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経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・株価は崩壊、その次に

2018年12月30日 | 経済(主なもの)
 今年の日経平均は、事実上、2万円を割って終わった。10月には24,000円に達したが、米国が着々と金利を引き上げているのだから、ダウとともに崩れるのは目に見えていた。あとは、実体経済の収益が株価を支えることになる。来年は、その実体経済を危うくするマネを敢行する予定だが、既にして、実体経済には衰えが表れてきている。年明けの輸出の動向次第では、消費を捨てる選択肢は、取り得ないものになるだろう。

………
 11月商業動態の小売業は、前月比-1.1と大きく下げた。前月の急伸の反動があるとしても弱い。自動車、衣服といった景気上昇局面に伸びる項目が順調だった反面、価格が下がっている燃料や飲食などが打ち消した形である。ここから消費指数を占うと、10,11月平均の前期比は0~0.1にとどまるのではないか。10-12月期は、前期のマイナス成長からの戻りで、高い伸びが期待されていたが、厳しい状況だ。12月は、東京都区部のCPI総合が前月比-0.2だったので、物価低下による押し上げとボーナス増で挽回してほしいものだ。

 そうした消費を支える雇用を見ると、11月の新規求人倍率は、やはり2.40と頭打ちだった。特に製造業の衰えは明確だ。これでは、消費性向の回復も難しい。11月の労働力調査は、男性雇用者が前月比+19万人と、久しぶりに大きい伸びとなったものの、逆に女性が減り、全体では前月の減を埋める程度にしかならなかった。男性のアラ40、アラ50の就業率が停滞しており、まだリーマン前水準に達していない。「完全雇用だから消費増税ができる」といった向きは、雇用情勢に疎いのではないか。

 気になるのは、鉱工業生産である。11月は前月比-1.2、12月予測が+2.2となり、10月の+3.0と考え合わせれば、10-12月期は、十分、前期比プラスを確保できそうだ。問題は、そこから先で、輸送用機械の1月予測は-5.7と落ち、挽回生産の終わりと輸出の陰りを思わせる。電気・情報通信機械も、11月が-3.5にかかわらず、12,1月予測が-0.7,+1.9であり、この産業の実現率、修正率の下方修正傾向からして、なかなか厳しい見通しだ。中国の景気は下降局面にあり、株価の次は、年明けからの輸出の崩れが心配である。

(図)



………
 中国の景気後退が怖いのは、多額の債務を抱えていることで、債務を裏打ちする実体経済の成長率が急に下がると、一気に不良債権化することである。不良債権の処理は、成長があってこそで、小泉政権下の日本のように、緊縮財政下で行おうとすると、金融と実体の両面で悲惨なはめになる。中国は緊縮財政の愚を踏むことはなかろうが、米国による輸出圧迫策は、似たような効果を生む危険がある。多くの識者が指摘するとおり、やはり、来年の日本経済のリスクは、輸出減退と円高だ。

 円高に対しては、金融政策での対抗は限界がある。消費再増税を促す形となった2014年10月末の黒田バズーカⅡは、一段の円安にはなったものの、輸出は伸びずじまいで、1年余りで剥落してしまった。その2016年初めからの円高局面では、1月末にマイナス金利を打ち出すも、まったく止まらず、大減税を掲げるトランプが11月に当選した後の円安転換まで待つこととなった。そして、今は円安水準にあるのだから、これからの円高進行に少しも不自然さはない。そうなると、しっかり内需を確保することが何より大事になる。

 幸い、内需は、省力化投資が進む自律成長の段階に入っている。わざわざ緊縮財政などせず、勢いを保てば良いだけだが、やっぱり、ここでも逆噴射というのが、いかにも日本的だ。詳しくは来週にするけれど、華々しくも上滑りな増税対策のウラで、緊縮が貫かれている。1-3月期の輸出は、春節で動向を見極め難いにせよ、変調がうかがわれたら、予算成立前うんぬんといった国会対策的メンツは捨て、野党も事を荒立てず、国民的経済の見地に立ち、政策転換を図ってもらいたい。外需なき緊縮など愚行である。 


(今日までの日経)
 新興国通貨18年は大幅安。人民元なお下げ圧力。セブン、省力化設備を順次導入。緩和相場が終幕、1年で市場一変。日経平均7年ぶり下落 大納会、終値2万14円。幼保無償化19年10月から 新制度1.5兆円、政府了承。

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12/28の日経

2018年12月28日 | 今日の日経
 今日は珍しく住宅着工統計だ。11月の持家や分譲の動向からすると、消費増税の駆け込み需要が出始めたようだ。2014年の際は4か月前がピークだったから、今回は、参院選直前の来年6月頃になるのかな。ただし、相続税対策需要で高水準にある貸家には、まだ動きが見られない。もう一つの景気の先導役である輸出は、中国の減速が本格化しそうだ。輸出があるから増税も大丈夫だと思われていた2014年のときとは様変わりだ。また、4年前と同様に円安を保てるものかどうか。

(図)



(今日までの日経)
 中国で広がる車減産、日産・マツダも 28年ぶり市場縮小。年金改革、女性・高齢者に的 来年に財政検証。保活 年齢の壁 幼稚園でも一時預かり 2歳 こども園への転換進まず。「生産性」伴わぬ最長景気。GDP速報 改善への課題・小巻泰之。

※経済物理学の予測の「みずほクラッシュ指数」が株価急落を示唆していたのは興味深いね。

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緊縮速報・財政再建は2019年に到達、消費増税は無名の師

2018年12月23日 | 経済(主なもの)
 7-9月期の日銀・資金循環統計によれば、一般政府の資金過不足の名目GDP比は-1.9%へ浮上し、日本の財政赤字は大きく改善した。過去3年のトレンドを延長すれば、2019年10-12月期には、基礎的財政収支の赤字がゼロとなる水準に達する。すなわち、財政再建に消費増税は無用であり、ショックで成長を毀損して再建を挫折させる恐れを踏まえれば、大義なき開戦たる「無名の師」に踏み切るのと等しい。データに基づかぬ財政の暗愚さは、国民に苦難をもたすことになろう。

………
 財政当局は、状況を深刻に見せて、一気の増税を正当化しようとするので、出来合いの公表資料だけで判断することは、避けねばならない。このため、本コラムでは、日銀・資金循環統計を基に、最新状況を把握するようにしている。その部門別の資金過不足は、概ね財政赤字に相当する。移動平均で計算される7-9月期の名目GDP比は、中央政府が-3.0%、地方政府が+0.8%であり、「財政赤字」は合わせて-2.2%と、EU基準の-3%を軽くクリアする。

 「財政赤字」の改善トレンドは、2014年消費増税の影響が一巡した2015年後半以降の各期の平均をとると、一期当たり+0.17%、年率+0.68%となる。日本経済の潜在成長率は年率1.0%くらいとされるから、これだけの緊縮をかければ、なかなかデフレ脱却とならないのは、当然とも言える。しかも、これに社会保険による緊縮、一期当たり+0.02%、年率+0.10%も加わる。アベノミクスは、消費増税後も相当の緊縮財政を敷いて来たのが実態だ。

 トレンドを延長すると、2020年4-6月期には-1.0%に到達する。資金過不足はGDP比1%程の利払費を含むので、これが除かれる基礎的財政収支は、この水準で、実質的に赤字ゼロとなり、財政再建の目標に達する。さらに、日本では、厚生年金等の社会保険の収支がラチ外に置かれており、現在の+0.4%の水準がキープされると仮定するなら、国際標準的な達成時期は、半年早い2019年10-12月期となる。消費増税の頃には、財政再建は済んでいるのだ。

(図)



………
 そうなると、一体、何のための消費増税なのか。問題は、増税すれば、更に財政再建が進むものでもないということだ。増税のショックで成長を毀損してしまえば、元も子もなく財政再建が挫折してしまう。そうかと言って、成長の腰を折らないために、増税対策のバラマキをして相殺するのでは、増税をしたのに収支が改善しないという訳の分からぬ結果になる。まさに「無名の師」となるのだ。

