経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

5/29の日経

2019年05月29日 | 今日の日経
 あまり目立たないが、月曜に景気動向指数が改定されて、先行指数が-1.2、一致指数が-1.1、遅行指数が-0.2と、いずれも前月差が広がり、もっと景気は悪くなった。先行指数の95台というのは、2016年の後退時並みであり、これより悪化して95を割ると、アベノミクス前の2012年の水準になる。すなわち、「悪夢のような民主党政権」の最悪時と変わらなくなるわけだ。ここに消費増税を持ってこようと言うのだから、リーマン・ショック時よりはマシだからといって、悪夢の再現でもしたいのかね。

(図)



(今日までの日経)
 最長景気 強まる逆風 中国発の生産減少。貿易交渉、早期成果へ加速 「8月発表」駆け引き。雇用保険据え置き、積立金 高水準で。

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GDP1-3月期1次・景気はもっと悪くなる

2019年05月26日 | 経済
 1-3月期GDPの1次速報は、若干のマイナス成長になるとの大方の予想を覆し、実質年率2.1%の高成長であった。むろん、その高成長に内実はなく、弱い内需を映す輸入減によるもので、そうした分析が広く知られたことは幸いだった。ただ、エコノミストの読み違えは、これが理由ではない。設備投資が不可解なほど粘りを見せたためである。すなわち、設備投資には、もっと悪くなる可能性が潜んでおり、今後の景気の行方には、相当な警戒が要るということだ。

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 今期のGDPの特徴は、消費、設備投資、輸出という重要な3つの需要項目が揃ってマイナスに転じたことである。前期比-0.2となった家計消費(除く帰属家賃)は、けっこう深刻な状況にあり、237兆円台は、消費増税前どころか、アベノミクス開始時の2013年1-3月期をも下回る。6年の時を経て、国民生活をまったく豊かにできていない。当然、10月の消費増税までに、2014年増税の駆け込み前の水準まで回復するのは絶望的である。まるで、国民が豊かになることに怨みでもあるかのようだ。

 消費増税の悪影響は、公共事業の積み増しなどで相殺することになっているが、どうして、ここまで消費の圧迫に拘るのか、まったく理解できない。財政赤字は国民を甘やかしているという思い込みでもあるのか。また、消費削減を公共事業で補っても、経済構造に歪みを作るだけである。こうして見れば、消費増税にこそ、2%目標が必要であろう。MMTではないけれども、消費水準が前年より2%増す状況で、消費者物価が2%を上回るなら、税率を1%上げるといった条件を付すべきである。

 設備投資は、前期比-0.3という結果だったが、よくこれで済んだというのが率直な感想である。なにしろ、鉱工業指数3月確報での資本財(除く輸送機械)出荷の前期比は、-8.0にもなっている。国内総供給で見ても落ち込みは大きいし、これほどの違いが季節調整で出るとも思われない。加えて、機械受注の内需の前期比は、10-12月期-5.6%、1-3月期-6.2%である。これらからすると、1-3月期法人企業統計に拠るGDPの2次速報で下方修正がなされたり、4-6月期で低下が表れたりという事態が考えられるのである。

 下図で分かるように、設備投資と輸出とはシンクロするものなのだが、1-3月期の設備投資の微減は、輸出の動きと合わないし、3需要と比べても下げが足りない印象である。むしろ、2次速報での下方修正や、4-6月期での低下がずっと自然だ。公共事業と住宅は、増加傾向にあるものの、この1年の低下を取り戻す程度でしかなく、新たな設備投資の材料になるとは考えにくい。そして、緊縮にさらされる消費は、横バイが続いており、設備投資を刺激できる状況にはない。

 ついでに言うと、今期の成長要因だった在庫投資にも下方修正の懸念がある。輸入が大幅に減り、消費や設備投資が大して減っていないのに、在庫が増えるというのは、やや不自然だからだ。1次速報では、原材料と仕掛品の在庫は仮置き値のため、在庫投資も1-3月期法人企業統計の結果で変わる可能性がある。通常、GDPの2次速報は、あまり重視されないものだが、6/10公表の次回ばかりは、消費増税の最終判断と絡んで、注目されることになるかもしれない。その後の6/19が今国会最後の党首討論である。

(図)


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 5/21のシノドスで、上智大の中里透先生が『消費税は引き上げられるか? 現代金融理論と「反緊縮」の経済学』を書いて、論点をきれいに整理しておられる。もはや、結論は見えているように思う。MMT以前の問題として、外需に大きなリスクがある中、消費と物価が低迷しているのに、増税で潰しにかかり、危難の時に切り札となる公共事業の積み増しを予め使ってしまうことに、どんな合理性があると言うのか。

