元旦に大地震とは辛い。被災された皆様には心よりお見舞い申し上げる。
この年明けは、思わぬ形で円安になったが、2024年は、円高基調の中で、どう経済を舵取りするかが焦点になるだろう。年末年始に、西野智彦さんの『ドキュメント異次元緩和-10年間の全記録』著を読み、いつもながらの綿密な取材による濃厚な筆致に感服しつつ、あれこれと考えることが多かった。
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『全記録』でうかがえるのは、黒田総裁は、やはり信念の人だったということで、状況に応じて実利を得ようとするリアリストではなかったことだ。官僚らしさは、部下に任せるマネジメントやデマケへの感覚に表れていて、それらは政策を形成する重要なファクターともなっている。2022年からの円安局面において、首をかしげるような拘りは、「財務省の仕事」だったわけである。
『全記録』はドキュメントとは言え、何を書くかで価値観は出るので、巻末に「暫定評価」が置かれたのは良かった。その中で、通貨安への誘導を素直に功績としている点は、まったく同感だが、膨張したバランスシートを罪とし、構造改革と財政健全化が不可欠とする点は、議論があろう。異次元緩和の当初は危惧を抱いていたが、終わってみると、金融政策を制約するにせよ、財政リスクの軽減には資するようにも思える。
いずれにしても、金融政策を財政と切り離して評価することは難しい。そこは、『全記録』で、リフレ派が金融政策だけでデフレ脱却ができると豪語した主張を変えていったところに端無くも描かれている。それが消費増税を悪者にするだけでは済まないのは、リフレ派に限らず、当時のほとんどのエコノミストは、緊縮の打撃度も、輸出の浮揚力も、正しく計量ができていなかったところもある。
そして、古くから「ヒモでは押せない」との経験が語られているのに、金融政策の信奉者が絶えないのはなぜなのか。論理があまりに美しく、効果がゼロでないだけで、魅了されるからだろうか。少なくとも、裏に実利を隠して、標榜するだけのものでないことは確かである。愚者ですら経験に学ぶというのに、やはり、ケインズが語るように、恐るべきは思想というべきであろうか。
(図)
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1/5公表の12月の消費者態度は前月比+1.1と、秋の低下を取り戻し、夏のピークに帰った。物価の落ち着きからか、暮らし向きが改善している。12月の百貨店の売上は、インバウンドもあって好調だったようだ。円安でも、モノの輸出は停滞しているが、サービス輸出にはプラスに働いている。米国の金利低下も一服して、円安に進み、これなら、金融政策の「正常化」も順調に進められそうだ。
(今日までの日経)
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