そして、2028年度以降、税収の伸びは名目成長率並みになる。
さて、プライマリーバランスの達成という目標は達成するのであるから、今後の目標は、補正予算を整理していくことと併せ、財政を締めすぎないように、適度な還元を図ることになる。財政管理としては、デフレ脱却に伴う国債金利の上昇に伴い、利払いに充てるため、利子・配当等の金融資産から税収増を区分して把握し、バラまきに使わないようにするといった経理が求められる。諮問会議も、まじめに戦略を考えてほしいものだ。
(図)
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8/1に厚生年金の2024年度の決算が公表され、歳入が前年度比+1.3兆円、歳入が+0.6兆円で、黒字は+0.7兆円の3.1兆円まで広がった。名目GDP比では0.5%であり、2025年度でも同程度はあるから、国・地方の財政に年金も加えた政府全体の基礎的財政収支の均衡は、1年早く達していることになる。それだけ成長を抑制しているわけで、それが今の日本経済に求められる政策だろうか。この国には「黒字は善」のナイーブな戦略しかないのである。
(今日までの日経)
デジタル赤字、高止まり 1~6月3.4兆円 旅行収支の黒字打ち消す。中国ヒト型ロボ超進化。トヨタ、関税逆風下の世界生産1000万台。基礎収支3.6兆円黒字 来年度仏、戦後初の人口自然減へ。
植田日銀は、利上げの絶好のチャンスを見送り、半年に1回のペースで緩やに円安を是正する路線から外れ、ムダに円安が進んでしまった。これでは、無意味な金融緩和で成長を加速させる幻想に取りつかれた黒田日銀と同じではないか。金融政策で成長は動かない現実を認め、動かせるドル円で適正な水準を目指し、物価安定を図るというリアリズムを、いつになったら会得するのかね。
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6月の商業動態・小売業は、前月比+1.1と高めだったが、4-6月期は前期比-0.1にとどまった。各種商業の低下が大きいので、インバウンドの影響と見ると、4-6月期の家計消費は、実質で若干のプラスくらいか。4-6月期は、生鮮以外の物価上昇がきつく、前期比+1.2もあったため、こんなものかと思う。サービスは+0.3に過ぎず、資源価格も落ち着いているので、物価高は、日銀の円安是正の失敗にある。
6月の鉱工業生産は前月比+1.7と高めだったが、4-6月期の前期比は+0.3の上昇にとどまった。資本財出荷(除く輸送機械)の4-6月期の前期比は+4.2と高かったものの、輸入が大きく下がっている。輸送機械は前期比-2.0の低下である。他方、建設財出荷は-2.2と下落している。情報化投資は順調だ。こうしたことを踏まえると。4-6月期の設備投資は前期比+0.5%くらいか。まずまずの伸びだ。
6月の労働力調査は、就業者が前月比-5万人、雇用者が横ばい。これで、4-6月期は前期比+7万人と+3万人になった。これまでは十数万人はあったわけで、明確な減速だ。特に、これまで勢いよく伸びていた女性が伸び悩むようになった。新規求人倍率も、4-6月期は2.19倍で前期比-0.13となった。人手不足は言われて久しいが、足元では、雇用の拡大は減速していると言える。
(図)
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内閣府も、経済財政白書で、物価と賃金の好循環という幻想を書いてしまうし、リアリティの乏しさは如何ともしがたい。循環は売上と賃金だし、売上次第で設備投資はなされる。物価とか金利とかじゃないんだよ。売上と分かれば、おのずと政策も決まってくる。ガソリン減税で売上を減らしてどうする。必要なのは、消費増に結びつく負担減だろう。経済政策のさまよいは続く。
(今日までの日経)
日米中銀、動かぬ夏。円下落、一時150円台 4カ月ぶり。外為特会剰余金、昨年度5.3兆円。ガソリン減税「年内実施」で与野党合意。3メガ銀、海外融資100兆円。
5月のCTIマクロは、名目が前月比+0.1、実質が0.2だった。4,5月の名目の伸びは鈍ったが、実質は毎月+0.1が7か月続いており、年間+1.2ペースなのだから、順調と言えるだろう。物価高は喧しいが、CPI財の4,5月平均は前期比+0.8と落ち着いて来ている。6月の消費者態度は。前月比+1.7となって、4月のトランプ関税の急落を5,6月で取り戻した。この半年の物価高局面での低下によって水準は低いが、物価の落ち着きで浮上してほしいものである。
