経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

進歩がないね日本の財政

2011年05月31日 | 経済
 権力があると、知恵も工夫もしないものだ。驕って反省がないから、同じ失敗を繰り返す。消費増税一点張りの日本の財政当局には、ほとほと着ける薬がないよ。これに対して、増税を批判する側も、すぐに、埋蔵金だの、日銀引き受けだの、政府紙幣だのと、すぐに野放図なことを言い出すから、訳が分からなくなる。

 本コラムの読者は御存知のことだが、二次補正で、復興予算をあと1兆円積み増しても、財政規模は、前年度補正後とほぼ同じである。来年度は、復興予算を1兆円減らして、社会保障費の自然増を呑み込み、同水準の財政規模を保つ。これを5年間繰り返せば、15兆円の復興予算を確保でき、膨張のない安定した財政が手に入る。景気が順調に回復すれば、法人税を中心に3年間で10兆円の自然増収が期待できるから、財政赤字も着実に改善される。

 何の難しさもないし、奇策に出る必要もない。デフレ下で震災ショックから癒えないときに無理やり消費税を上げたり、未知の政策に踏み込む危険を冒すより、ずっと簡単で容易だと思うのだが、いかがだろうか。日本の経済運営と、それを巡る議論が、いかに度外れたものかが良く分かると思う。

 日経によれば、政府の一体改革の原案は、消費増税を段階的に引き上げ、15年に税率10%にするもののようだが、これでは一度に1%ずつの引き上げに抑えることさえ難しい。「増税は景気後退を招かない」という絶対安全神話をお持ちのようだが、1997年のハシモトデフレで失敗しているのだから、最小の刻みにするくらいの謙虚さを示したらどうか。日本がメルトダウンを起こすのは、当局の耳に「危ぶむ声」が一切入らないためだろう。

 おまけに、低所得者対策と言えば、軽減税率は役所のコスト高で、生涯所得では逆進性も小さいから、不要なのだそうだ。何だろうね、この強引さは。財政破綻の脅しと、復興支援の哀れみで押し切れると思っているらしい。消費税を導入する際、中小企業には随分と配慮したものだ。工夫のなさは酷いもので、かつてとも比べものにならない。 

 低所得者対策は、本当は、「医療・介護・保育の負担に合算上限を設けること」で実現できるはずだ。要は、消費税を上げる代わりに、社会保険料の軽減を図るものだ。低所得でも健康保険だけは払う人が多いから、これを還付すれば、消費増税の痛みを和らげることができる。これを蹴り飛ばすあたりに、財政当局の驕りが見える。

 他方、日経は、「社会保障の給付抑制置き去り」とするのだが、年金の支給開始年齢の引き上げは、年金数理からも無理があるもので、厚労省が反対するのも当然だ。こんなことを抑制策の「切り札」に引っ張り出す財政当局の知識の乏しさには呆れる。抑制策としては、プラス成長を達成して「マクロ経済スライド」を作動させる方が簡単だが、デフレのまま増税をするつもりらしく、「デフレ下のスライド」を掲げる。強引さも極まれりだろう。

 帝政ロシアでは、専制政治に対して、テロが渦巻いたが、強引な財政当局に、日銀引き受けの急進論で対抗という構図も、何やら似ていなくもない。どうして、日本は、平凡で普通の財政運営ができないのだろう。極端なことをしなければ、成長も復興も容易なのに、次から次へと、しなくて良いことをやって、苦境にはまっていく。危機において穏健派は挟撃されるというのは、分かってはいるのだがね。見るに耐えんよ。

(今日の日経)
 レアメタル開発拡大。消費増税段階的に15年に税率10%念頭。外国人の日本株買い越しは29週連続だか変調も。社説・復興会議は特区の具体策を。グアム移転費再協議へ。東電株、海外勢逆張り。需要不足なお20兆円、供給力6兆円減でも。独立法人改革先送り。節電上手な家庭に景品・経産省。内モンゴル厳戒態勢。中ロが原油輸送料で対立。米参謀議長の人事で大統領が譲歩。台湾EMS利益率悪化。デジカメ中堅は苦戦。電力・ガス7月も値上げ最大幅。経済教室・ムラ社会脱し・松本紘。

※外国人も、復興の鈍さと増税論の高まりに、さすがに不安を感じてきたのではないか。 ※日経が評価する規制の「一本化」は、一つにして矛盾はさせないが緩めないと言う意味だよ、それぐらい読めないでどうする。規制緩和は、痛みへの手当の財源と、効用が目に見えることが必要。そうでないと漁業権のように迷走する。※需要不足20兆円の日本で増税論議か。日本人は数字を見ての政策判断ができないんだよね。※内モンゴルがチュニジアにならねば良いが。※成長が少し鈍ると「装置産業」こうなる。変化の兆しだ。※消費への影響が気になるね。V字回復のブレーキになる。
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地方にも政策の知恵はある

2011年05月30日 | 経済
 復興構想会議が特区導入で一致したというが、肝心の中身がハッキリせず、「特区」の言葉だけが踊っているように見える。東京で復興策を練るのも良いが、政策の知恵は、中央にしかないわけではない。今日は、被災地・宮城県の「みやぎ発展税」を取り上げる。

 企業立地の促進というと、すぐに出てくるのは規制緩和と税制優遇である。ところが、最近出てくる規制緩和は、先日、経産省が明らかにした「緑地規制」の緩和のように、目ぼしいものが残っていない。また、税制優遇は、利益が出てこそ意味があるもので、立地初期の利益が出しにくい時期には、そもそもメリットが乏しいのだ。

 例えば、「特区」の先行事例と言える沖縄県の場合も、これだけでは苦戦している。沖縄の場合、IT産業の立地に成功したが、これは「特区」の上に、貸工場や貸事務所まで設けたからである。企業立地は、ここまでしないと達成できないものだ。そして、もう一つの成功事例が「みやぎ発展税」である。

 この「みやぎ発展税」は、一定規模以上の企業に、事業税の上乗せを行い、それを財源として、企業誘致策を実施するものである。規模は5年間で150億円。立地に奨励金を出すとともに、立地に欠かせないインフラ整備もする。これが、トヨタ系の組立工場であるセントラル自動車の誘致の決め手になったとされる。

 セントラル自動車は、この春に操業開始の予定だった。直前に震災に遭遇することになったが、二か月程度の遅れはあったものの、スタートに漕ぎ着けている。実は、みやき発展税は、宮城県沖の地震を想定し、防災体制の強化にも使われている。これが早い立ち直りに一役買ったと思われる。

 企業の立地、特に、先端産業の設備投資には、補助金が威力を発揮する。リーマンショック後の補正予算で用意されたものは、投入に見合う税の増収効果があるとされた。残念ながら、景気対策は打ち切られ、原発対応に追われる経産省に、これを拡充する余裕はなくなったが、実験の成果は残された。

 これに対して、日経や経済界は、いつまでたっても、規制緩和と法人減税である。投資促進を目指すなら、法人減税などは、ムダの多いバラマキなのだが、こちらに対する批判がサッパリないのは、不思議なほどである。宮城は、経済界が自ら負担して活路を求めた。日本も、法人税とは言わないまでも、証券や土地などの資産課税強化で、設備投資の促進をするくらいの気概を見せてはどうか。

 中央での政策論は、進歩がまったくないにも関わらず、被災地が地方だからと言って、旧来の手法の政策を授けようとする。被災地で規制緩和をして、全国に広げるということには、内実が伴っていない。規制緩和と税制優遇は、歳出が膨らまないお手軽なものだから、与えようとするに過ぎないのではないか。実験場と思わずに、被災地から本当に学ぶとすれば、少し謙虚さが必要なように思う。

 ただし、中央にも政策の芽がまったくないわけではない。今日の日経にある「環境省が省エネ品にリース補助」である。長い目で見て必要なのに、初期費用の大きさで導入が進まない場合には適する手法である。補助を拡大して、ほぼ無利子のところまで行けば、被災地でも使えるようになるだろう。ある程度の財源を用意すれば、効き目のある政策はできる。千年一日の政策論から脱すべきは、今である。

(今日の日経)
 サイバー攻撃を防げ・守護神は16歳。復興特区導入で一致、具体策は見えず。トリシェ氏とその時代・岡部直明。再生エネ導入、東南アで機運。中国成長率の民間見通しは下方修正相次ぐ。新しい日本へ・企業の手元資金厚く。経営の視点・YKKは被災でも海外に移さない・森一夫。M9前兆・40分前から上空に異変。環境省が省エネ品にリース補助。経済教室・最悪時前提・畑村洋太郎。

※YKKのような「時流」に逆らう企業から経営の本質を学びたいものである。
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置き去り景気の国

2011年05月29日 | 経済
 山川龍雄・日経ビジネスは好調だね。この春に編集長が替わって、週刊誌らしくなった。少しヒネった観点から特集を組んでいるのが良い。そうなると、以前もほめただけに、もう一つハードルを上げたくなる。辛口になるかも知れないが、「愛情」だと思って聞いてくれたら、ありがたい。

 今週の特集は「置き去り景気」。世間がV字回復を期待する中で、その危うさを観点に据えている。そこで指摘するリスクは、震災後の国際競争力の劣化と海外市場の成長鈍化の二つだ。筆者は、前者については、あまり心配しておらず、後者については、「輸出力が回復したときに、米中の景気が良いと思うな」と、再三、書いてきたところだ。

 海外リスクの指摘は、主流派にはなっていないが、第一生命研の熊野英生さんのように、同様の見解に立つエコノミストはいる。さすがに、そうなっても困らないよう、備えのマクロ政策を用意すべしとするのは、筆者ぐらいになるが。昨年は、前半の景気回復の勢いに調子づいて、景気対策を次々に打ち切ったところで、円高に見舞われた。筆者が本コラムで「予言」したとおりの結果なったわけだが、みんな、懲りないんだね。

 海外リスクで一番怖いのは、中国のバブル崩壊による成長失速である。先週の日経ビジネスの「コマツ、中国減速を警戒」には刮目させられた。兆候が出るなら、まず建機だと分かっているからである。「警戒」の根拠はソフトなもので、稼動データに異変が出たわけではないが、現場のプロの勘は侮れない。この記事をトップに持ってくるあたり、山川編集長のセンスが光る。

 さて、世間が見過ごしがちなリスクを観点に特集を組むのは、新聞より取材に時間をかけられる週刊誌らしいアプローチだ。ただ、欲を言えば、対応策の部分が平凡である。日本電産の永守重信社長に話を聞けば、何を言うかは分かっているのだから、「今の変化」を抉るものがいるように思う。

 また、まとめの「処方箋」のところでは、新興国の攻略、目標ある技術開発、人材グローバル化、商習慣の見直しを挙げるが、「基本を忠実に」といったところだ。何か「変わったもの」が欲しい。取材対象の企業の取り組みを、もっと深堀りできた気もする。ヒネった観点から始め、「新奇」な試みを発見する、ここまで行ければ大成功だろう。

 ところで、観点と言えば、一つ気になるのは、最初から日本の国内市場を諦めているように見えることだ。これは、日経のみならず、日本の常識とさえなっているようなのだが、それで良いものか。しょせん、輸出はGDPの10~15%に過ぎない。しかも、黒字基調だから、頑張るだけ円高に見舞われるジレンマがある。海外で企業は成長しても、GDPが伸びなければ国民生活が豊かになることはない。

