経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

米国経済の見通しと未来創り

2010年10月31日 | 経済
 今日の日経は、いま一つだったね。ということで約束どおり、経済の見通しについて書くことにしよう。いや、秋田浩之さんの論説はなかなかで、フンセン首相への働きかけとか、米国の動きとか、事態を良く捉えていたんだけどね。

 さて、月末なので、米国のGDP統計が公表になり、7-9月期は2.0%成長ということで、まずまずの内容だった。これでは失業率が下がらないという指摘もあるが、病み上がりの状況で個人消費が2.6%伸びていることを考えれば、多くを望んではいけないだろう。

 バブルが弾けたために、民間住宅投資が▲29.1%と、足を引っ張っているのは、致し方ない。住宅がダブついているのだから、通常の金利引き下げによる景気浮揚の効果は切れている。バブル崩壊後の不況は、こういう重荷を背負っての経済運営になるので、我慢強さが必要になる。経済対策の効果がないと切って捨てるようなことは禁物だ。

 むしろ、民間設備投資が9.7%と伸びていることを評価したい。大幅に伸びた4-6期の反動もなく、1-3期を上回る伸びを確保できたのだから、十分な成果と言って良いのではないか、筆者なら、これを更に金利引き下げで加速させようとは思わない。従って、何のための金融緩和かが問われることになる。

 むろん、ドル安狙いということはあろう。しかし、輸出は5.0%の伸びであり、まずまずの結果である。一層のドル安にして輸入を抑えれば、GDPの数字上は成長が上乗せにはなるが、それで本当の意味で経済が良くなるわけではない。かえって消費を冷やすことにもなりかねない。

 まあ、こうしてみると、次のFOMCの金融緩和は限定的という観測が流れるのももっともである。円ドルは一層の緩和を期待して円高に振れているようだが、どうだろうね。日経も副作用を懸念しているが、筆者も同意見である。

 次は、日本だ。こちらはGDP速報は遅いので、民間エコノミストの予想になる。7-9期は2.9%の増と、駆け込み需要の発生で高めの予想になっている。次の10-12期はマイナス成長である。8月頃には、消費の反動減での落ち込みは予想されていても、マイナスではなかった。猛暑需要の反動と円高による輸出減が下方修正の主な要因だろう。

 言っておくが、これは不運ではない。日本の経済政策は、輸出が好調の時に、財政を退いて内需の充実を怠り、輸出が力尽きたところで失速させてしまうというお得意のパターンを今回もまた演じたということに過ぎない。選挙前に今の5兆円の補正予算を組んでいたら、何のことはなく順調に成長していただろう。デフレが緩んでいれば、円高も和らいでいたはずである。

 本コラムが6月から「予言」していたとおり、日本は経済政策を誤ったわけだが、今後については、あえて、予想外の成長を見せると言っておこう。子ども手当やデフレ効果もあって、消費が粘るように思うのだ。住宅投資も上向きである。むろん、これは希望的観測になる。「未来を変えるちょっとしたヒント」(小野良太)によれば、明るいイメージは将来を創るそうである。だから、言ってみたくなったのだ。 

(今日の日経)
 上場企業経常益リーマンショック前の98%に。尖閣で米3か国会合を提案。均衡みえぬ東アジア・秋田浩之。TPP全9か国と個別合意が必要。円80.37円、米の追加緩和の規模注視。スマートフォンで業績明暗。東アジアサミット、米ロの参加決定。国民とはどうでもよい人・小林省太。経済論壇・脱デフレ金融政策は有効か・福田慎一。
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TPPという最後のバス

2010年10月29日 | 経済
 冷静に考えれば、国益からしてTPPに参加しないことはあり得ない。ただ、いつも合理的に政治が動くとは限らないわけで、戦前で言えば、満州権益にこだわって、日米貿易を捨てたようなこともあった。さて、今回はいかがか。

 TPPの構成国は、言わずと知れた自由貿易国のシンガポール、それと通貨までほぼ共通のブルネイ、農業国のニュージーランド、同様にOECD加盟国でもあるチリ、そこに、米国が参加を表明したことで、急に重要性を帯びてきた。ここまでは、既に日経も報じているところである。