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2024年度の国の税収が判明したところで、2025年度を予想してみると、予算額から若干マイナスの77.6兆円となった。つまり、上振れなしだ。証券各社の企業業績見通しが振るわず、法人税は、2024年度決算額からはプラスにはなっても、高めを見込んだ予算額からは-1.6兆円になる。もっとも、企業業績は、着地までに変わることが多く、トランプ関税次第で、上にも下にも大きく動く。
税収の上振れは、防衛費に充てることになっているので、給付金の財源にはならないものではあるが、そのものがない。ただし、所得税の予想値は決算額から+1.6兆円だし、消費税は2024年度の+1.9兆円に続き+0.8兆円だ。2024,25年度の社会保障の予算額は+0.9兆円と+0.6兆円だけなので、なんでこんなに詰められなければならないのかというのはある。地方消費税も増えるし、公的年金の黒字も拡大しそうだ。
ところで、財務省の決算概要では、基礎年金拠出金等年金特別会計へ繰入1.8兆円を不用にしていたけど、こういう操作ができるものなんだね。国の会計全体ではカネの置き場所が違うだけにせよ、年金特会の黒字が縮み、積立金も目減りするのでは。昨年度からやっていたようだが、説明が必要ではないか。日経は、積立金にうるさいのだから、しれっと流されずに取材してほしいところだ。
(図)
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実質消費は年率1.2%で伸びている。これを何としても守らなければならず、少なくとも財政が足を引っ張らないよう注意が必要だ。その意味で、給付金はやらざるを得ないが、再分配の形が、これで良いとも思われない。消費税の伸び、社会保険料の重さからすれば、保険料連動型の給付つき税額控除しかないわけで、選挙では下らぬ議論が繰り広げられているけれど、早く行き着いてほしい。
(今日までの日経)
GPIF運用益、5年で98兆円。協会けんぽ、昨年度6586億円黒字。子育て世帯「母親が仕事」8割超す。夏ボーナス4年連続最高 5.9%増、非製造業が底上げ。賃上げ5.25%、持続力に不安。格差是正なくして財政再建なし・門間一夫。税収、昨年度上振れ1.8兆円 「2万円給付」に届かず。公金受取口座6300万に 給付付き控除は導入遠く。
1-3月期資金循環の資金過不足で見ると、2024年度の一般政府の財政赤字は名目GDP比-1.3%となり、バブル後の最小となった。財政再建派は、こうした数字は気にしてなくて、金利が不安だとかで、もっともっとだ。中央政府の改善幅は、2兆円の定額減税をしたにもかかわらず、GDP比1.3%もあり、さすがに締め方が急で、これで成長率に影響が出てないとは言えないだろう。インフレ対策に人知れず財政引締めをしてたということかね。
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2024年度の消費者物価の上昇率は、前年度よりわずかに低下したから、引締めにも意味があったのかもしれないが、2024年度の実質成長率は+0.8%にとどまったことを踏まえれば、政府支出や家計消費をもっと増やせていたらと思う。消費減税とか、大鉈すぎてバカらしいけれど、財政の調節が上手くないことは確かだろう。高度成長期に、予め税収増を見込んで支出や減税を仕込んでいたことは、今にして思えば、非凡な技だったわけである。
部門別では、資金過不足の4四半期移動平均の推移を見ると、家計部門は、コロナ禍で大幅な資金超過になった後、徐々に低下してきていたものが、最近では、コロナ前の水準を下回るまでになっている。これと対称的なのが政府部門であり、家計が貯蓄できなくなった分、政府が借金を減らす構図だ。他方、企業部門は相変わらず貯蓄を続け、海外部門は投資が増えるという動きである。
(図)
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5月の商業動態・小売業は前月比-0.2で、4,5月平均の前期比は-0.1にとどまった。振れが大きい統計とは言え、嫌な感じである。実質はずっと下がりっぱなしだが、名目がマイナスとなると6期ぶりになる。インバウンドに陰りがあるのか、百貨店などの各種商業の低下が大きく、食品小売業が久々にマイナスなのも効いている。物価高に着いて行けなくなったとすると重大だ。
5月の労働力調査は、就業者が前月比+33万人、雇用者が+21万人の大幅増となり、この3か月の不振を取り戻した形だ。ただし、女性はもう一つ足りず、今年に入っての屈曲を拭い切れておらず、要注意である。5月の新規求人倍率は前月比-0.10だった。2か月連続減だし、幅も大きく、こちらも嫌な感じである。賃上げがあっても、雇用が伸びないと、所得と消費は陰るというものだ。
インフレ下では、財政が締まりやすいので、とりわけ注意がいる。コロナ後に名目成長を果たした局面では、物価高に着いて行けるだけの所得が保たれていたことがポイントだった。いつものように無頓着に財政を締めていたら、この構図を壊してしまう。昨年は定額減税で春夏の消費を押し上げることができたが、今年は先送りになっている。物価高に負けて名目が伸びなくなっているのは、偶然ではあるまい。
(今日までの日経)
「関税で値上げ」企業の4割。米へのデジタル税を問題視。世界株4カ月ぶり最高値。フェンタニル、日本経由か 中国組織が密輸拠点。
4月の商業動態・小売業は前月比+0.6で、1-3月期より-0.2となった。前月の大幅減からの戻りとしては小さく、もう少し欲しかった。景気を保つには、名目であれ、売上が伸び続けていることが必要であり、トランプ関税で輸出に悪影響が出ることは避けられない中で、ここに変化が生じていないかが注目点だ。世間的には、備蓄米の放出で持ち切りだが、それは物価高のごく一部である。
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4月の労働力調査は、男性雇用者が前月比+4万人と、3か月連続の増で上昇がうかがえる一方、女性雇用者が前月比-4万人と、逆に3か月連続の減だった。ちょっと心配な動きである。失業率はさして変わらず、非労働力人口が減らなくなっている。4月の新規求人倍率は、2.24倍で前月比-0.08であり、わずかずつ上昇してきていたものが、やや大きめの低下となった。変化の兆しでなければ良いが。
5月の東京都区部の消費者物価指数は前月比+0.3だった。この1年の動向からすれば、低めである。米は上がっていても、生鮮が下がっており、加工食品が相変わらず高い。米の値上がりは問題だが、ウエイトは小さく、物価高の問題は加工食品にある。賃金上昇以外の要因をどう下げるかが焦点であり、政策的に打てるのは円安是正になるが、5月は円安がぶり返してしまった。
4月の鉱工業生産は前月比-0.9と3か月ぶりの低下だった。そんな中でも消費財の水準が高いのは救いである。鉱工業生産の予測は5月が異様に高く、反動で6月が低下しているが、季節調整の乱れかと思う。原指数で見ると、昨年よりは高いけれど例年並みの水準になっている。いずれにせよ、トランブ関税の影響は、これから避けられまい。景気を見るには、消費財や建設財の動きを見守ることになる。
(図)
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5月の消費者態度は前月比+1.6と、トランプ関税で急落した3月の-2.9の半戻しに過ぎない。秋からの物価高を受けた12月以来の低下トレンドの範囲内にある。物価高も一服してきたのだから、そろそろ底入れを見たいところである。米は象徴的なものに過ぎないが、その低下で物価の落ち着きに気づき、消費が上向く形になってもらいたい。内需主導の景気は、なかなか微妙なものである。
(今日までの日経)
米鉄鋼・アルミ関税50%、4日から。「理想の結婚候補」とマッチング、3.8%の狭き門。高齢求職者、4月12万人超で最多に。日鉄、電炉に8600億円。資金循環からみる企業と家計。
やっぱり自動車の対米輸出は取り戻せない。取り戻せたとしても、3年後にはゼロにするというような時限のものだろう。とりあえずは、輸出関税を政府が肩代わりし、徐々に輸出を減らす調整をして着地させ、あとは、輸出で成長を起動させてきた従来の戦略を、内需で引き上げるものに転換しないといけない。そうした戦略的な思考は、円安と金融緩和にしがみつくこの国にはないだろうけど。
