経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

9/11の日経

2024年09月11日 | 今日の日経
 8月の景気ウォッチャーは、前月比+0.5の49.0と3か月連続の上昇となった。先行きも+2..0と順調である。ボーナスと定額減税で可処分所得が向上して、消費が上向きなのだから、景気が良いと感じられるのは自然な流れである。加えて、円安の是正も後押しすることになろう。あとは、今一つの製造業が内需に導かれて上がって来れば、満点である。節目となる50に、あと一歩のところに漕ぎ着けた。

(図)



(今日までの日経)
 東大、授業料11万円上げ。半導体再興、4兆円不足。

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進次郎は勤労者皆保険を1年でできるのか

2024年09月08日 | 経済
 A・V・バナジーは、「成長の決め手といったものは存在しない」と言うのであるが、それもどうかと思う。突き詰めれば、「輸出が成長を加速する理由が分からない」ということであり、主流の経済学だと、理解しがたいというだけのことである。現実には、金融緩和や産業政策は設備投資を高めないのに、輸出は設備投資を高めて成長に結びつく。不合理にも、需要は経済を動かしてしまうのだ。

 経営者は、金利や政策など気にせず、外需で売上が見込めるとなれば、供給を増やすべく設備投資をする。ごく常識的な行動だ。それで投資率が高まれば、成長は加速する。これが「東アジアの奇跡」のコアの部分である。もっとも、これがどの途上国でも使える戦略ではないのは、販路をつかむのも、直接投資を呼び込むのも、そう簡単ではないからである。それでも、日本からバングラデシュまで、成功は何度も再現されている。

 先進国にしても、ドイツは、ユーロ圏に入ってマルク高をなくし、輸出を伸ばして復活を果たしている。他方、成功者でもあり、失敗者でもあるのは日本で、小泉政権下とアベノミクスでは、せっかく輸出増で成長加速のチャンスを得ながら、緊縮で内需への波及を阻害して、不発に終わっている。高度成長期において、予め税収増を見込んだ積極財政で、循環を堰き止めなかったことが実は成功のカギだったのだと、今更ながら評価できるのである。

 キシノミクスでは、2022年までは、輸出の増加もあり、コロナ後の回復が見られたが、2023年になると、輸出が一服し、負担増で可処分所得を削って消費を停滞させたことで、成長が止まってしまった。足下では、賃上げの中、物価高対策と定額減税をして、ようやく、消費が増加し始めている。これで新政権が何もしないと、一時的な政策の剥落で急速な緊縮となり、またぞろ成長を阻んでしまう。これが隠れた課題になっている。

(図)


………
 新政権は、常識的には、規模を縮小しつつも、同じ政策を繰り返すだろうが、バラマキには、大義名分が大切であり、成長に資することもアピールしたい。その一つの方法は、低所得層を対象に社会保険料の負担に応じて給付をすることだ。給付と言っても、会社に保険料を取らないでもらうだけなので、減税に近い。実は、これができると、小泉進次郎議員が公約する勤労者皆保険が実現する運びとなる。

 小泉議員は1年で実現すると言うが、零細企業の負担増が急過ぎて、せいぜい、制度改正はしても、実施は何年も先という、期待を裏切るものにしかならないだろう。ただし、給付を組み合わせるとなれば、話は別だ。具体策は前にも書いたが、小泉議員には、制度設計の能力はないと思うので、「若い低所得層に社会保険料に応じた給付をせよ」と号令を発するだけで良い。あとは上手い方法を官僚に考えさせるのである。

 政治家として大事なのは、若い低所得層に支援をすれば、思い切り働けて、結婚もできるようになり、日本は成長できるとアピールし、強い支持を獲得することである。政権発足の直後に公約の具体策作りを指示して総選挙に臨み、勝利後、経済対策の補正予算に盛り込むという段取りだ。官僚は、当面は補正で財源を手当てしつつ、適用拡大で年金の給付水準が余分に上がるのに合わせ、先々は年金制度の枠内で賄う策を持ってくるだろう。

………
 憲政史上の最年少総理は伊藤博文で、次は「お飾り」の近衛文麿であり、戦後は安倍晋三だ。第一次安倍政権は、新規国債を4.5兆円圧縮などと財政の改革をアピールしたが、景気の悪化とともに、清新さで得た高い支持率は失われ、予想もしなかった短命政権に終わった。政権にとって景気は大事である。それには財政をしっかりコンロールすることだ。黙っていると急速な緊縮になる日本では、流れに任せているとホゾを噛むことになる。


(今日までの日経)
 米雇用、急減速は回避。小泉氏、めざす最年少首相。介護現場にこそ遠隔診療。コマツが北米値上げ緩和 金利高が影、販売増優先。

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9/4の日経

2024年09月04日 | 今日の日経
 日経の松田卓也さんの『「身の丈経営」忘れたシャープの慢心 テレビ用液晶撤退』は、設備投資において、売上がいかに死活的かをよく示している。売上が見込めなければ、設備投資はできない。成長の停滞は、企業がカネを溜め込むからだと批判されるが、9/2に公表された法人企業統計で「設備投資/売上高」を見ると、アベノミクス以降は、それなりになされていることが分かる。

