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経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・V字回復の瓦解

2014年08月31日 | 経済(主なもの)
 日経は、半月前、7-9月期について、消費が6月の水準を保つだけで前期より高まる「ゲタ」を履いているとして、読者を元気づけていたが、7月の家計調査の実質季節調整済指数は、前月比で-0.2の低下となり、基調を示す「除く住居等」は-0.8にもなった。本コラムの警告どおり「ゲタ」は割れ、多くのエコノミストのV字回復への期待は、半月もたずに瓦解した。

 7月の鉱工業生産指数は、投資財の特定要因の押し上げで、わずかに生産がプラスになっただけで、在庫は前回不況時に匹敵する水準にまで達し、年内は生産調整が続くことが避けられなくなった。それどころか、消費財の生産・出荷は、未だ下がり続けており、8月の鉱工業生産は悪化する恐れが高い。デフレスパイラル勃発の崖縁に立つ、不穏な情勢にある。

………
 まずは、家計調査の図から見ていただこう。7月は見事にお辞儀をしている。これから発表される消費総合は強めに出がちだが、供給側統計を見る限り、同じ傾向となろう。8/29公表の「消費税率引上げ後の消費動向等について」では、8月の飲食料品や家電は、7月に輪をかけて悪化している。8月の新車販売も底割れした。したがって、消費の底バイは続くと考えられ、7-9月期のV字回復は、望み難くなっている。

 それにも増して衝撃的なのは、勤労者世帯の実質実収入が下がり、増税後の最低を更新したことだ。前年度平均との差は-6.0ポイントに広がった。これに伴い、消費性向は75.3%という高水準になっている。悪天候でサイフの紐が締まったわけではなく、収入の割には多くの消費がなされている。このことは、反動減が薄れるのを待つだけでは虚しく、消費の回復には、在りあり得ぬほどの大幅な収入増が必要なことを示している。

 収入減に関し、7月の労働力調査を見ると、季節調整値の就業者数は6万人減、完全失業率は3.8%と0.1ポイントの上昇である。職業紹介状況は、季節調整値で新規求人倍率が-0.01の1.66となり、新規求人数は-1.5%の低下となった。このような雇用状況の悪化は、家計調査の収入減と符合する。収入増自体が厳しくなっていると見るべきだろう。

(図1)


………
 次に、鉱工業生産を見ていく。7月の在庫は111.5へ上昇し、前回の景気後退の谷である2012年後半に匹敵する水準となった。2012年は、2月に白川日銀による一段の金融緩和がなされ、いったん円高是正に成功したものの、再び円高へ押し返され、野田民主党政権が手を拱くうちに、景気はズルズルと後退していった。そうした時分の在庫水準になったわけだ。

 その後、在庫は、安倍政権が誕生した12月に、出荷が底入れしたことから、4か月程かかって、安定した水準まで低下した。おそらく、現時点においても、このあたりが適正な水準だろうと考えられる。アベノミクスの立ち上がりの消費急伸の時でさえ、在庫減らしに4か月を要したのであるから、今の在庫が適正な水準まで下がり、生産の抑制が不要になるには、少なくとも年内はかかるだろう。当然、これは収入が伸び悩む要因となる。

 今のシナリオは、この7月で在庫が天井を打つことが前提である。1997年の消費増税の場合は、在庫増が止まるだけで翌年1月までかかり、生産と出荷の底入れには、更に半年を要している。在庫増が止まっていない現時点では、未だ消費増税のダメージの全貌が判明したとは言えず、これから、前回同様の「生産減→所得減→消費減→出荷減」というデフレスパイラルが勃発する恐れが十分にある。

 もはや、「V字回復はあるか」といった、暢気なことを言っていられる生易しい状況ではなくなった。毎月、奈落を覗き込むような心配をせねばならない。「再増税は可能か」というセリフは、非線形的に悪化する経済の怖さを知らぬ者の言い草だろう。もっとも、1997年には、大型金融破綻を起こした11月に、緊縮を目指す「財政構造改革法」を成立させているのだから、「バンザイ突撃」の歴史は繰り返されるかもしれない。

(図2)


………
 筆者とて、このまま何とか収まってほしいと願っている。1997年当時とは違い、大型金融破綻の危険性はないし、かつては、成長速度が高かった分、転倒した際のダメージは大きかったが、今は、幸か不幸か、そんな勢いはない。並みの景気後退で済んでくれないだろうかと、希望的観測もしているところだ。

 それにしても、消費増税を1%にとどめ、代わりに5.4兆円の補正予算を圧縮していたら、消費の落ち込みは小さくて済み、公共事業によるクラウディングアウトもなく、民間工事が補ってくれただろう。景気対策のために、復興特別法人税の廃止で、財源に大穴を開け、カネ余りの企業にバラ撒く必然性もなかった。

 「猛アクセルに急ブレーキ」、「ゴー&ストップ」の度外れた財政を「第二の矢」に据えたりするから、こうなるのだ。「第一の矢」の金融政策にすがったり、「第三の矢」と称して「成長には、成長させる政策を打て」といった同義反復に酔う必要はない。穏健な財政をするだけで、経済はおのずと成長する。なぜ、日本にそれができないのか、最後の切り札の「異次元緩和」を消費増税のドブに捨てた今、よくよく考えてほしい。



(昨日の日経)
 インドでタタと水処理。繰越控除縮小で法人減税に財源メド。景気回復に足踏み感、消費に悪天候が冷や水。無人タクシー。軽の生産13か月ぶり減。

(今日の日経)
 東芝が量子暗号実用化へ。景気にまさかの下ブレ・滝田洋一。中国4大銀に不良債権の陰。新車販売8月9%減、落ち込み最大。五輪の品格・大島三緒。

※五輪を迎えるにふさわしい社会の構築が大事とは同感だ。青写真は1/12のとおり。読み返してみると、その後の経済の動きは大体合っているね。
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1997年の生産・出荷・在庫

2014年08月28日 | 経済
 アベノミクスは、1997年のハシモトデフレの二の舞となるおそれがある。そこで、鉱工業生産指数を詳しく見ることで、ハシモトデフレがどういう経緯をたどったのかを確かめてみることにしよう。これにより、アベノミクスの運命を占おうというわけである。

………
 当時は、今と違い、デフレでもなかったし、2年連続で2.7%成長を遂げていて、1997年の春闘では2.9%の賃上げも実現していた。それだけの勢いが経済にはあった。これが分かるのが、図における1996年の生産と出荷の「上り坂」である。そして、駆け込み需要により、1997年1~3月に出荷が高まり、在庫が減るという動きが見られた。

 4月、消費増税によって、生産と出荷は、いったん落ち込むものの、5月には戻し、7月まで、その水準を保つことになる。これは、現在からすると問題のない動きに思えるが、成長を前提とする経済では深刻な事態だった。出荷が伸びないために、5、6、7と月を追って在庫が急増していったからである。

 そのため、8月になると、生産調整が始まった。ところが、生産を減らしても、9月以降、出荷も並行して減り始めたために、在庫が減るどころか、増加の止まらない状況に至る。生産減→所得減→消費減→出荷減のメカニズムが働くから、生産を減らしたからといって、すぐには在庫減に結びつかないのである。

 半年後の1998年1月になって、生産調整のスピードが出荷減に追いつき、ようやく在庫増が止まる。それでも、依然として、生産と出荷が共に減っていく局面は続き、底入れを果たすのは、更に半年後の8月になってからであった。その後の回復は、極めて緩慢であり、増税前の水準に戻すのに、そこから1年半を要し、2000年春頃まで待たねばならなかった。

 その間も、在庫減らしは続き、成長の足を引っ張りどおしである。こちらが底入れするのは、1999年秋頃であった。もう、2000年のIT景気の直前の時期になっていた。結局、一気の緊縮財政という無謀な試みから、立ち直るだけで3年を要している。そのうえ、デフレ経済という深刻な構造問題を残したのである。

(図)


………
 当時を経験した者からすると、ハシモトデフレは、増税による消費停滞から、在庫急増、生産調整となって、景気後退へ至ったというものであり、発端は別として、景気後退にはよくある事象が見られたという、平凡な認識である。輸出は順調で、アジア通貨危機は、ほとんど気にならず、大型金融破綻が起こって金詰りに陥ったのは、もはや、在庫や生産が深刻な状態になってからだった。

 したがって、財政当局が、失敗のほとぼりがさめた頃、「7-9月期に消費はリバウンドした」という一点をもって、「景気後退の犯人はアジア通貨危機や大型金融破綻」と言い出したのには、実に奇妙な感じがしたものである。まあ、誰しも自己弁護の権利はあるのだから、本当の問題は、それに巻かれるような忘れっぽい人達にあろう。

 さて、5、6月と在庫を急増させてしまったアベノミクスの行方だが、それは金曜日に7月の鉱工業生産の数字が出てから語ることにしようかね。
 
(今日の日経)
 インドからレアアース。経団連、政治献金再開へ、年末の法人税改革にらむ。
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8/27の日経

2014年08月27日 | 今日の日経
 8月の月例経済では「駆け込みの反動減の長期化が景気を下押し」とされたが、駆け込んだ分は、4-6月期にすべて吐き出しているのだから、7月以降の停滞は、消費増税による実質所得の減少だけが原因となる。ごまかしてはいかんよ。まあ、それを承知の上で、「反動減」と言い続けるしかないのだろう。

 今週の日経ビジネスでは、「消費税10%を首相が準備指示」とあるが、政府だって、みずからの経済見通しが不能になったくらいの認識はあろう。それが分からないほど無能ではあるまい。当初の1.4%成長の見通しから0.4%程度へ、成長率を1%も落とす失敗をしてしまったわけで、これを「腰折れ」と言わずに何と言うべきか。

 これもまた「想定内」という言葉と同様、増税を決めるまでは、いかなる状況になろうと「腰折れ」ではないとするのだろうな。マイナス成長にでもならなければ「腰折れ」ではないという話ではないか。庶民は、日経ビジネスのとおり「売れるクルマは安物ばかり」というありさま。成長なき増税とは、こういう寂しいものなのだ。

(今日の日経)
 東電が域外で大口供給。医療費40兆円に迫る。景気「夏の回復」鈍く・月例経済。経済ご意見番61人決定。西日本、雨で遠のく客足、白物家電7月17%減。経済教室・中所得の罠と排他性・戸堂康之。

(昨日の日経)
 バングラデシュに6000億円。LPガスから水素。学力テストの底上げ進む。建材高が実態経済に影、マンション発売減、背景に公共事業前倒し。地方交付税は8000億円減額、税収増で。外食7月2.5%減。経済教室・中所得の罠・大野健一。

※増税対策の公共事業でクラウディングアウトか。足りない消費に増税し、資金をダブつかせる企業に減税と、日本の経済運営は過不足を均す発想がない。地方の吸い上げも大きいね。
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GDPを予測するということ

2014年08月24日 | 経済
 4-6月期GDPの予測を直前に大きく変更して「想定内」にしたと、批判を受けているエコノミストもいるようだが、ある程度、仕方のない部分もある。四半期の結果は月次の積み重ねなので、予測も、4月、5月、6月と新たな統計が出るつどに修正をしていくものだからだ。もっとも、6月が出てしまえば、予測と言うより、どう計算するかになる。

 今回の予測の難しさは、5、6月に、どのくらい反動減が戻るかの見極めだった。5月を見て、6月に大きく戻る可能性を捨てられたかどうかで、腕前が問われたと思う。ここで、「消費増税の悪影響は一時的」という思い込みが災いしたのではなかろうか。

 そもそも、基本的な問題として、消費増税による実質賃金の低下を十分に織り込んでいたかどうか、賃上げについて定期昇給込みの「過大」な数字に惑わされていなかったかが、エコノミストの優劣に関わると言える。これらは月次統計を見なくても分かることだからだ。

 本コラムは、4月が出た直後に「醒めるとき」で「重症」という診断を下していたから、まずまずだったのではないか。あとは、5月に「想定内の破綻」、6月に「消費が死んだ」である。予測で大事なのは、結果よりもプロセスであり、その検証可能性である。

 さて、来週末には7月の結果が出る。いつものセリフだが、これで、7-9月期GDPという「未来の1/3」が決まる。注目は、6月の水準を指す「ゲタ」を割ることがないかだ。そんなことになると、「ゲタ」だけを頼りに、7-9月期は高成長としている人たちの論拠が崩れることになる。

 ちなみに、内閣府の8/22「消費税率引上げ後の消費動向等について」によれば、飲食料品の前年同月比は、6月より7月平均が低く、8月平均は更に悪化している。家電は、7月に前月より戻したものの、8月に再び低下中だ。7-9月期もカレンダーは半分が過ぎ去っている。

 来週末の本当に大事なデータは、そちらより、鉱工業生産の在庫だ。経済の予測で一番難しいのは、非線形的な悪循環の発生であり、在庫増→生産減→所得減→消費減→在庫増が起こらないかである。これで1997年は惨事となった。「正史」はアジア通貨危機のせいにしているがね。では、また来週。

(今日の日経)
 病院丸ごと輸出。不当解雇金銭補償で解決、政府が検討着手。代ゼミ20校閉鎖。
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8/22の日経

2014年08月22日 | 今日の日経
 地方に焦点を当てた良記事だったね。「消費は物価と賃金で決まる」という当たり前の事実だ。外したエコノミストは基本に立ち帰りたい。グラフで注意すべきは、関東や都市部でも5月の戻しの水準が高かっただけで、その後の推移は、あまり違いがないことだ。経済水準の高い地域は増税に対応しやすかったのだろう。その後の推移は「全国的」に弱いね。

 センター予測だが、米国に反動減はないのかな。中国は危ういし、海外は余禄と思った方が良い。公需の予算は前年並み、施工高で実質減か。賃金と雇用は、在庫増の中で伸び続けられるのかが鍵だ。したがって、ポイントは、消費者マインドより、鉱工業生産の在庫、所定外労働時間になる。これらが早く出る。悲惨な1997年も雇用悪化は晩秋からだったよ。

 前回増税は、翌年10月になっても、まだ底入れしていなかった。そんな中で再増税になる可能性もあるということだよ。「増税しないと将来の不確実性から消費抑制の要因になる」らしいが、それなら、安心感で一杯の足元の消費は良いはず。要因の軽重が大事だ。これから起こることは、先達の鈴木淑夫先生に学ぶべし。17年の時を越え、HPに残してくれているのだから。

(今日の日経)
 イオンが商業施設に保育所。20代が産む希望。増税後の消費は地方苦戦、賃金弱く、ガソリン高圧迫。年金納付に地域差大きく。駅ナカにセルフレジ。大機・中国バブル・山河。経済教室・7-9月から回復は崩れず・日経センター予測・竹内淳。
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8/21の日経

2014年08月21日 | 今日の日経
 7月のコンビニの回復は鈍かったし、8/19の百貨店も同様だった。第一生命の高橋大輝さんによれば、百貨店の季調値は前月比マイナスらしい。7月の貿易統計も純輸出は横ばい圏で牽引力はなかった。気になるのは在庫増と減産の行方だ。止まらなければ、1997年の二の舞になるから、ハラハラして眺めている。V字期待の楽観論者は気楽でうらやましいよ。

 2011/5/30の社会保障改革に関する集中検討会議(第9回)では、1997年の消費増税のマイナスの所得効果は0.3兆円で、景気後退の主因ではないとされたが、今回の4-6月期の家計消費(除く帰属家賃)は、駆け込みの2倍を超える落ち込み分が年換算値で4.1兆円にもなる。これの主因は何かな、お天気かね。

 それから、検討会議の報告では、「増税や負担増が必ずしも景気後退をまねいてはいない」らしいし、「将来不安が払しょくされることにより、経済に与える影響は小さくなる 」そうだ。楽観論者は、これらに期待しているのかもしれない。「物価が上がれば、需要は減る」という単純な原理しか信用しない筆者には、なかなか呑み込めない。

※お役所の採用した小さな数字の問題点は、KitaAlpsさんの4/5「消費増税の恒久的影響と短期的影響」を参照。なお、3か月ぶりの8/20更新記事「資金循環で見る「異次元緩和」後の1年」もある。


(今日の日経)
 景気対策に1兆円確保。円安の背後に郵貯。7月0.7%減収・コンビニの回復鈍く。年金改革を社保審で議論。マツダ無借金へ。バイト時給高止まり。製紙が減産を強化。経済教室・医療介護で雇用を・浦川邦夫。

※ちょうどPBの過剰達成分が隠れる感じかな。
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8/19の日経

2014年08月19日 | 今日の日経
 1997年9月から始まった鈴木淑夫先生の「月例景気見通し」を読み返しているところだ。その出だしには、こうある。「日本経済は軽い在庫調整局面に入っている。4月以降出荷が減少傾向にあり、… 在庫率が急上昇しているためだ。在庫を減らすため、鉱工業生産は少なくとも11月頃までは増加しないだろう」 今と、よく似ている。季節も同じだしね。その後、どうなったかは、順次、読めば分かるよ。

(今日の日経)
 スカイマーク支援検討・エアアジア。賃金増の波が正社員にも。子持ち新人ありでしょ。長期金利の終値0.5%割れ。臨時国会は地方創生に力。中国住宅、都市の9割下落。6月末倉庫内在庫が5年3か月ぶり高水準。経済教室・消費者新訴訟・山本豊。

※エアバスの心算はこれかな。※都会での少子化対策も大事よ。※在庫はリーマンショック後と同様の事態ということだ。
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経済停滞の構造・税と社会保険料

2014年08月17日 | 社会保障
 4-6月期の家計消費は、仮想的な支出である帰属家賃を除くと、前期比-6.2となり、1-3月期の+2.4の2倍から更に-1.4も低いという落ち込みぶりだった。こうなると、落ち込みは反動減だからとは、誰も言い訳できず、消費増税が大打撃を与えたと認めざるを得ない。雇用者報酬の前期比は-1.8だったから、これでもマシだったかもしれない。

 これほどの落ち込みは、政府も、マスコミも、そして、多くのエコノミストにとっても、想定外だったようだが、「物価が上がれば、需要は減る」という経済の原理は、今回についても、たがうことなく働き、「増税すれば、将来への安心感から消費は増える」という、都合の良い幻想を打ち砕いた。

 想定外は、アンケートに「想定内」と答えていた経営者にとっても同じだったようだ。その証拠は在庫の急増であり、消費の落ち込みが見込みを超えていたことを示している。ただし、これには同情の余地がある。純増税は、生産によって従業員に与えていた所得を、消費するまでに抜き取り、必ず生産物を余らせるからである。生産を絞っても余りは出るのだ。

 実は、こうしたメカニズムが構造化していることが、先進国において、なかなか景気回復が加速しない原因の一つではないかと考えられる。景気が回復しても、所得増は、税や社会保険料によって殺がれてしまい、なかなか消費が加速せず、好循環へ結びつかない。日本は、その極端な例というわけである。

………
 1997年の消費増税による大失敗の教訓は、消費増税、公共事業の削減、社会保険の負担増を一度にするのは危険というものだった。このうち、今回、活かされたのは、公共事業はキープする(増やしてはいない)という一点のみであり、消費増税に至っては、1.5倍の引き上げ幅にするという無反省ぶりだった。社会保険も、年金保険料は予定どおりアップし、わざわざ、年金給付の1.7%カットも実施された。

