経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

キシノミクス・消費確保と少子化と

2024年09月01日 | 経済(主なもの)
 7月の商業動態・小売業は、前月比+0.2と小幅ながら、4か月連続の増となり、消費は順調と言えるだろう。内容は、自動車と機械器具が伸び、ボーナス増や定額減税の効果がうかがわれる。利上げで円安が収まり、物価上昇圧力が緩む中で、消費が安定的に増えていくことが成長のカギになるので、循環を妨げない財政にすることが大切だ。金利上昇に慄き、緊縮を求めるような課題の取り違えをしてはならない。

………
 7月の鉱工業生産は前月比+2.8と、前月の-4.4からすれば物足りないが、8月の予測が+2.2なので、まずまずであろう。年初の大きな落ち込みから緩やかに回復しており、もう一歩のところに来ている。設備投資を示す資本財(除く輸送機械)は、振幅しつつも昨年後半の水準で推移し、建設財は、明確に底入れを見せている。消費の順調さを受け、生産が昨年の水準を超えていくという展開が望まれる。

 7月の労働力調査は、雇用者が前月比-15万人と、前月の増を戻す形だった。就業者は4-6月期が-2万人と停滞したが、7月もその水準と同じにとどまる。人手不足が言われる割に、就業者が増えていない。製造業や建設業がいま一つで、バラツキがある。失業率は+0.2と、久々に2.7%になった。7月の新規求人倍率は2.22倍で-0.04の低下だった。求人数は、製造業や建設業が少ない状態が続いていたが、7月は上向いた。

 8月の消費者態度指数は、前月比0.0であった。耐久財の買い時が3か月連続の上昇となったものの、雇用環境と収入の増え方が低下し、全体では横ばいという内容である。8月の東京区部の消費者物価指数は、総合が前月比+0.6と高めだった。財の7,8月の前期比は+1.6と引き続き高い。消費者態度は、物価に引きずられがちなので、円安の是正によって宥められると良いのだが。

(図)


………
 2024年6月時点での過去1年間の出生数は前年比-6.1%まで低下した。これだと合計特殊出生率は1.15人を割ってしまう。人口維持水準のわずか30%である。出生数は、わずか3年で15%も減る危機的な状況で、婚姻数は下げ止まった感が出てきたが、こんな低水準では、惨憺たるものに変わりはない。

 背景には、物価高での若い低所得層の生活苦がある。岸田政権は、支援金という負担増までしておきながら、決定的に重要な非正規の女性への育児休業給付をうやむやにした。税収が拡大し、何もしなければ、マクロ的に拙いほど緊縮が進む状況にあって、拱手するのみである。少子化は、勝つまで諦めてはならない戦いなのだが。


(今日までの日経)
 中国、止まらぬデフレ輸出。厚生年金 対象企業の範囲拡大 会社が築く「年収の壁」。出生数1〜6月、5.7%減の35万人 通年初の70万人割れも。膨張予算にデフレの残影。韓国、年金積立金が逼迫。カップル向け賃貸、7.4%高。10年債、0.890%に上昇。

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8/28の日経

2024年08月28日 | 今日の日経
 景気動向は、景気動向指数を見るのが基本だが、製造業が軸になっていることから、6月の確報値は大きな低下になり、ソフト指標の消費者態度や景気ウォッチャーとは食い違う形となっている。輸出が景気を動かしていたなごりだが、今の景気は内需の動きにかかっている。もっとも、鉱工業指数の予測値は7月が反動増になっていて、その結果が週末に出ることになる。

(図)



(今日までの日経)
 米、利下げ恩恵株に勢い 不動産などけん引。韓国の受験競争、少子化招く 中央銀行が改革を提言。料理配達員の稼働時間「週20時間以上」は5割。

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次の世代が挑む総裁選

2024年08月25日 | 経済
 岸田首相、茂木幹事長、高市元政調会長、小池都知事、細田前衆院議長には共通点があり、いずれも沖縄相を務めていた。これは偶然ではなく、小泉政権から政権交代が起こるまで、若手有力政治家の登竜門になっていたからだ。必ずしも中央を快く思わず、外交安保が交錯するところをいかに治めるか、力量が試された。今回の自民党総裁選は、そんな育成を受けた世代に、次の世代が加わり、新たな展開を見せている。
………

 今回の総裁選では、清新さが第一なのだろうが、当面の課題をどうするのかも聞きたいところだ。外交安保に差し迫ったものはなく、内政では、年金改正が次の通常国会での争点になる。大きな負担増はないものの、前提の出生率が落ちており、これで持つのかという議論になる。防戦一方では苦しく、攻め手が必要だろう。また、物価高対策と定額減税は、あっさり打切りで済ますのか。財政再建目標の一応の到達という新たな状況の下、これまでとは違う財政の舵取りが求められる。

 政策の形にすると、当面の軽減措置を財政で措置しながら、適用拡大を一気に進めるとか、非正規の女性にも育児休業給付を拡げるとかになるが、そういうテクニカルなところまで行き着けるほど、低所得の若者の支援をしたいという熱意があるかどうかになる。もっとも、小泉政権では、「自民党をぶっ壊す」として人気を博し、景気にそぐわない緊縮路線で苦境に喘ぐことになったが、かえって、「改革なくして成長なし」の痛みに耐える路線で支持されたのだから、世論とは分からないものではある。

(図)


………
 7月の消費者物価指数は、総合が前月比+0.3で、このところの傾向は変わらずである。財は+0.5、サービスは+0.1であり、サービスも少しずつであるが伸びていて、景気としては順調というところだろう。米国の利下げが明確になって、円安局面は終わりを迎えたので、財は減速しつつも、サービスは保たれるという形が理想的展開だが、そこは低所得層の可処分所得と消費の強さ次第となる。


(今日までの日経)
 総裁選、世論人気が追い風に。中国、脱炭素で「一帯一路」。米金融政策 転換点 9月利下げ。米金融所得、最高の540兆円。機械・素材、攻めのCM展開。

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8/22の日経

2024年08月22日 | 今日の日経
 「平成14年度 企業行動に関するアンケート調査報告書」がレファレンスの8月号で引用されていて、懐かしかったね。古いデータだが、経営者は、金利なんて見てなくて、需要で設備投資を判断しているというものだ。収益水準も見てるけど、平たく言えば値段で、値引きしなくても売れるかである。他社の動向も割とあるのは、儲からなくても投資しないと負けてしまうからだ。

 その後の日本は、緊縮で需要が波及しないものだから、輸出と設備投資の相関関係が強くなり、予測値がGDPの1次速報より正確なんてことまで起こった。景気を予測する立場からは、シンプル過ぎてバカバカしくなるほどである。これで金利が投資を調節するという説を信じろと言うほうが無理で、金融政策は、円安による輸出増という経路でしか効かないという結論になる。

 7月の輸出は、実質を示す数量では低下傾向が続く。でも、足下では、消費が伸びて景気は上向いてきた。輸出次第の日本にとっては、珍しい現象だ。回復局面なのに減税なんて変わったことをしたからだろう。いずれにせよ、成長率を高めるには、金利でなく、需要のビックプッシュが必要で、いつもは輸出だったものが、今回はコロナ後の名目での急増だったというわけである。

(図)



(今日までの日経)
 国債利払い、来年度10.9兆円に増加。健保財政、つかの間の改善 「扶養家族」10年で1割減。最低賃金、16都道府県1000円超す 人手を確保できなければ売り上げがあがらない。セブン&アイ、買われるリスク。米企業、労働分配率、最低水準に。「デジタル赤字」は過去5年で約2倍に。

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4-6月期GDP1次・消費主導の成長とは

2024年08月18日 | 経済
 実質成長率は年率3.1%、家計消費(除く帰属家賃)が前期比+1.2%となり、名目だと+1.8%に達した。可処分所得が増し、消費が成長したことを素直に喜びたい。雇用者報酬が伸びているのに、負担増で可処分所得を削り、消費を低迷させていた2023年から脱却したことになる。もっとも、日経は、消費主導を訴えつつ、緊縮財政を望んでおり、とことん現実が見えてない。成長には消費、消費には可処分所得が必要なのであり、よほど成長が憎いようだね。

………
 経営者が、金利でなく、売上に従って設備投資をするのは、売上を得られないと、会社の屋台骨を揺るがしかねないからである。シャープの堺液晶パネル工場の失敗例を引くまでもない。マクロ的には、投資をしたところで、政府に緊縮で売上を奪うことをされると、経営に窮してしまう。景気回復の局面で財政出動を絞るのは当然だが、程度の問題で、無闇にやれば、成長にブレーキをかけてしまう。それがデフレ期の政策の特徴であった。

 売上に従う行動は、卑近なものだが、マクロ的には、いったん低成長に陥ると、金融緩和をしても低迷が続き、なにかで高成長になると、引締めても、なかなか減速しないという困った事態になる。その実例がリーマン後の米国であり、コロナ後の米国である。もはや、長期停滞論や日本化は聞かれなくなり、その間、財政の有用性が指摘されたり、後にはやり過ぎが批判されたりした。十年一日、緊縮財政を詠唱する日本の学者とはリアルさが違う。

 今期のGDP速報では、設備投資の名目前期比は+1.9%と、驚くほど伸びた消費を上回る。GDP比率は、リーマン前やアベノミクス期のピークを超えており、過去30年なかった投資ブームとなっている。これ以上の投資促進策が必要なのかと思えるレベルだ。あとは、年率+3%の設備投資がほしいなら、+3%の消費増、可処分所得増、政府支出増を確保するという態度で経済運営をすれば良い。金利ある世界だから緊縮なんて言っている場合ではない。

(図)


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 しょせん、一つの四半期の結果に過ぎず、単に自動車生産が戻っただけの一時的なものかもしれないが、久々に成長軌道に入ったことを期待させるものになっている。何が良かったかと言えば、世論を気にして物価対策に財政を使い、自民党総裁選を前に定額減税を打ったところか。しかしながら、成長軌道の転換の結果が出た日の夕に、岸田総理は退陣を表明するに至った。余計な改革などせず、庶民の財布への聞く耳を持っていたのに、残念なことである。


(今日までの日経)
 学生、自給自足の「推し活」。社説・消費主導の経済回復を本格的な流れに。公的年金や医療保険、外国人の納付実態調査へ。投資、7~9月も景気下支え エコノミスト予測 GDP実質1.7%増。米小売売上高、7月1.0%増 市場予想を上回る。岸田首相退陣へ 自民総裁選に不出馬。

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