 2019年度に増税を相殺するだけの対策をして、需要へのショックを除けたとしても、翌年度に対策が剥落すれば、そこでデフレ圧力が生じる。この害を除くため、また対策を打てば、バラマキが長く続く。これでは、消費増税はムダ使いのためと化す。それくらいなら、初めから、消費増税と同規模の少子化対策でも実施すべきだろう。マクロ経済的に見れば、景気が過熱する事態にでもならない限り、財政収支を改善する純増税はできないのである。

 「消費増税さえすれば、財政再建ができるだろう」とナイーブに考えるのは、緊縮職人の狭い了見でしかない。彼らは、隣接する社会保険の収支が黒字であることも気にしないし、経済全体に与える長引く影響など、まったく視野の外である。2019年度予算について、日経は放漫のように報じるが、最重要の情報は、税収が1.4兆円程小さく見積もられているにもかかわらず、国債が1.0兆円減額され、やはり緊縮財政が貫かれていることである。

………
 データに基づけば、もはや財政収支は深刻な状況ではない。純増税に挑む「大増税主義」は有害無益でしかなく、社会保障の拡大と同時同額での増税にとどめ、自然増収での緩やかな収支改善を図る「小増税主義」へ戦略を転換しなければならない。無理に純増税に挑むから、バラマキ批判を呼び、増税忌避を招き、社会連帯を壊すのである。残る課題は、巨大債務の安定化のために、金利上昇前に利子課税を強化しておくことだが、こちらは御留守の暗愚さだ。

 戦前の日本は、満洲に拘る「大日本主義」で国家存亡の危機を招いてしまった。同時代に、石橋湛山が「小日本主義」を掲げ、植民地は儲からないと説いたにもかかわらずである。現実主義から外れれば、国を危うくする。「空気」で舵取りをしてはいけない。「退くも地獄、進むも地獄」という日本人的セリフは、そこに至るまで、現実を確かめずにいたことを意味する。現実を思い知る事態に遭遇してからでは遅いのだ。


(今日までの日経)
 若手経済学者 海外に活路。米、車貿易の改善要求へ。寿命伸びぬ米 薬物・自殺の影。景気優先 かすむ財政規律 膨張101兆円。中国、減税規模を拡大。自然減44万人 過去最大・2018年人口動態。消費増税分 痛み緩和に 5.7兆円。

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12/20の日経

2018年12月20日 | 今日の日経
 11月貿易統計は弱いね。まだ下げ止まっていないのかもしれない。やはり、一番気になるのは中国で、ここが底を打たないと、米国は増えていても緩やかなので、支えきれない。中国の減速が響き合うおそれもあって、アジアやEUは、元より頼りにできない。こういう時には、内需を大切にして、自分の城は自分で守らなければならない。消費増税対策が始まる10月までの「空白の期間」が問題になるかもしれない。
(図)



(今日までの日経)
 FRBが3か月ぶりに利上げ。日本の労働生産性は米の7割。11月貿易赤字、世界景気に減速懸念 半導体関連伸びず。経済教室・消費増税に何が必要か・中里透・堀雅博。


※田村さん、コメントをありがとう。消費動向の図を見れば、消費増税の危うさは誰でも分かるので、広まっていけばと思う。今日の経済教室にもあるけれど、「専門家」というのは、この図を見てもなお、消費増税無罪説を唱えるものなのかなあ。

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7-9月期GDP2次・設備投資の行方と消費の屈折

2018年12月16日 | 経済
 今回のGDP2次速報では、消費の推計方法が変更になったこともあり、改めて消費の動向に注目してみたい。変動がやや大きくなった点は意外だったが、全体的な傾向に違いはない。2014年の増税後、消費は、所得効果で大きく落ち込んだのに加え、増加速度も明らかに落ちた。そのため、増税しなかった場合と比べ、その差は14兆円まで開いている。2019年増税で、いかに駆け込みの反動対策をしようとも、速度を鈍らせる効果は防げまい。

………
 7-9月期GDP2次速報では、法人企業統計の結果を受け、設備投資が大きく下方修正され、前期比-2.7%まで下がったことが最大のポイントだった。災害という特殊事情がなければ、景気動向の見方を変えないといけないほどの大きな低下であり、名目値で見て、ようやく前々期を上回り、かろうじて自律成長を確認できるという危い内容だった。その背景には、年初来の輸出の衰えがあり、今後の製造業の設備投資の動向には要注意である。

