経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

現実化した民主党の年金案

2011年04月29日 | 社会保障
 民主党の年金制度の財政試算の概要が明らかになったようなので、戦後政治論はちょっと置いて、こちらの解説をしようかね。結論から言うと、「内容不明」と散々批判された民主党案だが、ようやく、議論が可能なレベルになったようだ。いずれ詳細なデータが出ると思うが、今日は日経の記事をベースにする。

 新民主案だが、簡単に言うと、現行の基礎年金について、低所得者に広く厚めに給付する一方、中所得以上への給付を削減するという内容だ。中所得者への常識的な給付水準を確保すると、所得比例部分の保険料率は現状を維持せざるを得ないと思われる。したがって、財源としては、基礎年金の国庫負担の1.5倍ぐらいは必要であろう。

 現在の国庫負担は、約10兆円だから、あと5兆円、消費税率にして2%ということになるから、非現実的とまでは言えない。もっとも、現在の10兆円も、2.5兆円分の財源は未だ確保されていないわけで、消費税にして2~3%というのも、かなり大変なことではある。それでも、小沢氏の旧民主党案と比較すれば、雲泥の差だ。

 新民主党案をもっと現実的にするには、最低保障年金の水準を下げれば良い。4万円ぐらいまで下げれば、消費税の増税なしに賄えるのではないか。最低保障が低すぎるように思われるかもしれないが、低所得でも、まじめに所得比例の保険料を納めていれば、2~3万円の年金は用意できるのであり、保険料を納めなくても7万円というのは高すぎるのである。例の保険料を払わない専業主婦の年金問題にも突き当たることだ。

 旧民主党案は、基礎年金の税方式化を意味するものだと解され、それには巨額の財源が必要なので非現実的であり、保険料から税への転換にも受給権保護の観点から無理があると評された。それを換骨奪胎し、単に、中所得以上への国庫負担分の給付を削減し、低所得者へ回すというだけなら、十分に現実的で必要性もある。国民受けはしないが、無理のない方向へと変化しつつあるのだろう。

 ただし、少子化の下では、所得比例部分にも、税を入れて補わざるを得ないという本質的な問題は残る。これは現行制度でも同じことだ。そこまで完全に解決したのが、本コラムが小論で提案する「どうすれば案」である。まあ、最先端の設計技術を使っているのだから、民主党案であろうが、現行制度であろうが、合理性を求めていけば、「どうすれば案」に近づいてくるのだ。

 問題は、そのスピードだ。少子化で人口崩壊が始まってから、青くなって着手しても手遅れである。震災復興の財源のために、子ども手当をやめろと叫ぶ人は多いが、少子化はどうするね。引き継ぐべき次世代が激減するのでは、社会資本や住宅を再建しても、価値は半減するだろうに。まあ、目先の経済運営の舵取りもロクにできない日本人に、将来のことを諭しても始まらんのかなあ。

(今日の日経)
 上場企業1-3月期が前期比33%減、特損6000億円で阪神の1.5倍。米成長1.8%に鈍化、政府と住宅減、消費増も縮小。最低保障年金、年収700万円超は支給ゼロ。日銀、追加緩和に含み、西村副総裁の反乱。消費・輸出は夏まで低迷・エコノミスト予測。国際協力銀行が独立。原発、早期補償に課題。米国防長官、今夏に交代。中国、15年から労働人口減。韓台勢、液晶パネル不振。連休中も操業・製造業で拡大。ホンダ純利益2倍、トヨタ系最終増益。金利低下、景気への不透明感で。経済教室・電力料金に関する行動分析・依田高典・田中誠。

※大きい損害だが、ケタ外れではないね。やはり鈍化したか、ベストの時期は過ぎたね。西村さんは復興財源論に反応したのかな。 ※秋になると、日経が主張する子ども手当廃止で、足を引っ張られるかもしれん。回復を見極めてから廃止するという常識的な対応を、どうして日本人は取れないのか不思議だよ。 ※補償こそ政治が決める話ではないのか。輸出不振の記事は気になるね。2010年度税収は見込みを上回る可能性もあるなあ。 ※分析は良いが、政策提言を磨くべし。料金を上げれば節電するのは当たり前。前年度並みなら1000円ペナルティ、減らせば1000円フレゼントといった、シグナリングの「切れ味」が必要。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする