経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

節電ポイントと現場力

2011年04月05日 | 経済
 4-6月期は2.6%ものマイナス、2011年度でも0.6%成長という民間予測は、妥当なものだろう。2011年度予算は前年度補正後と比べて5兆円のデフレ予算であるものを、大震災のショックがあっても変えようとしないのだから、景気が失速するのも当たり前だ。バラマキ是正に拘る日経の論説も目を覚ましたらどうかね。

 しかも、この予測は、6兆円前後の復興向けの補正予算を見込んだ数字だ。第1次補正の段階では、予備費と歳出付け替えだけだから、追加はゼロである。このまま、財源論や大連立を巡ってまこまごしている間に景気が大きく落ち込み、慌てて景気対策に舵を切るという展開になりそうだ。どうして、日本は、こうも異常なことをするのか。

 他方、「異常」な対応も必要な夏の電力不足に対しては、平々凡々たるものだ。昨日の日経によれば、輪番操業のカルテルと緑地制限の緩和が目玉のようだから、力が抜ける。日経も、火力発電の復旧の見通しについて逐一報道するようにしてほしい。明日の計画停電の中止は、日経にはない鹿島火力の復旧によるものだ。情報が少なくては、生産再開の計画が立てられない。

 夏の電力不足の克服には、徹底した節電しかない。猛暑時に計画停電で冷房を止めたりしたら、病人や老人の中には死者が出かねない。計画停電を避けるには、元気な者が我慢し、率先して冷房を切る仕組み作りが必要だ。それには「節電ポイント」のような制度を設けてはどうか。 

 例えば、各家庭で7、8月の電力消費量を前年より2割削減したら、5000円のポイントをプレゼントするというものだ。目標と報奨、これが大事である。単なる「節電しましょう」の掛け声だけでは、効果があがらない。関東地方の人口は4100万人だから、世帯数は1600万ほどだろうか。半分が達成するとして、予算額は400億円くらいである。ポイントを被災地への義捐金に充てる選択も可能にすれば良い。

 企業に対しても、午後2時から6時の間は冷房を切るという宣言を募り、そうした社を公表して賞するとともに、達成のあかつきには、従業員1人当たり1000ポイント出すというのはどうか。1000円では、達成時の祝賀会の費用くらいにしかならないが、それを持つという姿勢が、やる気を引き出すのである。

 冷房を切って暑さに耐え忍ぶことを思えば、5000円や1000円は安いが、問題は多寡ではない。目標を明らかにし、努力を認めるときに、日本人は強い現場力を発揮する。それを引き出すのが日本的なリーダーシップなのである。

 大局を見て国の舵取りをするというリーダーシップは、正直、日本人には求めがたいものかもしれない。しかし、現場力を引き出すリーダーシップなら得意のはずだ。このくらいの底力は見せてほしい。

(今日の日経)
 議定書の例外扱い要請。低濃度汚染水を海に放出。閣僚増を野党に提案。2.6%マイナス成長予測、4~6月民間平均、震災を反映、輸出・消費が落ち込む、2011年度で0.6%成長。東電100万kW超上積み。中国「値上げ抑制」指導、物価高が工業製品に波及。経済教室・ものづくり・中村伊知哉。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする