「賃上げには生産性向上」と、今でも言われてるんだけど、的が外れている。アベノミクスの時には難渋したが、ポストコロナでは一気に実現した。生産性が向上したかというと違うだろう。なぜ上がったのか、目の当たりにしても分からないままだ。認識の枠組を持っていないと、データを目の当たりにしても理解できないのである。ここに日本の経済政策の本当の問題がある。
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大幅な賃上げが実現したのは、売上が増大したからである。経営者の観点に立つと、売上が増えなければ、人件費は増やせないし、売上が取れるなら、人件費を使っても逃さないようにする。売上至上主義と揶揄され、利益を見てないと言われても、経営者とは、そういうものだから、仕方がない。経済理論で言えば、利益で行動しないと合理的ではないけれど、利益は、売上が立った後、結果的に付いてくるというのが、実際の感覚である。
このあたりに関して、法人企業統計で人件費/売上高を見ると、ショックで上がることはあっても、平時には、あるレベルに落ち着く。ポストコロナでも、売上が増しただけの分配はしているわけである。日経は「利益増でも賃金に回らず」としているが、法人企業統計の経常利益は、持ち株会社の利益が事業会社とダブルカウントされていて、営業利益と乖離があるため、取り扱いは要注意である。
アベノミクスでは、生産性向上のための様々な支援策が取られたが、他方で、円安と増税で消費抑制策が採られたため、売上が増えず、賃上げには無理があった。ポストコロナでは、購買力が保蔵されていて、コスト高の値上げが受け入れられ、物価高による売上の増大が実現した。売上が立てば、実質的な価値が増大したわけでなくても、賃上げはできるし、競争上、やらざるを得ない。
では、経済政策として、何をすべきなのか。生産性向上策は結構だが、消費を抑制するようなことを組み合わせてはダメだよね。円安で購買力が削がれないよう日銀が着実に利上げしているかとか、インフレの税収増で無暗に財政が締まっていないかとかを点検するのが正道ということになる。税や社会保険料の下げでなく、消費に結びつく低所得層にいかに出していくかである。
(図)
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与党大敗の予想だけど、めぼしい経済政策を立てられなかったのだから、当然のところもある。アベノミクスの三本の矢は的外れだったけど、やってる感はあって、人気を集めることができた。やってる感すらないと、わけのわからないものでも、改革っぽい言説に人々は魅入られてしまう。今が不満だから、何かしてくれというのが大衆であって、それが何だろうと無いよりマシというのが民主主義というものらしい。
(今日までの日経)
製造業あってのラピダス。夏休みの旅行、原油安の恩恵。米国はや関税収入大国。利益増でも賃金に回らず 賃上げの好循環、道半ば 労働分配率、昨年度51年ぶり低水準 内部留保は最高。地価上昇、潤う不動産税収。