 これが大局観とか、戦略眼とかいうものなのだが、そこから常識を疑い、前提を調べることが、新たな視点や発見に通じる。今週の日経ビジネスは、安易に、「震災の損失は最低でも16兆円、復興需要で成長は押し上げられる」と、政府の見解を受け入れているが、損失試算は過大だし、一次補正後でも前年度歳出にも達してないことを知っていれば、幻想だと分かる。世間は等閑視していても、筆者や北野一さんのようなエキスパートには気になる部分だ。

 日本は、中国と並ぶ世界第二位の経済規模を持つわけで、そこが名目ゼロ成長なのか、3%成長になるかで、国内の企業は大きな影響を受ける。最強の輸出力を持つ自動車は良いが、自動車に競争で負ける電機は、国内市場が伸びなければ、展望が開けない。海外で作り、海外で売るのでは、外資と変わりがなく、地元の企業に勝つのは難しい。

 海外で勝つためには、国内が良くなければならないというのは、ある意味、逆説的である。しかし、大局的に言えば、そうなのだ。グローバル化すれば、それで解決できるものではない。安価なら大量にさばける市場を持つ中国、対外資産が薄く通貨安を容易に導ける韓国と同じ戦略を取るのは不利である。先端的な商品が売れ、中韓企業が入りにくい日本市場の本来の特性を活かすべきであろう。 

 まあ、成長より財政再建のお国柄では、望むべくもないし、少子化を諦め切り、対策はバラマキ扱いして、将来を捨ててしまっている。デフレと人口減少は、自ら作っていることなのに、それを前提に、企業の強化ばかりを考えている。その帰結は、どうしても脱日本的になる。うーむ。日本には、おもしろい観点は、いくらでもあるように思えるのだが、こうなると、メジャーには、なじまないことになるねぇ。

(今日の日経)
 5割が増収と心理改善、採用・設備投資前向き。EPA合意へ前進、EUは3年の決着視野。防衛省、米大使館職員を採用。病院ベッド30万床抑制・厚労省25年メド。中国の内モンゴルでデモ続く。エジプト・ガザ封鎖緩和。Sバルマー・動詞着目の検索エンジン。中外・被災地発の規制打破・水野裕司。検証・薄氷の東電公的管理、金融庁と三井住友が保険機構案、財務省が総額上限を外す、政治がリストラ上積み。読書・革命は宗教的継続。

※力強く復興というには、とこれでもまだ足りないなぁ。 ※規制緩和を求めるなら、「この緩和をしてくれたら、これだけ投資します」というのを提案して欲しいね。それに魅力を感じる地域が特区を誘致する形を作れば良いのでは。
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年金のどこにムダがあるのか 3

2011年05月28日 | 社会保障
 他紙で恐縮だが、5/27毎日に大熊由紀子さんが書いた「政策誤らせる魔術的な言葉」は、さすがだったね。内容は、旧大蔵省が「国民負担率」を際立たせるために、分母に国民所得を使う「操作」をしていたという話だ。本コラムでは、財政当局の数々のトリックを暴いているが、昔も今も変わらないということだ。狡猾な人達を相手にするのは、骨が折れるよ。

 さて、もう一本、他紙で恐縮だが、5/27朝日の「主婦の年金」の特集は、バランスが取れた内容だった。公平性とは相対的なものだから、多角的な方向からの検討がいることを示していたと思う。政治がサボらずに、主婦の年金の届出漏れに関する特例法を、今国会で成立させてくれることを祈るばかりだ。

 この主婦の年金だが、年金数理の観点からは、どう考えるべきだろう。保険料を払っていないのだから、数理も何もないと思われるかもしれないが、そうでもない。改革が避けられない主婦の年金をどうするかだけでなく、無所得や低所得の人の年金保障にも関わる、興味深いテーマである。

 厚生年金の男子の月収の平均は36万円だから、年金数理的に公平な年金額は、14.6万円になる。所得代替率で示せば40.6%だから、世間的には、かなり低い。世間は、50%を目安にしているようだが、負担する保険料率18.3%からすれば、もらい過ぎである。現実の年金額は、将来的にも50%を確保することになっているが、これは税を財源に、上乗せがされているからだ。したがって、この水準を、もらって当然のものとは、決して思ってはいけない。次世代からの、見返りが約束されない「贈り物」なのである。

 こうした平均的な男子であるが、専業主婦をめとっていたとすると、1人当たりでは、1/2の7.3万円になる。この水準は、民主党の最低保障額の7万円を上回ることになる。おそらく、民主党は、あまり考えもなしに、基礎年金の6.6万円に色をつけ、切りの良い7万円にしただけだろうが、最低保障の水準として、広く国民に承認されていることの意味は小さくない。

 なぜなら、将来、次世代が年金の税負担を重荷に感じたとき、ここまで給付水準を下げようと考えるかもしれないからだ。「過去の保険料に見合うものは払うけれども、税を源にして年金をもらおうとするのは勘弁して」という主張は、正当なものである。裏返せば、年金のスリム化の余地は、ここにあるとも言える。

 とは言え、筆者は、1人7万円と言う水準は低すぎると思う。都市部では、生活保護水準を下回ることになるからだ。それからすると、余裕を見て9万円は欲しい。夫婦なら18万円である。そうすると、あら不思議。先の14.6万円に専業主婦の基礎年金の国庫負担分3.3万円を加えると、これに達するのである。これは代替率で言うと50%になる。

 いかがかな。現行の年金制度と、その将来の姿というのは、良く出来てるでしょう。そして、このことから、年金改革の選択肢というのも見えてくる。すなわち、一定以上の年金、例えば、保険料による年金だけで18万円を超える年金をもらう世帯には、国庫負担分は払わないという選択肢もあるということだ。この18万円のラインは、更に下げることもできる。それは、どの程度の生活を年金で保障をするかという議論次第である。

