この国に足りないのは財源ではなく理想だというのは、本コラムの年来の主張だ。思いつきで経済政策が採られ、趣旨は悪くないが、的を外してばかりいる。非正規の育児休業給付を外して少子化対策をしてみたり、若い低所得者に恩恵の薄い所得税の控除を大幅に引き上げようとしたりである。広くバラ撒いてウケを狙いたい浅ましさが透け、深い思いが足らず、本当に必要な改革を国民に届けられないでいる。
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今回の総選挙で、「手取りを増やす」を掲げ、若者の支持を得た国民党の躍進には、驚かされた。石破総理には、勝ちたければ、地方創生の枠組で低取得の若者への再分配をすべしと勧めていたわけだが、ここまで威力があるとは思わなかった。政治資金問題は然ることながら、物価高の中、賃上げでも負担増で可処分所得が上がらないことへの憤懣がいかに強いかを示している。
しかし、同じ減税なら、所得控除より税額控除の方が効果的であり、キシノミクスの定額減税がマシだったことになる。一番良いのは、国民民主党が副次的な公約にしている給付つき税額控除である。「壁」の問題も、そもそも、所得税は「壁」でなく、まったく控除のない社会保険料が「壁」になっている。こういう問題をクリアできる定額給付制度を、とっくに英米は導入していて。日本は、政策が貧困なまま、改革が遅れている。
どうすれば良いかは、「1.8兆円の再分配による少子化の緩和と非正規の解放」で書いたとおりで、社会保険料の負担に連動させて、「給付つき税額控除」を行うものだ。低所得者にも比例負担を課す現状の無理を直すことが必要であり、結婚を難しくしている要因を除いて、財政の改善まで期待できる。理想がぼんやりしているから、政策が合理的にならず、的外れになってしまう。
もっとも、看板公約だから、この3年の物価上昇に合わせて、8%程の部分的な所得控除の引き上げはあっても良いかもしれない。しかし、7.6兆円もの減税はやり過ぎだし、もっと減税をするなら、真っ当な給付つき税額控除を組み込むべきである。財務省も、野放図になるのを防ぎ、後始末もつくよう、制度設計の知恵を出してほしい。国民民主党にしても、部分的な公約の実現の方が次の参院選への期待をつなぐことになろう。
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(図)
9月の指標が出て、7-9月期GDPは、若干のプラス成長にとどまり、もしかするとマイナスもある。消費が伸びず、設備投資はマイナスになりそうだ。ただし、消費は名目では伸びていて、物価高が足を引っ張っている。それには円安の是正が必要だが、政治は日銀の作戦を邪魔している。円安で輸出を増やせる状況でなく、円高になった方が建設資材が下がって投資を増やす方向に働くくらいである。こちらも、思いつきで口出しをしてはいかんよ。
(今日までの日経)
固定資産税収増、自治体9割。資材、値上がりゼロ 鉄鋼や木材急ブレーキ。日銀、利上げシナリオ堅持。改革本丸は社会保険料 壁で働き控え。トラック輸送力落ちず 「24年問題」対応。はがれた若者の自民支持。「年収の壁」178万円なら、国・地方7.6兆円税収減。昨年度法人所得、過去最高98兆円。
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今回の総選挙で、「手取りを増やす」を掲げ、若者の支持を得た国民党の躍進には、驚かされた。石破総理には、勝ちたければ、地方創生の枠組で低取得の若者への再分配をすべしと勧めていたわけだが、ここまで威力があるとは思わなかった。政治資金問題は然ることながら、物価高の中、賃上げでも負担増で可処分所得が上がらないことへの憤懣がいかに強いかを示している。
しかし、同じ減税なら、所得控除より税額控除の方が効果的であり、キシノミクスの定額減税がマシだったことになる。一番良いのは、国民民主党が副次的な公約にしている給付つき税額控除である。「壁」の問題も、そもそも、所得税は「壁」でなく、まったく控除のない社会保険料が「壁」になっている。こういう問題をクリアできる定額給付制度を、とっくに英米は導入していて。日本は、政策が貧困なまま、改革が遅れている。
どうすれば良いかは、「1.8兆円の再分配による少子化の緩和と非正規の解放」で書いたとおりで、社会保険料の負担に連動させて、「給付つき税額控除」を行うものだ。低所得者にも比例負担を課す現状の無理を直すことが必要であり、結婚を難しくしている要因を除いて、財政の改善まで期待できる。理想がぼんやりしているから、政策が合理的にならず、的外れになってしまう。
もっとも、看板公約だから、この3年の物価上昇に合わせて、8%程の部分的な所得控除の引き上げはあっても良いかもしれない。しかし、7.6兆円もの減税はやり過ぎだし、もっと減税をするなら、真っ当な給付つき税額控除を組み込むべきである。財務省も、野放図になるのを防ぎ、後始末もつくよう、制度設計の知恵を出してほしい。国民民主党にしても、部分的な公約の実現の方が次の参院選への期待をつなぐことになろう。
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(図)
9月の指標が出て、7-9月期GDPは、若干のプラス成長にとどまり、もしかするとマイナスもある。消費が伸びず、設備投資はマイナスになりそうだ。ただし、消費は名目では伸びていて、物価高が足を引っ張っている。それには円安の是正が必要だが、政治は日銀の作戦を邪魔している。円安で輸出を増やせる状況でなく、円高になった方が建設資材が下がって投資を増やす方向に働くくらいである。こちらも、思いつきで口出しをしてはいかんよ。
(今日までの日経)
固定資産税収増、自治体9割。資材、値上がりゼロ 鉄鋼や木材急ブレーキ。日銀、利上げシナリオ堅持。改革本丸は社会保険料 壁で働き控え。トラック輸送力落ちず 「24年問題」対応。はがれた若者の自民支持。「年収の壁」178万円なら、国・地方7.6兆円税収減。昨年度法人所得、過去最高98兆円。