いや驚いたね。2月の家計調査の結果である。季節調整済の実質指数が+2.2も伸びて102.5に達した。これはリーマン・ショック前の2008年前半のレベルを軽く上回る高さだ。1月の高い伸びから、反動減を予想していた筆者は、またも大外れである。これで宗旨替えをしたりすると、しっかり反動減が来て、二重に裏切られたりする。さて、どうしたものか。
………
経済というのは、設備投資増、雇用増、所得増、消費増と進む。まだ、設備投資が底を打つか打たないかという状況で、消費が先行して増えるのは不自然だ。したがって、2月連続の急伸という家計調査の結果は、偶然なのかもしれない。ただ、2月の商業統計の結果も好調だったことからすると、家計調査だけの単なるブレではなさそうである。
これが偶然だとしても、1-3月期の成長率に与える影響は大きい。3月の家計調査の結果が12月並みの低い水準に逆戻りすると仮定しても、GDPの6割を占める民間消費が年率8%も成長することになる。もし、2月並みの横バイとなれば、13%成長というケタ違いの数字になる。まるで、アベノミクスによって、経済がV字回復を果たすかのようだ。
気をつけたいのは、今回の消費増は、所得増の裏打ちのないもので、勤労者世帯の消費性向は77.8%にまで高まっていることである。この数値は2000年以降の最高値であり、長続きするとは思われない。通常、消費性向の急上昇は、所得の減少によって起こる。所得が減っても、生活習慣から消費水準を急には落とさないからだ。
むろん、今回は、それとは異なり、実収入が微増の状況で起こった。似たような過去の例を引っ張り出すと、2010年3月がある。あまり所得が増えない中で消費が急伸し、消費性向は、奇しくも同じ77.8%に達した。この頃は、リーマンショック後の回復期で、エコカー補助金などで消費が押し上げられていた。それで、翌月、どうなったかと言えば、消費性向は元へ戻り、消費指数は7.5ボイントも落ちている。そして、その後、実収入と消費支出は、連れ立って緩やかに伸びていった。
今回の消費増は、二つの面で考えれば良いと思う。一つは、仕方なく増やした面で、寒さで光熱費は高止まりし、防寒衣料も買わざるを得ず、教育費もまた欠かせなかった。もう一つは、所得面であり、実収入の底入れ、あるいは、経常収入の増加により、クルマやスマホ、教養娯楽費を増やした世帯があったという見方だ。労働力調査では就業者数が増加してもいる。結局、今月の消費増は出来過ぎで、やはり反動減はあろうが、消費増の下地は整っているということである。
ところで、米国の2月の消費も好調だった。こちらはガソリン価格の上昇で仕方なく増やした面と、増税のあった1月の所得減から、2月は所得増へと転じたことがある。日本も、昨年を上回った春闘の結果、賃金増が伴うと、消費増は、たまたまから必然へと、性格が変化するだろう。それにしても、米国の消費の良さは結構だが、これも筆者の予想外であった。
………
1、2月の統計結果が出たので、日本の1-3月期の成長率の予想が出始めるだろう。これが思いがけず高いと、反動で4-6月期は小休止になるのかなと思ったりする。5月の結果の出る6月末には、それが明らかになる。低めの4-6月期の予想を受けて、7月の参議院選での消費増税の方向付けはどうするのか。単に10月に判断するとして済ますのか、これでは上げ幅の圧縮もあると打って出るのか、なかなか興味深い。
1月、2月と珍しい統計結果が続いた。偶然が連続したのか、それとも、経済というのは、本来、そうしたものなのか。むろん、過去の経験やモデルより、事実が重いことは言うまでもない。そして、偶然であっても、政策判断や政権保持に影響を与えて、日本経済の先行きを規定するかもしれない。歴史とは、偶然と意思とが織り成す「綾」なのだ。
(昨日の日経)
期末株価3年ぶり上げ幅、生損保の含み益6兆円。トヨタ利益上振れ1.3兆円も。電気代平均7000円超。在庫指数1年2か月ぶり低水準。米消費2月0.7%増。
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経済というのは、設備投資増、雇用増、所得増、消費増と進む。まだ、設備投資が底を打つか打たないかという状況で、消費が先行して増えるのは不自然だ。したがって、2月連続の急伸という家計調査の結果は、偶然なのかもしれない。ただ、2月の商業統計の結果も好調だったことからすると、家計調査だけの単なるブレではなさそうである。
これが偶然だとしても、1-3月期の成長率に与える影響は大きい。3月の家計調査の結果が12月並みの低い水準に逆戻りすると仮定しても、GDPの6割を占める民間消費が年率8%も成長することになる。もし、2月並みの横バイとなれば、13%成長というケタ違いの数字になる。まるで、アベノミクスによって、経済がV字回復を果たすかのようだ。
気をつけたいのは、今回の消費増は、所得増の裏打ちのないもので、勤労者世帯の消費性向は77.8%にまで高まっていることである。この数値は2000年以降の最高値であり、長続きするとは思われない。通常、消費性向の急上昇は、所得の減少によって起こる。所得が減っても、生活習慣から消費水準を急には落とさないからだ。
むろん、今回は、それとは異なり、実収入が微増の状況で起こった。似たような過去の例を引っ張り出すと、2010年3月がある。あまり所得が増えない中で消費が急伸し、消費性向は、奇しくも同じ77.8%に達した。この頃は、リーマンショック後の回復期で、エコカー補助金などで消費が押し上げられていた。それで、翌月、どうなったかと言えば、消費性向は元へ戻り、消費指数は7.5ボイントも落ちている。そして、その後、実収入と消費支出は、連れ立って緩やかに伸びていった。
今回の消費増は、二つの面で考えれば良いと思う。一つは、仕方なく増やした面で、寒さで光熱費は高止まりし、防寒衣料も買わざるを得ず、教育費もまた欠かせなかった。もう一つは、所得面であり、実収入の底入れ、あるいは、経常収入の増加により、クルマやスマホ、教養娯楽費を増やした世帯があったという見方だ。労働力調査では就業者数が増加してもいる。結局、今月の消費増は出来過ぎで、やはり反動減はあろうが、消費増の下地は整っているということである。
ところで、米国の2月の消費も好調だった。こちらはガソリン価格の上昇で仕方なく増やした面と、増税のあった1月の所得減から、2月は所得増へと転じたことがある。日本も、昨年を上回った春闘の結果、賃金増が伴うと、消費増は、たまたまから必然へと、性格が変化するだろう。それにしても、米国の消費の良さは結構だが、これも筆者の予想外であった。
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1、2月の統計結果が出たので、日本の1-3月期の成長率の予想が出始めるだろう。これが思いがけず高いと、反動で4-6月期は小休止になるのかなと思ったりする。5月の結果の出る6月末には、それが明らかになる。低めの4-6月期の予想を受けて、7月の参議院選での消費増税の方向付けはどうするのか。単に10月に判断するとして済ますのか、これでは上げ幅の圧縮もあると打って出るのか、なかなか興味深い。
1月、2月と珍しい統計結果が続いた。偶然が連続したのか、それとも、経済というのは、本来、そうしたものなのか。むろん、過去の経験やモデルより、事実が重いことは言うまでもない。そして、偶然であっても、政策判断や政権保持に影響を与えて、日本経済の先行きを規定するかもしれない。歴史とは、偶然と意思とが織り成す「綾」なのだ。
(昨日の日経)
期末株価3年ぶり上げ幅、生損保の含み益6兆円。トヨタ利益上振れ1.3兆円も。電気代平均7000円超。在庫指数1年2か月ぶり低水準。米消費2月0.7%増。