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経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・危機は未だ去らず

2014年11月30日 | 経済(主なもの)
 景気ウォッチャー調査が大きく下がっていたので心配していたら、案の定、10月の鉱工業生産指数は、消費財の生産が前月比-1.4と、再び落ちていた。これは、若干だが、7-9月期の平均をも下回る。8月に崩れたような切迫感はないものの、4月の消費増税のインパクトは、未だ収束していない。こうして景況が後退する中で、アベノミクスは審判の時を迎えることになる。

………
 今回の鉱工業生産は、全体では2か月連続の前月比増であったから、一般的な評価では、「持ち直し」というところだろう。ここで注意が必要なのは、消費財と投資財で動きが分かれていることだ。図で分かるように、消費財が低下する中で、投資財が大きく伸びており、これが相殺する形でプラスになっているのである。

 日経が指摘しているとおり、業種もまちまちであり、増産6と減産9と、むしろ減産が多い。こうした場合は、実際に7月から8月にあったように、特定業種の動き次第で、投資財が大きく下振れする可能性を頭に入れておく必要がある。むろん、そうなれば、鉱工業生産が再び底を割ることも、ないとは言えない。

 消費財の動きは弱く、在庫を前月比-3.0にはしたが、出荷が-1.1と下げる中、それを上回る減産で達成しており、在庫水準は109.9と高いままである。1997年の増税の際は、10月に在庫増が一服を見せたものの、11月以降も出荷が崩れて行き、更なる減産へと追い込まれた。出荷が今の底バイを脱するまでは、まだまだ安心できないのである。

(図)鉱工業生産指数


………
 一方、消費だが、家計調査の結果は、かなり読み難いものだった。二人以上世帯の季節調整済指数は、前月比+0.9と高めの伸びで、こちらも2か月連続の上昇だから、底を打ったようにも見えるが、勤労者世帯の実質実収入が跳ねたことに影響されたものである。家計調査では、こういう振れは、ままあることで、単月の動きで判断するのは早計だ。来月は反動が出るのではないか。

 商業動態統計は、季調値を見ると、先月に指摘したとおり、小売業に反動減が出た。10月は卸売業も下げたこともあり、まだ両者の乖離は大きい。業態ごとの季調値で分かるように、底バイないし極めて緩やかな増加と見るべきであろう。東大売上高指数では、11月は低調に推移しており、傾向に変化はないと思われる。

 雇用については、10月は指標により、まちまちであった。労働力調査は、失業率は低下したが、就業者数の季調値は減少し、一進一退の状況である。職業紹介状況では、有効求人倍率が改善したものの、新規求人数の前月比は低下するという内容だった。雇用は勢いを失い、停滞している状況にあると言えよう。

………
 さて、今週の日経ビジネスは、「景気失速の主犯」という目を引くタイトルだった。内容も、実は、物価は下げ、採用が鈍っていると、最新の景気状況を鋭く指摘している。また、外需に幻想を持ってはならないとする点も納得できるところだ。本コラムの読者には、違和感なく受け入れられる内容だと思う。

 ところが、「どうすれば」という打開策については、いつもの成長戦略なんだね。国に頼らず、「民」がかんばらねばという心意気は買うにしても、一気の消費増税でGDPの1.5%もの所得を家計から抜かれたら、個々の努力では、どうにもなるまい。マクロの戦略の誤りを、ミクロの戦術で打開できると考えてはいけない。

 大きな困難に直面すると、一気の打開策が必要と信じがちだが、こうした焦りは、いらぬ危険を犯させ、かえって事態を悪化させるものだ。「薬は苦ければ効く」というものではない。基本に忠実に、所得増の範囲内で着実に負担を増やす経済運営ができていれば、何事もなく成長は確保されていただろう。 

………
 選挙が始まり、安倍首相は「この道しかない」と絶叫しているが、市井の人々にとっては、それがどのような中身なのか、よくは分からないだろう。分かるのは、自分にとっての景気が今までより良くなったかどうかだけである。選挙とは、政策選択というより、実績評価が実態であるように思う。 

 そうした中、景気ウォッチャー調査が大きく下げているのは、一つの不安要素であろう。思えば、2007年の参院選の敗北で、第一次安倍政権が崩壊したときも、そうであったからだ。政治評論家の弁によれば、今回の選挙で与党が負ける要素はないという話だが、最新の結果が出る12/8が待たれるところである。


(昨日の日経)
 原油安が景気に追い風。コンビにも訪日客に照準。1300万人が消費下支え。10月鉱工業生産0.2%上昇、生産持ち直し二極化。反動に地域差・地域経済動向。ロシア通貨・株急落。

(今日の日経)
 防衛装備を国際共同開発。地方移転の企業に税優遇。台湾与党国民党が大敗。読書・平成期の家族問題、競争の科学、スイスの凄い競争力。
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11/28の日経

2014年11月28日 | 今日の日経
 昨日のダイヤモンドO.L.で、内閣官房参与の本田先生が語っていた、2017年の消費再増税の見方が興味深かった。要約すると「その時のインフレ率は2%程度で、2%の増税が行われると、プラス1.4%で3.4%のインフレ率。実質賃金をマイナスにしないためには、3.4%の名目賃金の上昇率が必要だが、歴史的に見ても実現するのは、なかなか高いハードル」としている。これはリーズナブルな見方だろう。

 続けて、本田先生は、「アベノミクス効果で、少しマイナスでも克服できる」とするのだが、普通に考えれば、1%ずつの増税に刻めば良いだけのことで、それだけ2%の増税には難があるということだ。こうしたところから、「2年後に無条件で2%アップ」としたのは、財政当局との妥協の産物だったことがうかがえる。情けないことだが、無理のない経済運営をするというのは、日本では、なかなか高いハードルのようだ。


(今日の日経)
 トヨタ系がブレーキ統合。原油が一時70ドル割れ。点検アベノミクス・アクセルとブレーキを同時に踏んだ・滝田洋一。公約出そろう・野党は再増税の時期を明記せず。東南ア経済に減速感。藤沢で環境都市が始動。車国内生産10月7%減。
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11/27の日経

2014年11月27日 | 今日の日経
 1997年の消費増税後、経済は悲惨なことになってしまったが、翌年の参院選では、与党の自民党は直前まで堅調だった。こんなに経済を酷くしても、国民は優しいんだなと、思っていたら、結果は大敗であった。本当に、選挙は分からないものである。

 明日は、投票前最後の月次統計発表日だ。景気ウォッチャーは大きく下げたし、小売りの販売指標が前月より悪いので、いささか心配である。鉱工業生産が底割れするようなことがなければ良いのだが。

 今月の月例経済は、「消費などに弱さが見られるが、緩やかな回復基調が続いている」として、景気判断を据え置いたが、GDPの6割を占める消費が弱いとなると、「基調」とは何かと思ってしまう。そのうち、国民の景気判断は一票で下されるということかもしれない。


(一昨日の日経)
 新車販売が新興国で減速。小さな一番が雇用生む。低年金者対策(5600億円)は先送り。

(昨日の日経)
 産学官、原発廃炉へ人材。追加緩和で真っ二つ、日銀執行部が押し切る。11月月例・景気判断据え置きも、消費などに弱さ、有効求人に一服。OECD・日本の成長率を2014年0.4%、2015年0.8%に。学童、夜間割高でも利用。外食売上高10月1.2%減。

(今日の日経)
 中国が成長目標下げへ。介護費の賃上げ除き抑制。国の税収17年ぶり高水準、上ブレは1兆円台半ば、海外配当には課税されず。10年債0.43%と1年8か月ぶり低金利。日銀剰余金5878億円、国債利子収入増える。
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「私、失敗は繰り返さないので」

2014年11月24日 | 経済
 長いこと仕事をしていると、同じ失敗を繰り返さない人というのは、極めて優秀な部類に入ることが分かる。残念ながら、凡人は何度もしくじってからでないと覚えないものだし、反対に、目立った失敗のない人は、挑戦を厭う人だったりする。経済運営も、人の業である以上、同じことではあるまいか。

………
 アベノミクスは、2012年に続き、2013年を1.5%成長にしたのだから、ここまでは、まあ、成功と言って良いだろう。他方、2014年度はマイナス成長に突っ込むのだから、こちらは明らかに失敗だ。安倍首相は「アベノミクス解散」として、その評価を問うのだから、アベノミクスには一気の消費増税が含まれるのかを、明確に説明してもらいたいと思う。

 仮に、「三本の矢」は消費増税を成功させるための手段だとするのなら、アベノミクスは失敗としか言いようがない。他方、消費増税は、政策の継続性のために、困難を承知で挑んだものとするならば、まだ評価もできよう。もっとも、2年後には無条件で上げるとするのでは、反省がないとしか見られないだろうが。

 今日の日経が伝える「アベノミクス評価せず51%」というのは、一気の消費増税で、生活水準が低下したことへの素直な反応ではないか。成長の範囲内で増税するという経済運営の鉄則を踏み外した結果である。そうかといって、増税前までは、成長を持続させた実績の余韻もあるだけに、自民は一定の支持を得ているということだろう。

………
 アベノミクスには、いくつかの批判がある。一つは格差拡大だが、景気回復の初期には仕方のないところがある。本来は、景気が拡大し、労働需給が引き締まり、賃金が上昇していって、格差は是正されていく。問題は、そうなる前に、一気の消費増税で好循環の芽を摘んでしまったことである。