 こうしてみると、主婦の年金は、保険料と無関係に払うのが是か非かという問題ではないことが分かる。専業主婦という所得ゼロの人に対して、どの程度の保障をするのかという問題なのである。極端な場合を見ると、それはハッキリする。夫の月収が60万円という高額だと、将来的には代替率が40%を切ることになるので、専業主婦の年金は、すべて夫の保険料で賄われるのと同じだ。専業主婦は必ずしもタダで年金をもらえるわけではない。

 筆者の見解は、専業主婦だろうと、低所得者だろうと、一定額の年金以下になってしまう人には、すべからく3.3万円の税年金を給付すべきというものだ。ある意味で、これが最低保障になる。低く思われるかもしれないが、専業主婦には夫の年金があるし、低所得者でも報酬比例の年金がある。最低賃金で働いたとしても、フルに加入すれば、合わせて8.3万円になる。むろん、低所得では保険料を払うのも苦しいので、その配慮も必要になるが。

 年金改革は、民主党案のような「抜本改革」の幻想が潰えたことで、ようやく、まじめな議論が始まるように思う。厚生労働省が示した年金改革の方向性は、短所を少しずつ改善していくものであり、これに着実に取り組んで行けば良い。ただ、個々の対応策について可否を考えるだけでなく、制度全体から見た評価も必要になってくる。

 その点で、本コラムの「小論」は、良いレファレンスになるはずだ。その基本原理は、三つ。払った分の給付を約束すること、税財源は低所得者に集めること、そして、少子化の克服を制度に組み込むことである。主婦の年金を初めとして、これらで解ける問題がほとんどだ。今日は、ちょっと難しかったかね。

(今日の日経)
 原発、日本不信ぬぐえず、声なき主役置き去り。ブルネイ上積みは可能。沖縄観光に数次ビザ。消費者物価4月プラスに。イエメン・反政府部族に空爆。ミャンマー中国首脳会談。中国主要銀行が資本増強、不良債権化に備え。原油や非鉄、大幅下落。私立高中退の経済的理由が最少に。※高校無償化は、バラマキと言われるが、こういう成果もあるのだ。
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年金のどこにムダがあるのか 2

2011年05月27日 | 社会保障
 抜本改革の甘い夢を振りまいた民主党も、ついに年金改革を棚上げすることになった。最初から無理があり、結局、国民をだます形となった。この幻想を打ち破るのに、慶大の権丈善一先生の果たした役割は大きい。新聞(除く日経)や経済誌の記者への教育を通じて、日本の年金論議の水準が大いに高まった結果だからである。

 さて、民主党の「非現実的な改革」は潰え去ってしまったが、現実的な今の制度に問題がないわけではない。また、意外に思われるかもしれないが、保険料財源の報酬比例年金に、税財源の最低保障を組み合わせるという、民主党案の骨格自体は、まともなものであり、問題は水準にある。最低保障を3.3万円の現行レベルに留めるなら、財源問題も生じなかっただろう。むろん、政治的には、何の魅力もなくなってしまうが。

 実は、現行制度には隠れた問題があり、それは、子供のない人に高額の年金を払うことである。次世代の保険料によって支えられる賦課方式では、子供のない人は年金を受ける根拠を持たない。ないにも関わらず払われる年金の半分は、税で負担する構図になっている。次世代の負担軽減のカギはここにある。

 例えば、マクロ経済スライド発動後の2025年で、男子単身の場合、月収47.2万円で、年金は17.0万円、所得代替率で36.4%になるとされる。この代替率は、保険数理的に見て、十分に低いものであるが、そもそも、少子化を起こした人について、半分が税財源なのに、17万円も出してよいのかということである。

 つまり、子供のない人=少子化を起こした人には、半分が税で支えられるのだから、これを遠慮せよという考え方も成り立つ。その場合でも、8.5万円にはなるのだから、単身なら生活保障には十分ではないかというわけである。もし、フルにもらいたいなら、子供のない人は、二重(二倍)の負担をして、積立をしておくべしという理屈になる。

 子供のない人の年金を半分にするとか、負担を2倍にするとか言うと、非常識に思われるだろうが、将来、やせ細ってしまった次世代は、重い負担から逃れようとして、必ず、自分たちの親でない高齢者=子供のない人への年金給付を節減しようとするだろう。給付水準が生活保障としては高いなら、なお更である。

 もう一つ、税負担を軽減できる対象としては、所得が中レベル人達の所得代替率をもっと落とすことも考えられる。保険数理的に確保しなければならない所得代替率は40%程度であるから、それを超える水準を確保するために、税を財源としている部分を削り込むわけである。むろん、それは一定の限界を設けることが必要であり、それを最低保障額として7万円とすれば、そこまでは確保するという形になろう。

 以上のようなことをすれば、現行より高い最低保障と税財源の両立も可能になる。要は、「子供のない単身者」と「所得が中レベルの者」の税財源の年金を削減し、それを元に、低所得の者の年金を引き上げるというやり繰りである。民主党の改革案は財源的に「幻想」ではあったが、低所得者の年金を引き上げるという理念を生かすとすれば、こういう選択肢を示すこともできるのだ。

 いずれにしても、現時点で最も優れた年金改革案は、本コラムが「小論」で示す「どうすれば案」である。最大の特徴は、少子化を克服するメカニズムを組み込んであることだ。少子化を克服すれば、子供のない人の年金に税財源を充てずに済み、それを低所得者に回すことができる。それが最も望ましい道であることは言うまでもない。