 まさか、債務残高の数字しか見ないで、財政を論じているわけではあるまい。6年前と比較して、収支は大幅に改善されており、時期を選ぶくらいの余裕はある。5/25の日経社説は、いつものごとく、「消費税率上げ準備は着実に進めよ」と旗を振るが、子会社のM・ウルフ論説委員が主張するように、極端を避け、財政政策と金融政策を組み合わせ、個人消費を高める政策に転換すべきである。

 日本の財政の仕組みは、中央では、高齢化に伴う年間5千億円の歳出増しか認めず、地方では、税収増の分だけ交付税の補填が減らされ、年金では、保険料が増えても、給付をマクロ・スライドで抑制するようになっており、景気が上向いて所得が増すと、自動的に強力な緊縮のブレーキが作動する「構造的デフレ」がビルトインされている。これを1兆円に緩める程度なら、MMTに入信しなくとも、財政破綻を心配せずに済む。「反緊縮」の制度設計は、まじめに考えれば、ドラスティックでもなく、存外、現実的なのである。


(今日までの日経)
 トランプ氏「数か月内、大きな発表を」日米交渉に言及。米、人民元安けん制。ファーウェイ、スマホ開発困難に 英アームが取引停止。過剰債務の破局 どう防ぐ・Mウルフ。

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5/23の日経

2019年05月23日 | 今日の日経
 4月の貿易統計が公表になり、日銀・実質輸出は前月比+1.5となったものの、前月のマイナスを取り戻す程度にとどまり、停滞が続いている。貿易統計で地域別を見ると、対中国輸出の前年同月比のマイナスが続いており、不穏な情勢は収まっていない。また、4月の実質輸出については、増加となったため、純輸出は、あまり変わらずとなっていて、4-6月期GDPの外需に反動減が出るかは、まだ見通せない。

 3月の機械受注は、非製造業の横バイ状態は同じだが、製造業の低下傾向が止まらない。1-3月期GDPの設備投資は、若干のマイナスにとどまったが、2018年半ば以降の機械受注の低下傾向と合わない感じもあり、6/3の1-3月期の法人企業統計で確かめたいところだ。4-6月期の機械受注の見通しは、一転して高めになったが、非製造業には消費増税前の駆け込みの可能性があり、製造業は米中対立の激化前の調査なので、慎重に見ておく必要があろう。

(図)



(今日までの日経)
 ファーウェイ離れ、世界で 発売延期相次ぐ。自社株買い急増、9割増3.4兆円。財政赤字容認論MMT、政府と日銀警戒。建設 はや「五輪後」の秋風。人民元 三たび7元の壁。日本企業、対応に苦慮 対中関税第4弾。東南ア成長、米中が重荷。「氷河期世代」職なお不安定。

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アルゴリズム思考術からの経済学

2019年05月19日 | シリーズ経済思想
 主流派経済学の根本的な欠陥は、ヒトの時間の制約を考えないことである。ヒトは利益を最大化するよう行動することを公準に据えているが、人生は限られていて、分散が効かず、変動リスクの下では、大損を避けようと、期待値に従わずに、敢えて収益の機会を捨ててしまう。これが相互作用を経て自己組織化を起こし、不況というマクロでの不都合な現象を生じさせるのだ。こうした時間の有限性や不可逆性、環境の変動性や複雑性、情報の不確実性や不完全性が存在する現実に対して、どんな行動が理に適うのか。B・クリスチャン&T・グリフィスの『アルゴリズム思考術』は、最善の在り方を教えてくれる一冊だ。

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 「探索と活用」の章では、「最良のものを選ぼうとすることが必ずしも最も合理的な行動方針でないのはなぜか」と投げかける。最良を求めての挑戦と、現状に止まっての利活用とは、トレードオフの関係にあり、どこかの時点で見切りをつける必要があるからだ。これに対する戦略は、トライアルの残り時間によって決まってくる。そして、興味深いのは、心理学や行動経済学の実験において、探索成果の確率が一定の場合の数学的な最適値より、過剰に探索する傾向があることだ。ヒトは世界は確率が変動すると見定めているのかもしれない。

