経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

がんばろう日経

2011年04月13日 | 経済
 震災の後、日経が色あせたように感じる。震災前は、米国の量的緩和、EUの財政危機、中国のインフレと、日本経済の先行きを読むにも、国際的な政治経済の情報が欠かせなかったからね。こういうものは、読売や朝日では足りない。でも今は、国内の震災後の舵取りをどうするかが再重要になった。

 もともと日経は社会部が手薄なので、被災地の様子を十分に報道できないのは仕方のない部分もある。それに、今回の補正予算の動きは「政治主導」が強かったようで、他紙に比べて半歩遅く、踏み込み不足の感もある。政治部も頑張ってはいるようなんだが、物足りなさは否めない。

 今回の震災報道で思うのは、危機にあっては、編集方針を鋭いものにする必要があるのではないかということだ。取材能力には限りがあるわけで、何が重要かを方向づけねばならない。それは論説にも関わっていて、論説が何を重視しているかで左右されると思われる。まあ、記者は社説を読む暇もなかったりするがね。

 兵法では「敵を知り己を知らば、百戦危うからず」というが、今回の震災の場合、「敵」は被害状況と回復の見通し、「己」はどれだけの財政支出ができるか、どのような対応策を案出できるかであろう。それも、経済紙らしい切り口で迫る必要がある。

 その点、内閣府のマクロ的手法で推計した16~20兆円という被害想定に、いつまでも頼るのはまずい。本コラムでは地元紙まで見て各県の積み上げの数字を探している。先日の農水省発表の1.2兆円、国交相の発表の1.5兆円を踏まえると、内閣府の想定ですら疑わしく、まして、世間の騒ぎぶりはひどいものだ。

 他方、東北地方の経済の回復ぶりは急速だ。むろん、機軸は、漁業や農業ではなく、東北道沿いの製造業である。地元紙を見ると、被災当初の見通しが前倒しされているようである。こうした動きを、日経は、総体的に、繰り返し報道してほしい。取材拠点が乏しいのだから、地元紙のニュースを買うのも手だと思う。

 また、電力については、一つひとつの火力発電所の被害状況と回復状況を徹底的に報道してほしい。情報の乏しさから、筆者は業界紙まであさっている状況だ。ここが経済回復のカギになるわけで、日経が一般紙並みというのでは不十分である。「電力不足」の連載も始まったが、節電の事例を集めるだけでなく、パチンコや自販機ではないが、目標達成に何を捨てれば良いかという戦略的な観点からの取材も必要だ。

 「己」の部分では、どのくらいの赤字国債なら許されるかという観点が必要である。危機にあってはギリギリの対応が必要なのであり、「ムダ使いをやめて、復興に回すべし」といった方向性だけの議論では足りない。震災ショックによる景気への下押し圧力の大きさへの認識にも甘さを感じる。マクロ経済への見識の深さがが問われるところだ。

 対応策については、これだけ漁業の町が被害を受けているのだから、将来の漁業の在り方について、専門家を見つけて意見を掲載するようにしてほしい。政府の復興構想会議が組織されたが、都市問題の専門家が並び、漁業の専門家は部会に1人だけである。世論の焦点にはズレがあるように感じられてならない。

 危機にあっては、対応策の「知恵」を探し出すのことが重要になる。復興構想会議は、学者中心で、財務省以外の官僚OBは排除されたようだが、現実的な策は、むしろ、財務省以外の官庁にある。読売ですまないが、元自治事務次官の松本英昭さんが提案する、津波で被災した土地を市町村が借り上げ、地代で生活を支援するとともに、計画的な復興を担保するという方法は良案ではないか。

 復興のアイデアには、「山を削って移転する」といった安易なものがあるが、それが簡単ならば、とっくにしていたことで、なぜ、できなかったのかの制度的な問題を掘り下げる必要がある。アイデアの中には、「人工地盤を作る」といった、コストを考えない夢想的なものもあるだけに、現実的な策を探りたい。

 今日は、普段の日経の紙面批評から少し角度を変え、報道されるべきものは何かを考えることにした。危機にあっては「集中と選択」が必要で、それは報道機関も同様だろう。広告が激減しているのも気がかりだし、用紙調達から、印刷、配達まで、日経自身も大変なことは分かっているが、一層の奮起を期待したい。「がんばろう日本」だ。

(今日の日経)
 危機対応融資、部品・電力不足も支援。電力不足・自主性頼みに危うさ。事故初期に大量放出、2号機損傷で。首相の決意・何も言っていないに等しい。キャンセル56万人超。年後半プラス成長に・民間予測平均。利益確定で円買い。北京住宅価格1年7か月ぶり下落。ルネサス、再開前倒し、亜鉛大手も出揃う。家庭向け大型蓄電池に引き合い。経済教室・民間資金・柳川範之。心臓は同じ10代に。

※「年後半回復」なんて甘いと思うね、復興需要と輸出拡大に期待しすぎ。中国の不動産バブルも転換点に到達した。欧州もポルトガルがギブアップ、利上げにスペインの不動産は耐えられるか。同じ少年に命が引き継がれたことが救いだ。
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