 米国の狙いは、対中国であろう。関税を撤廃した後の自由貿易には、為替の自由化も欠かせない。自国レートを人為的に安くして、輸出攻勢をかけられたらたまらないからである。従って、TPPで自由貿易圏を作ると言って相対的な輸入制限の圧力を中国にかけつつ、人民元の自由化を求めるのが基本戦略になる。

 本来であれば、中国のWTO加盟の際に済ませておくべき課題だったのだが、お人好しにも、日本は、それを見逃して推薦しているのだから世話はない。人民元の非弾力性のあおりで円高に見舞われた上、中国はWTOのルールを無視してレアアースの輸出制限をやめないのだから、恩をあだで返された形である。

 そこで、日本が中国と同様の扱いとなり、参加できないとなれば、米国を中心とする自由貿易圏から孤立する形になる。こういう選択はあり得ないものだ。日本の農林水産業のGDP比は1.5%に過ぎず、それもGDP比で0.5%もの財政支出によって支えられている。経済的には、お荷物でしかない。輸出のGDP比は10倍の15%である。輸出の1割が影響されると想定するだけで、損得は明らかだ。

 むろん、政治的には大変である。農業関係者の反対より、どうやって、農産物の価格低下のメリットを増税で吸収し、生産者に還元してショックを和らげるか、その制度設計が難しい。要すれば、農産物の価格低下に合わせて消費税を上げ、所得保障をすることを政治が宣言しなければならない。

 それは日本にプラスだと考える。農家は高齢者が多く、実は、所得保障は年金でカバーできる部分が大きい。農地を貸し出すことなどを条件とし、国民年金に上乗せする形で行えば、かなり効率化できるだろう。結局、政治が戦略を誤らなければ、戦術としての対応策はいくらも出て来るものなのである。

(今日の日経)
 物価上昇12年度0.6%、日銀展望リポート。法人税率下げ財源、赤字控除枠半減で捻出。農力・個は小さくとも。TPP米が参加歓迎。日銀、次回会合を前倒し。税と一体改革議論着手、社会保障どう再設計。子ども手当、現金のみ。ミャンマー選挙後にらみ駆け引き。中国、外国人にも社会保険。LG電子営業赤字。マツダ期間従業員を定期的に正社員登用。日立2000億円黒字。太陽電池市場2倍に、独で駆け込み。経済教室・世界特許・荒井寿光。
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世代間負担の基礎理論

2010年10月28日 | 社会保障
 昨日の日経夕刊に、「一橋大学政策フォーラム」が掲載された。第1回を飾ったのは、年金問題であり、高山憲之先生を始めとして、年金研究をリードしてきた一橋大の面目躍如というところだろう。年金制度の在り方についての本コラムの考え方は、既に「小論」に記してあるので、今日は基礎理論について触れてみたい。

 公的年金の理論で最も理解が難しいのは、無限の概念を扱うことである。積立方式による民間年金保険では扱わないものでもあり、極めて独特のものだが、絶対に欠かすことができない。

 具体的には、こういうことである。賦課方式によって年金制度が創設されると、第1世代は負担なしに年金がもらえる。第2世代は、第1世代のために保険料を払うが、第3世代から年金をもらうので損得なしである。そして、世代が無限に続けば、第一世代の「得」があるだけで、「損」する世代はないという不思議なことになる。

 経済学の基本的な見方の一つに「フリーランチはない」というものがあるが、賦課方式の年金制度は、その例外の一つだ。むろん、最終世代が現れれば、「損」をすることになるが、最終世代とは「絶滅」を意味するから、それを想定して制度を設計してもしょうがないということになる。

 こういう無限の連鎖で「得」しか生じないという現象は、通貨(シニョレッジ)などでも見られるもので、年金だけのものではない。東大の岩井克人先生が通貨について信用が無限に続くことをエッセイで繰り返し語られるのは、無限の概念の中では、「不思議」なことが現実に起こるからなのである。

 さて、無限の中では「得」だけが生じるという概念が分かると、世代間の損得というのは、あまり意味がないことになる。少子化によって、最終世代が徐々に出始め(子供のいない人とは、そこで世代が途切れるため最終世代の1人になる)、「損」が現れたとしても、問題は、それに耐えられる制度にすることでなくて、少子化自体を止め、絶滅を回避することが重要である。

 どうしても「損」が嫌なら、少子化を起こした人(子供のいない人)には、年金を払わないことで解決するか、あるいは、少子化を起こした人だけに「二重の負担」をしてもらい、その人だけを積立方式に移せば良い。少なくとも、制度全体を変え、子供のいる人まで含めて全員を積立方式に変える必要はない。

 この10年の年金研究の成果の一つは、積立方式への改革は無意味だというが理解されたことだった。ところが、積立方式への改革を唱える研究者がまたぞろ目立つのは残念なことである。高山憲之先生や小塩隆士先生がおられる一橋大では、そうした時計の針を戻すようなことがないことを期待したい。
 
(今日の日経)
 中国、成長率並み所得増、環境税を導入。農力・安心を価値に変える。TPP参加、農業改革カギ。韓国、ウォン安でも輸出鈍化。円2週間ぶり安値。高額医療費払い戻し財源、年2200億円必要。ASEAN・南シナ海紛争回避へ指針。ネットスーパー・住商が本格展開。ホンダ、アジアから供給、タイで生産。経済教室・イラク復興。
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膨張マネーの行方

2010年10月27日 | 経済
 米国が金融緩和を続けて金利が低下しているのだから、株価が上がるのは不思議ではない。その一方、世界経済は減速するのではないかと見られている。企業収益が伸び悩むことになっても、上がった株価は正当化されるものだろうか。

 FRBは金融緩和を続けているが、米国の景気を回復させるには、経済政策の両輪となるべき財政出動が欠かせない。残念ながら、こちらは議会の抵抗もあって十分とは言えない。十分だったとしても、回復までの道のりは長く、従って、金融緩和は、しばらく続くと見なければならない。

 今日の日経では、新興国の代表である中国、インドだけでなく、インドネシアやフィリピンでのマネーの膨張ぶりも紹介されている。昨日は、中東市場への流入が報じられたばかりであった。日経ビジネスによれば、マネー流入はアフリカにまで及んでいるという。

 もともと、米国でバブルが膨らんだのは、日本が緊縮財政とゼロ金利を組み合わせたことで、円キャリートレードによるマネーが流入したためである。その崩壊は、別段、日本が金融を引き締めたためではなく、限界に達して自然に弾けた。バブルは、金融緩和の維持だけでは保たれず、金融緩和の加速をやめるだけで崩れるものなのである。

 米国は輸出を伸ばすためにドル安を志向しているが、安ければ良いというものではない。既に米国の輸出型企業は好調な業績を上げている。ある程度、ドルが下がれば、あとは輸出体制が整い、次第に増えるのを待つという状態になる。極端なドル安は、資源などの輸入価格を引き上げて国内消費を冷やすことにもなりかねない。G20でのガイトナー財務長官の「強いドル」発言には多少の本音も含まれている。

 ということは、マネーの膨張加速による上げ相場も長くはないということになる。しかも、世界経済は減速に向かっているのだから、株価を支えるもう一つの柱の企業収益も低下せざるを得ない。各国の経済構造は様々だが、内需を十分持たない国ほど苦戦することになるだろう。その意味で、中国が一番危うい。

 まあ、日本も御同様だ。補正予算を決定したものの、「厳選した」結果、来年度に繰り越される地方交付税で水膨れさせ、効果を限定的にしたようである。日本の財政当局は、何を考えているのやら。せめて、地方に前倒し執行を呼びかけるくらいのことをしてはどうか。相変わらずの危機感ぶりである。

(今日の日経)
 時価総額2年ぶり高水準。膨張マネー新興国へ。一俵8000円とし海外のコメと戦う。フーガにハイブリッドLi電池。外貨準備9月18兆円増。物価連動債マイナス利回り。補正予算、交付税の大半は来年度に。中国BYD純利益99%減。イオン衣料生産、2年で中国5割以下に。ミネベア、カンボジアに工場。タクシー大手FC化加速。マンション戸別太陽光発電全国販売を開始。2割明るいLED証明。経済教室・中国を考える・瀬口清之。
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全体を見ていますか

2010年10月26日 | 経済
 何事も待ちの姿勢の財務省も打って出たようだ。法人税の財源論争である。法人税下げは、見栄えは良いが、具体に検討すると、一体何が良いのか分からなくなるという程度の代物なので、そこで勝負をつけようという腹積もりなのだろう。

 法人減税論の最大の欠点は、国内投資の促進を目的とするのに、漏れが大きいことである。例えば、銀行や電力は、法人減税でキャッシュが増えたからといって、国内投資を増やせる状況にない。製造業だって、海外に投資しようとするだろう。政策を比較すれば、投資促進の税制や補助金の方が効果が大きいのは明らかである。

 例えば、今日の日経では、「3メガ銀の利益1兆円、危機前水準を回復」とあるが、法人減税5%分の500億円を、銀行は設備投資に使ってくれるだろうか。そのカネがあれば、環境関係の国内投資の補助金に充てた方がマシである。ニッセイ基礎研の試算では、低炭素型雇用創出産業立地支援補助金は、社会保障費の削減効果と所得税・消費税の増収効果だけで補助額の9割もの効果があるとされる。

 財務省とすれば、法人減税の財源のためにやめることになる各種の税制優遇措置と比較させ、どちらの必要性が高いかを分からせる魂胆だろう。産業界は純粋な減税を求めるが、それなら、法人減税より投資促進策の拡張の方に軍配が上がる。それは「特区」制度ということかもしれない。理屈の分かる人間なら、そういう結論になる。

 笑ってしまうのは、財務省は、法人税率を5%低下させるのに、財源が2兆円必要と言い出した点である。産業界や経産省は1兆円としており、この違いは、将来的な税収見込みによる。つまり、財務省は14兆円まで伸びると自白しているのと同じだ。これは10年度予算見込みより8兆円も多い。つまり、その分だけ歳出を拡大していかないと、経済にはデフレ圧力がかかることを意味する。

 今日の日経にあるように、日銀は展望リポートで消費者物価指数が11年度0%前後と予測している。こうした需要不足の環境で、財務省は、大幅な税収増を「認識している」にもかかわらず、10年度補正後より、歳出が5兆円も少ない予算を組もうとしているわけだ。二枚舌なのか、分裂しているのか分からないが、矛盾に満ちていて、財政当局の体をなしていない。

 英国は10兆円の歳出削減計画をまとめたが、FTは「必要なら財政出動もすべき、引き締めのための引き締めに陥るな」とし、エコノミストは「成長停滞の兆候あれば、削減緩める必要あり」とする。当コラム(10/21)と同じ認識である。こういうバランス感覚や広い視野が必要だろう。日本の諸君、合理性を基に、全体を見ながら、経済の舵取りを考えてくれたまえ。それは、日経を読むだけで分かることなのだよ。

(今日の日経)
 特区企業に税優遇。円一時80円41銭。日印関税撤廃10年で9割。医療費推計を下方修正、厚労省25年度52.3兆円に、10年度予算ベース37.5兆円、伸び率は年2.2%。法人税率下げ財源で応酬。輸出数量2.6%低下7-9月指数。反日デモ、内政批判に波及。英歳出削減「実験」の様相。中国が電力供給削減、素材生産を制限。台湾電子部品9月6.6%減、ロシアGDP3.4%に減速。海外マネー中東市場に流入。薄型TV出荷2台目需要本格化。捨てる決断、アップルの教訓。経済教室・中国を考える・天児慧。
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労働時間にもある屈曲

2010年10月25日 | 社会保障
 黒田先生には良いグラフを見せていただいた。さすが若手研究者の有望株ですな。日本の年間実労働時間が長期的な減少傾向にある中で、壮年男性正社員については、これが当てはまらないという。実に、おもしろい視点ではないか。

 本コラムでは、1997年に、多くの経済、社会統計で屈曲が見られるということを指摘している。むろん、これはハシモトデフレによって経済構造が変化してしまったためだ。黒田先生の労働時間のグラフにも、この1997年の屈曲が明確に見られる。

 それだけでなく、このグラフの推移は景気動向をよく表している。労働時間は、1987年から縮小し、93年から横ばいとなり、98年を底に急増する。他方、景気は、87年頃には円高不況を乗り越えて加速し、その後、バブル崩壊で減速しながらも、93年頃には底に達して横ばいとなり、98年以降、急激に悪化する。緩やかな回復に移るのは2002年以降である。

 すなわち、壮年男性正社員の労働時間は、景気が良くなると低下し、景気が悪くなると上昇するということである。おそらく、景気が良いと雇用を増やせるのに対し、景気が悪いと雇用を減らして自らが仕事を背負い込まなければならないからだろう。

 黒田先生は、単に休日増をするたけでは、平日にしわ寄せされるだけで疲れがとれないという指摘をしているが、これは良い観察だと思う。施策として「勤務間インターバル制度」を提案しているのも適切ではないか。ただ、これを聞くと、深夜まで長時間働く一方、朝は遅めに出勤する霞ヶ関のお役人を連想してしまうのだが。

 労働時間の短縮のためには、もう一つ、正規、非正規の行き来を容易にすることも有効に思う。具体的には、「小論」にあるように、社会保険の130万円の壁を取り払うということである。こうすれば、不況期に、非正規を解雇し、正規が集中して働くというのではなく、全体で労働時間を分け合うことができるようになる。

 それにしても、男性フルタイム雇用者の平日1日当たり労働時間が1976年から一貫して増加し、睡眠時間も短くなっているというのは驚きである。うつ病などが増えるのも無理はない。経済とは何を目指すものなのか、考えさせられるところである。 

(今日の日経)
 羽田・成田のアジア便自由化。大卒内定3年連続減、製造業はプラス。ユニチャームはエジプト進出。TPP参加論強まる、対米関係強化、中国けん制狙う。来年中ごろまでは1%程度の成長・武藤敏郎。岩田一政・デフレ均衡に円高? インドネシア自動車大国へ。EU、為替介入回避の合意を。東芝・下水のリン回収。科学者と企業連携カギ。武田・女性同士で朝食会。昼寝用の仮眠室。補助金転用のルール必要・小宮山宏。経済教室・労働時間1日当たり一貫して増加・黒田祥子。
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10/24の日経

2010年10月24日 | 経済
 今日はお休みにします。秋田さんのは、なかなか良かったんだけど、こちらが疲れ気味なのでね。

(今日の日経)
 G20数値基準見送り。孫への贈与、税優遇拡大。子ども手当上積み2000~3000円。米中が拍子抜けした日・秋田浩之。低炭素型産業への補助活用で設備投資額1400億円。インド、中国重視鮮明に。反日デモ四川省で再発。読書・戦略的思考をどう実践するか、肥満と飢餓、捕食者なき世界。
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中国経済の失速

2010年10月22日 | 経済
 これから中国経済は失速し、スタグフレーションを起こしながら、成長率は半減することになるだろう。昨日の日経夕刊は、「鈍化したが、高成長を維持」と評価していたが、筆者の見方は異なる。まあ、転換点の見極めは、難しいものだけどね。

 経済が対外不均衡を起こさずに成長するためには、内需に見合った設備投資にすることが必要だ。高度成長を実現した下村理論の根幹は、内需を補充しつつ、目いっぱいの設備投資を引き出し、消費者物価の上昇をものともしないで高成長を得るというものだ。こうすれば、対外不均衡は生じない。逆に言えば、対外不均衡の拡大が許されない中では、内需に合わた成長しかできないことになる。

 今日の日経にあるように、中国の1~9月のGDP成長率は10.6%だったが、消費の寄与率は3.6%に過ぎない。これが中国経済の基礎力と見なければならない。実際には、投資が6.3%もあって、成長をけん引しているわけだが、これではGDPに占める投資率がますます高まることになり、持続不可能である。

 持続的な経済のGDP構成を、消費6、投資3、輸出1として、中国の消費の寄与率3.6%をベースに考えると、投資はその半分程度1.8%、輸出は更に1/3の0.6%となり、合計で6%成長ということになる。大雑把に言えば、中国の成長率は半減するということを意味し、中国が目標としている8%成長もなかなか難しいということだ。

 周りを眺めれば、インドであれ、インドネシアであれ、新興国でも6~7%程度の成長は、ごく普通なのだから、米国という拡大する巨大市場を失った中国が、同様の成長率まで落ちることには何の不自然さもない。これまでが出来すぎだったのだ。しかも、高まりすぎた投資率を低下させなければならない課題も抱えている。

 その上、不動産バブルもある。中国のバブルが怖いのは、単に価格が高騰したというだけでなく、「配当」を供給すべき母体の経済成長が半減することにある。成長という利回りが半減すれば、資産価格が半減するのは言うまでもない。しかも、不動産の過剰投資は既に積み上がっているわけだ。

 日本の高度成長の終わり頃もそうだったのだが、物価上昇率は高いままなのに、設備過剰が生ずるようになり、列島改造ブームの傷も癒えがたかった。中国も似たようなことになるだろう。逃げるなら、「まだいける」などと言う人がいる今のうちである。対外不均衡にない投資先なんて、いくらでもあるのだから。

(今日の日経)
 レアアース日越共同開発。G20米、GDP比で一定以下に。社説・中国は消費の役割を高めよ。DRAM1年ぶり安値。新医療制度減益にツケ800億円負担増。需給不均衡世界に重く・白井さゆり。補正予算、フレームで不明確。中国消費拡大急務に。中国、タイと海軍合同演習。中国消費拡大急務に。ホンダ新車受注10月35%減。大機・公益企業の増資。経済教室・資格制度の能力開示・福井秀夫。
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塞翁が馬の欧州経済

2010年10月21日 | 経済
 ギリシャが危機に襲われたとき、本コラムは、即座に、ECBが国債の買い取りをして金融緩和すべきだと指摘し、ユーロの価値にこだわることを批判した。結局、ECBは、そこに追い込まれ、本コラムの指摘(5/30)どおりに、ユーロ安は輸出拡大をもたらして成長をけん引した。完全に読み切っていたのだが、さすがに欧州の成長回復がこれほどとは思わなかった。

 今日の日経によれば、ドイツは今年3%超の成長を達成するという。円高に苦しむ日本から見れば、うらやましい限りだ。ドイツは、ギリシャ危機に際して、いち早く財政再建を打ち出し、これが欧州景気を停滞させるのではないかと懸念されたが、これほどの成長を達成した「後」であれば、あまり無理のないものになる。

 ドイツの財政再建策は、2011年から14年の4年間に、800億ユーロの歳出削減であるから、年では200億ユーロ、ドイツGDPは約2.4兆ユーロなので、GDP比は1%にも満たないことになる。ここで3%超の成長率なら、経済が呑み込める範囲である。輸出から成長、それを待っての緩やかな財政再建であり、見事な舵取りだ。まあ、筆者としては、結果的に上手くいっただけであるし、より高い成長で欧州経済を引っ張るべきだと思うが、まずは及第としよう。

 ついでに英国も見てみると、2014年までに810億ポンド(約10兆円)の財政再建をするとしているから、その4分の1は、約1.4兆ポンドであるGDPの1.4%である。成長率の見通しは1.7%程度とされるから、削減規模はかなり大きく、こちらは先行きが心配になる。景気を見ながらの進度調整が必要になってくるだろう。

 それでも、2009年度予算よりもGDP比で2%も削減した日本と比べれば、ずっとマシである。おまけに日本は、予備費1兆円の執行を渋り、3兆円以上の税収増を隠して、GDP比で3%近い緊縮財政を敷こうとしたのだから、何をかいわんやである。デフレにならないのが不思議だ。そして、5兆円の補正予算、その次に緊縮になる枠組の来年度予算と、上がったり、下がったりである。

 いつぞやに、サロー先生から「最悪経済政策賞」をいただいた日本らしい迷走ぶりである。日本だけがどうしてデフレなのか、それは経済政策の彼我の差によるものである。なのに、人口減のせいにしてみたりする。こんなに大きく他国の経済政策が報じられているのに、自分のバカさ加減に気がつかないものなのかね。

(今日の日経)
 外資誘致へ法人税優遇、5年間10~15%下げ。NZ首相日本も参加をTPP。国益・地元、普天間の解は。海自潜水艦、増隻へ。中国、インフレ抑止躍起、緩やか元高容認。不均衡是正、為替以外でも、IMF専務理事。G20前に円高圧力。14年までに英、10兆円歳出削減。独、今年3%超成長。レアアース、欧米向けも停滞。脚力高めるロボ。ハイブリット並み燃費のエンジン・マツダ、円高でも国内生産拡大。DVDレンタル縮小加速。経済教室・失業は将来世代に悪影響・小原美紀
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スタグフレーションの影

2010年10月20日 | 経済
 通常、利上げをすると自国通貨高になるものだが、突然の中国の利上げに対して、マーケットの反応はドル買いだった。中国の景気減速の見方からだが、これほど先行きに警戒感があったとは。現実の経済は、ときどき教科書とは逆の動きをする。

 リーマンショック以降、中国は世界経済のけん引役になってきたが、限界も見えてきたということであろう。在庫回復に伴う輸出増は一服し、国内の耐久財購入の刺激策も一巡した。金融緩和に伴う不動産投資は過熱気味になっている。メインシナリオは、これまでの勢いは弱まるという程度だろうが、「潮時」を探しているというところだろう。

 米国は元高ドル安を求め、対中輸出の拡大と輸入減少による国内生産の拡大を望んでいるが、中国の景気が減速すると、仮に元高が実現しても、対中輸出が伸びるとは限らない。元高の効果は輸入防圧にとどまるから、それだけなら、為替以外の手段もあり得るわけで、米国の政策に変化が出るかもしれない。

 それにしても、インフレ懸念があるなら、元高ドル安による輸入物価の低下で対応すれば良いものを、中国の経済政策には不自然さが拭えない。輸出減による産業への打撃を心配しているのだろうが、輸出減によって資本流入を減らすことは、金融引き締めにも効果的であるように思う。

 中国の不動産投資はバブルになっているので、金融引き締めによって弾けてしまうおそれもある。中国の場合、金融不安を防ぐことは可能だろうが、不動産投資の積み上がりから言って、大きな内需の項目を失うことは間違いない。そうなれば、資本流入で食糧などの必需品のインフレは収まらないのに、不況にもなるという「スタグフレーション」になりかねない。

 日本の高度成長の終わりは、円高を阻止しようとして、列島改造ブームでバブルを作り、インフレに慌てて引き締めをしたために、しばらくスタグフレーションに苦しむことになった。どうしても、こういうことを連想してしまう。 

 欧州と米国の経済の停滞のあと、中国も減速するとなると、インドやASEANなど内需主導で成長している国だけが残ることになる。日本自身も内需を拡大しながら、こうした国々との双方向の貿易を拡大して、新たな戦略的互恵関係を築いていくことが重要だろう。

(今日の日経)
 中国0.25%利上げインフレ懸念で引き締め。外相TPP参加に強い意欲。同盟強化CSISの9提言。景気足踏みに下方修正、10月月例。地方議員年金廃止へ、負担1.3兆円。中国利上げでドル買い。北京コンセンサス・Sハルパー。英、原潜退役先送り。買い物弱者向けスーパー。東エレク、中国で生産。大機・ケインズと茶会政治と二番底。経済教室・二院制の国際比較・岩崎美紀子。
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