経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

金融政策の裏の財政

2011年04月27日 | 経済
 浜田先生は米国に居られるから、金融政策を重視するのは分かるんだが、それがデフレ下での緊縮財政をのさばらせる結果になるんだな。中央銀行の統計数字は刻々と出てきても、日本の財政数字は粉飾だらけ。財政当局が2010年度、2011年度と、2年連続でGDP1%規模の緊縮財政をかけていると知ったら、先生も日銀だけを責めはすまいと思うのだがね。

 浜田先生ほどの碩学が「フリーランチはある」とか、「日銀引き受けでも」と言ったら、日本の経済学者は何と評するのだろうね。さすがに、「経済学を知らない者の言うことだ」と罵ることはできまい。むろん、これはデフレギャップがあるから言えることで、今の経済状況で必要なのは、金融緩和と財政拡張だと言っているに過ぎない。

 実際、日銀は、震災直後に、資産買取枠の拡大も行っている。問題は、財政当局が、一次補正後も財政中立まで持っていかずに、前年度比較で緊縮財政を続けていることだ。普通、そんなことをやっているとは、誰も思わないからね。財政が国債を増やさなければ、日銀は、それを買い上げて緩和することができない。極めて単純な理屈だ。

 また、浜田先生が、性急な消費税の引き上げに対して、「災害後の国民の苦しむ時期を選んで税負担をかけようもの」とし、あとで1%ずつ上げれぱ良いとするのも、ごく当然である。むしろ、デフレ下にあり、震災ショックに見舞われているのに、一気に引き上げようとする、日本での議論は異常である。浜田先生や筆者の見方は当たり前の話なのだ。

 日本では国債増発を非常に恐れ、今度の一次補正でも国債増発はないとしているが、年金積立金という「埋蔵金」の流用は、実質的に国債増発と変わるものではない。それにも関わらず、長期金利は極めて安定している。国債のディーラーは、こんなごまかしで、だまされるわけがないので、要は、資金需給は緩く、国債増発の余地は十分あるということだ。

 昨日の国会では、復興財源を何で賄うかという議論がなされていたが、それは、国債だろうと、年金や労働保険の「埋蔵金」だろうと、決算剰余金の会計操作だろうと、経済的には、どれも同じである。デフレで資金需給が緩和されていれば、どれを選んでも可能だし、逆に、インフレ気味なら、どれもできない。そのときに初めて増税が必要になる。

 金融政策や為替政策の動きは目に見えるが、財政政策は「見間違えるように」わざと作ってある。それに踊らされないことである。日本経済の「謎」は、特別編の「壮大なる愚行」で書いたように、隠蔽された財政数字を引っ張り出せば、簡単に解けるのである。

(今日の日経)
 被災工場7月9割復旧、既に6割。公明、財源法案に賛成。家庭の震災後の電力使用7.8%減。中古マンション価格回復の途上・東証新指数。主婦年金返還請求へ。欧州危機国にジレンマ。百貨店売上高14.7%減。経済教室・一層の緩和でデフレ打破・浜田宏一。

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