経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

将来不安に拠る21世紀の長期停滞論

2018年02月25日 | 経済
 「長期停滞の原因は需要不足にあるが、金融緩和も財政出動も限界だから、構造改革をするしかない」という言説は、よく聞かれるものである。しかし、需要不足ということは、マネーがだぶついて、実物に結びつかないという状態なので、金融緩和や財政出動に工夫の余地が存在することになる。オリンピックに限らず、スポーツの世界では、「限界」を自分で決めてしまうと、成績が伸びなくなるとされる。経済政策も同じで、「限界」の内実を見極め、最善を探ることが必要ではないだろうか。

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 東大の福田慎一先生が『21世紀の長期停滞論』という一般向けの新書を出してくれた。今回は、これを基に政策の彫琢をしたいと思う。やはり、福田先生も、長期停滞の原因は需要不足にあると見ておられて、GDPギャップが解消されていることなどの矛盾点を丁寧に説明されている。その上で、極端な金融緩和や財政支出の拡大だけでは不十分であり、構造問題を大胆に変革し、将来不安を解消していくことが求められるとする。その構造問題とは、少子高齢化と財政赤字を指すようだが、具体策までは示していない。

 確かに、金融緩和については、アベノミクスが始まってから、長期国債等の大規模買入れ、マイナス金利の導入、ETFの保有額倍増と次々に打って行き、円安基調になって輸出が伸び、低金利下で建設投資が盛んとなった。反面、輸入物価の上昇が消費を冷やす弊害もあり、株価上昇と地価底入れは既に手にしたから、これ以上を求めるのはどうかという感はある。しかし、財政については、国の補正後の歳出額は、2012年度を下回り続け、この間に消費増税と自然増収があって、国・地方の基礎的財政収支は、4年間でGDP比2.6%も良くなった。また、この間の保険料引上げと雇用増で、社会保険の収支改善も著しい。

 資金循環統計の資金過不足で見ると、政府全体では、GDP比-8.8%から-2.5%へと6.3%もの改善を果たした。こうした年度当たりGDP比1.6%という急速な緊縮圧力を加えたら、経済はどうなるか。実質GDPは4年間で25兆円増えたものの、家計消費(除く帰属家賃)はたった+0.2兆円に過ぎない。成長のほとんどは、輸出とこれに伴う設備投資がもたらした。これでは、景気回復の実感が乏しく、消費と物価が低迷し、賃金も停滞するのは、むしろ当然であり、構造問題を持ち出すまでもない。解決したければ、緊縮を緩めるべきだろう。

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 日本の長期停滞は、1997年に消費増税を主とする大規模な緊縮財政によって、デフレに転落してからである。福田先生の『停滞論』の中にも、1990年代後半に経済指標が変化したとする記述が随所にみられる。他方、欧米については、リーマン・ショック以降のことであり、これが永続的影響を与えるのかが一つの焦点となる。これに関しては、長期停滞の「先達」である日本の経験が役に立つ。下図は、日本の家計消費(除く帰属家賃)がどのような経路をたどったかを示したものだ。

 日本は、リーマンショックで2008年に大きく落ち込むが、元のトレンドに戻るかのような急速な回復を示した。その後、東日本大震災で再び下降するも、足早の回復を見せ、2014年の消費増税前までに、かなりギャップが埋められたことが分かる。実は、基準改定前のGDPでは、駆け込み需要期の前に完全にトレンドに復帰していた。これから言えることは、輸出急減のショックや大災害の供給力ダウンは、取り戻せるということである。

 そして、もう一つ重要な点は、消費増税は成長を屈曲させることだ。1997年の場合でも、2014年の場合でも、消費増税は3年間も消費をフラットにさせた。1997年の場合は、その後、増加トレンドに移れたものの、トレンドは増税前より明らかに低い。つまり、消費増税は、成長に永続的な悪影響を残したのである。増税前後の需要変動が癒えても、税率は残るのだから、当然かもしれない。2014年の場合は、まだ勝負はついておらず、増加トレンドに移れるかは微妙なところである。

 こうして見れば、長期停滞の原因は、緊縮財政にあると言えよう。少子化は、1997年の消費増税によるデフレ転落で就職氷河期となり、非正規が族生して結婚難となったことが一因である。また、1997年以前は、財政赤字といっても、公的年金の黒字と合わせれば、深刻とは言えなかったのに、デフレ転落後は、年金も含めて大幅に悪化した。つまり、少子化や財政赤字という構造問題は、緊縮財政が生み出したものであり、それらが長期停滞の一因であるとしても、諸悪の根源は緊縮財政ということになる。

