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経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

緊縮速報・10-12月期は小休止

2018年03月25日 | 経済(主なもの)
 税収は好調、歳出は抑制ということで、財政収支の改善が期待される中、10-12月期の日銀・資金循環では、未だ表れるに至らなかった。部門ごとの資金過不足を4四半期移動平均で見ると、国は500億円の若干の改善、地方が5千億円もの悪化となり、社会保障は横バイにとどまり、全体として悪化するという結果だった。もっとも、「悪化」という表現ではあるが、これと裏腹に民間部門が「改善」していることを意味してもいるのだが。

………
 3/20に日経の滝田洋一さんが指摘してくれたように、国の一般会計の税収は好調に推移し、1月までの累計は前年同月比+6.4%となっている。本コラムでは、2017年度の税収は、前年度比+3.3兆円の58.8兆円になると予想する。これは、1月までの実績に加え、残り4か月の納税額の前年度比の予想を、所得税は名目成長率実績見込みの+2.0%、消費税は同消費見込みの+1.6%、法人税は企業業績見通しの+8.7%、その他の税は物価上昇率見込みの+0.7%で伸びるとして計算したものである。

 同様の簡便な手法で、2018年度の税収を予想すると、2017年度予想より2兆円多い60.8兆円となる。他方、2017年度の補正後歳出は前年度比-1.1兆円であり、2018年度も2017年度並みと思われることから、財政収支は税収増の分だけ改善することになる。また、地方税についても、同様に、2017年度は1.7兆円、2018年度には1.4兆円の増収になると予想する。歳出増は、それぞれ0.9兆円と0.3兆円なので、地方でも収支改善が進む。

 これに対して、足下の10-12月期の資金循環は、逆に収支が悪化する形になり、改善のトレンドも見出しがたくなった。おそらく、6~9月に盛り上がった公共事業の払いがなされたことによると思われる。公共事業は、その後、低落し、2017年度補正予算での措置も少なかったので、今後の税収の好調さに連れて、財政収支は改善に向かうだろう。また、公的年金の黒字の縮小も、今期で底打ちを見せていることから、収支改善は一般政府全体に及ぶはずだ。

(図)



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 景気の現在の局面は、昨年4-6月期に、輸出と公共の増加が重なることで急速に回復し、輸出の伸長と公共の減退による相殺により高原状態で小休止している。したがって、シナリオとしては、公共が底入れすれば、輸出の順調な増加で景気が再び上向くとなる。しかし、ここに来て、鉱工業生産に頭打ちの兆しが見え、為替も円高に進み、加えて、米トランプ政権の強引な通商政策でリスクが増している。

 財政収支の観点では、法人税を左右する、トランプ減税は改善、円高は悪化の要因になる。法人税予測のベースの3月企業業績見通しは、円高が進む前のものであり、予断を許さないところがある。それでも、改善の傾向は確かで、むしろ、抑制的な歳出が景気の足を引っ張らないかが問題であろう。春になって生鮮の物価が落ち着けば、名目での順調な消費の増加が表に出ることになる。そうなるのがベストの展開だ。

 一足先に公表された2月の消費者物価指数は、サービス価格、具体的には、運輸、外食、家事、通信教養で高まりが見られた。需給は引き締まっており、外挿的需要に頼らない、内発的な成長の入り口まで来ている。無頓着な緊縮を乗り越え、政治的な外需リスクに耐えて、自律的な成長へと移行できるかが焦点だ。チャンスを逃し続けてきた日本にとって、分かれ目となり得るかなり重要な局面にある。


(今日までの日経)
 中国、米国債購入減に含み。301条に対抗。
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スローガンを政策にした官僚たちのアベノミクス

2018年03月18日 | 経済
 「経済を良くするために、大胆な金融緩和が必要」と叫ぶだけなら誰でもできるが、それを「2%の物価目標、2年で達成、2倍の資金供給と国債期間」という方策、すなわち、「どうすれば」へと落とし込むには専門的な能力がいる。軽部健介さんの『官僚たちのアベノミクス』は、政治スローガンがどのように異次元緩和という政策へと形成されていったのか、その過程をつぶさに描いている。その効用は別として。

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 5年経った今からすると、円高を是正したという意味で、異次元緩和の第一弾までは成功だったと言えるだろう。むろん、それなしで実現されたのかもしれないが、少なくとも時宜には合っていたし、輸入物価高による消費冷却という弊害が目立つ、第二弾以降の金融緩和と分けて評価すべきだろう。また、マクロ経済の安定化という点で、日銀による国債の大量購入は、時代を画すものになると思われる。

 異次元緩和は、目標を達成できなかったが、その可能性がまったくなかったわけではない。円安が輸出急増に結びついていた場合だ。ただし、消費増税をしてもなおとなると、米国との摩擦によって、早期の政策転嫁を迫られ、結局は瓦解する展開になっただろう。消費増税の見送りは、「リフレ派」の範疇をはみ出るもので、金融緩和に加えて財政もとなれば、筆者のようなオールド・ケインジアンと変わるところがない。

 その財政は、アベノミクス三本の矢で「機動的な」と銘打たれたように、初めから「一時的な」ものと理解されており、軽部さんの著書の中でも、うかがい知ることができる。実際、財政出動が行われていたのは2013年に限られ、補正後の歳出予算は、未だこれを超えていない。他方、増税と税収の伸びがあり、緊縮財政で収支は大きく改善した。これが景気回復の実感の無さ、生活の苦しさにむすびついているわけである。

 そして、三本目の矢である成長戦略は、雑多な産業政策の寄せ集めでしかなく、マクロ的な効用は、期待する方が無理だった。唯一、マクロでカウントし得る法人減税は、1兆を費やした割には、内部留保が膨らむばかりで、設備投資や賃金の増加に力を発揮したと評する者は、ほとんどいない。しょせん、設備や人材への投資は、輸出や内需を見てなされるのであり、緊縮で需要を抜いていては、利益率の「砂糖」をまぶしても虚しいのだ。

(図)



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 異次元緩和の大きな特徴は、日銀による国債の大量購入である。また、その表裏をなすものとして、公的年金の積立金を運用するGPIFの国債の保有から株式や外債の拡大への転換がなされた。軽部さんの著書も、アジェンダとなった経緯を記している。論点としては、財政規律と安全運用の確保が重要となる。すなわち、将来のインフレや金利急騰を招かないか、積立金の価値や利回りを損なわないかである。

 日銀による国債の大量保有は金融緩和の結果であるが、マクロ経済の安定化のために、重要な役割を果たすように思える。財政規律を緩めるとの声が専らとしても、民間が保有するよりは、遥かに安定度は増す。要は、これに慢心せず、穏健な財政を行えるかであり、マネジメントは別の方法でも可能だ。むしろ、企業の投資行動に不合理さがあれば、必須の政策と、将来、位置づけられるかもしれない。

 また、GPIFが運用の重心を国債から株式・外債へと移したことも、中期的に成功を収めている。金融緩和によって、株高と円安が実現し、これが維持されているわけだから、負けようのない戦略的組合せとも言えよう。裏返せば、いずれ金融緩和が終わる中で、株高と円安が維持できるかがカギとなる。その際、実体経済が好調なら心配はない。企業収益が株価を支え、好調な内需が輸入を増やし、貿易黒字を膨らませなければ、レートを保ちやすいからだ。

 危いのは、内需が弱いのに消費増税を行う緊縮財政を敢行し、収益を直撃したり、黒字を米国に責められたりすることだ。こうなると、金融緩和ではとてもカバーできない。結局のところ、放漫でも、緊縮でもない、穏健な財政が貫けるかになる。成長には需要管理が決定的に重要という「正解」を誰も理解していない中で、現実感を持って「正解」を選び出していかなければならない。それが本当の課題だ。

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 「大胆な金融緩和」というスローガンから、現実的な方策が探られ、円高是正に加え、望外の国債安定化も実現した。このように、いつも政策化が上手く紡ぎ出されるわけではない。アベノミクスは、景気回復を第一とする世論を背景に、エリートやインテリが嫌う消費増税の延期を二度も押し切ることで、現在の成長を手中にできたのも事実だ。権力のチェック&バランスは、かくも難しい。そして、次の消費増税に向けては、まるで無計画だった前回とは異なり、経済財政諮問会議が需要管理に取り組むようである。果たして現実的な方策に結実するのであろうか。オープンな議論に期待したい。


(今日までの日経)
 重老齢社会が来る。だれが政策をつくるのか・桃井裕理。ヤマト全運転手 正社員に、3000人転換 事務職も3年で無期に。長寿生かし成長力・前田佐恵子。企業の稼ぐ力、米欧に迫る ROE、17年度 初の10%。
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10-12月期GDP2次・上方修正で1.6%成長

2018年03月11日 | 経済
 2/4のコラムで、10-12月期GDPは前期比+0.4程としていたが、1次速報の+0.1を経て、2次速報の+0.4へと収まった。輸入が急増していたので、在庫を強めに見ていたことが奏功したように思う。いずれにせよ、2017年各期の実質成長率は、年率1.9%、2.4%、2.4%、1.6%と好調に推移したことになる。いつの間にやら、日本経済は2%成長が当たり前のようになっている。次の2018年1-3月期も、危ぶまれていた消費がまずまずの滑り出しにある。

………
 2次速報のポイントの一つは、設備投資の上方修正で、前期比+0.7から+1.0になったことだ。これにより、設備投資の実質GDP比率は16.1%に上昇し、ハシモトデフレ前のピークを超え、リーマンショック前の最高である2006年10-12月期の16.2%にあと一歩まで迫った。世上、「企業はカネを溜め込んでばかりで投資をしない」とされるが、意外になされている。かつてとの違いは、生産設備の投資より研究開発の投資が重きをなすことだ。

 投資全般について、2006年10-12月期と今期を比較すると、設備投資は0.1%の違いしかないのに対し、公共投資は0.4%、住宅投資は1.0%もの差がある。設備投資をかつてないレベルに引き上げるのはもちろん重要だが、今さら公共や住宅ではないにせよ、介護や教育・保育など代替えとなる社会的投資が求められる。日本は、もはや土建国家とは言えず、少なくとも、公共投資を削って他に振り向けるといった状況にはない。

(図)


 2次速報では、家計消費(除く帰属家賃)についても、若干の上方修正があり、前期比+0.5から+0.6となった。これで、2017年の消費は、前年同期比だと+0.5、+1.8、+0.5、+1.1となり、消費増税以来、初めて一度もマイナスがない年となった。暦年の伸びは1.1%と、GDPの1.7%とは差があるものの、3年連続のマイナス成長からは脱することができた。もっとも、水準となると、消費増税の駆け込み前の2013年10-12月期より2.7兆円も少ない。

 消費の水準が低く、伸びも成長率を下回ることは、今後の加速への可能性につながる。消費増税前の消費の伸びは前期比+0.4程あって、GDPの伸びに近かった。したがって、伸びは未だ十分でなく、加速の余地がある。反面、伸びが十分でないことは、消費増税がなかった場合のトレンドから、乖離が広がり続けていることも意味し、それは19兆円にも及ぶ。たった8.1兆円の税収増のために失った消費の犠牲は、実に大きいのである。

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 今月から、統計局・家計調査と同時に、消費動向指数の公表が始まった。家計調査は、変動が激しく、消費の基調をつかむのが難しい統計だったが、新しい動向指数は安定した動きとなっている。1月は悪天候に見舞われ、商業動態の小売業が前月比-1.9と落ち込んだのに対して、総消費動向指数は実質で+0.4となった。日銀・消費活動指数も+0.5であり、符合する動きを見せる。GDPに即した内閣府・消費総合指数も同様の動きが予想される。

 動向指数は、四半期単位となると、活動指数や総合指数とズレが見られるため、1-3月期GDPの消費を予想するには、これらと合わせて判断するのが適当だろう。いずれにせよ、1月の商業動態の公表時における消費の落ち込みの危惧は消え、1月の消費の滑り出しは、まずまずとなった。むしろ、生鮮の値上がりを踏まえれば、消費は、12月に続き、予想以上の粘りを見せたと言える。特に、動向指数の名目は高く、消費の潜在力を感じさせる。

(図)


 これまで、本コラムでは、速報性を得るため、商業動態と家計調査・消費水準指数(除く住居等)を足して二で割る手法を用いてきた。これは、昔の消費総合指数の作り方である。家計調査の公表が遅れることで、若干、速報性は失われるものの、消費動向指数の開発によって、誰でも基調が読めるようになった。長年の懸案であったものが、統計改革によって、信頼性という大きな成果が得られる。関係者の努力にユーザーとして感謝する次第である。

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 1月の家計調査の消費性向は、7か月ぶりに大きく上昇した。実収入が大きく低下するという不自然な動きが背景にあるが、1月の消費者態度指数の雇用環境も上昇していたので、回復の兆しかもしれない。ただし、2月の態度指数は一転して下降しているので、今後の推移は要注目だ。もし、消費性向が回復に至れば、春にかけて、意外な消費の加速が見られることになる。消費増税によって潰された景気回復は、ようやく消費に波及して本格化する。すなわち、景気は次の局面に移るのだ。


(今日までの日経)
 大震災7年、コンパクトな街に。
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3/9の日経

2018年03月09日 | 今日の日経
 景気が小休止しているのは、景気ウォッチャーからもうかがえる。家電、衣料は上り基調だけどね。小休止の理由は、前回のコラムで書いたとおりで、悪天候による生鮮の値上がりだけでなく、追加的需要の停滞がある。意外だったのは、1月の日銀・消費活動指数が、商業動態とは逆に、プラスだったことだ。今月から、家計調査が1週間遅れになり、手持ちの商業動態と消費者態度指数で消費を占ってみたものの、やはり難しい。今日、発表される新開発の消費動向指数が楽しみだ。

