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経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

新しい無意味な「国家目標」

2009年12月30日 | 経済
 国際問題に親しんでいると、「この情報は、誰が何のために」と考える妙な癖がついてしまう。情報を集めて加工するにはコストがかかるから、意図のない情報提供はないと考えなければならない。

 今日の日経は、ネタ枯れの時期とは言え、一面トップに「家計の貯蓄頼み限界」という記事を載せた。こんな統計分析的な内容がトップを飾るようなものなのか。経済部の普通の記者がこんなものをデスクに持ってきても、扱いは軽いものにしかならないだろう。しかし、これが新たな財政当局の目標になり得るものだとすれば、話は別だ。

 経済危機への対応のために、日本の財政当局はプライマリーバランスの達成という目標を失ってしまった。次の目標が必要とされている。その点でいうと、政府債務を家計貯蓄の範囲内に収めるというのは、手ごろな目標になる。ちょうど都合よく10年先に逆転が起きるようなので政治的にも扱いやすい。

 記事は「日銀によると」としているが、これは資金循環統計を参考にしたという意味だろう。慎重なる日銀マンが「政府」の純負債の予想を示すといった「危険」なことをするとは思えない。そうすると情報の出元は…。まあ、あまり憶測は言わないでおこう。

 むろん、経済学的には、政府債務を家計貯蓄の範囲内に収めることには、ほとんど意味がない。だいたい、この数年の家計の純資産は減っているが国債消化に何の支障も出ていない。貯蓄投資バランス上の問題は、企業部門が十分な投資をせずに貯蓄を膨らませてきたことにあり、この貯蓄が巨額の国債発行を飲み込んできたのである。

 もし、企業が貯蓄を減らして投資をすれば、それは景気が良くなっているということであり、国債発行も減らせることになる。そもそも、経済政策で重要なのは、政府負債の残高ではなく、その時々の貯蓄投資バランスなのである。不況で企業の投資不足があれば、政府が出て、企業が投資を始めたら、政府は引っ込むということに尽きる。

 重要なのは、金利などで資金の需給状況を見ながら財政のコントロールができるように、増減税のメニューを整え、その実行の基準となる物価上昇率などの経済情況がどのようなものかを考えておくことである。繰り返して言うが、経済は生き物であり、財政は経済に合わせなければならない。財政赤字で数値目標を掲げることは、財政構造改革法以来、失敗の連続である。いい加減、学んだらどうか。

(今日の日経)
 家計の貯蓄頼み限界。日本経済縮みの10年。「埋蔵金」底をつく・参院選前の財源。液晶パネル中国勢続々。ウイグル漢族も地元指導部批判。経済教室・ドラッカー・利益より目的、加護野忠男。
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成長戦略作りの名人

2009年12月29日 | 経済
 鳩山政権の「成長戦略」がまとまった。日本は「成長戦略」作りの名人であり、毎年のように作っている。むろん、成果がなかったからである。「成長戦略」といっても、経済にプラスになりそうな項目が羅列されているに過ぎない。何を変えなければならないのか。

 経済成長の根源は設備投資である。しかし、直接、設備投資を増やす手段はないと言っていい。あると言って売り込むような輩は、怪しむべきだ。ガンと同様、回復を助ける手段はあっても、そのものを直す特効薬はないのだ。ガンの特効薬という売り文句を聞けば、誰しも怪しく思うだろう。

 設備投資を引き上げる手段として、まず、考えられるのは金利の引下げである。しかし、低金利は必要条件ではあるが、これで設備投資をコントロールできないことは、経済学の永年の主要テーマと言っていい。金利でさえ、こんな有様であるから、同様に利益率に影響を及ぼす法人減税や補助金が「やらないより良い」以上にならないのは当然である。

 規制緩和も、労働力の質の向上も、それで、どれだけ設備投資を引き出すかの納得のいく計量は難しい。やはり、「やらないより良い」以上の域を出ない。唯一、実証的に即効性が認められる住宅ローン金利の引下げは、たび重なる経済対策で食い尽くした感がある。では、どうするのか。

 一つ提言するなら、すべての新築住宅に太陽光パネルを設置させる政策を作ることだ。電気の電力会社の買い取り制度の整備、家庭の電力消費への環境税、太陽光パネルを担保とした超低利融資を組み合わせれば、新築時に太陽光パネルを装備することが経済的にトクになるようにすることは、十分可能である。