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3月の商業動態・小売業は前月比-1.4と落ちたが、1,2月の貯金が効いて1-3月期の前期比は+1.7だった。もっとも、CPIの財で除すと-0.3になってしまう。それでも、消費は、物価上昇に着いて行っている、あるいは、着いて行っているから値上げできているとも言える。今、なすべきは、名目でも良いから売上が拡大している状況を保ち、円安の是正で輸入物価高を抑制し、成長を実質化していくことである。
日銀は利上げを見送り、円安になってしまった。常識的な対応だけど、7月には必ず上げると滲ませても良かったと思う。輸出が望めなければ、金融緩和に意味はない。利上げで円高にすると、資材高での建設投資の滞りが緩和され、むしろ景気は良くなるくらいの戦略観が必要である。景気は日銀、輸出企業の支援は財政という役割分担になる。結婚したら、マツダ車の割引券プレゼントなんてね。
売上の拡大を保つことが重要なのは、成長の源になる設備投資を引き出すからである。売れるなら投資するというのは平凡な反応で、金利とは無関係だ。3月の鉱工業生産は前月比-1.1で、1-3月期の前期比が-0.7だったが、4,5月の予測の平均は+3.3と妙に高い。消費財、建設財は底打ちにも見える。3月の住宅着工は、規制前の駆け込みで飛び跳ねた。何が理由であれ、予測を実現していかなければならない。
日本経済が内需主導で成長した前例は、バブル前になる。実需では、住宅投資が先行し、シーマ現象と言われる高額消費が続いた。これからは、円高傾向の下、コスト安で有利になるという方向を示しつつ、内需を拡大する政策を打ち出す必要がある。ガソリンに補助金を出して買い替えを遅らせている場合ではなかろう。初任給が上がっている若い世代が結婚できて、クルマも家も持てる絵を見せるのである。
(図)
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4月の消費者態度は、前月比-2.9と急落した。生鮮の低下で物価上昇は鈍っているのにこうなったのは、雇用の悪化を先取りして、トランプ関税の影響を心配しているのだろう。かつて、円高不況で輸出ができなくなった後、実際に来たのは消費ブームだった。政策の舵取り次第なのである。心配が自己実現してしまわないうちに、ビジョンを示すのも重要な政策の役割である。
(今日までの日経)
米、車・鉄は交渉外。今期143円想定、減益影響2兆円に。「労働者」基準、40年ぶり見直し。日銀、今年度0.5%成長に下げ。上場企業の7割増益。中国企業、初の連続減益。「地産地消」でリスク備え・河野龍太郎。外国人留学生、最多33万人。
トランプ関税で株は急落したが、米国の実体経済に打撃を与えるかどうかは、輸出企業がどれだけ値上げをするかだ。関税分を飲み込めば、消費は変わらないのだから。日本の場合、2021年までのドル円は110円位で、足下の147円だと36%安く、ある程度は飲みこめるはず。輸出を減らした企業には、政府が支援して、国内で売るインセンティブにしてもらうほかあるまい。クルマなら潜在需要があろう。財源はGAFAにでもかけるかね。
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2月のCTIマクロは、名目の前月比+0.2で、1,2月平均は前期比+0.7となっていて、消費は順調だ。家計調査では、名目の可処分所得が停滞する中でも、消費は伸びており、昨年半ばに低下した消費性向も元に復している。目下の課題は、名目での成長を保ちつつ、円安是正で物価を落ち着かせ、実質での成長を確保していくことである。その中で輸出が減るようなら、内需で補ってやる必要がある。
関税を上げると、普通は値上げになるし、国内の供給力は急には上げられないので、それは可能だ。そうなると、消費増税をしたのと同じで、消費を冷やし、設備投資の期待も下げて、成長を減速させてしまう。米国は、コロナ後で最良の経済だったのに、積年の怨みに駆られて自害行為に及んだ。報復関税をやる側も自らの足を撃つことになる。ドル高にあった米国は、輸出先で値上げせざるを得ないからなおさらだ。
日本は、輸出を成長の起動力にしてきたが、これで完全に戦略を変えなければいけない。1980年代後半、円高不況に驚いて内需拡大をやり過ぎ、間違って好景気を導いてしまったが、これにならうことになる。産業政策としては、ドルを稼げなくなるのだから、デジタル赤字を減らすべく、国産企業育成という輸入代替政策への先祖返りが求められる。自由貿易の時代は終わったのだ。
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歴史的に見ると、米国は、時折、理不尽なことをやってくる。戦前の日本は、対抗コースを歩んで失敗したわけで、忍耐が肝心だ。結局、米国は、多大の犠牲を払った後とは言え、自由貿易に帰って来たのも歴史が示すところだ。今の日本にはイキったりする根性はないから心配はいらないけれど、中国はどうだろう。力があると対抗したくなるのは世の常であり、はた迷惑にならなければ良いが。
(今日までの日経)
NYダウ急落、2231ドル安 関税応酬で史上3番目下げ幅。中国が報復関税34%。トランプ相互関税、崩れる自由貿易。円高、一時145円台。日米の長期金利急低下。中小賃上げ、33年ぶり水準。トヨタやホンダ、米での価格は当面維持。フォード、米国内で値下げ。
10-12月期の日銀・資金循環統計の資金過不足は、一般政府が4期移動平均で名目GDP比-2.0%と前期から0.6もの緊縮で、一気にコロナ前の水準を回復した。家計は+1.7%と高まったが、コロナ前の2019年は+3.3%だったので、水準としては低い。目立つのは海外のマイナスぶりで-4.7%である。10-12月期は、雇用者報酬が伸びたのに、消費が鈍かった。第一には円安下の物価高だろうが、緊縮で可処分所得が削られているのかもしれない。
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成長政策では、金融緩和はまったく効かないが、財政はじんわり効く。だから、コントロールがとても大事なのだけれど、景気が悪い時に吹かすことはするものの、順調なときに無頓着に締めないことができていない。大して意味のない日銀の金融政策会合は注目を集めるのに、そのために公表を遅らせた資金循環で、政府の緊縮が激しかったなんて出たところで、誰も気に留めない。
もっとも、中央政府の過不足の水準は、コロナ前より一段低く、地方と社会保障が高めているから、緊縮してる感があまりないこともあると思う。地方が潤っているとか、年金が黒字を強めているとか、全体状況を眺めて戦略的に考えることが、日本は極めて不得手である。そもそも、財政の締まり具合には無関心で、とにかく所得税の控除を上げてくれればいいとか、粗い議論しかできていないのが現実だ。
成長を加速させるには、経営者に売上が増すという期待を持たせて、設備投資をしてもらわなければならない。そうしたときに、政府が緊縮をして、可処分所得を削り、消費を抑制して売上が伸びないようにしていたら、設備投資は出て来なくなる。いかに、金利を下げて補助金を出したところで、売上が見込めないのに設備投資をするリスクを犯そうとする経営者はいない。
経済学的には、財政を出してGDPを膨らましても、生産力を高めないので、成長は加速するものではないと言われるが、財政の役割は、需要を安定させ、売上に対する期待をもたらすところにある。それゆえ、じんわり効くことになる。言い換えれば、成長政策は、インセンティブによるのではなく、リスクをマネジメントしなければならない。そこがなかなか理解されないわけである。
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日銀は利上げを見送り、やや円安に動いた。日本経済の成長の起点は、もっぱら輸出である。輸出が増すのは、だいたい円安の局面で、それは物価高で消費にはマイナスに働く。つまり、景気が回復している局面なのに、消費を冷やさないように財政を出さないといけない。直観的になかなか理解しがたいことで、逆に、ああ良かったとばかりに締めがちだ。これが長期停滞に日本が嵌った理由の一つである。今週の動きを見て、日銀がハトで財政がタカじゃダメじゃんと、どれほどの人が思っただろうか。
(今日までの日経)
ドイツ改憲、債務抑制を転換。決定会合、金利0.5%据え置き 米関税の影響注視 円安・円高、双方にリスク。ユーロ、対ドル急回復 欧州、国防費増が経済に恩恵。春季交渉、賃上げ率5.40% 連合2次集計 前年を0.15ポイント上回る。