足下の景気回復は、外需主導でない点で、日本経済には珍しいパターンである。裏返せば、特異な形であるにせよ、内需主導ということであり、これを起点に上手く成長させられるかが、経済政策として極めて重要になる。もっとも、そういう認識には、まったく欠けていて、ここまで単に巡り合わせで進んできただけだ。何が回復をもたらしたかをよく観察し、その流れを活かしたいものである。
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今回の景気回復は、コロナが5類に移行し、制約を受けてきた消費が拡大したことが起点になった。特異なのは、資源高や円安による値上げを受け入れ、名目で拡大した点であり、実質では、ほとんど変わりがない。消費者には豊かになった実感がまったくないが、それでも、企業は、売上げが取れるなら、人員を確保しようとなって、30年ぶりの高い賃上げに結びついたのである。
アベノミクスを含むデフレ期においては、輸出の拡大で景気を起動させても、回復途上の緊縮で可処分所得を削り、消費を抑制し、売上げが拡大しないようにしていたので、賃上げにはつながらなかった。今回も、一巡目には成功をしたものの、二巡目に至れるかは、やはり、無闇な緊縮をせずに、消費の拡大を持続できるかにかかっている。それは、設備投資を引き出すことにもなる。
その消費だが、4-6月期の商業動態・小売業は、前期比+0.6と順調だが、やや気になるのは、財の物価上昇の鈍化とともに、この数か月は頭打ちになっていることである。コロナ制約からの購買力の解放が終わり、賃上げや雇用増による消費の拡大が必要な段階に移ってきたかもしれない。雇用は、6月の労働力調査で就業者数が前月比+19万人となり、男性の底打ちで上向いた。総雇用者報酬は、4,5月平均の前期比が実質でプラスに転じた。
他方で、家計の所得は、1-3月期に前期比+0.98%だったところ、負担が-0.18%で、可処分所得は+0.80%に目減りしている。雇用と賃金が増せば、税収も増える。4-6月期の所得税は、前年同期比+5.6%と好調だ。2023年度の名目成長率は政府見通しで4.4%だから、このくらいは当然だが、それだけに、税や社会保険料の増収によって引き締まるのをいかに還元するかが、成長のための経済政策として極めて重要になる。
(図)
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日銀は7月会合でYCCの弾力化に踏み切り、ようやく円安に対応することなった。日銀の拘りによる円安は、国民生活に痛みをもたらしたが、資産高にもなっており、GPIFの4-6月期の黒字は19兆円にもなった。勤労者皆保険のために年金保険料を軽減しても年に0.7兆円なので25年分にもなる。評価益にせよ、痛みはそのままに、メリットを還元しないところに、景気を好循環させる上での問題がある。
7/30の核心で滝田洋一さんは、経済の好循環に水を差さないよう、税収の5兆円の上ぶれに触れつつ、少子化に歯止めをかけるには、若い低所得者層の所得を引き上げる必要があると指摘する。合理性を踏まえれば、誰でもこういう考えになる。おっしゃるとおり、「バブル崩壊後の日本は経済が軌道に乗りかけると、財政政策か金融政策かでブレーキを踏み、経済を失速させてきた。その轍を踏まぬよう細心の注意が必要」なのである。
(今日までの日経)
中国の自動車輸出、日本抜き世界首位 1~6月EVけん引。GPIF、黒字最高19兆円 4~6月。逆風の中国経済 デフレ懸念、「日本化」の兆し。設備投資「コロナ前」超す 政投銀調査。金利上昇でも円安進行 急変嫌う日銀を市場見透かす。