(図)



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 デフレや長期停滞から脱することは、政策的には難しくない。デフレのうちから財政再建に取りかからず、賃金と消費が伸び、需要が引き締まって物価が上がりだすまで待てば良いからだ。財政再建のタイミングの取り方で、結果は大きく変わり得る。この5年程のデータで言えるのは、企業は需要を見ながら設備投資をし、家計は雇用改善の強弱で消費性向を上下させる(10/8)ということだ。遠い将来の人口減や財政破綻より、目の前の景気が投資や消費の不安を払拭する。必要なのは、急進的な財政運営の実態を、当局が敢えて説明しない中で、的確に把握し、緊縮を渇望する赤字への過大な「将来不安」を解き、節度ある穏健な財政再建の道を歩めるかになる。


(今日までの日経)
 負担増 会社員に偏る 可処分所得10年で3%減。安邦保険を国家管理、中国マネー逆転懸念。「体感物価」上昇速く。M字カーブほぼ解消、労働力率は米仏を上回る。
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2/22の日経

2018年02月22日 | 今日の日経
 12月の全産業指数が公表になり、10-12月期の前期比は+0.7と好調だった。内容は、建設業の落ち込みを鉱工業が乗り越える形で、第三次産業も全体に近い伸びとなった。建設業は、下げ止まつつあるが、公共が足を引っ張ったこともあり、まだ底バイ状態だ。住宅・公共・輸出の3需要の合成は上向いており、設備投資や消費にも反映しているように思われる。4-6月期の盛り上がり、7-9月期の低下、10-12月期の戻りと、景気の「微地形」が分かるのが良いところ。経済は追加的需要に従って動く。だから、需要は大切にしないといけないよ。

(図)



(今日までの日経)
 ガソリン5か月ぶり下落、マネー流出で。増税後の消費減に対策。世界の企業、ドル債務膨張 米金利上昇に懸念。授業料後払い提言・私大団連。
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10-12月期GDP1次・4年ぶりに消費がプラスに

2018年02月18日 | 経済
 アベノミクスには景気回復の実感がないと言われる。それも当然で、実質GDPの家計消費(除く帰属家賃)は、2014、15、16の3年続きのマイナスにあった。そして、今回の10-12月期GDPの発表で、2017年に至り、ようやく、+1.0%のプラスへ転じたことが示された。3年分のマイナスの累積は、-2.1%にもなるため、4年前より、いまだ貧しいにせよ、生活水準か悪化する状況からは、なんとか抜け出したのである。

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 家計消費の数字を見ていれば、「なぜ実感がない」と首を捻ることもないし、「アベノミクスはフェイクだ」と騒ぐこともない。原因も明らかで、消費増税と金融緩和に伴う円安によって、物価が上昇したからである。だから、名目で見れば、家計消費は4年前より5.5兆円、+2.3%多くなっている。増税と円安で国民生活は苦しくなった反面、企業の収益は高まり、財政収支が大幅に改善されたのだから、政策どおりに得られた結果を評価すべきだろう。

 今回の10-12月期GDPの一般的な見方は、「消費と設備投資は順調だが、前期の消費の大幅減からすると戻りが弱く、まだ低調な状態にある」というものだろう。しかし、年単位だと変化が分かるように、フェーズは明らかに移りつつある。実は、名目では、今期の消費は+1.1%と、前期の-0.9%を凌駕しているのだ。2017歴年の消費の伸びは名目+1.4%まで加速しており、消費増税前の2012-13年の+1.75%のペースまで、あと一歩である。

 この背景には、雇用者報酬の伸びがある。名目では前年比+1.9%だ。ただし、増加は、専ら雇用者数によるもので、賃金が上がっているわけではない。毎月勤労統計の現金給与総額は、2017年4,5月に高まったものの、その後は停滞し、11,12月になって上向いてきたところだ。賃金とは裏表のサービス物価も、2017年の後半に入って、緩やかに高まっている。今後は、賃金の上昇が加わり、雇用者報酬が更に伸びることが期待される。

 今期のGDP予想では、本コラムは、消費について、やや強めの予想をして、上手くはまった形となった。足下では、悪天候による生鮮の値上がりがブレーキになっているが、こうしたものは一時的であり、むしろ、物価上昇に対して、消費は抵抗力を見せているように思える。需給の引き締まりによる物価上昇であれば、賃金が伴うので、あまり消費を弱めない。昨今の円高も踏まえれば、今後の消費の加速は十分あると見ている。