 太陽光パネルの設置は、電気料金の一括前払いと同じで、需要を前倒す効果がある。設置後は電気を生み出し、費用を回収することになるので、価値を保存する「設備投資」と同様の意味を持つ。家計部門ではあるが、立派な「設備投資」ではないか。70万戸に150万円なら、1兆円以上の「設備投資」の追加になろう。むろん、「現時点」では太陽光の電気は割高だから、金銭的な社会的厚生は下がるかもしれないが、CO2や貧困の削減といった外部効果もある。

 戦略と言うなら、「設備投資」という一点に絞り、クリエイティブさを発揮しなければならない。政権交代によって、その余地は広がったはずだ。戦略のメニューの数の多さにに満足しているようではいけない。

(今日の日経)
 太陽熱発電相次ぎ参入。まず出生率向上・Jダイモン。派遣規制、大幅に強化・労政審。下水道9割減、自治体裁量で浄化槽へ。診療報酬、けられた妥協案。ラオス・アジアのバッテリー。ロシア極東の自動車工場で韓国車。強いドル米で見直し論。経済教室・生物多様性・大沼あゆみ。
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不合理性の経済学

2009年12月28日 | 経済
 米国のサブプライム・バブルが崩壊してから、にわかに不合理性を焦点とする経済学がが注目されるようになった。日経の経済図書ベスト10にも、それは表れている。景気が良いときは経済に合理性があると思い、景気が悪くなると不合理があると思うのは、現金なものである。そういうのは、エコノミストとしては、適当な態度とはいえない。

 どうも、読者の中には、筆者が「需要追加で何でも解決できると主張するオールドケインジアン」と思っている方もいるようだが、それは違う。筆者は、むしろ供給側、すなわち設備投資の決定要因に注目している。収益率以上に、不合理なほどリスクが強く影響しており、そのリスクによる不合理性を癒すものとして需要が重要と考えている。つまり、理論上は、リスクを癒せるなら、手段は需要でなくてもよいということだ。

 不合理性に注目しているので、今年、流行の行動経済学に近いともいえるが、筆者の場合、単に不合理性を見つけて並べるだけでなく、その不合理性にどのような「理」があるのかを考究している。筆者は、人間は持ち時間が限られているので、期待値に従って行動することができず、ギャンブル的なことをしたり、投資収益の機会を捨てたりすると考える。これがバブルや不況の原因である。好景気のときも、経済は不合理なのだ。

 経済の不合理が命の短さにある以上、不合理性を見つけ出して経営者に意識させたところで、マクロ経済上の問題は解決しない。解決できるのは、リスクをコントロールできる、時間に限定のない主体、通常、「政府」だけである。

 人間が長期的な合理性に従って行動ができないというのは、景気にかぎらず、温暖化にも、少子化にも現れている。政府の役割とは、長期的な合理性の確保と言うこともできるだろう。「民でできることは民で」といった、差し引かれた残余のものをする主体という政府のイメージ以上のものが求められているのである。今日は、ちょっと難しかったですかな?

(今日の日経)
 日本、米国債保有18%増、金融機関が積極購入。パナ日立という一炊の夢。韓国貧富の差深刻。中国では50㌔走行20万円EVが爆発的に伸びる。経済教室・貧困層脱出の誘因高めよ・五石敬路。
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輸出による再分配

2009年12月27日 | 経済
 09年も暮れようとしており、バブルの頂点が89年だったことを思えば、失われたのは「20年」になる。時間の長さもさることながら、いまだに失った理由も分からずにいるのだから、日本の病は深い。今日のエコノ探偵団は、その典型だ。

 実は、探偵団は、興味深い事実を指摘している。世界経済に占める日本のGDPの割合は、90年代後半になって下がり始めているということだ。もう昔のことなので、覚えている人は少ないかもしれないが、バブル崩壊後も日本経済は悪くなかった。「バブルで大損しましたよ」と、まだ「ネタ」にできていたのだ。GDPの順調な消費の伸びを見れば、統計的にも明らかである。

 本当に、真っ青になったのは、97年のハシモトデフレからである。このことも、経済統計どころか、自殺など社会統計の数字で確認することさえできる。問題は、経済政策の失敗を、総需要の管理ではなく、金融政策にあると誤解してしまったことである。日本経済を失ってしまった本当の原因は、失敗の原因を見誤ったことにある。探偵団のように、重要なデータを見ても、知的枠組みが狂っているので、普通の理解ができないのだ。

 そして、そこから今だに抜けられない。金融超緩和と財政緊縮の組み合わせで失敗を続けていても、失敗していることにすら気づかない。需要が供給を上回って物価が上昇するまで待てず、早々と増税で需要を吸い上げてしまえば、日本経済の大宗を占める内需が低迷するのは当たり前ではないか。

