経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

EUの教訓の選び方

2010年05月30日 | 経済
 大方の見方は、「EUは財政規律を強めなければならないし、日本は財政赤字による危機を他山の石にしなければならない」というところだろうが、筆者の捉え方は、まったく異なる。ありきたりの分析では足りないように思う。

 もし、EUが緊縮財政を選ぶことになれば、これはユーロの価値を維持するために、景気を犠牲にするのであるから、戦前の金本位制の時代の経済政策と変わるところがない。正解は、ギリシャ国債を買い支え、ユーロ安を甘受し、ドイツの輸出を手始めに景気を回復させて、南欧諸国に波及させることであろう。

 EUに足りないのは、財政規律ではなく、南欧諸国の国民と共に、ユーロ安による一時的な生活水準の切り下げを受け入れる覚悟である。そういう連帯こそが経済統合の本質であり、自然な流れである。本コラムがECBの国債買い取りを「予言」できたのは、こうした観点に立っているからだ。

 一方、日本だが、有識者であれば、財政再建の道筋くらい示してはいかがか。経済論壇の福田先生にしても、中外時評の末村委員にしても、御指摘の財政再建の必要性は言い尽くされている。一定の成長率や物価上昇率の下でなければ増税できないのは明らかであり、どのような情況でするかの手順の議論に進まなければならない。

 その際、必要なのは需要管理の発想である。税制の在るべき姿を論じるのも良いが、当面の道筋が重要になる。例えば、設備投資は急速に回復しつつあるのだから、今、法人税をいじる必要性はない。これをいじると将来的な大幅な税収減につながるため、長期金利に悪影響の出るおそれもある。

 むしろ、企業収益の回復から法人税収の増加が見込まれ、財政は改善の方向に向かうのであるから、これを待つべき局面だ。他方、今年度予算は、前年より10兆円も少ないため、年度後半に景気が減速する可能性が高く、しかも、ユーロ安によって輸出が減速する心配も出てきた。ユーロ安は、中国の景気にも悪影響を及ぼすだろう。

 そうしてみれば、欧州の経済危機で心配すべきは、日本の財政赤字のことではなく、年度後半の需要の維持となる。先のGDP速報で示された景気回復に安心している場合でもなければ、財政再建を先取りするような局面でもないのである。

(今日の日経)
 設備投資3年ぶり増、非製造業4.3%増。あえて緊縮の道選ぶ欧州。グアム移転費を下院可決。ソニー跡に環境ビル。誰がこの国を支えるのか・末村篤。高齢者の安否見守り。有機分子層コンピューター。経済論壇・財政規律の確立急げ・福田慎一。読書・グローバルインバランス・白井さゆり、ポジティブ病の国アメリカ、環境と経済の文明史、イマココ。
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5/23~28の日経

2010年05月28日 | 経済
(5/23の日経)
 銀連が日本の消費かさ上げ・滝田洋一。ニトリには100年に一度のチャンス。読書・消費税の議論・畑農鋭矢、下流の宴、農業ビックバンの経済学、共感の時代へ、さよなら絶望先生、転校生とブラックジャック。

(5/24の日経)
 企業手元資金63兆円の空前の金余り。ユーロ安・欧州企業輸出追い風。危機感ゆえの投資熱。富山の路面電車、開発刺激も。監視カメラ痴漢半減。

(5/25の日経)
 地熱や廃熱で発電。空売り王、中国関連株に大量の空売り。大機・不安の本質は日本経済・夢風。経済教室・CO2削減目標・野村浩一。

(5/26の日経)
 不安次々株安に拍車。全農に独禁法適用検討。国保赤字で税金投入最大。欧州銀、資産圧縮。青山、自動車利用減に対応。金属プレス複雑加工OK。低格付け社債に追い風。太陽電池用シリコン上昇。経済教室・コンパクトシティ・小峰隆夫。

(5/27の日経)
 与那国島上空の防空識別圏修正。米、グアム移転費確保重視、沖縄から司令部を退きハワイの潜水艦部隊を前進、インフラ沖縄分決められず日本負担6割61億ドル。中東産油国で石油需要が急拡大。三洋、伊発電所で大型受注。ゴム中国台頭で需要構造一変。

(5/28の日経)
 最低賃金、平均1000円大幅先送り。経済教室・短期経済予測・強まる既視感。
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本コラムのマニフェスト

2010年05月20日 | 社会保障
 「政治」と「政策」の違いは、前者は利益配分であり、後者は、それを含みつつも、不合理の解消を目的とするところにある。選挙民の歓心を引くために「子ども手当」を配るなら、それは政治であり、少子化という不合理を正すのに効果的なものへと「子ども手当」をしていくなら、それは政策になる。

 日本政治の問題点は、既得権の破壊や再配分に引き寄せられ過ぎていて、社会的な不合理の本質を見究め、その解消を最小限の負担で実現する政策作りに知恵を絞ろうという意識が薄いことにある。ゆえに、「破壊」ばかりで「建設」がない印象を持たれる。

 本当に少子化を緩和したいのであれば、乳幼児期に集中して給付をしなければならない。「行動を変えられる大きさはいくらか」という本質から考えるべきなのだ。それには、本コラムが「小論」で言うように月8万円は必要である。しかも、その財源は「小論」のようにすれば、負担増なしにできる。

 正規・非正規の格差を解消するには、規制強化などの法的な解決策より、「130万円の壁」を撤廃することの方がはるかに効果的である。低所得層の保険料軽減に2兆円を要するが、所得税増税と組み合わせれば、増減同額にできる。そして、成長の促進効果で所得が伸びて、結局は、すべての人が得になろう。

 法人減税で設備投資を促すといった効果不明の政策より、ガソリンや電力消費に環境税を将来的に賦課することをアナウンスすれば、エコカーや太陽光パネルは、売れ行きが加速し、その需要を当て込んだ設備投資が増すことになる。これは、その量を確実に計算できる成長戦略になるはずだ。

 消費税が必要か否かの初歩的な議論や、経済情況を無視する政治的な財政再建論からも早く脱すべきだ。増税を許す経済情況はどのようなものかという、すぐれて経済政策上の技術的な問題への転換が必要である。十分な物価上昇率の下で、1%ずつ引き上げるという穏健な方式に、誰が反対できるというのだろう。

 以上のようなことを、本コラムのマニフェストとしよう。政治も必要だが、政策は政治を超えて幅広い理解を得ることができる。それは合理性に基盤を置くからである。本コラムは、政策研究を志す多くの若い人たちも見ている。そうした人たちに、このマニフェストをさしあげる。

(今日の日経)
 りそな1割上乗せだけで公的資金返済へ。空売り規制で欧米株が下落。社説・子ども手当は根本の設計から。大手銀、過払い金で高収益反転。収拾に時間、タクシン氏人気根強く。ギリシャいずれ離脱。学研・塾と保育所併設。社債発行、再開相次ぐ。大機・強い円幻想。広告・セキスイハイム太陽光発電アパート。
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増税で景気回復の知的枠組み

2010年05月19日 | 経済
 科学において理論が重要なのは、それが事実を見つける枠組みになるからである。枠組みから外れるものは、存在しても見つけられないものなのだ。その枠組みの拡張と事実の発見が科学の進歩と言っていいだろう。

 さて、増税すると景気が悪くなるというのは経験的な常識であるのに、増税しても景気が悪くならないという主張は繰り返しなされる。なぜなのか。これは、増税しても、金利低下を通じて設備投資が減ることはないので、景気には悪影響がないという考え方に基づく。このような行動は、利益を最大化することになるので、そう行動しないはずがないと思い込んでしまうのだ。これが教科書的な知的な枠組みである。

 現実には、増税などで需要の見通しに不安があると、金利が低下して、投資すれば利益が得られるという情況にあっても、つまり、機会利益が存在しても、それを敢えて捨てるという行動をとる。これは、人間には時間的制約があって、大きなリスクには耐えられないからである。だから、現実の経済政策では、需要の管理が最重要の対象になる。こちらは最先端の知的な枠組みになる。

 財政審は1997年のハシモトデフレについて消費税増税を主因でないとするが、これは教科書的な知的枠組みに基づくものだ。増税で景気が良くなるのは、クリントン政権の発足時のように、財政赤字によるインフレ期待で長期金利が高騰しているような場合に限られる。日本がそれに当てはまらないのは言うまでもない。

 需要が設備投資の動向に、イコールそれは景気とも言えるが、いかに決定的に重要かは、この10年を振り返っても明らかである。設備投資は輸出外需に従ってなされ、内需向けの設備投資は弱々しかった。金利が決定的に重要なら、内外の違いは少ないはずである。むろん、内外でコントラストが激しかったのは、緊縮的な財政運営で、内需の吸い上げをしていたからである。

 日本が早めの緊縮財政によって成長率上昇の芽を潰し続けるのは、教科書的な知的枠組みから一歩も出られないからである。何度、悲惨な経験をしていても知的枠組みがないから、失敗していることにさえ気づかない。そして、同じ失敗を繰り返すのである。

(今日の日経)
 半導体設備投資1/100に2014年実用化。海外の稼ぎ還流3兆円5000億円増。銀行業績、資金需要が低迷。増税プラスの経済効果も。ロシア市民運動の芽生え後押し。太陽電輸入品シェア11%。経済教室・銅不足経済の制約に。
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攻め手が単調な日本

2010年05月18日 | 経済
 金利や法人税を低くして資本コストを下げれば、設備投資が増加するというのは、教科書的な経済理論である。現実には、そうではないから苦労するのだが、日本は、どんなに効果がないという経験をしても、まったく方法を変えようとしない。単調な攻め手に頼って、現実に学ぶということがないのである。

 数年前までは、インフレターゲットと称して、日銀がひたすら金融緩和を行えば、設備投資が回復するという説が横行した。今度は、法人税を下げれば、設備投資が伸びるという説が盛んである。

 今日の日経は、経産省によるEU経済の分析を掲載し、法人税を下げる成長率が高くなるとするが、その根拠となる図をみると、法人税が徐々に低下する中で、税収は景気動向に従って上下しているようにしか見えない。主張をするにしても、お粗末なように思う。

 このくらいの根拠で良いのなら、日本は1997年のハシモトデフレ後に法人減税をしているから、「法人税を下げるとデフレになる」という主張さえできるのではないか。相関関係から因果関係を推察するときには、よくよく考えなければいけない。

 他方で、消費・所得税上げの議論がスタートしているが、欧州経済が揺らぎ、半年後の世界経済の減速リスクが出てきたのに、どう対応するつもりなのか。ただでさえ、10年度予算は、前年度より10兆円も少なく、年度後半にデフレ圧力がかかる。10年度予算の1兆円の予備費さえ使い途が決まっていない。

 財政再建については、企業収益が大幅に向上しているので、ここ2年のうちに法人税収が大きく伸びることが見込まれる。そうであれば、景気回復に安心して、財政を引き締めてしまうのではなく、歳出規模は前年度を維持し、法人税による自然な税収の回復を待つということで良いではないか。逆に、法人税を下げてしまうと、大幅な税収減の見通しが立ってしまい、当面の財政による需要維持策に支障が出かねない。

 今の日本経済は、高い法人税率と財政出動の組み合わせで、設備投資の上昇と低い長期金利の両方を実現している。成功しているのだから、余計なことをする必要はない。極端な緊縮財政や法人減税こそが、やってはならない政策なのである。日本に必要なのは、教科書ではなく、現実を見ることなのだ。

(今日の日経)
 ホンダ新興国間取り引きを増やす。マンション供給1割増10年度供給計画。欧州経済失速なら輸出依存高い米中に影響大。消費・所得税上げ必要。法人税下げ成長率高く。ウラン移送イラン合意。経済教室・革新的製品へ3つの視点・恩蔵直人。
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社会保障で成長

2010年05月17日 | 社会保障
 経済成長をどうしたら達成できるかは、経済学でも結論の出ていない問題である。したがって、社会保障で成長させられるかどうかも、答えの出せないものなのだが、今日の経済教室では、学習院大の鈴木亘先生が、これに果敢に挑んでおられた。

 成長を高めるには、労働の供給力の拡大と設備投資の向上が必要である。前者については、乳幼児保育への社会保障給付、「130万円の壁」撤廃のための130~300万円の低所得者層への社会保険料軽減を行えば、女性を中心とした労働供給力は確実に強化されるわけだから、社会保障で成長は正しいはずである。