 こうしたことからすれば、設備投資をするに当たって、需要動向を懸念し、決断を遅らせたり、やり直せるかを勘案しながら、慎重に進めたりする行動は、至極、自然なものに思える。ポイントは、そうした利益を最大化しない「不合理」な行動も、時間の有限性や環境の変動性が在るなら、最善のものになり得ることだ。結局、「不合理」なものを無視して、世界を単純化すれば、現実が見えなくなるだけで、緊縮で需要リスクを与えつつ、金融緩和で成長を実現できると、夢想することになる。

 「ベイズの法則」の章では、事前に持った考え方と目の前の証拠を結び付けて確率を計算するベイズ推定において、事前の予想をどう持つかが極めて重要になるが、実験をすると、ヒトは、証拠と予想を結び付けるに際し、乗法、平均、加法の三つの予想ルールを使い分けているらしい。各ルールは、ベキ分布、正規分布、アーラン分布に対応するから、ヒトは、事象がどんな分布に属するかを、直観的に見分けているわけだ。これがベイズ推定の強力さの理由なのである。

 言うまでもなく、経済は、「金持ちはさらに金持ちになる」といった、優先的選択によって生じるベキ分布に溢れている。ベキ分布では、平均や分散が無意味なので、当然、期待値に従って行動することは不可能だ。需要リスクに対して、ヒトが加速的な変動を経験的に予想しているとすると、過去はそうだったのだろうし、未来もそうだろうと行動する。つまり、金利をよすがに、利益を最大化すべく、需要減退下でも設備投資に打って出るといった「合理的」な行動を取ることは、あり得ないことになる。

 「ネットワーキング」の章では、指数バックオフが紹介される。競合する通信が影響し合う場合に、混雑が加速する輻輳を避ける手法で、「競合の数が不可知で絶えず変動し、構造が不明なネットワークに、有効性が期待される一つしかないスキーム」とされる。また、流れ制御と渋滞回避のアルゴリズムとして、加法的増加・乗法的減少も出てくる。これは、最大限の通信量と輻輳回避を両立させるため、「少しずつ増やして、詰まったら思い切り減らし、また少しずつ増やす」という手法だ。

 経済運営においても、「投資が投資を呼ぶ」といった混雑した状況を制御しなければならない場合がある。むろん、その際は、消費税を1%だけ上げて需要を冷やし、再び投資が伸びるのを待つことをすれば、インフレを加速させずに、安定した成長を実現できる。もし、これを低水準の状況ですると、いつまでも物価が上向かず、低成長が続くことになる。まさに、失われた20年において、日本が陥ったものだ。成長の好循環のためには何が必要か、金融緩和だけではないことは明らかだろう。

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 くどくなるので、もう、このくらいにしておこう。『アルゴリズム思考術』は、どの章でも、経済を考える上で裨益する知見が多くある。久々の「シリーズ経済思想」のコラムになったけれども、新たな数理的な知見を取り入れなければ、思想を深められないと、常々、感じているところだ。少なくとも、利益最大化の公準からの展開のみでは、複雑な現実は解明できない。その公準には拠らない別の空間が存在するのである。そして、現実にマッチした経済運営は、常識的なものだということだ。それを見えなくするだけの思想であってはなるまい。


(今日までの日経)
 人民元、ドル覇権に一石 独自決済、89カ国・地域。上場企業2期連続減益へ。非製造業は増益。ファーウェイ供給網に打撃 米、排除強化で圧力。


※ようやく、3月の消費総合指数が公表され、1-3月期の前期比は-0.2となった。月曜のGDP公表で更新されるが、設備投資だけでなく、消費も崩れるとなると、本物の景気の悪化だよ。そこへ消費を圧殺する増税をしようというのだから、常識を失っている。米国が中国を本気で潰しに行ってるのに、中国の景気対策で輸出が上向くから、増税も平気なんて、この国は、何が起ころうと、財政再建しか眼中に入らないのだろうな。

(図)


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5/16の日経

2019年05月16日 | 今日の日経
 4月の景気ウォッチャーが出たが、消費者態度指数と同様、下げ止まった感じはない。家計関連が比較的粘りを見せている程度で、雇用関連と企業関連は悪化をたどっている。改元に伴う10連休で、もう少し上向くのではないかと、期待していたんだがね。米中関係は、不穏さを増していて、とても、消費増税のリスクに挑めるような局面ではなくなってきた。毎回、「リーマン級か否か」の基準で議論になるけれど、消費増税こそ、消費者物価指数が2%を超えたら実施するというような物価目標が必要かもしれない。少なくとも、金融緩和の目標に据えるよりは合理的だろう。

(図)