 その間、新興国は、米国の内需をつかんでテイクオフを果たした。輸出が所得を生み、所得が内需を生んで、自律的な成長へと移行した。日本は、輸出が伸びても、所得を吸い上げて内需への拡大をカットした。これが決定的な違いである。それゆえ、内需を充実させた新興国は、リーマンショックから早く立ち上がり、輸出に頼りきった日本は低迷を続けている。

 新興国の輸出というのは労働集約的なものが多いから、輸出の拡大は貧困層への所得再配分的な役割も果たす。これが非常に大きい。BRICsのうち、ロシアが低迷するのは、資源輸出で所得が一部に偏り、一般国民の内需を満たす産業が十分発展しなかったからだ。テイクオフしきっていないのである。

 さて、日本の課題は、保育や介護に再配分をして内需と雇用を拡大し、物価が上昇したら、堂々と増税をすることである。こう言われると、違和感を覚える方は少なくないと思うが、経済政策の本道である需要管理の思想なしでは、日本経済の復活の道は遠い。

(今日の日経)
 恩恵は春から・負担は秋から。財源具体策見えず。米本土テロ未遂に衝撃。ガザ進まぬ復興・建設資材搬入を制限。新日石八戸にLNG基地。エコノ探偵団・ゼロ年代始まりも終わりもユニクロ。BRICsからRを外す。経済図書ベスト10。
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時代はまっすくには進まない

2009年12月26日 | 社会保障
 日本の最大の政策課題が少子化であることは疑いない。少子化を解決すれば、年金などの社会保障負担の問題は解決し、人口の維持なしに財政再建はあり得ない。その解決法も明らかで乳幼児の大規模な保育体制の整備である。それらに必要な予算規模も算定済みで2.5兆円だ。これで出生率は1.75への回復が望める。

 それなのに、どうして、そこにストレートに到達しないのであろうか。最大のネックとなっていた財源は、子ども手当を振り向ければ十分に賄える。子ども手当の総給付費は、10年度予算案で2.25兆円、うち国費負担が1.75兆円もあるからだ。

 子ども手当という方向性は正しいが、焦点の乳幼児を対象とした部分は、児童手当の廃止と相まって月額3000円しか増えない。最重要のところを外して、効果の薄い年齢層に巨額のバラマキをすることになる。

 不況の今は、社会保障を充実させるチャンスである。景気が通常の状態であれば、インフレ圧力を避けるために、給付は増税とセットでないと実現できない。今しておかないと、絶好のチャンスを見すみす逃すことになる。

 「ばらまきで安心感を得られるか」という批判もあるが、唯一、安心感の得られるバラマキは、出生率を回復させるものである。少子化を解消すれば、年金の不安は吹き飛ぶし、対策が国債によって賄うものだったとしても、それを背負う次世代の数が増えるのなら、持続可能になる。次世代が細れば、国債を支える経済そのものが縮小してしまう。

 日経は、「成長力」というが、その基礎になるのは次世代である。それをないがしろにして、小さい政府を追い求めてきた結果が今の日本経済ではないだろうか。むろん、FTAは重要であり、貿易自由化で遅れをとることは許されない。ネックの農業問題を、巨額の予算を用意するのだから、農家の戸別補償を用いて突破しなければならない。

 しかし、しょせん、アジアの内需といったところで、日本経済に輸出の占める割合は12%に過ぎない。規制緩和の需要に与える効果は測定が困難であり、医療、介護、保育の問題は、規制よりも利用する側にサービスコストを払えるだけの負担能力が十分ないことにあり、再配分によって解決すべき問題だ。的を外しているのは、政府だけではない。日本の悩みは深い。

(今日の日経)
 ばらまきで安心得られず・実哲也。子ども手当継続に課題。1人当たりGDP4.1%減主要国中19位。歳出別枠2兆円予備費。一定の財政規律国債の買い材料。アチェ自治権獲得も経済は苦境。エジプト再生エネで電力20%が目標。タイ自動車生産2010年最高更新も。トヨタ世界生産来年17%増。
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財政政策・分析の視角

2009年12月25日 | 経済
 年末なのだから、政府予算案の報道があふれるわけだが、その報道ぶりを見ると、意味が分かってしているのかと、いつも疑問に思えてしまう。意味を十分理解せず、当局発表の数字を流すだけになっていないだろうか。限られた時間では仕方のないことかもしれないが。
 
 一番の問題は、財政規模の把握の仕方である。09年度の予算規模は、二次補正後でも約102兆円、10年度当初予算案は、膨らんだと言われても約92兆円だから、10兆円も少ないということになる。この不況の中で、財政規模をGDP比で2%も圧縮して果たして良いのだろうか。それとも、来年度は、圧縮を埋め合わせるほど、民需が伸びるというのであろうか。

