経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

もっと愚劣であれ

2011年04月28日 | 経済
 今日は重要なニュースが多かったね。まずはFOMC。予想通りとは言え、量的緩和は終了することになった。ゼロ金利は続くにしても、金融緩和が「進む」ということはなくなったわけだ。そして、EUの対中関税である。また一つ、中国の成長へのブレーキ要因が増えたことになる。当然、世界経済の減速は織り込んでおかなければならないだろう。

 現在、日本は震災のために輸出力が失われているが、半年先を眺めれば、輸出が復興の牽引力になるかどうかを考えておく必要がある。月並みな結論だが、サプライチェーンが回復すれば、V字で回復すると、決め込んでいてはいけないだろう。阪神大震災の際も、超円高で輸出には頼れなかった経緯もある。

 阪神大震災があった1995年は、復興だけでなく、円高対策まで行い、その年の成長の大半を占めるほどの規模の財政出動を行った。それが成長を途切れさせず、1996年の力強い回復へと連なった。ただし、それと引き換えに、1997年に消費税を上げると決めたことが、のちのハシモトデフレの一因になる。

 消費税だけならば、ハシモトデフレにならなかったかもしれないが、それと合わせて13兆円もの急激な緊縮財政を取るという、お話にならないほどの愚劣な財政運営をすることで、日本経済を「失われた15年」に放り込んでしまった。日本の財政当局の思い通りにさせたら、こうなるという見本である。

 今回も、日本の財政当局は、重要情報を「説明しない」ことで世論操作を行い、地獄への道を着々と固めている。一つは、2011年度予算は、前年度補正後と比較して、4.3兆円の緊縮になっていること。二つは、地震から49日を迎えようというのに、積み上げの被害額を明らかにせず、復興予算が莫大になるというイメージを放置していること。三つは、3年程度の短期償還しかないと思い込ませ、一気の増税に誘導していることである。

 情報操作に惑わされなければ、前年度並みの予算にするだけで十分なことが見えてくる。それでも阪神大震災の1.5倍の被害に対応できるし、仮に、それより大きくなったとしても、この1年ほどの予算としては十分である。また、長期償還なら、増税するにしても数千億円で足りる。災害のような一時的な支出には長期償還で対処するのは財政学のイロハだ。

 笑えるのは、管政権が財政当局に「悪乗り」し、復興と社会保障改革を一体化させ、消費税に拘って延命を図ろうとし、猛烈な反発を受け始めたことである。震災ショックで不況色が濃くなってきたのに、いくら何でも無理だろうと、「素人でも」気づきだしたのだ。所得税の定率増税でとどめれば、実現の可能性もあっただろうに。

 今日の経済教室の中前さんは、財政当局の騙しのテクニックを見破っていないが、それでも、「復興予算に9兆円が必要でも、3年間なら3兆円ずつに過ぎない」ということくらいは見えている。筆者なんかは、最初から、日本の財政当局は情報操作をやってくるだろうと、どう来るか楽しみにしていたがね。

 ちなみに、筆者は、中前さんが言う金利正常化より、財政正常化が先だと考える。復興のために、予算を4.3兆円増やして前年度同規模に戻し、デフレ圧力をかけるのをやめ、それを3年続ければ、復興もデフレ脱出も成るだろう。そうなれば、金利も自然に正常化する。こんな平凡な財政なら、格付会社風情が信認を揺るがそうとしてもできない。

 むしろ、震災ショック時に緊縮なんてしたら、財政よりも、日本経済の信認の方が崩れてしまう。管政権には、もっと消費税の増税を強く打ち出してほしい。そして、誰もついていけないと思わせてほしい。それが日本のためになる。

(今日の日経)
 米量的緩和6月終了、ゼロ金利は維持。都市ガス網の地域間接続。社説・新しい巡幸が果たす役割。国会クールビズは上着着用。補正・自民賛成に傾く。社会保障給付抑制に軸足。ソニー7700万人分情報流出か。NTT被害1100億円、震災で発表相次ぐ。東電負担上限巡り攻防。東電から東北電へ融通。パレスチナ暫定政府合意。台湾野党候補に蔡氏。EU、中国に反補助金関税。ホテル営業縮小で雇用に影響。ルネサス応援1日2500人。放射能対応フォーク。長期金利横ばい。経済教室・金利正常化を・中前忠。那覇-グアム便就航。福島に応援旅行。

※連休中には「戦後政治と災後政治」と題して書いてみようかね。

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