(今日の日経)
 車生産前年の9割確保、年度内急回復800万台超へ。海水注入、実は中断せず。現実路線へ軟着陸図る、民主が年金を棚上げ。自治体給与も労使交渉。年金記録の照合、高齢者に対象絞る。日・マレーシア工科大学が開校。米でガソリン価格高騰。経済教室・景気は秋以降・竹内淳一郎。

※やはり、現場は、本店や官邸を無視して、現実的な対応をしていたということか。まったく、日本らしいね。 ※年金記録も、ようやく、現場の実情に合わせて、理性的な対応ができるようになったようだ。 ※震災ショックが2四半期以上続くと、景気が回復し難くなる。

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年金のどこにムダがあるのか

2011年05月25日 | 社会保障
 厚生労働省が「社会保障改革に関する集中検討会議」に資料を提出し、今後の改革の方向性が明らかになった。政治的には、年金改革のような重要法案が通る状況にはなく、実現性には乏しいが、中長期的に年金制度がどう変化していくかが見通せるように思う。

 年金制度は、国民の「財産」であり、充実、改善していかねばならない。特に、庶民にとっては、再分配の装置として重要なのだが、どうも、「負担」としか思われないようで、いかに小さくするかに関心が集まりがちである。そこで、今日は、年金制度を「減量」する観点で書いてみることにしよう。

 今回の検討会議では、高所得者の年金給付の見直し(削減)、支給開始年齢の引き上げが挙げられた。これらは、世間的にも、よく言われるものである。しかし、年金数理の観点からすると、そう簡単なことではないのだ。

 ちょっと専門的で恐縮だが、現行制度の前提、保険料率18.3%、加入期間40年(20歳から60歳まで)、給付期間18年(65歳から平均寿命の83歳まで)を踏まえると、給付水準を示す所得代替率は40.6%はないといけない。これだけないと、「払った分が還ってくる」ことにならないのである。保険である以上、これは崩すことのできない大原則だ。

 これからすると、高所得者の場合、2004年の年金改革によるマクロ経済スライドの完成時には、所得代替率は40%を切る水準まで下がることになっているため、一層の給付削減と言っても、大原則に抵触するため、難しいのである。したがって、高所得者に負担を求めるなら、給付カットではなく、課税強化でいくべきだろう。厚労省の守備範囲外になるが。

 また、支給開始年齢の引き上げも、同じ理屈で限界がある。やりすぎると、払った分も還ってこなくなり、社会保険に留まるインセンティブが失われてしまう。代替率は、現行制度では、所得が高まるほど低くなる構造となっているので、支給開始年齢の引き上げが可能なのは低所得層だけという困った事態もあり得る。

 それでも、厚労省が示すように、一定額以上の年金受給者に対しては、税で負担する基礎年金の国庫負担分をできるだけ支給しないようにはすべきだろう。一定額以上の年金受給者には、保険料の範囲でしか給付せず、税財源は、すべて、低年金者への底上げに限るというのが、今後の方向性である。

 他方、支給開始年齢の引き上げについては、議論するだけムダだと思う。何歳から支給しようと、保険料の分だけは払わざるを得ず、生涯の給付総額は変えられないからである。むしろ、これまでの年金改革で進めてきたように、何歳からもらおうとも、年金数理的に公平なものとし、生活の事情に合わせて受給者が選べるようにすることが重要であろう。

 年金制度で「減量」可能な部分で、厚労省が指摘せず、世間も見逃しているものが一つある。それは、子のない人の年金である。賦課方式では、給付は次世代によって支えられているので、保険料を払って親の年金を支えるとともに、次世代を持つという人的投資もしなければならず、この二つの「義務」を果たさないと、原理的に年金給付が担保されない。現実には、子のない人にも年金を給付しているので、それは、本質的には、税で負担されることになる。

 子のない人には、健康や貧困が理由になっている場合があり、それは税負担でも構わないのだが、価値観で自ら選んだ人も多い。そうした人は、本来は、年金を受給する根拠をもたないのにもらっているのであり、しかも、現行の年金給付水準が夫婦世帯を念頭に置いているために、1人分の生活にはリッチなものになっているのだ。

 むろん、ここで年金数理を振り回して、子のない人には年金を払うなと言ったところで、世間常識からかけ離れており、とても受け入れられるものではない。それでも、基礎年金の国庫負担分のカットは、今後、議論になると考えられる。これは、子の有無をメルクマールとしなくても、単身で一定以上の年金受給者はカットするということでも、似た効果が得られよう。

 今後の年金改革の方向性としては、保険料分の給付は維持せざるを得ないものの、基礎年金の国庫負担分については、もらえる人の範囲や水準がどんどん限定されることになろう。単なる給付抑制ではなく、財源で分別して議論することが有益だ。まあ、最先端の年金制度の形は「小論」で示したとおりなので、これをレファレンスにしてもらえば良いだけなんだけどね。

(今日の日経)
 赤字国債法案、高まる緊張。電力制限、病院・鉄道は例外。米で社債発行急増。電気自動車「大国」競う。想定できた炉心溶融・事故報告書。トウモロコシ最高値圏。年金受給額・人口減少で減額・民主案。月100円で自転車保険。ムバラク前大統領起訴。中国・投資主導のしわ
寄せ。トヨタ、9割に回復。業態超え電力融通。富士重が被災県で1万円中古。マンション自然エネで熱供給。上場企業、純利益61%増。経済教室・東電賠償・野村修也。

※早いとこ国債法案と解散権を交換すればいいのに、じれったいね。※これもリスク回避か、裏返せばリスクが高まっているということ。※ベントが遅れたのが一番の問題ではないか、暗闇や放射線でも迅速にできる準備してなかったのは怠慢。※マクロ経済スライドは人口要因も含んでいるのだがね。※日本の高度成長末期でも鉄鋼などで設備過剰が起こった。中国でも同じこと。
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日本経済の死に至る病