(今日までの日経)
 70歳雇用、企業に努力義務。中国経済 底入れ遠く 4月小売16年ぶり低水準。景気判断6年ぶり「悪化」3月動向指数。中国、来月から報復関税 対米600億ドル分、最大25%に。上場企業3期ぶり減益。中国マネー、巨象の虚像 黒字大国なのにドル不足。
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「追われる国」の経済学に見る長期停滞論

2019年05月12日 | 経済
 リーマンショック後などの長期停滞は、なぜ、生じるのか。『「追われる国」の経済学』で展開されるリチャード・クーさんの説明は、バブル崩壊後には、借金返済が優先されるバランスシート不況が起こり、それが過ぎても、新興国に「追われる国」では、高収益の海外投資が国内より優先されるために低成長に陥ってしまうというものである。クーさんの経済分析は、実態に根差した鋭いものがあり、これらが要因の一つであることは確かだろう。今回は、需要管理の観点から、普遍化を試みたい。

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 長期停滞の先例である日本の場合、バブル崩壊後のバランスシート不況は、いつまで続いていたのか。筆者は、1992~94年の3年間だったと見る。設備投資は、1995年に上昇に転じているからだ。ただし、この間の設備投資の急落については、別の見方も可能だ。1991年までのバブル期には、設備投資のGDP比がかなり上昇しており、過剰な投資の解消に必要な時期でもあったからだ。そして、バブル前のGDP比の水準に戻った1995年頃から設備投資は増え始めているのである。

 いずれにせよ、クーさんが主張するように、金融緩和は効がなく、財政出動で需要を補わざるを得ない状況だったことは確かである。金融政策でコントロールできるとする主流派経済学の理論は、この状況では無用の存在だ。当時の日本政府は、ケインジアンの経済運営を行うことで、GDPが急減する危機を回避した。もし、1997年に大規模な緊縮に転じ、GDPを支えていた財政を一気に切る過激なマネをしていなければ、平凡に過ぎていただろうに、切った代わりに、何が需要を埋めるのか、まるで考えていなかったのである。

 続いて、1995年以降の日本の設備投資は、どうか。実は、リーマンショックに至るまで、輸出・住宅・公共の3需要の動向に、見事なほど従っている。企業は、追加的な需要を見ながら設備投資をするという、常識的行動をしていた。この間、大企業製造業による海外への直接投資が増えたから、その影響はあったろうが、国内需要に見合うだけの国内投資はしていたのである。これが足りないとすれば、景気が少し上向くと、すぐ緊縮を始め、消費へ波及する経路を自ら塞ぎ、内需不足にしていたからと解すべきであろう。

 日本の財政の方針は、高齢化による自然増しか歳出増を認めないから、景気が少し上向いて税収が増加すると、自動的にブレーキがかかる構造になっている。これがデフレから脱却できない大きな理由である。デフレへの転落は、1997年の極端な「愚行」によるだけに、脱却するには、景気を加速させる需要管理の「賢行」が必要となるが、そうした高度なワザは望むべくもない。現実には、的外れな「構造改革」に狂奔するばかりであり、成果とされる成長は、金融政策を犠牲にした自国通貨安の下、輸出に恵まれただけのことであった。

(図)


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 最近の米国においては、トランプ政権が財政出動を進めたことにより、FPBが利上げを続ける中でも景気が加速し、いまや、長期停滞論は雲散霧消するに至っている。緊縮をやめれば、停滞から脱せるという、分かりやすい構図である。実体経済は、需要で動くものなのに、緊縮以外に停滞の原因を探そうとする知的枠組に問題があったのである。既に、米国の景気は、MMT派のステファニー・ケルトン教授が「野心的なプログラムには、インフレリスクに注意が必要」とするほどになっている。

 他方、クーさんの興味深い指摘の一つに、トランプ政権誕生の背景には、FRBが金融緩和を正常化していく中で生じたドル高があるというものがある。ドル高が製造業を苦境に陥れ、それへの反発がトランプ支持につながったとする。そして、資本移動を自由にする以上、輸入を抑えるには、関税を使うしかないとの見方も示す。資本の動きの早さに対して、実体が適応していくことは困難なのだから、問題を解決しようとすれば、資本をいかにコントロールするかになる。

 こうして見れは、経済運営の在り方としては、財政を実体に、金融政策を為替や資産価格に割り当てることになろう。主流派経済学は、金融政策で実体経済を管理できると考えがちだが、設備投資に対する金利の調節力は、需要リスクの前では無力であり、財政が国内需要を安定させていなければ、まったく効果が出ない。結局、今後の経済学で取り入れるべきは、「需要リスクを与えると、企業は利益最大化の行動は取らなくなる」という透徹した見方ではないだろうか。