 幸い、金曜日公表の12月日銀短観では、設備投資計画が引き続いて強いことが確認され、自律的成長は、まだ失われていないと見ることができる。短観で注目される大企業製造業の景況感も、事前の予想が悲観的だったことに反し、横バイに踏みとどまった。「先行き」については低下で、警戒感は強いものの、なんとか無事通過である。そうした中、10月の機械受注は、基調判断が下方修正されており、警戒感が自己実現しないか、心配なところだ。

 また、1次速報で最も足を引っ張った公共投資は、2次で更に下方修正となった。建設投資は、民間が盛んなことから、物価上昇による名実差が広がっており、手を抜けば、すぐさま悪影響が出る。今後は増税対策で増やすようだが、名実差で分かるように、供給力が逼迫している中では、効率が悪い。弱い消費を圧殺しておいて、逼迫する建設投資でカバーしようとする経済運営は、無理を重ねるものだ。

………
 我が国の経済運営での消費に対する圧殺の経緯は、怨念でもあるかのようだ。1997年の消費増税によって、消費の伸びは屈折し、デフレ経済に転落した。それでも、小泉政権期のあたりは、まだ年率+0.9程のトレンドで増えていた。リーマンショックと東日本大震災に見舞われても、元のトレンドに戻るかのような力強い回復を見せている。その意味で、長期停滞はショックによるものでないことが分かる。

 ところが、2014年の消費増税は、消費の屈折を再びもたらした。増税からの2年間はもとより、輸出に助けられたこの2年の回復局面においても、小泉政権期のトレンドより伸びは鈍い。いわば、消費屈折の構造改革がなされたわけで、もの凄い「反」成長戦略の実現である。しかも、円安による輸入物価高と組み合わせると、消費税は名目にかかるから、重みは一段と増す。今年度の実質消費が+0.5程度なのに、消費税収は+2.5%になる見通しだ。

 消費増税によって消費が屈折したせいで、それがなかった場合のトレンドとの差は、開く一方であり、8.4兆円の税収のために、14兆円もの犠牲を払ったことになる。さらに、増税後の鈍い消費増すら許せないらしく、増税前水準の回復に至らぬまま、2019年10月には、三度、消費の圧殺が断行される。来週、最新データで示すが、足下では財政収支が大幅に改善しており、危機的な財政状況ではまったくない。既に増税の理由は失われているけれども、この国では、合理性より御題目なのである。

(図)



………
 消費税と社会保険料という低所得層にも容赦なく比例的に負担を課す制度があると、成長の下でも消費が伸びないのは、ある意味、当然だ。それゆえ、経済運営では、還元のサジ加減とともに、自動的な還元のための制度化が極めて重要になる。「とりあえず、増税ショックの対策をドーンと」でやると、剥落の過程で長くデフレ圧力をもたらしてしまう。日本経済は政策どおりの結果を出しているだけだが、判断の基礎となる事実を確かめず、空気で決めているために、手段が目的化していることが分からなくなっている。そんな構図にある。


(今日までの日経)
 中国、消費・生産に打撃。税制大綱、10月消費増税へ対策厚く。預保機構の8000億円、財源に 来年度予算、国債発行額は減少。来年度 実質1.3%成長 政府、下方修正 高い見通し維持。

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12/13の日経

2018年12月13日 | 今日の日経
 昨日公表になった10月機械受注は、全体はともかく、「除く船電」の9月からの戻りが悪く、基調判断が下方修正となった。製造業が伸び悩んでいるのは、年初来の輸出の停滞があって、やむを得ないものだろう。焦点は、非製造業で、建設業が強く、全体的にも悪くないが、運輸業・郵便業の停滞が痛い。それもあって、ここで設備投資の失速し、自律的成長の好循環が崩れるかは、もう少し様子を見る必要がある。法人企業景気予測の設備投資は良かったので、あとは金曜の日銀短観だね。

(図)