 しかも、これらの措置によって少子化が緩和すれば、労働力人口の増加で成長は加速することにもなるから、二重に効果があると言える。鈴木先生は、紙幅の都合か、こういった社会保障に言及していないが、社会保障と成長の関係では、これを外すことはできないだろう。(具体案については、本コラムの「小論」と「基本内容」を参照)

 次に、設備投資の向上であるが、安定的な需要の確保が設備投資の向上に資することにはコンセンサスがある。そうであれば、不況期に社会保障給付を拡大し、好況期に負担増を行うということで、「社会保障で成長させる」としても差し支えないのではないか。フィスカルポリシーの対象として、公共事業と社会保障のどちらを選ぶかという違いでしかない。

 社会保障の充実で貯蓄が増減するかどうかについては、私は、鈴木先生以上に否定的である。貯蓄は投資の影であり、設備投資が高まれば、その結果として貯蓄は高まるものだからだ。貯蓄量をコントロールすることで設備投資を促すという「逆向きの政策」には無理があると考えている。

 最後に「所得再分配」であるが、鈴木先生が指摘するように最下層での消費性向が低下しているとしても、所得が低い階層の消費性向が高いことに違いはないので、消費拡大効果を否定的なものとするのは、やや筆が滑った感がある。

 いずれにせよ、不況期に需要を増加させるのであれば、好況期に需要を削減する政策も用意しておく必要がある。成長率や物価上昇率がどの程度になれば増税をするかを明らかにしておかなければならない。それは、社会保障でマクロ経済政策を行う場合に限られる問題ではない。

(今日の日経)
 韓は印とEPA、トヨタはライン減。社説・人材立国・アニメは自動車ショーに匹敵、日本デザインに創造性。10年代半ば経常赤字に?。中国、農産物に投機資金。米オセアニアアジア広域自由貿易圏。NTNインホイールモーター世界初の量産。ベトナム人留学生に照準。ブラジル特集、経済教室・社会保障で成長は誤り・鈴木亘。
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需要不足の欧州経済

2010年05月16日 | 経済
 リーマンショック後のバブル崩壊で、欧州は需要不足に直面している。その点で言えば、大きな財政赤字を出している南欧諸国は「優等生」ということになる。しかし、それを批判されて、財政赤字を削減せざるを得なくなった。それでは、誰が需要を担うべきなのだろうか。

 答えは、より財政赤字の少ないドイツなどが埋めなければならない。欧州は共通通貨の下で金融政策を統合しているのだから、財政政策も欧州内で統合しなければならない。それは各国が一定の財政赤字のGDP比を超えないようにするといった単純なものではなく、欧州全体で必要になる財政需要を算出し、どう分担するかということになる。

 そういう域にまで達していないから、欧州経済は、方向性が見えなくなって、動揺することになる。例えば、ドイツが拡張的な財政政策を採り、南欧の緊縮財政の穴を埋めるのであれば、景気下押しの不安を市場に与えることはない。

 今後のシナリオとしては。ユーロが下落し、ドイツなどが域外への輸出を拡大させ、それがEU域内の需要を作ることが考えられる。問題は、その輸出先をどこにするかである。リーマンショック前なら、米国で良かったが、今はそうした余地はない。中国は、欧州への輸出を頼りにするような立場にある。

 通常、不況期に金利を下げると、住宅投資が上向き、この需要が景気回復の先駆けとなる。欧州の場合、厄介なのは、バブル期に住宅投資が過剰になっていたことである。そのため、こういう経路で域内需要を引き出すことが難しくなっている。

 こうなると、域内で需要を作るには財政を使うしかない。財政情況が比較的ましな国が財政赤字を拡大するとともに、ECBは、場合によって国債の市場からの買い入れもしながら、長期金利を低く保ち、緩やかなユーロ安に誘導することが必要だ。こうして設備投資が回復してくることを気長に待つのである。

 日本の経験から言えば、財政赤字や金融緩和を続けることは不安との戦いになる。どうしても、景気が回復しないうちに引き揚げてしまいがちだ。今回の欧州の混乱は、ECBが財政より先に出口に向かったことにある。金融政策は、引き締めたときに、どこに影響が出るのか、一番弱い借り手は誰かを見極めなければならない。それをギリシャの特殊事例として看過したところにつまずきがあったと言えよう。

