ゼロ金利にしたのは1999年2月だから、今年で25年目に入ったことになる。植田日銀の課題は、とりあえず、YCCやマイナス金利をどう始末するかだが、金利のある普通の経済に、どうやって戻していくが本来的な課題である。外的要因とはいえ、消費者物価は、第二次オイルショック後から41年ぶりの上昇となり、春闘の賃上げも、デフレ前の1994年以来29年ぶりの高さになりそうで、世代を超えた転機が訪れているのかも知れない。
………
今年の春闘を見るにつれ、なぜ、今年になって賃上げができるようになったのかと、改めて思わざるを得ない。経営者の観点に立つと、やはり、売上げが伸びたからだろう。理由がコスト高の転嫁であろうと、売上げが伸びないことには、怖くて賃金を増やせない。利益還元も言われるが、ちょっとしたことで利益は消えるので、ボーナスなら良いが、賃上げをするには売上げが必要だ。
逆に、売上げを確保できているということは、人手も確保しないと維持できない。それには、賃金で世間相場に劣るわけにもいかない。当たり前と言えば、当たり前だが、当たり前のことが無理だったのが、名目成長率がゼロ、すなわち、国内の売上げが伸びないデフレ経済だった。そして、名目成長率がゼロの経済では、金利だってゼロにせざるを得ない。そこが変わろうとしている。
そもそも、ゼロ金利になったのは、1997年のハシモトデフレで需要ショックを与え、経済を総崩れにした際の対応策だった。異例の金融緩和も緊縮財政の下では無力だ。裏返せば、緊縮によって需要が盛り上がる局面で抑制していけば、いつまでもゼロ金利を続けることができる。こうした金融緩和と緊縮財政の組合せをしていたからこそ、ゼロ金利と名目ゼロ成長が続いたとも言える。
ここからの脱出は、輸出が伸び、設備投資が出て、消費が増し、賃金が上がるという波及が加速しないといけない。実は、名目においてではあるが、そうなりつつある。あとは、財政が、これでひと安心とばかりに、退いてしまわなければ良い。いつもなら、コロナ後の補正予算の剥落で緊縮になるところだが、物価高対策、防衛予算増、少子化対策が採られ、パターンが崩れるかもしれない状況だ。
(図)

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そこで、金融政策である。物価は上がった、賃金も上がる。あとは、財政がどのくらい波及にブレーキをかけるかを計量しつつ、YCC、マイナス金利のやめ時を探って、ゼロ金利から脱しなければならない。公示地価が15年ぶりの上昇になっていて、油断はできない。そして、ここに来て、米欧で金融不安が起こり、円高に振れて、舵取りは難しくなった。
チャンスがあったのに、黒田総裁が後始末をしないで退任するのは残念だった。過去には、利上げが必要だったのに、ブラックマンデーがあって遅れたなんてこともあった。上手く舵取りをすると、事は起こらず、手腕を褒められたりはしないもの。アベノミクスでバブルにならなかったのは、緊縮をしてくれたからだが、今度はどうか。
(今日までの日経)
日本の賃金「時給」は増加。米の中小銀、預金流出最大の15兆円。政策頼みの物価高 抑制策なければ4.3%。円上昇、一時129円台 米欧銀行不安で。増える非正規、日本が突出。「生涯子供なし」私が感じた壁 両立困難・奨学金返済…。公示地価15年ぶり上昇率 全国平均1.6%。物価高支援、累計15兆円。
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今年の春闘を見るにつれ、なぜ、今年になって賃上げができるようになったのかと、改めて思わざるを得ない。経営者の観点に立つと、やはり、売上げが伸びたからだろう。理由がコスト高の転嫁であろうと、売上げが伸びないことには、怖くて賃金を増やせない。利益還元も言われるが、ちょっとしたことで利益は消えるので、ボーナスなら良いが、賃上げをするには売上げが必要だ。
逆に、売上げを確保できているということは、人手も確保しないと維持できない。それには、賃金で世間相場に劣るわけにもいかない。当たり前と言えば、当たり前だが、当たり前のことが無理だったのが、名目成長率がゼロ、すなわち、国内の売上げが伸びないデフレ経済だった。そして、名目成長率がゼロの経済では、金利だってゼロにせざるを得ない。そこが変わろうとしている。
そもそも、ゼロ金利になったのは、1997年のハシモトデフレで需要ショックを与え、経済を総崩れにした際の対応策だった。異例の金融緩和も緊縮財政の下では無力だ。裏返せば、緊縮によって需要が盛り上がる局面で抑制していけば、いつまでもゼロ金利を続けることができる。こうした金融緩和と緊縮財政の組合せをしていたからこそ、ゼロ金利と名目ゼロ成長が続いたとも言える。
ここからの脱出は、輸出が伸び、設備投資が出て、消費が増し、賃金が上がるという波及が加速しないといけない。実は、名目においてではあるが、そうなりつつある。あとは、財政が、これでひと安心とばかりに、退いてしまわなければ良い。いつもなら、コロナ後の補正予算の剥落で緊縮になるところだが、物価高対策、防衛予算増、少子化対策が採られ、パターンが崩れるかもしれない状況だ。
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そこで、金融政策である。物価は上がった、賃金も上がる。あとは、財政がどのくらい波及にブレーキをかけるかを計量しつつ、YCC、マイナス金利のやめ時を探って、ゼロ金利から脱しなければならない。公示地価が15年ぶりの上昇になっていて、油断はできない。そして、ここに来て、米欧で金融不安が起こり、円高に振れて、舵取りは難しくなった。
チャンスがあったのに、黒田総裁が後始末をしないで退任するのは残念だった。過去には、利上げが必要だったのに、ブラックマンデーがあって遅れたなんてこともあった。上手く舵取りをすると、事は起こらず、手腕を褒められたりはしないもの。アベノミクスでバブルにならなかったのは、緊縮をしてくれたからだが、今度はどうか。
(今日までの日経)
日本の賃金「時給」は増加。米の中小銀、預金流出最大の15兆円。政策頼みの物価高 抑制策なければ4.3%。円上昇、一時129円台 米欧銀行不安で。増える非正規、日本が突出。「生涯子供なし」私が感じた壁 両立困難・奨学金返済…。公示地価15年ぶり上昇率 全国平均1.6%。物価高支援、累計15兆円。