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 とうとう、トランプ大統領は、関税を25%に引き上げ、中国に需要ショックを与える挙に出た。アベノミクスの主柱である輸出の環境が悪化するのは確実で、既に景気の基調が「悪化」にあるときに、内需を潰しかねない消費増税を敢行し、「暴風に向かって窓を開ける愚」を犯すこともあるまい。しかも、中国では負債が膨らんでおり、金融経済に混乱が起こったとしても、誰もが必然としか思わないほどの状況だ。週末、幼児教育と高等教育の無償化法が成立したが、2018,19年度の税収の上ブレで賄える程度でしかなく、消費増税を見送っても、緊縮が中立になるだけだ。それでも、日本人お得意の「退くも地獄論」を叫び、バンザイ突撃を敢行するのだろうか。


(今日までの日経)
 全輸入品関税 13日に詳細。貿易摩擦、痛み中国に。トランプ氏「結論急がず」。幼保無償化法が成立。消費増税、外堀埋まる 財務省、景気動向を注視。家計の「黒字率」30%超。

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5/9の日経

2019年05月09日 | 今日の日経
 4月の消費者態度指数は、季節調整値で前月比-0.1と、ほぼ横バイだったが、前月が大幅な低下だったことからすると、底入れとは言いがたい。大型連休中の行楽は盛んだったようなので、5月は持ち直すかもしれないが、ここへ来て、米中貿易摩擦が激化し、関税の引き上げ合戦が再燃しそうな雲行きとなった。外需へのリスクが高まるようでは、とても、消費増税なんて言っていられなくなる。やはり、消費増税を止めるのはトランプ大統領なのか。

(図)



(今日までの日経)
 トランプ氏、対中関税25%に引き上げ表明。国立大教員人件費 4割で減少。

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平成金融史の背景と教訓

2019年05月05日 | 経済
 西野智彦さんの本は、すべて読んでいて、話の筋は承知しているはずなのに、『平成金融史』(中公新書)では、臨場感ある展開に引き込まれ、読む手が止まらなかった。金融危機の当時は、目くるめく出来事の中で、どんな事態になっているのか、正直、分かっていたとは言えず、後にして思えばということばかりである。そして、改めて西野さんの新著を読んで思うのは、繰り返えされることが起こっていたに過ぎないということである。

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 平成の金融にとって最大の課題は、バブル崩壊後にできた不良債権をいかに処理するかだった。ただし、それは、会計的には自明でも、マクロ的にどんな意味を持つかは別である。なぜなら、融資で買った土地が半値に落ちて不良債権になった側がいる一方、土地を売って濡れ手でアワの利益を現金で確定させた側もあるからだ。不良債権の処理は、これに充てる銀行の資産を減らすが、地主の資産はバブル前より増えているので、いわば、銀行から地主への資産の移転であり、マクロ的に資産が失われるわけではない。

 問題になるのは、銀行が資本を減らすことで、これを基にしている融資が縮小してしまうことである。したがって、銀行が毎年の利益の範囲内で不良債権を処理し、資本に食い込まないようにするか、資本に食い込む一気の処理をするのなら、新たに資本を注入しなければならない。つまり、バブル崩壊後も、それなりの経済成長があれば、利益を確保して、あまり問題なく処理できるということであり、本当に困るのは、利益が確保し難い経済状況に陥る中で、なおかつ処理に迫られたときとなる。

 西野さんは平成の金融を描いているので、ある意味、経済状況は所与のものとなっている。しかし、他の道がなかったわけではない。まず、指摘しておきたいのは、バブル時には、行き過ぎた資産投資があっただけでなく、実物の設備投資も過大になされていたということである。これが元の水準に戻る過程では、強いデフレ圧力がかかるため、軟着陸させるには、使われなくなる貯蓄を財政出動で吸収し、GDPを支える必要があった。これに何とか成功したのが、1992,93年であった。

 この両年のこそ、GDPは、ほぼ横バイにとどまったが、消費は、着実に増加し、バブル崩壊後にも、生活水準は向上し続けた。そうして、設備投資は、1994年に底を打ち、95年は増加に転じ、96年で加速する。これで、実体経済は正常化を果たしたのである。むろん、この間、財政赤字は嵩んだものの、徐々に縮めて行けば済むことだった。しかも、年金保険が黒字を出していて、政府全体では中立くらいであり、財政赤字に焦る必要は、まったくなかった。

 ところが、1997年に、橋本政権は、消費増税を主軸とする野心的な緊縮財政を打ち、経済に需要ショックを与えてしまう。さらに、不安定化させかねない金融ビックバンまで仕掛ける。成長率が墜落すれば、不良債権を処理する利益は得難くなり、資産価格は更に下がって、不良債権が拡大する。金融危機に陥るのも当然で、その後の不良債権の処理は困難を極めた。こうした財政の失敗で生じた重荷まで、金融機関は背負わされ、呻吟することになる。これが西野さんが描く悲痛な物語である。

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 バブルが崩壊し、不良債権が生じると、政府が公的資金で金融機関を救済せざるを得ない場合がある。決裁システムを守り、貸し渋りをさけるには、やむを得ない仕儀だが、世論からは激しい批判を浴びる。そして、金融危機の恐怖を世間が目の当たりにして初めて、許されるようになる。大事にならないうちに早く対処すべきでも、後手に回る失敗は、繰り返されてしまうというのが、『平成金融史』の主題の一つである。

 住専問題では、昭和恐慌の教訓を分かっていたにもかかわらず、対処し切れなかったし、1997年以降の金融危機への対処は、大型金融破綻を経験してからである。さらに、小泉政権期に入ると、緊縮財政で景気を悪化させた上に、経済構造改革として不良債権処理を強要するという倒錯した状況に至る。バブルの後始末には付きものの「清算主義」の蔓延を思わざるを得ない。似た様な顛末は、リーマンショック後の欧米でも見られる。

 不良債権の発生では、金融機関にも非はあるが、バブルで利益は上げていても、最後はツケを払わされる。他方、バブルで売り抜けた人たちの金融資産は、そのままなことに留意したい。本当は、これを政府が回収できれば、資産は一巡する。また、不良債権の処理より、財政赤字の縮小を優先しがちなことは、深刻な問題になる。これは、景気の二番底を招き、一層、不良債権を深刻化させるからだ。

 こうして見れば、政府がバブルの後始末に使う公的資金には工夫が必要で、預金に対する保険料なり、一定水準以上になった際の利子への課税によって、長期的に回収する形を整えるべきであろう。それらも「税金」ではあるが、預金を保全するための、ある種の目的税として認知されれば、金融機関の「救済」という抵抗感は薄まるし、バブルで膨らんだマネーを収めつつ、財政赤字の利払いへの不安を鎮めることにもなる。

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 おそらく、令和金融史の最大の課題は、異次元緩和の後始末になる。その隠された狙いが円安であった以上、いかに急激に上げずに行うかが焦点である。その点では、米国の景気が好調で、2017~18年のようなFRBが利上げしているときが好都合であったが、この間も、日本は、金融緩和に頼り、財政再建に注力し、その機会を逸してしまった。米国が利下げに移り、円高に見舞われる前に、内需による成長を実現しておかねばならない。もはや、円高は金融緩和で防ぎ得ないし、円高になれば、財政出動を余儀なくされる。しかし、後手に回る失敗は、繰り返されるのだろうね。

(今日までの日経)
 子ども人口 38年連続減。米失業率、49年ぶり低水準。5G特許出願 中国が最大。

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5/1の日経

2019年05月01日 | 今日の日経
 設備投資が崩れると、次は雇用だ。生産活動が衰えると、設備を増強しようとはしなくなり、人員も補充がいらなくなっていくという、当たり前の理屈である。新規求人増加数(対前年同月比)の「除くパート」を見ると、製造業はマイナスに突っ込み、全体でも、ほぼゼロになっている。「パート」だと、全体が既に明確なマイナスだ。アベノミクスは雇用の「量」が自慢なのに、今の時点で2014年増税後の底に近い状況では、秋に増税したら、底を突き破るのは必定だろう。令和元年を、アベノミクス崩壊の年にしたらいかんと思うよ。

(図)



(今日までの日経)
 「令和」幕開け 新天皇陛下が即位。中国PMI0.4ポイント低下 4月、2カ月ぶり悪化。保育無償化・利用急増「3歳の壁」再び。職員の「乱」、閉園余儀なく 質への警鐘「処遇改善が先」。

※供給側の実情を置いて、タダを振り撒いたら、こうなったということか。一度、タダにしてしまうと、質のために改めて保育料を取るのも難しい。一気に進めれば、混乱は生じがちだ。
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