(図)



(今日までの日経)
 堅調景気「小休止」の見方、実質GDP1-3月、年0.7%増 民間予測。所得増は黄信号 残業規制先行で ベア1.5%は19年春闘?。
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アベノミクス・大荒れの経済指標

2018年03月04日 | 経済(主なもの)
 1,2月の日本は寒波や大雪で大荒れだったが、1月の経済指標も大揺れで、基調を見失いそうになるほどだった。こうした場合には、経済の複数の側面を重ね合わせてみるほかない。そうして見ると、回復は足踏みしていて、次の加速に向けて力を貯めている状況にあると思われる。もし、一時的な不順であるなら、春には力強い伸びが見られるはずだ。ここへ来て為替や株価が不安定な動きをする中で、さて、どう出るだろうか。

………
 1月の鉱工業生産は、前月比-7.0と、驚くような低下だった。2月予測が+9.0、3月が-2.7と目まぐるしく動く。春節の揺れる時期だし、均せば上り基調であり、季節調整も直るだろうと分かっていても、なんとも居心地が悪い。実際、1-3月期の平均は、前期比+0.3にとどまり、昨年来の勢いが弱まっているように見える。もっとも、これまでの輸出主導の景気回復は僥倖であって、いつまでも頼るようではいけない。

 1月の商業動態の小売業も前月比-1.9と、これまた大きく低下した。11,12月に伸びた反動もあるとは言え、生鮮が高騰していることもあり、CPIの財で除したものだと-2.6にもなる。前月まで高騰に耐えていたものが崩れた形だ。むろん、高騰が収まれば、浮揚するとは思うが、東京都区部のCPIから見て2月は望み薄であるし、1月の水準は、名目でも10-12月期より-0.7も低く、今期の盛り返しは容易でない。

 他方、1月の労働力調査は、本来は動きに乏しい失業率が一気に0.3も低下し、2.4%となった。正規の就業者も増えているが、非正規の伸びが著しく、業種では宿泊飲食が最も増えていることから、一過性のものかもしれない。日経は、春節や除雪の影響とする。しかも、新規求人数は、前月比で大きく減り、倍率もパート以外は低下する結果となっている。したがって、景気の加速を示しているものではないと思われる。

 ここで、景気変動の起点となる追加的需要を確認しよう。輸出が順調に伸びているのに対し、建設投資が低下しており、二つがせめぎ合う中で、それらを合成したものは小康状態になっている。天候に限らず、景気の足踏みには理由があるのだ。今後は、順調な輸出の下で、建設投資が底入れすれば、景気は力強い伸びに変わるだろう。ただし、建設財の生産には底入れがうかがえるものの、1月の住宅着工は一段の下げとなった点には注意がいる。

 追加的需要に対しては、設備投資だけでなく、消費も概ね沿う形となる。消費性向を占う消費者態度指数の雇用関係は停滞を示しており、来週公表される日銀・消費活動指数や家計調査も似た傾向になるものと予想される。大まかには、景気は輸出主導で回復が続くという見方で良いが、細かく言えば、足元で住宅と公共が足を引っ張っており、それらが落ち着くのを待っている状況と言える。

(図)



………
 今週は、3/1に1月税収も公表された。主要3税がそろって好調で、国の一般会計の2017年度の累計額は、前年度比+6.4%、0.7兆円も多くなっている。このペースで行けば、前年度税収を2.6兆円上回るまでになる。補正後の歳出額が前年度比-1.1兆円の中でこうなのだから、大幅な収支改善、すなわち、緊縮財政になるはずだ。デフレ脱却より財政再建を優先するアベノミクスは、「大成功」を収めつつある。 

 税収の上ブレについては、円高が進行して法人税収が縮小するおそれもあるので、分からないところはあるが、仮に、そうなったとしても、円高が輸入物価の上昇を冷まし、実質消費を押し上げることになる。景気が回復する中での緩やかな円高は好ましいし、貿易黒字が膨らみつつあるのだから、それは自然なことである。むしろ、強引に緊縮と円安を組み合わせるのは、後で弾ける歪みをためることになろう。


(今日までの日経)
 揺れる市場、金利上昇も景気崩れなければ。1月失業率、改善幅最大。家庭に値上げの春。研究投資、強み集中 外部取り入れ。中高年女性の貧困・稲垣誠一。
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