 結局、早くも10年度予算の10兆円規模の補正予算を想定しなければ、マクロ政策的には意味をなさないことになる。当初予算を92兆円規模に圧縮するために、相当な政治的調整が繰り返されたわけだが、あとで10兆円も追加できるとなったら、何のために苦労したか分からない。

 こうした苦労は、せいぜい経常的な歳出費目を増やさずに済んだというだけで、あとで臨時的な費目でバラまく余地を作ったということに過ぎない。歳出の意義は、経常的なものの方が臨時的なものより高いと思うが、いかがだろうか。

 経常的な歳出を抑える意義は、経常的な「歳入」を議論せずに済むというところにしかない。すなわち、増税の議論から逃げることができるわけである。必要な歳出は当初から用意しておき、意義のある歳出であるから、将来の増税の見通しまでも示すというのが、誠実な財政政策である。

 あまりに財政当局のごまかしに慣れてしまい、もはや真の姿を議論しようという者さえいなくなっている現状は深刻である。知的な枠組さえ崩れていて、問題を解決するどころか、把握することすら困難になっている。これでは改革の知恵も生まれまい。改革の道は、とても遠い、そう思わせる年の瀬である。

(今日の日経)
 来年度予算案・財源持続性に不安。円下落、株価に追い風。子ども手当制度綱渡り。所得控除手当に変換。米医療保険法案一本化作業へ。オリックスEVレンタルまず沖縄で。経済教室・気候変動途上国の資金支援・藤井良広。
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途上国ビジネスの経済学

2009年12月22日 | 経済
 経済学の教科書では、儲かるところには投資がなされることになっている。しかし、実際には、失業者があふれたり、貧困層が存在して、安い労働力が豊富にあっても、それを使おうとする設備投資はなされず、失業者も途上国もなかなか救われない。仕事があれば、消費需要も生まれるというのに。

 これは、単純に収益率だけで投資がなされないために起こることだ。現実の投資は、リスクを過大に評価しがちで、社会全体の収益を取りつくすほど均霑化しないのである。つまり、労働力や資金はムダや不効率になっていることを意味している。

 このところ途上国ビジネスが注目されている。今日の経済教室もそうだし、日経ビジネス今週の特集「BRICsではもう遅い」もそうである。リスクだらけで投資などできないはずの途上国にも、十分なリターンが見込めるチャンスがあることが「発見」されているわけだ。

 ノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行のマイクロファイナンスも、最貧困にある人たちでさえ、わずかな資金を与えられれば大きく生活を向上させられることを示し、投資が成り立つはずのところなのに、放っておいては投資がなされないことを証明した。

 むろん、途上国ビジネスが成り立ってきた背景には、この十年の世界経済の成長がある。米国のバブル需要が途上国に輸出市場を提供し、途上国は所得を得たことで国内消費が生まれた。この少しばかりの需要が投資リスクを大きく下げたのである。そうなると投資が需要を呼ぶ成長の好循環が生まれることになる。

 今日の経済教室の水尾先生が指摘するように、途上国ビジネスのカギは、初期投資はするだけの価値があると認識することと、カントリーリスクのアセスメントも従来どおりきちっとするということである。そして、アセスメントの手段としてNPOやNGOの挑戦を活用するということであろう。

 途上国ビジネスは儲かるものである。ただ、ビジネスにとって、儲かること以上にうれしいのは、国や人々が豊かになることである。そういう働く喜びという価値が今の途上国にあるということを、やはり指摘しておきたい。

(今日の日経)
 ガソリン税率維持、子ども手当所得制限なし。長期金利に低下圧力4年ぶり低水準。パワー半導体11年春量産。失った20年・個人金融資産の株式38%減。経済教室・途上国ビジネス初期投資課題・水尾純一。
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海はつながっている

2009年12月21日 | 経済
 環太平洋という言葉は、久しく定着しているが、環インド洋となると目新しいものになる。近年、インドが経済成長のテイクオフに成功して、新興国として注目を集めるようになり、アフリカも残された成長の処女地として捉えられるようになって、にわかに「環インド洋」も意味を持つようになった。

 しかし、歴史を紐解けば、前近代において、インド洋は文明のメインストリートだったわけであり、人類の文明の先進地は、欧州、米国、東アジアを経て地球を一周することになる。むろん、前近代のそれは、アラビア、インド、東アジアへの「海のシルクロード」の通商であり、ルネッサンスの基礎ともなったイスラム文明であった。

 フィリピンでは「こんにちわ」に当たる言葉は「サラマッポー」であるが、この「サラム」はアラビア語由来である。アラビア語の「こんにちわ」は「アッサラーム」(平和であれ)であり、もちろん、今の中東でもこれで通じる。

 言うまでもなく、イスラム教は、アラビア半島から、パキスタン、バングラデシュ、そして、インドネシア、フィリピン南部まで、海によって帯のように連なっている。インドネシアは人口で言えば、世界最大のイスラム国である。

 言語については、マレー語は通商のための言葉とされ、東南アジアの島嶼部では広く通用する。これを基礎にしたインドネシア語は、2億3千万人の国民と東西5000kmの地域を結び付けている。日本人にもなじみやすいもので、母音の多い話しやすさ、簡潔な文法というのは「通商の共通語」のなせる技だ。

 マレー語は、インド洋を越え、アフリカ東岸のマダカスカルにも言葉として残っており、かつての通商が「環インド洋」であったことが確かめられている。日本ではあまり知られていないが、伝統的な帆船でのインド洋の渡航実験も試みられ、みごとな成功を収めている。

 ちなみに、沖縄方言の「チャンプル」は、様々な素材を混ぜた炒めものを指す単語として、すっかりおなじみとなったが、マレー語由来である。インドネシアで「チャンプル」と頼めば、「ナシ」(飯=めし)にいろいろなおかずを載せて出してくれる。

 海は、隔てるものではなく、繋げるものなのだ。日本に、イスラムやマレーの古い名残がもっとないものかと探しているこの頃である。 

(今日の日経)
 対中投資台湾が緩和・TV産業集積。農業土木予算3000億円に圧縮。日本国債いつ火を噴くか・平田育夫。環インド洋にらみ協力を。シンガ航空輸送能力増強。米有力企業成長投資再び。サイゼリヤ科学で安さ生む。IBMチームでIT支援で社会貢献。UAEで理科教室。経済教室・開発援助検証・澤田康幸。
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ASEANの活気と日本の衰弱

2009年12月20日 | 経済
 約2か月、東南アジアで仕事をして、強く感じたのは日本の衰弱である。活気にみなぎるASEAN各国の様子を見るにつけ、10年前に失ってしまった日本の成長ぶりと重なり、彼我と今昔の違いを想ってしまう。

 日本なみの清潔さと言われたシンガポールは、もはや日本を超えた。目標だった公園都市は現実となり、建設途上であった舞台裏は消え、完成の域に達している。日本に居ては感じ難いが、都市投資が滞った日本の街並みは古び始めている。一人当たりGDPは、日本を上回り、なおかつ「中」度成長を続けている。成熟したと諦めている日本とは大違いだ。

 マレーシアは中進国と呼ばれているが、通貨が安いだけで発展ぶりは先進国と遜色がないまでになった。科学技術を重視し、大学に積極的に投資している。財政削減一本やりで、劣化の進む日本の国立大学とは対照的だ。こういう基礎的な社会資本への投資の差は、ボディーブローのように効いてくる。日本は過去の資産を食い潰しつつある。

 タイでは、バンコクはメトロポリス化が進む。スワンナプーム国際空港から成田へ飛べば、「先進国の空港ってこの程度?」としか思えないだろう。富める者がますます富んでいるようで、貧富の差が開いていることが気になるが、そこはタイ人も分かっているようだ。再配分が重視される時代、日本で言えば1980年代がそこにある。

 この差は何なのだろうか。むろん、日本ひとりがゼロ成長という、この10年の経済政策の失敗がそこにある。しかし、ほんとうの理由は、日本の国家経営における現実感の喪失であろう。米国の経済思想を受け売りし、財政や金融などの指標にこだわって、「それをしたならば、国民を富ませられるのか」という切実な想いに欠けていた。  

 ミャンマーは、ASEANの中で最も貧しい国であるが、そこから抜け出そうとしていた。そして、なにより、政治指導者の国民を富ませることへの想いは熱い。農村を焦点に、文字通り泥臭く生活を改善しようとする姿勢には将来が期待できる。結局、国の発展は指導者にかかっている。豊かさは日本の戦前並みかもしれないが、現実主義で地方開発と政党政治を確立した原敬のような偉大な指導者が彼の国に現れないと、誰が言えるだろう。

(今日の日経)
 COP15閉幕・先進国自主目標、途上国行動計画。通商交渉負けるが勝ち・韓国EU基準認証受入れ。蓄電池付き住宅大和ハウス投入。仏・北欧の出生率回復・政策主導で。消費者くすぐる社会貢献。経済論壇・縮む日本と移民。老いた未来都市ブラジリア。
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