(今日までの日経)
 機械受注「持ち直し足踏み」へ下げ 10月。

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12/12の日経

2018年12月12日 | 今日の日経
 月曜公表の景気ウォッチャーは、基調判断が上方修正された。年初来の輸出の減速をこなし、底打ちした形である。製造業は、年初から大きく下降していたものが反転し、非製造業は、大きくは低下しなかったものの、まだ底入れとはなっていない。また、小売も下げ止まった程度であるが、落ち込みの大きかった飲食とサービスは、明確に上昇を見せる。雇用が底入れしたのは心強く、消費性向の回復を期待したい。

(図)



(今日までの日経)
 外国人就労へ政府間協定 まずアジア8カ国と。軽減税率、財源にメド 社会保障費から1000億円。ボーナス 今冬3.28%増で最高更新。

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幸福の「非」増税論-成長の具体策

2018年12月09日 | 経済
 井出英策教授の『幸福の増税論』で最も印象深かったのは、「なぜ、新自由主義という間違っているはずの政策が大勢に支持されるかに思いをはせ、対策を講じる必要があった」と自己批判し、「新自由主義的な言説は、明確な成長のビジョンを示せなかった左派やリベラルの言説を無効化した」、「新自由主義やアベノミクスの誤りを力説するだけではダメなのだ」とする部分であった。成長や仕事が欲しいという国民の切実な願いを、どう受け止めるかは、極めて重要だ。これに対し、井出教授は、成長の幻想を捨てさせ、そのために消費増税による分かち合いを説くのである。 

………
 予め言っておくが、筆者は保守の立場であり、現実主義、漸進主義を信条としている。それゆえ、「ネオリベ」における自由の放埓さは、まったく受け付けない。そして、本コラムでは、それに代わるべく、「明確な成長のビジョン」を示すとともに、増税なしに、社会保険の改善によって大規模な再分配が可能なことを明らかにし、その具体策を提案してきた。すなわち、井出教授とは、批判の対象は同じでも、処方箋は異なるわけである。

 アベノミクスが国民に支持されたのは、最初の1年において、金融緩和に財政出動を組み合わせて、大きく成長を回復させ、雇用を増やしたからである。他方、その欠点は、2年目に増税で消費を圧殺し、その後も緊縮財政で内需を低迷させたことだ。すると、代わり得る明確な成長のビジョンは、ストレートに「緊縮の緩和」となろう。一般政府の資金過不足は、2012~17年度の5年間でGDP比5.5%も改善しており、これはやり過ぎなのである。

 この5年間のGDPの実質成長率の平均は1.3%だったから、年度平均1.1%の緊縮はいかにも過大であり、抑圧がなければ、成長率は2%半ばに高まっていたかもしれない。したがって、過去の実績だけで、成長できないと思うのは早計だ。また、2%成長なら、毎年、新たに10兆円の経済力を得るということであり、厚生年金の国庫負担が10兆円弱であることを踏まえるなら、ある程度の成長があれば、社会保障の維持はまったく問題ないと分かる。

………
 重要なのは、成長と財政再建の両立であり、要はバランスである。その点、アベノミクスは、過激な緊縮路線なのだから、対抗したければ、成長の果実の全部を財政再建に充てず、社会問題の解決にも分配する路線を掲げることであろう。例えば、「緊縮半減、一兆円施策」といったキャッチフレーズはいかがか。むろん、かつての自民党・石橋湛山政権の「一千億円施策、一千億円減税」のマネだ。 

 年々の国の予算を、社会保障の自然増の5000億円だけに抑えるのではなく、別途1兆円の新施策を用意する。幼児教育無償化が8000億円、高等教育も同規模であることを踏まえれば、1兆円の使いでは大きい。そして、非正規への育児休業給付の実現、社会保険料軽減と適用拡大と、連続して再分配の強化策を打ち出し、普遍性の欠落を一つずつ補修すれば良い。それでも、財政再建は、ペースが緩やかになりつつも、着実に進んでいく。

 アベノミクスの最大の成果は、財政再建の大幅な進捗だ。一般政府の「赤字ゼロ」の到達までは、GDP比であと2.5%程に迫る。ここから緊縮ペースを半分にしても、2025年度には到達できる計算だ。きつい緊縮の犠牲で、これだけの余裕ができたのだから、「ハイ、ご苦労さん」とばかりに、チェンジオブペースでおいしいところを頂いたらどうか。アベノミクスは2020年度の財政再建目標を達成できなかったと、あげつらうよりマシだろう。

………
 戦後、保守主義の原型は、湛山に始まるように思える。精一杯、成長させて、果実を国民に還元する。アベノミクスは、還元なき成長戦略であり、革命的言辞を弄する点でも、保守からは距離がある。かつての革新は、成長より分配と主張して、保守に敗れた。分配は薄くとも、成長優先の人手不足が賃金上昇による総中流化をもたらしたのである。ところが、保守は、構造改革に狂い、1997年の過激な緊縮財政によってデフレに転落し、取り柄を失う。

 バフル崩壊後、財政出動をしても、成長が回復しなかったが、消費は着実に伸び、これを基盤に設備投資は底打ちしていた。現実を見据えて、漸進しておけば、悲劇は起こらず、経済は平常に復していただろう。ところが、財政出動は効かないという誤った教訓を得て、緊縮しながら、構造改革で成長を果たそうとし、失敗を繰り返すことになる。それは、還元なき成長戦略への変質であり、外需が得られたときだけのうたかたの夢でしかなかった。

 人は苦難に遭うと、一気の逆転を狙ったり、諦めの境地に陥ったりするものだ。しかし、それは、却って事態を悪化させる。高度成長と総中流化は、リアリズムの徹底がクリエイティブの域にまで達したものである。財政再建におけるグラジュアリズムを捨てたとき、もはや、保守は過去となった。右だろうが、左だろうが、「改革」が人気を博し、実情に根ざした改善は受けない世の中だ。筆者のような保守派のオールドケインジアンは、そう思うのである。


(今日までの日経)
 改正入管法 成立へ。平成の30年・アパレルに明暗。税収60兆円程度に。米、中国ハイテク排除。景気回復 最長への関門・増えない可処分所得・「賢い工場」活発な設備投資・世界経済に頭打ち感。


※2018年度の国の税収は61.1兆円になると見ている。御当局の60兆円だと、11月以降の毎月の税収の前年比が物価上昇率並みの1.1%まで落ちる計算になる。そこまで景気が急減速するようなら、とても消費増税は無理だろう。きちんと税収や資金過不足を把握し、世の中で共有することが、現実に則した経済運営の第一歩である。

(図)


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12/5の日経

2018年12月05日 | 今日の日経
 7-9月期の法人企業統計が公表され、GDPの設備投資は下方修正される見通しだが、前期の急伸の反動が大きく、前年同期比では増勢を保っており、まずまずの水準といえるだろう。今日は、あまり注目されない人件費の図を示しておく。給与、賞与、福利厚生を足し合わせた人件費は、前年同期比+4.2%となって高水準を保った。人件費の額も、従業員の数も、前期、今期と加速している状況である。これが消費の拡大に結びつくと、景気は好循環ということになる。

(図)



(今日までの日経)
 中国の変調、アジアに影 世界経済に頭打ち感。年金受給の厚労省試算、現実とズレ 70歳からなら「月33万円」。
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アベノミクス・とうとう表れた基調の衰え

2018年12月02日 | 経済(主なもの)
 今週、公表された10月の経済指標は、軒並み強いものだった。この勢いなら、10-12月期のGDPは、3%近い高成長が期待される。ただし、災害続きでマイナス成長だった7-9月期の反動増が大きく、むしろ、基調は衰えを見せる。昨年までの輸出の好調さに慢心し、緊縮型予算で臨んだところ、今年に入って輸出が失速し、緊縮に足を取られた形だ。せっかく、設備投資が動き始めたのに、景気は勢いに乗れずにいる。この分では、次の1-3月期は、再び落ち込むジグザグコースをたどりそうだ。

………
 10月は、日銀・実質輸出が前月比+6.6と伸び、7-9月期より+3.0高い水準だった。鉱工業生産も前月比+3.0と、7-9月期比+2.8であるだけでなく、11,12月の生産予測を単純に延長すると+4.0にまでなる。しかし、これらには、7-9月期の実質輸出が前期比-2.1だったり、鉱工業生産が-1.5だったりした反動増が含まれる。災害続きの遅れが上乗せされていて、実勢以上となっており、これが抜ける1-3月期には、逆に大きく下がる要因となる。