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 2017年を振り返ると、景気上昇の最大要因は、輸出の拡大であった。「経済は追加的需要によって変動する」というのが本コラムの見解であり、その3需要を合成したものを下図に示した。ご覧のように、3需要が増せば、それが所得を生み、消費を増やすという関係にある。輸出の影響が最も強く、消費の減退から回復を主導した。公共と住宅にも意味があって、消費の4-6月期の上昇と7-9月期の下降は、公共と住宅のピークと下落に相応する。

 また、成長の原動力である設備投資は、3需要に一拍遅れるような形で連動している。需要を見ながら設備投資はなされるという、ごく常識的な論理である。こうして見れば、需要管理の重要さが理解できよう。他方、金融緩和は、直接、設備投資には効かず、住宅や輸出を促進する限りにおいて、景気を浮揚させる。したがって、住宅投資が先食いされていたり、世界経済が不調で、円安にしても輸出が増えなかったりすると、空振りに終わる。

 アベノミクスは、2013年に、財政出動と金融緩和による円高是正で、実質2.0%成長の成果を収めた。しかし、2014年は、消費増税で0.4%成長へ転落し、それでも輸出があったから、悲惨にならずに済んだ。2015年は、緊縮財政の下、輸出が減退し、景気が低迷した。2016年は、円高に振れたが、後半から世界経済の回復で輸出が増え、2017年の景気回復につながる。この間、相続増税対策の住宅投資が一役買い、2017年には公共投資も3年ぶりのプラスとなった。

 こうしてみれば、アベノミスクの緊縮体質と輸出依存が分かる。そもそも、金融緩和には緊縮財政を埋め合わせる力はない。例えば、今回の補正では、公共投資の削減で1.1兆円の歳出減となったが、これを住宅投資で補おうとすると、2017年の増加実績を2.5倍にしなければならない。設備投資によるとしても4割増しが必要だ。ちょっとした緊縮さえ、金融緩和でカバーするのは、どだい無理なのだ。

(図)



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 今度の日銀副総裁には、若田部昌澄教授が就くようだ。在野精神の大学からの起用とは、誠に感慨深い。若田部先生は、消費増税には反対してこられた。リフレ派ではあっても、金融緩和が緊縮財政に対して、いかに非力か、よく御存じなのだろう。経済運営においては、財政と金融の協調は極めて重要になる。その際、中央銀行が財政当局に対し、無闇な緊縮財政の尻拭いはできないと、物申すことが必要になるかもしれない。まさに、学問の独立と活用の教旨を発揮してもらえたらと思う。


(今日までの日経)
 日銀副総裁にリフレ派、増税にらみ歳出拡大構想。転職に賃上げ圧力、初任給にも波及。年金開始70歳超 選択肢に 高齢社会大綱を閣議決定。機械受注 受注残には懸念。モルヒネ経済険しき退路・菅野幹雄。
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2/15の日経

2018年02月15日 | 今日の日経
 「この国に足りないのは、財源ではなく、理想である」とは、本コラムがかねがね述べているところだ。国会の論戦では、「幼児教育の無償化より、待機児童の解消や保育士の処遇改善を優先すべき」という主張が野党から聞かれるようだが、与党も、程度の差こそあれ、取り組んでいることなので、これでは議論は盛り上がらない。消費増税を充てることで財源が確保された今、実現したい「理想」の姿がぼやけているのではないか。

 与党のターゲットは、少子化対策をする中でも、中流以上のキャリアウーマンにあるのは間違いない。元来の上流から中流へ支持を拡大しようというわけで、「理想」は明確である。野党が程度問題について主張しても、支持の獲得競争には勝てまい。下流から中流を巻き込むような政策を主張できなければ、埋没するだけだろう。その点、前回のコラムで書いた育児休業給付のユニバーサル化、ベーシックインカム化は有効だと思う。

 これで、非正規やパートの女性が救われるのはもちろん、保育需要が冷やされることで、待機児童が減り、キャリアウーマンも助かる。キャリアウーマンだって、二人目や体調などで、両立が辛くて辞めざるを得なくなったときには救われる。貧困対策でなく、少子化対策とすれば、上流への受けも良い。こうして、下流から中流へ連帯を広げて行くのである。こういうところで、この国の「理想」が問われるのだ。