(今日の日経)
 欧州経済不安の連鎖、財政赤字を削減すると景気への不安、ユーロ安投機筋が主導。小沢タクシン現象・伊奈久喜。日銀新貸出、期間異例に長く国債担保。低炭素型産業に1000億円。日本国債ずっと安全?。読書・タイ貧富の格差が拡大、学校選択制のデザイン。
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年金改革の本当の課題

2010年05月15日 | 社会保障
 参院選を意識してか、政府は新年金制度の検討を進めているが、公的年金の何が解決すべき課題なのかは、不明確なままである。2004年改正で、「マクロ経済スライド」という給付の自動削減メカニズムが導入され、年金の「破綻」は考えられなくなり、持続可能性の問題は解決済である。では、何を為すべきなのか。

 公的年金は、保険料、税、積立金収入の三つで支えられている。もし、少子化がなければ、親世代と子世代の人口は同数であり、これになら、保険料だけで「払った分は戻ってくる」ことになる。ところが、現在の少子化の下では、子世代は6割に減ってしまうため、支え手のない4割の親世代をどうするかが問題になる。

 現在の公的年金は、大まかに言うと、その4割の親世代のうち、半分を積立金収入で支え、残り半分を税で支えることにしている。これで、子世代の保険料負担が、将来もらう給付よりも大きくならないようにしている。積立金収入はともかく、税も子世代の負担であることに違いはないので、これをいかに減らすかが重要だ。

 それには、少子化を緩和するとともに、女性の就労及び所得を増加させ、年金の支え手を増やし太らすことが必要になる。具体的には、①子育て期に前倒して年金を給付することで、月8万円の乳幼児期の育児支援を実現する、②反対給付で保険料を軽減することで130万円の壁を取り払うということをすれば良い。

 前者は、前倒し給付だから財源は必要ない。後者は、給付に2兆円を要するが、所得税を徐々に引上げることで財源を用意する。負担減と増税が相殺されるため、人によって損得はあるが、国民全体の負担は変わらない。おそらく、労働供給の制約が除かれることで成長率が高まり、長期的には、すべての人が得することになるだろう。

 130万円の壁は、すなわち、正規・非正規の壁であり、これが無くなって労働時間の伸縮が自在にできるようになると、格差や差別が大幅に緩和され、正規の長時間労働も解消に向かうだろう。低所得者層の保険料の軽減は、生活を助けるだけでなく、無保険者や低年金者を削減することにもつながる。

 さて、こうした現行制度を前提にした、負担増を必要としない解決策があるのに、政府がそれには目もくれず、あえて新年金制度を作ろうとするのは、なぜなのだろう。たぶん、本当の目的は、年金改革より消費税の増税そのものにあるのか、あるいは、とくかく消費税を上げて財源を用意すれば、すべて解決するはずという、ごく単純な思考なのだろう。 

(今日の日経)
 ユーロ1年半ぶり安値。欧州株軒並み下落、緊縮財政懸念。タイ都心で衝突拡大。シンガポールに本社移したら法人税15年間免除。台湾TSMC工場に5800億円投資。
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女性活用と生産性

2010年05月14日 | 社会保障
 久しぶりに紙面で「130万円の壁」を見つけた。その解消を訴えるのが若手の経済学者というのは喜ばしい。経済学者の中でも、労働経済学を専門にする人は魅力的な方が多い。おそらく、現実との強い結びつきを意識するからだろう。

 女性活用と企業業績に相関関係があることは確かだが、それが「女性を活用したから、業績がよくなった」という因果関係になっているかどうかは、証明の難しい問題だ。それが正しいとしても、新興の企業は、設立から時間が経っていないので、たまたま女性を多く採用していたことが理由かもしれない。

 企業業績や生産性の高さにしても、女性パートを使うことで、単に社会保険料を逃れてコスト安だから達成できている可能性もある。むろん、個別企業を見てみれば、㈱ロフトのように、女性パートを短時間正社員化することで、コスト高でも志気を高めて業績を上げている企業があるのだから、因果関係は正しいはずなのだが。