 実勢の衰えは、雇用に出ている。10月の新規求人倍率は2.40倍と前月比-0.10となり、頭打ち状態である。特に、製造業や建設業の前年同月の求人増加数が下がっており、飲食宿泊業に至っては、マイナス基調にある。また、労働力調査では、10月の雇用者数は、男女ともプラスになったものの、男性は、6月以降、ピークを超えられないままで、女性も、3か月間、横バイ圏内にとどまり、停滞は否めないところだ。 

 物価を見ると、11月まで公表された東京都区部のサービス(除く帰属家賃)の前年同月比は、夏までの上昇傾向が終わり、秋以降は+0.6に落ち着いてしまった。全体では、エネルギーの高まりで上昇する中、内需や賃金と裏腹の関係にあるサービスには陰りが見える。そして、毎月勤労統計では、9月分までとなるが、7-9月期は、常用雇用の増加が鈍く、現金給与は減退がうかがわれるほどである。

 結局、災害からの揺り戻しで輸出や生産は強くても、基調を示す雇用には弱さが見られる。したがって、10-12月期は高成長になっても、1-3月期になると基調どおりの低成長が表れることになろう。数字が出る4月頃は、消費増税まで半年であり、最終判断を迫られ、「退くも地獄、進むも地獄」という日本流の自暴自棄のセリフが聞かれるかもしれない。そこまでして、消費と物価を抑制しなければならないものか、理解しがたい心性だ。

(図)



………
 10-12月期は良くても、1-3月期が心配というのは、消費にもある。10月の商業動態の小売業は、前月比が+1.2にもなった。こちらは、名目値であるにせよ、ボーナスの6月以来、着実に増えている。それにもかかわらず、7-9月期GDPの消費がマイナスであったのは、物価上昇が大きく押し下げたからである。これが10-12月期は一服するため、消費が大きく伸びることが期待される。むろん、それは一過性のものに過ぎない。

 10-12月期には、前年実績が反映されるボーナスが含まれ、消費を浮揚させる方向に働くが、これも1-3月期に続くわけではない。勤労者世帯は、収入が伸びている割に、消費が振るわず、消費性向が低めだ。この背景には、雇用の伸びの停滞があり、景気ウォッチャーや消費者態度指数の雇用の項目は、まだ底入れしていない。消費についても、1-3月期は、なかなか思うようにいかないだろう。

 そんな中でも、設備投資は、10月の資本財生産(除く輸送機械)が+1.8と3か月連続の増となり、反動増を感じさせない動きとなっている。先行きも、11月+2.0、12月+4.6と高い。輸出の失速にもかかわらず、高収益と人手不足の下で、順調に推移している。こうして、設備投資が先導し、賃金が上昇するという展開になってもらいたいものだ。ところが、そこへ外国人労働者を入れて、冷まそうとするのがアベノミクスである。

 厚労省の「外国人雇用状況の届出状況まとめ」によれば、2017年10月時点での前年同月比は+19.5万人であり、労働力調査における2017年10月での雇用者数の前年同月比が+61万人だった。このボリュームからすれば、賃金の上昇に影響がないとは言いがたい。しかも、賃金が劣悪な上に、仕送りの多い外国人労働者では、国内消費への波及も薄まる。賃金や物価がなかなか上がらない原因の一端は、ここにもある。

………
 「ネオリベ」の連中は、移民だの緊縮だので、賃金と物価を徹底的に抑制し、金融緩和を進めて資産価格を高騰させ、破格の利益を得ようとする。国民経済の産出力の増強を図る実体的な成長とは、無縁の存在だ。自由とか財政再建とかの美名の陰には、独善たる強欲がある。米国を反面教師に、そんな国にはしたくないと思ってきたが、グローバル・スタンダードとありがたがるうち、あらぬ道へと引き込まれてしまったようだ。


(今日までの日経)
 日米、貿易投資拡大で一致、トランプ氏、F35購入に謝意。社会保障費、自然増5000億円 来年度予算案。
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