2011年05月24日 | 経済
 デフレでも財政再建、少子化でも社会保障、これはね、できそうに見えて不可能なんだよ。企業で言えば、減収でも増益と同じでね。ある程度はできても、限界があって、必ず壁に突き当たる。これだけで何とかしようともがいても、衰退は免れない。だから、困難に見えても、根本の課題に挑戦しなければならないんだ。

 ところが、日本は、デフレも、少子化も、解決を諦めてしまって、無理やり進めようとしている。これは、非常な痛みや困難が伴うだけでなく、袋小路に追い込まれて、結局、破綻を来たすことになる。まあ、戦前、中国にもう一撃加えれば、平定できると深みにはまって行ったのと同じでね、こういう構図は、陥りがちで、脱出が難しく、極めて危険なんだ。

 日経によれば、日本の財政当局は、労組を押し切り、国家公務員の給与を3000億円ほど削減することに成功したようである。これは、財政再建における、かつてない成果だ。政治や国民も喝采を送るのではないか。しかし、このデフレと震災の最中にやるべきことなのかと思うと、一抹の不安がある。

 国家公務員給与の削減は、4倍の人数がいる地方公務員にも、必ず跳ね返るから、しめて1.5兆円のデフレ要因になる。これに見合う復興予算を二次補正で組めば、問題はないが、それは3000億円でなく、1.5兆円としなければならない。地方公務員の給与削減のために地方交付税を減らす分、地方の支出は落ちるのであり、その分を国が代わりに支出しなければ、デフレ要因になるからだ。

 ちょっと技術的な話になるが、財政当局は、交付税特会の債務を減らす操作をすることで、表面上は、1.2兆円の赤字国債の増発をして需要を追加したように見せつつ、実質的には、公務員給与の削減分を復興予算に付け替えるだけにするような気がする。だから、二次補正で景気が押し上げられると期待すると、動向を読み間違えることになる。結局、2兆円弱の小型の二次補正では、前年度と比較して、まだ実質的な緊縮財政の状況は相変わらすということだ。

 日本経済は、震災でショックを受けたにもかかわらず、財政当局からは、未だ緊縮財政の重荷を背負わされている。どうも、財政当局は、二次補正の段階でも、これを変えるつもりがないようである。複雑な操作がなされているので、これを見破れるのは、本当のプロだけだろう。むろん、新聞や有識者が分かるわけもない。

 デフレでも財政再建という「死に至る病」に冒されているのに、何をしているかも分からず、「どうして、復興の勢いが弱いのだろう」と首をひねりつつ、デフレに苦しみ続けるに違いない。哀れなものだ。公務員叩きを喜ぶ世論を横目で見つつ、「これはワナだ。日本の財政当局がそんなに甘いわけがない」とつぶやく、筆者なのであった。

(今日の日経)
 電気製品の安全基準緩和。国家公務員給与下げに労組合意。潤沢な資金生かす・投資はリーマン直後でも34兆円が28兆円にとどまる。日経平均、中国景気が懸念材料に。ユーロ、対ドル大幅安。年金給付増、歯止めなく。元財務次官がみずほ総研理事長に。パキスタンが中国に海軍駐留要請。中国、インフレで消費鈍化。中部電力、供給余力5%上積み。イオン、節電でポイント進呈。中期債の利回り低下は海外流入。経済教室・漁業再生、譲渡性個別割り当て方式・小松正之。

※古い人間のせいか、労組はもう少し抵抗するのかと思ったよ。この投資低迷を誰が補う。建機は中国景気の先行指標、みんな神経質になっている。米国は輸出だけは好調だったが、どうなるか。みずほが自由を失わないと良いが。再分配が不十分な中でのインフレは毒なんだよ。ポイント制が経産省から出てこないのは、東電処理で財政当局に遠慮しているからか。マネーはリスクが取れなくなっている。小松さんには、資源管理方式を詳しく説明してほしかったな。
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経済学者の役割と制度設計

2011年05月23日 | 経済
 日本の経済学者の政策立案能力というのは、この程度なのか。今日の経済教室の提言を読んで、そう思う。むろん、皆さんが深い学究をお持ちだというのは存じているのだが、政策を作るというのは、また別のセンスが必要なのでね。

 提案の1は、復興財源の確保に増税をせよということだが、財政というのは、必要な額がいくらで、それを何年で返済するかというのが基本だ。内閣府の被害推計は、前にも指摘したとおり、「意図的に」過大なものになっている。これは、筆者だけでなく、北野一さんも指摘していることだ。しかし、このくらいは大目に見てやろう。

 これを仮に15兆円だとして、30年で返済するなら、元本は年間5000億円の返済になる。この程度なら、消費税だの何だのという問題にはなるまい。復興はインフラに向けられるのが大半だから、30年の償還期間は決して長くない。結局、償還期間を何年にするかが、負担論の勝負どころなのである。

 提案は「10年後に返済するのでは」うんぬんとしているが、インフラでも住宅でも、30年は使えるものを、なぜ10年以下の短期で返さねばならない話になるのだろう。財政当局の情報操作に、すっかり染まっているのではないか。従来は、赤字国債を積み増す場合でさえ、数年で返済するような増税とのセット論はなかった。なぜ、震災となると、急に見合いの増税が求められるのか。学者といえども、少しは疑うべきだろう。財政当局は、被災者に同情が集まっているから、国民は呑むだろうと考えているに過ぎない。

 筆者ならば、復興費用の金利分だけの増税を提案する。15兆円なら、金利1.3%で、1950億円にしかならない。金利がしっかり払われる保障があれば、債権管理上、問題がないことは、経済学者なら分かるだろう。それでも心配なら、1/60償還分(1.7%)を上乗せしても良い。15兆円を使うには数年かかるから、当然、初年度の金利等の負担は、数分の1になる。いずれにせよ、消費税論議が必要なほどの規模にはならない。