 また、「人件費/売上高」も、景気で上下しつつも、安定的だ。賃金が伸び悩んでいた頃も、大幅な賃上げがなされている今も、比率には大差がない。すなわち、企業は、売上に応じて、設備投資や賃上げをしているだけで、それらが十分でないとするなら、売上が伸びてないからということになる。政策的には、景気回復時において、急過ぎる緊縮をして、徹底して消費をいじめ抜いてきたので、売上が加速するはずもなかった。

 総裁選たけなわだが、成長させたいなら、産業政策や雇用政策の構造改革ではなく、安定的に財政を運営するという凡事が大切だが、走らなければ急速に緊縮が進むという構造にあって、明確な意志がなければ、容易な業ではない。もっとも、政治は、外科手術が大好きで、体調をよく把握しての内科療法は好まないから、患者のためになる医師を選びようがないところが残念なところである。

(図)



(今日までの日経)
 岸田政権、未完の脱デフレ。iPhone液晶ゼロに。中小企業、人件費6.7%増 4~6月。3D印刷をバカにするな。三越伊勢丹、店も人も「科学」で改革。技能実習生の失踪最多、昨年9753人。財政検証と年金改革の課題・就業率大幅上昇で財政改善・厚生年金の適用拡大 加速を・高齢期の就業促進策。

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キシノミクス・消費確保と少子化と

2024年09月01日 | 経済(主なもの)
 7月の商業動態・小売業は、前月比+0.2と小幅ながら、4か月連続の増となり、消費は順調と言えるだろう。内容は、自動車と機械器具が伸び、ボーナス増や定額減税の効果がうかがわれる。利上げで円安が収まり、物価上昇圧力が緩む中で、消費が安定的に増えていくことが成長のカギになるので、循環を妨げない財政にすることが大切だ。金利上昇に慄き、緊縮を求めるような課題の取り違えをしてはならない。

………
 7月の鉱工業生産は前月比+2.8と、前月の-4.4からすれば物足りないが、8月の予測が+2.2なので、まずまずであろう。年初の大きな落ち込みから緩やかに回復しており、もう一歩のところに来ている。設備投資を示す資本財(除く輸送機械)は、振幅しつつも昨年後半の水準で推移し、建設財は、明確に底入れを見せている。消費の順調さを受け、生産が昨年の水準を超えていくという展開が望まれる。

 7月の労働力調査は、雇用者が前月比-15万人と、前月の増を戻す形だった。就業者は4-6月期が-2万人と停滞したが、7月もその水準と同じにとどまる。人手不足が言われる割に、就業者が増えていない。製造業や建設業がいま一つで、バラツキがある。失業率は+0.2と、久々に2.7%になった。7月の新規求人倍率は2.22倍で-0.04の低下だった。求人数は、製造業や建設業が少ない状態が続いていたが、7月は上向いた。

 8月の消費者態度指数は、前月比0.0であった。耐久財の買い時が3か月連続の上昇となったものの、雇用環境と収入の増え方が低下し、全体では横ばいという内容である。8月の東京区部の消費者物価指数は、総合が前月比+0.6と高めだった。財の7,8月の前期比は+1.6と引き続き高い。消費者態度は、物価に引きずられがちなので、円安の是正によって宥められると良いのだが。

(図)


………
 2024年6月時点での過去1年間の出生数は前年比-6.1%まで低下した。これだと合計特殊出生率は1.15人を割ってしまう。人口維持水準のわずか30%である。出生数は、わずか3年で15%も減る危機的な状況で、婚姻数は下げ止まった感が出てきたが、こんな低水準では、惨憺たるものに変わりはない。

 背景には、物価高での若い低所得層の生活苦がある。岸田政権は、支援金という負担増までしておきながら、決定的に重要な非正規の女性への育児休業給付をうやむやにした。税収が拡大し、何もしなければ、マクロ的に拙いほど緊縮が進む状況にあって、拱手するのみである。少子化は、勝つまで諦めてはならない戦いなのだが。


(今日までの日経)
 中国、止まらぬデフレ輸出。厚生年金 対象企業の範囲拡大 会社が築く「年収の壁」。出生数1〜6月、5.7%減の35万人 通年初の70万人割れも。膨張予算にデフレの残影。韓国、年金積立金が逼迫。カップル向け賃貸、7.4%高。10年債、0.890%に上昇。

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8/28の日経

2024年08月28日 | 今日の日経
 景気動向は、景気動向指数を見るのが基本だが、製造業が軸になっていることから、6月の確報値は大きな低下になり、ソフト指標の消費者態度や景気ウォッチャーとは食い違う形となっている。輸出が景気を動かしていたなごりだが、今の景気は内需の動きにかかっている。もっとも、鉱工業指数の予測値は7月が反動増になっていて、その結果が週末に出ることになる。

(図)



(今日までの日経)
 米、利下げ恩恵株に勢い 不動産などけん引。韓国の受験競争、少子化招く 中央銀行が改革を提言。料理配達員の稼働時間「週20時間以上」は5割。

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