 年金の社会保険料の軽減も、母子家庭から始めれば、すぐにもできる財源規模だし、ベーシックインカムの社会実験と位置づければ、インテリの支持も集められよう。国と年金を支える次世代を育てる母親が厚生年金に入れない矛盾を訴えれば、中・上層にも響くし、軽減は母親を雇う自営や中小企業のメリットでもある。母子家庭からの実験がとれだけのインパクトを秘めているかは、基本内容の「非正規の解放、経済の覚醒」をご覧いただきたい。


(今日までの日経)
 実質GDP、8期連続プラス。円上昇、107円台半ば。企業物価 伸び鈍化。ジョイフル1.7万人無期雇用。経済教室・「仮想将来世代」学際で研究。
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緊縮20年が作った新・日本の階級社会

2018年02月11日 | 社会保障
 1997年の大規模な緊縮財政で、日本はデフレに転落し、景気が上向くと緊縮で芽を摘む繰り返しで20年が経過した。就職氷河期となり、ワーキンクプアのまま取り残され、結婚ができなかったり、子供の貧困を起こしたりして、アンダークラスは再生産されるように至り、格差社会は、階級社会へと固着する。かつての成長最優先の所得倍増路線が平等化を進めたのに対し、今の財政再建至上の緊縮が階級を形成した。実はシンプルな話でしかない。

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 橋本健二先生の『新・日本の階級社会』は、アンダークラスという名の非正規にしか就けない新たな最下層階級が日本に形成された実態を記すものだ。アンダークラスは、929万人で就業人口の15%ほど、平均個人年収は186万円と極端に低く、貧困率は38.7%、女性では48.5%にも上る。男性の有配偶者はわずか25.7%、女性の離死別者は50歳代には80.0%にもなる。むろん、生活や仕事への満足度は押しなべて低い。身長体重でも劣り、抑うつ傾向は20.0%と突出し、頼りにする人も少なく、団体への参加も乏しい。

 こうした悲惨な実態については、一般の方には衝撃的だと思う。ただ、筆者は、子供の貧困に関わったりしたので、驚きはなかった。むしろ、意外だったのは、自己責任論がアンダークラスにまで浸透しているという指摘だった。平等化も階級化もマクロ政策次第なのに、個人の努力不足と信じているのでは、政策を変えようがない。壮大なイス取りゲームに勝つことが課題なのではなく、必要なだけイスを増やすことが求められる。少ないイスを「時代の流れ」とするような分かったふうな見方こそ、最大の敵だ。

 例えば、育児休業給付は、出産した女性の3割程しかもらっていない。継続雇用が条件で、非正規やパートには無縁だからだ。これを自己責任には帰せまい。もし、条件を緩めて全員に給付するなら、現状の給付総額は4100億円なので、あと9600億円いるが、2017年度の補正後の歳出は前年度比-1.1兆円であり、減らさずに前年度並みにしていれば、実現できたことだ。少子化は「国難」とされているようだが、それよりも財政再建が優先され、格差や再分配は更に順位が低いのである。

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 政策を変えるには、多数派を形成しなければならない。橋本先生の分析では、管理職等の新中間階級、正規労働者、アンダークラスでは、格差拡大と貧困増大の事実認識では一致しているが、所得再分配政策を支持する人は必ずしも多くなく、前二者は、むしろ冷淡だとする。そして、格差社会克服の担い手として、アンダークラスの他、所得再分配を支持する傾向が強く、自己責任論に縛られない、パート主婦、専業主婦、旧中間階級を挙げ、新中間階級や正規労働者の「リベラル派」を重要な主体と位置づける。

 ここで重要なのは、結集に要する政策となろう。他の階級からアンダークラスへ分配するだけの「多数が損する政策」では広い賛同が得られない。その点、社会保険料の軽減は、非常に都合がよい。これは、年収が130万円を超えたら、いきなり18.3%の年金保険料がかかる理不尽を解消し、年収に応じて徐々に高めるよう変えるものだ。パートと正社員の壁を取り払うことで、アンダークラスと主婦層が救われるだけでなく、雇用負担の軽減が自営や中小企業のメリットにもなる。

 2017年度は2.7兆円の補正予算が組まれたが、その都度のバラマキをやめ、軽減の財源に充てれば、十分可能なものである。長期的な男性就業率は、1997年頃からは一段低く、まだ上げる余地がある。保険料の軽減によって労働供給が促進されれば、一層の成長が望めよう。加えて、出生率の向上にも結びつくので、保険料を軽減しても年金が増えることすらあり得る。少なくとも、働きたくても働けない不合理は正されるので、社会的な効率性は高まる。つまりは、すべての階級にとってメリットのある改革になるのだ。

(図)



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 自己責任論の背景には、「努力すれば、収入が得られるはず」という暗黙の前提がある。ミクロ的には正しいが、緊縮財政をかまされ、マクロの所得を減らされたら、どんなに営業マンを鍛え上げようと、全員の成績をプラスにはできない。パイを増やすことなくして、自己責任論は成り立たないのであって、名目GDPがほとんど増えなかった20年間においては、過酷な主張でしかなかった。

 日本は世界一の債権国であり、財政赤字は部門間の不均衡の問題に過ぎない。資金過不足の観点での理にかなった解消方法は、家計や消費への重課ではなく、企業や資産への課税になる。むろん、それは、政治的、思想的に極めて難しい。さすれば、次善の策は、財政赤字の管理となる。金本位制から管理通貨制度に移行したように、緊縮財政一本槍ではない「管理債務制度」の構築が求められる。

 実際、日銀が大量の国債を保有して「塩漬け」にする実態が進んでいる。これを支えるよう、利子課税の強化や、物価上昇に応じた機動的な消費増税の実施など、財政債務の体系的管理の制度を整え、巨額の債務と共存することが必要だ。不安に負けて緊縮を焦れば、強引に金本位制に戻ろうとして、デフレで政党政治を失墜させた浜口内閣の二の舞になる。目指すべきは「努力できる国」なのである。


(今日までの日経)
 投資マネー逆回転、米に続き日中急落。黒田日銀総裁続投へ。街角景気に寒波直撃。育児休業1年以上の取得「希望」68%「実現した」51%・都調べ。
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2/8の日経

2018年02月08日 | 今日の日経
 12月毎勤が公表になって、2017年の名目賃金は前年比でわずかにプラス、実質賃金はわずかにマイナスという結果となった。景気動向指数は、バブル以来の最高だが、賃金は伸び悩み、消費は3年ぶりのプラスだ。緊縮財政と金融緩和の組み合わせをしてきたのだから、当然の結果だ。他方、外需に恵まれ、企業収益と財政収支は、大幅に改善している。それでも、財政学者は不満のようだ。どこまで緊縮しろというのかね。緊縮しても、成長に影響がないなら、いくらでもするが、そうではないから難しい。財政は既に出口にあり、金融は正常化のしどころだが、こうも市場が荒れると判断に迷う。ブラック・マンデーのときは、正常化の遅れで失敗したけれども、焦って円高を招くわけにも行かない。

(図)



(今日までの日経)
 金融正常化 揺らぐ土台。12月の指標最高、賃金・消費は伸び悩み。老いる中国 社会保障重荷。経済教室・遠のく財政健全化。世界連鎖、日経平均1017円安。財務省、円高に沈黙守る。黒田日銀初、1月資金供給量減。
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アベノミクス・強まる消費で新フェーズへ

2018年02月04日 | 経済(主なもの)
 エンゲル係数が国会で取り上げられ、その上昇が生活の苦しさを表すとして、話題となっている。その異様な上昇については、本コラムでは、1年前(2/26、28)に取り上げていたところだ。そして、巷に膾炙する頃には、事態は次へと進んでいるもので、2017年は、統計局の年報公表前ではあるが、月報からすると、一転して下降していると見られる。景気は、既に新たなフェーズへ進んでいる。もっとも、アベノミクスは、それを加速するどおろか、ブレーキをかける方向になっているのだがね。

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 10-12月期の経済指標で印象的だったのは、消費の粘り強さだ。消費者物価の財が11,12月に前月比で+1.3,+0.3も上昇したにもかかわらず、へこたれることなく、商業動態の小売業は、前月比が+1.8,+0.9となり、それぞれ+0.5,+0.6上回った。結果、財で除した10-12月期の指数は、前期比+0.48である。また、家計調査の消費水準指数(除く住居等)は、11月に+1.3と急伸していたにもかかわらず、12月の反動は-0.1にとどまった。これを、GDPの消費を占う消費総合指数に単純に当てはめると、10-12月期の前期比は+0.65にもなる。12月が-0.6まで落ちたとしても、+0.48を確保できる計算だ。

 10-12月期の消費については、民間シンクタンクによる予想は前期比+0.4となっており、本コラムはやや強めに見ている。いずれにせよ、年率なら1%後半であり、消費は順調だ。GDPの消費は、4-6月期に+0.9と急伸し、7-9月期に-0.5と反動が出たものの、10-12月期が予想に近ければ、2017年は、各期を均して+0.3、年間では+1.1位になるだろう。なにせ、帰属家賃を除く家計消費は、2014~16の暦年が-1.2、-0.5、-0.4と3年連続のマイナスであったので、プラスになるだけでも、大きな変化である。外需に恵まれ、全治3年の「国難」となった消費増税の打撃から、ようやく脱するのである。

 エンゲル係数が上がり、生活か苦しくなったのは、消費税と円安での輸入物価押上げによって、徹底的に家計を痛めつけたのだから、当然のことだ。他方で、企業収益が伸び、税収増で大幅な財政再建には成功したのだから、こちらを誇ったら良いのだ。そうこうするうち、2017年は、エンゲル係数に限らず、消費の年間数値は、様変わりする。家計調査の二人以上世帯の実質消費支出は、季節調整値の年間平均が4年ぶりにプラスとなり、勤労者世帯の消費性向も上昇に転じた。商業動態の小売業の実質的な増加も3年越しだ。むろん、消費総合指数や消費活動指数も、2013年以来のプラスになるのは確定的である。

(図1)



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 雇用についても、2017年は、かなりの変化を見せている。第一生命研の柵山順子さんが良いレポート(1/31)を出してくれていて、男性の正規雇用者が大幅に増えたことを指摘している。「景気が回復しても、雇用は非正規と女性ばかり」と長らく言われていたことが過ぎ去りつつある。中でも、就職氷河期を過ごし、不遇に喘いだ40代前半の不本意非正規雇用者が減っているのは特筆されよう。まだ十分ではないが、人手不足が波及し、この世代にまで光が当たるようになったのは朗報だ。参考に、年齢階層別の就業率を12か月移動平均で示しておく。45~54歳は横バイだが、25~34歳と35歳~44歳は上向いていることが分かる。

 雇用の足下の状況を確認すると、労働力調査では、10-12月期の男性の雇用者は前期比-2万人にとどまったが、前期が+23万人の大幅増だったことからすれば、十分であろう。また、女性は+5万人と、伸びを縮めつつも増加が続いている。こうした背景には、求人の一層の高まりがある。10-12月期の「除くパート」の新規求人倍率は2.12と、初めて2倍を超え、バブル期ピークの1991年を上回るに至った。産業別では、建設業や製造業が好調で、前年同月期の増加数が1000人を超えている。女性向けの卸小売や医療福祉だけでなく、男性向けの産業での加速がポイントである。

 そうした産業が主体の鉱工業生産についても、2017年は、年間平均が前年比+4.9と大きく伸びた。2015,16年とマイナスに低迷していたのだから、これも立派な変化と言えよう。10-12月期は、前期比+1.8と好調で、7期連続での増加を果たした。1,2月の予測指数は、-4.3、+5.7となっており、次の2018年1-3月期も、プラスが期待できる。財別では、設備投資を占う資本財(除く輸送機械)の出荷が前期比+5.5と伸びた。これには輸出も含まれるが、10,11月の国内出荷の平均でも前期比+1.4であるから、国内の設備投資も盛んになっていることが分かる。また、建設投資の目安である建設財の出荷は、前期比+0.9であった。

(図2)



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 10-12月期のGDPについて、本コラムは前期比+0.4程と、やや強気の予想をしており、消費の寄与度が0.3、設備投資は0.2とし、外需を-0.1と置く。残念ながら、2%成長には届かないとしても、消費と設備投資が揃う、きれいな形になろう。外需のマイナスも、輸入増のためで、輸出が不振というわけではないから、実勢としては2%成長である。世間的なイメージからは、高く感じるのではないか。

 でも、これが普通の経済である。成長とともに消費が増え、その中で食料の比率が下がるという、正常化が進んでいるのである。それなのに、補正後歳出を4年ぶり減の-1.1兆円とし、わざわざ緊縮財政をかけることもないとは思うが、まったく政権は無自覚である。そう在ると、批判する側まで現実が分からなくなるのだから、困ったものだ。この国で、緊縮競争以外の政策論が聞けるようになるのは、いつの日だろう。


(今日までの日経)
 廉価品も国内生産回帰。8期連続プラス成長予測 10~12月民間平均 GDP、年率0.8%増 消費復調が下支え。
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