 提案の2は、電力対策だが、価格メカニズムを使って需給調整をすべしとするだけなら、学生だって言える。価格メカニズムは有効でも、需給構造が変わるには時間がかかるから、一律の削減目標を掲げているだけのことである。キャップ&トレードのアイデアも、初期配付や値付けの問題があって、そう簡単にはいかない。CO2削減の場合と同様、取引制度より、省エネ投資への補助の方が有効ではないか。予算は必要になるにせよ。

 提案の3は、町づくりの規制緩和だが、計画的な街の再建には、むしろ、規制強化が必要だろう。そして、その補償としての財源がいる。規制や税制の調整で、カネがかからずに特区が成功すると思ってはいけない。どういう制度で補償をするのか、ここが最も重要なところである。

 さて、経済学者の皆さんが、フリーランチはない、価格メカニズムを使え、規制緩和で自由にせよと言うのは、職業柄、そういうものかと思う。ただ、それだけでは、世の中を良くするのには役立たない。基本原則を掲げるだけなら簡単なことで、それを具体的な制度設計に落とすには大変な労力がいる。

 そのことを、筆者は、年金の制度設計で、身をもって経験した。こんな割に合わないことをするもんじゃないなと。しかし、自然科学と違い、社会科学は、原理を追求するだけでは足りない。世の中を良くしてこそ、エコノミストではないか。日本の経済学者の果たすべき役割は、もっと重いように思う。

(今日の日経)
 社会保障3分野重点、パート、番号、幼保。社説・主婦の年金。働かぬ抑制策、年金給付膨張。核心・お願い政権・滝田洋一。EUがASEAN各国とFTA。離島向け省エネ電源。経済教室・震災復興政策・経済学者が共同提案。東北大、遠い研究環境復旧。


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有識者と全国紙の役割

2011年05月22日 | 経済
 復興会議は増税で一致したようだが、素人が議論すれば、新聞論調に似た結果になるのは、目に見えている。復興国債を何年で償還すべきか、これで増税規模が決まるわけだが、こういうプロしか分からない決定的に重要なポイントは、完全に抜けている。有識者の会議って、何の知識を有している者たちの集まりなのかね。

 復興会議なんて、増税路線の権威づけのために、専門外の人達を集めたものだろう。復興に貢献しようと集まった善意の人達が、財政当局に体よく利用されるのを見るのは、忍びない。せめて、社会保障国民会議の際の権丈先生のように、政策に必要な積み上げの数字を出せという人が居れば良かったが、まあ、入れるわけもないか。

 さて、今日は、小竹さんが書いた「けいざい読解」を取り上げよう。今後の産業政策のポイントを、ある意味、指し示すものだからだ。この記事の良さは、ゼロ年代のGDP増加のうち、その半分が、米国への輸出を背景とした自動車産業によるものだと、数字を挙げて説明しているところである。問題は、なぜ、そうなったかである。

 今や、若手は好景気というものが分からない。この十年、GDPの名目値は下がり続けているのだから、それも無理がない。しかし、古い人間から言わせると、これだけ輸出が伸びていたのに、景気が今一つだったというのは、何とも解せないのである。輸出から、内需へと景気が波及するのが、いつもの日本経済のパターンだからである。

 小竹さんは、経済復活の処方箋として法人減税を挙げるが、設備投資率の推移を見たことがあるのだろうか。実は、リーマンショック前に、民間企業のGDPに占める設備投資比率は16%に達していた。これは、日本経済に勢いがあった1988年頃と同レベルである。高い法人税率にも関わらず、設備投資は盛り上がっていたのだ。

 しかし、設備投資を含む投資水準自体は低かった。これは、民間住宅投資が伸びなかったためである。通常、住宅投資は低金利にストレートに反応する。そうならなかったのは、既に低金利になっていたことと、勤労者の所得が高まらず、ローンを組もうという機運が出てこなかったからである。

 こうしてみると、法人税を下げて設備投資を伸ばそうという戦略は、的外れなことが分かる。今の法人税率でも、外需があれば、十分に高い設備投資率になるわけだし、法人減税で更に自動車産業の設備投資率を高めることは、輸出増を伴うことを考えると無理がある。必要なのは、内需向けの設備投資なり、住宅投資を引き上げることであろう。

 その最大の障害になっているのは、デフレ下の緊縮財政である。日本の財政当局が、国民の目から隠れて、陰で緊縮財政をしてきたことは、特別版の「壮大なる愚行」で示したように、GDP統計上で明らかである。別に、景気対策をやれというのではない。デフレのうちに需要を抜くような財政はやめろというだけのことだ。輸出が内需に波及しない原因は、ここにあるからだ。

 小竹さんが挙げる産業分野は、原発事故で失墜したインフラ輸出を除くと、環境・エネルギー、医療・介護・健康、文化、先端と、いずれも内需関連である。景気が回復しだすと、直ちに緊縮財政を敷き、所得を吸い上げていては、とても伸びるものではない。伸びるのを待って緊縮をするという、ほんの1、2年の我慢がどうしても必要なのである。

 震災前、日本の財政当局は、2011年度当初予算を、前年度補正後より4.3兆円も減らし、予備費も含め、5兆円の緊縮財政をするつもりでいた。これでは、需要が低迷し、デフレから容易に抜けられないことは明らかであろう。新聞が自分で財政数字を確認するという基本を怠っているのを良いことに、こんなことをしていたのである。これでは、金融緩和も、成長戦略も、たまったものではない。