 そうした厚生年金の収支状況は、どういうものか、ちょうど、8/8に2013年度決算が公表されたのでチェックしてみよう。まず、見方だが、厚生年金は、積立金を計画的に取り崩すことで収支を調整しているので、これを除いたもので確める必要がある。これは、1.9兆円の赤字であった。とは言え、前年度決算で3.5兆円の赤字だったから、1.6兆円の収支改善であり、それだけ経済にはデフレ圧力がかかっていたことになる。

 このベースでの収支は、2011年度に1.1兆円、2012年度は1.4兆円、そして、1.6兆円と着実に改善してきている。2013年度の改善の最大の要因は、GPIFの運用収入が1.3兆円伸びたことであり、次いで、保険料収入の増加が0.9兆円であった。他方、支出は、給付と基礎年金繰入で0.15兆円の増加にとどまった。毎年の保険料の引上げと、支給開始年齢を遅らせるという制度改革に加え、景気と雇用の回復が寄与したと考えられる。

………
 景気が回復すれば、税収が上向くのと同じで、社会保険の収支も改善する。税収増については、7/5に国の分、7/13に地方の分を、本コラムで取り上げたが、それぞれ、1.6兆円と0.9兆円である。単純に、国、地方、年金を足し合わせれば、4.1兆円にもなるわけで、これが、公に留まらずに、民に流れていれば、景気は一段と加速していただろう。

 日本が福祉国家である以上、税率や保険料率が高いことは当然である。大事なのは、景気回復時には、それが「自動ブレーキ」になるをことを、認識しておくことである。景気が上向いたと、調子に乗って増税に走れば、ダブルに効いて、思わぬ景気失速を招いてしまう。特に、日本は、国・地方・社会保険を統合して見る習慣に欠けるので、要注意である。

 最後に、今回のGDP速報の意外な点を一つ。実質値の変更のために、2012暦年の実質成長率が持ち上がり、2013暦年の1.5%成長と並んでしまった。つまり、アベノミクスは、野田民主党政権期から成長を加速させてなかったことになる。したがって、功績は、成長率を保ち、所得や雇用の水準を上げたことに限られる。それでも、「自動ブレーキ」を問題にしないほどの積極性はあったという評価はできよう。

 本コラムは、民主党政権下での経済運営を、アベノミクス以上に論難していたから、拍子抜けする思いである。しかも、今日の日経には「7-9月売上高の下ブレ23%」とあり、さしもの日経も強気を保てなくなったらしい。内閣府の8/15「消費税率引上げ後の消費動向等について」も低迷中だ。このままでは、アベノミクスは、消費増税で成長を挫折させただけという歴史的評価になってしまう。なんとも、やるせない。

※平家さん、ご指摘をありがとう。確かに不用意な記述でした。「季節調整の掛け直しがあったために」を「実質値の変更のために」に訂正します。(8/17)



(昨日の日経)
 日米欧の金利低下が連鎖。コンビニで介護。増税転嫁「川下」で難航。カジノ事業は甘くない、コナミも苦労。

(今日の日経)
 研究開発減税を縮小、法人税率下げの財源に。7-9月期の売上高「下ブレ」23%、10月以降は回復予想・主要企業調査。経済格差は南米などでは縮小。藻類燃料車。

※日経は「夏には」が「秋」になったようだね。まあ、いつかは回復するよ。

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民間の経済見通しの下方修正

2014年08月15日 | 経済
 7-9月期GDPの公表を受け、民間調査機関の2014年度の経済見通しは、多くが下方修正されたようである。そこで、5年連続で優秀フォーキャスターだった第一生命研の新家義貴さんの予測を例に、修正ぶりを眺めることにしよう。

 実質経済成長率の予測値は0.8%から0.4%へと低くなったが、その最大の要因は民間消費が-0.4%から-1.9%へと変更されたことだ。この変更だけで、寄与度-0.9の影響がある。他方、在庫増で寄与度0.3が積まれ。輸入減で外需が寄与度0.2が載せられている。まさに、今回のGDPの結果に沿った修正と言えるだろう。