 生産性の原泉は人材にある。志気を高めて能力を引き出すことでしか企業は成長しない。これは経営学では「真理」といっても良いかもしれない。それには人材への「投資」も要れば、長期的な展望も要る。目先の人件費カットだけを目指していたら、企業はもたないのだ。

 マクロ経済的には、女性の活用は、労働供給力を高め、潜在成長率を上げるということは確実に言える。それには「130万円の壁」という不合理な制度を取り払うのが先決である。女性を活用しようにも、ロフトのように、よほど経営意識が高くないと踏み切れないというところに問題がある。

 正規雇用が増えないのも、「130万円の壁」があって非正規からの柔軟な移行が難しいためだし、正規が長時間労働になるのも、解雇規制を強くせざるを得ないのも、「壁」のために労働時間の分配が柔軟にできないからである。日本独特の雇用慣行は、文化的な要因でなく、制度で作られている側面がある。

 大川さんは「今の社会保障制度や解雇規制はなどをなくすのは難しい」とするが、そう簡単に「壁」の撤廃をあきらめないでほしい。その具体的方法は「基本内容」に記したが、メリットを考えれば、難しいものではない。若手の研究者には、制度による歪みを意識しつつ、改革案もイメージしながら、実証すべき課題と方法を見つけていってほしい。

(今日の日経)
 高齢者賃貸住宅に登録制。川口大司・女性活用で業績高めろ。景気回復、消費・雇用に波及も。中国アラプ閣僚級会議。入植イスラエルが凍結確約か。LED照明半額JFEエンジ。工作機械受注国内も。経済教室・民主党政権期待はずれ・山口二郎。
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通貨統合は一蓮托生

2010年05月13日 | 経済
 ギリシャの財政危機は、通貨統合後の各国マクロ経済の調整の難しさを表すことになったが、それは解決すべき課題というよりも、通貨統合とは、経済的な苦楽を共にすることだという本質を示したように思う。為替不用の便利さを享受するだけでなく、経済的な弱小国を背負う覚悟がいるのである。 

 危機を踏まえて各国予算の事前評価の仕組みを作ろうとするのは自然な流れだが、それは、ますます各国ごとの経済調整の手段を減らすことになる。突き詰めると、ユーロの価値を維持するために、失業も受忍しなければならないということで、これでは「金本位制」への逆戻りになってしまう。

 やはり、ユーロの価値を下げても、各国の経済厚生を高めるべきなのである。それでドイツ人が損をし、ギリシャ人が得をしたとしても、経済を統合するとは、そういうことなのである。バローゾ欧州委員長の「EUの最重要の資産であるユーロを防衛する」というのには、賛成できない。

 ギリシャ財政を回復させるには、まず、EUがギリシャ国債を買ってリスクプレミアムを一掃して負担を減らす必要がある。デフォルトさせる意思がないのなら、民間銀行にプレミアムを払う合理性はない。それでユーロの価値が下がり、交易条件が悪化しても、仲間であるギリシャのために全体が払うべき犠牲である。

 そして、借金を返済させるために、経済イコール産業を伸ばしてやらなければならない。例えば、ギリシャの最大の産業は観光であるから、航空運賃への補助金をギリシャ政府から出させ、その財源は2年後の消費税引き上げで賄う。こうすると、ギリシャの消費水準を下げつつ、産業振興ができて設備投資を促すことになる。

 ギリシャ経済の問題の本質は、過剰消費・過少投資であるから、それを修正する痛みの少ない政策をクリエイトしなければならない。緊縮財政をしてギリシャ人を苦しめたところで、ユーロを困らせた者への復讐心を満足させるだけで、何にもならない。ギリシャには、筆者も友人が多いだけに、理にかなう政策で助けたいものである。

(今日の日経)
 上場企業4割増益予想、08年ピークの6割。司令塔なきマネー活性化。EU各国の予算事前評価。改正健保法成立。景気先行指数伸び最大。LED、電球の過半に。P&G求める技術を公開。電力債スプレット縮小に一巡感。経済教室・戸別所得保障・山下一仁。容積率上乗せ高齢者住宅、防災倉庫にも。
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