 これが震災後、一次補正によって、財政中立まで、もう一歩のところまで来た。前にも書いたが、2010年度の予算規模をキープするだけで、毎年1兆円の社会保障費の自然増を呑み込んでも、復興予算は5年間で15兆円を用意できる。普通に成長すれば、あえて増税せずとも、10兆円近い自然増収も見込めるから、財政赤字はむしろ縮小する。成長と物価が強まったら、その時に消費税増税をすれば良い。

 プロからすれば、何の難しさもない運営だが、日本の財政当局は、これを隠して、消費税増税を決定づけようとしている。引き上げると決めた年に、景気がどうなっているかは、お構いなしだ。デフレでもやる、悲惨な経済になるのでもやる、それは、被災者や社会保障のために必要な尊い犠牲というわけだ。こうなると、ほとんど狂気だ。

 産業構造の幅を「狭め」、景気変動の振幅を「大きく」したのは、緊縮財政で内需への波及を断ち切り、外需に依存したためだった。震災後の復旧・復興に当たっては、日本経済の「耐震性」を高める工夫が必要だ。それは、内需に合わせて、平凡な財政運営をするだけで簡単に達成できる。有識者や全国紙の役割とは、何なんだろうねぇ。

(今日の日経)
 工場新設促進へ規制緩和、緑地比率や環境対策。夏ボーナス2年連続増加。太陽光パネルを全新築に。復興会議が増税検討で一致。為替予約は景気低迷見越す。けいざい読解・GDP13兆円のうち6兆円が自動車・小竹洋之。米景気回復・鈍化に懸念。ベトナム国会に経済界から100人立候補。米国産LNG本格輸出へ。電気料金、原発全廃なら70%上昇。中外・減る中国労働力・飯野克彦。仮設より借り上げが安価。読書・日本林業はよみがえる、戦略外交原論、公共放送BBCの研究、現代トルコの政治と経済。

※この程度の規制緩和で投資が高まるのかね。企業収益に比べるとボーナスの回復は遅いな。マンション設置には規制緩和がいる。投資を高めるなら、こっち。企業はV字回復を信じてないんだな。QE2の効果が切れて地金が出てきた。一歩ずつ民主化。電気なんて輸入品で作っているのに、なぜ日本は高い。
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力ずく財政再建の宣言

2011年05月21日 | 経済
 一体改革だか知らないが、精緻な増税プランを作ったところで、デフレでは無理なことが、どうして分からないのかね。失敗を繰り返してきたのだから、いいかげんに戦法を変えても良さそうなものだが、日本の財政当局には、反省も進歩もない。おそらく、デフレでも、お構いなしで強引にやるつもりなんだろう。

 内閣府報告書案なるものでは、消費税は「景気後退の主因となるほど大きなものではない」そうだ。つまり、景気が悪くても、強引にやるってことかな。「主因」ではなくても、「従因」にはなるのではないかね。本当は、増税に耐えられる経済環境がどの程度のものかを示さないと意味がないのだが、それをすると、当分、できなくなるからね。

 消費税を上げれば、物価が上がる。物価が上がれば、需要は減る。これは、経済学部の1年生でも分かる価格原理である。消費税を上げても景気に関係ないと主張する日本の財政当局は、経済学の教科書を見たことがないのか。おっと失礼、ほとんどが法学部出身だったね。それなら、イチから教えないといかんな。

 教科書には、増税をして財政再建を進めると、財政からの資金需要が減るので、金利が低下し、設備投資を刺激するとある。その場合は、経済全体の需要は減らずに済む。しかし、残念ながら、日本は既にゼロ金利状態になっているから、こうした効果は、まったく期待できない。金利が十分に高いときでないと、成り立たない話なのだ。

 それでは、どうやったら、金利は高くなるのか。日銀が強引に引き上げても経済を壊すだけなので、物価が上がり、自然に金利が上向くようにしなければならない。それには、少なくとも、デフレ下での緊縮財政は、やめねばならない。2010年度は、前年度補正後から10兆円の歳出削減を敷き、景気対策を次々と打ち切ったが、そのために、年度後半は成長が停滞した。日本経済は、財政運営どおりの結果を出している。

 つまり、消費税増税がしたいのなら、緊縮財政はやめなければならないのだ。緊縮財政で成長の芽を摘むようなことをしていては、いつまで経っても増税はできない。なになに?「緊縮と増税で財政再建をしようとしたのに、わけが分からない」って。そう言う人は、国の経済の舵取りなんかしてはダメだよ。

 経済運営の基本は、「成長なくして再建なし」だ。「財源不足10兆円」などと言われたりするが、10兆円なんて、日本経済は、2%成長をすれば、たった1年で稼得力を身につけてしまう。巨大に見える高齢化の負担も、2~3%の成長の下なら、難なく片付けられる。目先の歳出を絞り、成長を捨ることの方が遥かに犠牲が大きいのである。

 今度、内閣府の報告書が出たら、本コラムの基本内容「雪白の翼」と読み比べたら良い。増税をする手順と状況、低所得者への手当て、社会保障との連携と、どれ一つ取っても、切れ味の違いが分かるはずだ。どうも、日本の財政当局は、成長など待てないから、力ずくで行くつもりのようだ。一体、どれだけ犠牲が出ることやら。

(今日の日経)
 東電1.1兆円合理化。費用最大限織り込みも損賠は非計上。年金減額幅を縮小・厚労省案全容。年少扶養控除、自民が復活見送り。財源不足15年に10兆円超・一体改革で試算、軽減税率は非効率・内閣府報告書案。非正規週20時間に緩和、低所得年金に加算、高所得者の基礎年金半額。日銀総裁・下振れリスク注視。三菱銀・赤字三兄弟。ギリシャ国債が最高更新。米がパレスチナ国境を67年ラインに・中西俊裕。コンビニ売上高1.6%増。太陽電池・輸出増もシェア低下。
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