 1.2%成長とする政府の経済見通し(年央試算)は、民間消費の0.2%増を前提としているから、これだけで、成長率の達成がほぼ困難であることが分かるだろう。そもそも、増税下で消費のプラスは難しかったのであり、もはや、マイナスは不可避の情勢となり、「消費が死んだ」状態に至った。

 新家さんの予測で注目すべきは、「売れ残り」による在庫増がなければ、0.1%成長と、ゼロ成長も同然だということだ。マイナス成長への転落もあり得るとする本コラムの指摘が奇をてらったものでないことは、御理解いただけると思う。なお、若き気鋭の新家さんは、疑り深い筆者とは違い、決して悲観論者でないことは言い添えておく。

………
 報道によれば、財政当局は、GDP公表前に官邸に赴き、総理に「1-3月期と4-6月期を均せば、10-12月期より成長している」と国民へ語れば良いという趣旨の説明をしたらしい。説明は、それに限らず、容易ならざる情勢も入れたのかどうか。

 前にも書いたことだが、年央試算は7-9月期GDPの後にすべきではないか。そして、民間と同様、四半期ごとの成長経路の数字も示す方が良い。そういうデータは、総理の元に入れなければおかしいし、国民と共有すべきものでもあろう。

(今日の日経)
 ソニーが車の目に参入。ユーロ圏はゼロ成長。大企業増益、中堅減益。初任給12000円上乗せ。機械受注6月8.8%増。活況造船、作り手そろわず。上場企業4-6月期決算・経常益1.9%増、通期予想1.3%増。経済教室・個人生かす組織・竹内規彦。
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家計消費は戦後最大級の落ち込み

2014年08月14日 | 経済
 いや、激烈な結果だったね。4-6月期のGDP速報の結果は、家計消費が-5.2%(年率-19.2%)にもなった。しかも、「除く帰属家賃」だと-6.2%に広がる。そのため、在庫が急増し、これが成長を支えることとなった。実質成長率は年率-6.8だが、もし、在庫増が1-3月期の駆け込みでの減少を復元する程度だったら、-8.8%まで行っていただろう。

 消費の落ち込みは、1997年の前回の消費増税の時を上回り、比較可能な1994年以降で最大のもので、リーマン・ショックや東日本大震災も超える。思い起こせば、基準は異なるが、オイルショックで狂乱物価があった1974年1-3月期が-5.7%であったから、これに匹敵する、40年ぶり、戦後最大級のショックである。これを人為的に起こしてしまったわけで、相当に深刻な事態だ。

 他方、今日の日経の一面トップは「景気は緩やか回復続く」だが、民間調査機関の見通しは、7-9月期が前期比+1.1%のV字回復を前提にしたものだ。なるほど、4月の消費があまりに低かったため、6月のレベルで横バイであったとしても、前期比+1.0、寄与度で+0.6は見込めよう。しかし、1-3月期の減を超える在庫増の寄与度が0.5もあるため、これを圧縮しようとする動きが成長の足を引っ張る。圧縮のために生産を抑えれば、賃金も伸びない。V字回復は、そう簡単ではない。

 民間の見通しで見るべきは、2014年度の成長率が、中央値で0.45と、ゼロ%台半ばになっていることだ。政府見通しの1.2%成長は、現時点で、ほぼ困難となった。このことは、昨日の日経夕刊が的確に報じてくれた。経財相は「賃金が物価を初年度から上回るのは不可能」と述べたようだが、そういう計画だったのなら、初めから言ってほしかったね。それとも、想定外の事態になっているのか。

(今日の日経)
 景気は緩やか回復続く。社説・反動減後の経済の復元力が試される。政府テコ入れ、住宅の税優遇拡大。海外旅行者が減少。NEEDS予測は0.5%成長。経済教室・採用改革・服部泰宏。

※「経済を試すなかれ」だよ。
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