 金融緩和のやり過ぎという批判も、円高の是正を導いた昨年の異次元緩和までは、なかなか功績を否定しがたいのではないか。せいぜい功罪半ばするというところだろう。しかし、10月末の異次元緩和第二弾はまったく余計で、一気の消費増税をしていなければ無用のものであった。これで「出口」を一層難しくする必要はなかったのである。

 成長戦略への批判も、何かを大きく進展させていたら、一気の消費増税をカバーできたという人は居るまい。むしろ、大規模な投資減税や法人減税の前倒しがほとんど効果を上げていない結果を真摯に受けとめ、経験を活かすべきである。また、今更ながら、経済対策として、低所得層への手当てをしておけば良かったとなったことも忘れるべきではない。

………
 結局、一気の消費増税という度外れたことをしていなければ、批判も少なくて済んだのである。一体、何が失敗だったのか、特に、日経を始めとする新聞は、よくよく明らかにしてもらいたいと思う。そうして、社会の木鐸の役割を果たし、同じ過ちを繰り返させないことで、政治も政策も進歩して行くのではないだろうか。

(今日の日経)
 企業秘密漏洩は未遂も刑罰。投票先は自民35%、民主9%、アベノミクス評価せず51%。百貨店と市役所が同居。エコノ・経済予測に平均の呪縛。

※テレビ好きの若手からの要望を受け「11/24の日経」から改題(12/7)
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凄まじい消費増税の破壊力

2014年11月23日 | 経済
 一気の消費増税の問題性を疑わず、増税を上手くこなせるか否かが総選挙の争点だとは、残念だね。「異次元緩和もやった、5兆円の補正予算も組んだ、投資・法人減税の成長戦略も打った。それでも、一気の消費増税という愚策は、どうにもならなかった」との認識には、なかなか至らないものらしい。

 この認識に立てば、2年後の2%アップも無理筋となるし、金融緩和の行き過ぎや成長戦略の乏しさを批判することは、何の解決にもならない。一気の消費増税で、リーマンショックや大震災を超える過去最大級の打撃を経済に与え、1年前よりGDPを1.2%も縮小させてしまったのだが、そういう事実は、まったく目に入らないようだ。

 それほどまでに、「危機的な財政状況なのだから、いかなる緊縮も正しいはず」という信念は強固なのだろう。正しさにも程度の問題があるものを、この信念の下では、どんな悲惨な現実も、避けられているはずの財政破綻と比較すれば、取るに足らないものと感じられ、犠牲者すら、捧げられるべき貴き生け贄にしか見なされないのである。

………
 二期連続のマイナスという7-9月期GDP速報が出たことにより、民間調査機関の2014年度成長率の予測は、軒並みマイナス0%台の半ばまで低下した。的確な見通しで実績のある第一生命の新家さんの予測だと、-0.8%となっている。これに対して、政府の経済見通しは、1月の時点で1.4%、7月に1.2%だったから、実に2%もの開きがある。

 もし、増税の予算案を国会に提出した折、政府が正確な計量を行い、「財政は好転しますが、成長率は-0.8%になります」としていたら、果たして通っていただろうか。前年度の2%台の成長率よりは低くとも、それなりの成長率が見込まれていたから、納得が得られたのであり、初めからマイナス成長では、冗談じゃないと、与党でさえ許さなかっただろう。

 それは当然である。政府債務の信用を裏打ちしているのは、その国の経済であり、政府の取り分が多少増えたにしても、大本の経済を縮小させてしまったら、逆に信用が揺らぎかねないからだ。欧州危機において、イタリアが基礎的財政収支が均衡しているにもかかわらず、国債金利が高騰したのは、成長力を疑われたからである。

 財政再建派の中には、「増税をしたのだから、多少、景気が悪くなるのは当たり前」とか、「景気を心配していたら、いつまで経っても増税できない」とか言う人もいるが、経済を縮小させてまで、財政の取り分を多くすることの無意味さを分かってほしい。成長を失わずに増税するというのは、経済運営の重要な評価点なのだから、まじめに考えてもらいたい。

………
 それでは、政府の経済見通しの1.2%を、約束どおり実現するには、どのくらいの経済対策が必要だったのか。2%の差を埋めるには、執行可能性はともかく、5.5兆円だった補正予算は、16.1兆円でなければならなかった。8.1兆円の消費増税のために、それに倍するバラマキが必要とは、バカバカしい限りで、いかに一気の消費増税が愚策かが分かろう。

 16.1兆円とは、リーマン時の2009年度補正の14兆円、大震災時の2011年度3次補正の12兆円をも上回る。今回の消費増税は、リーマンや大震災を超える経済ショックになったのだから、経済対策も、これに相応しい巨大さになる。増税が見送られるのは、リーマンや大震災並みの異変が起こった場合とされていたが、これを自分で起こしていたのだから、皮肉なものである。

 2年後の2%アップにしても、補正予算は10兆円が必要になるだろう。むろん、更なる異次元緩和や重ねての大規模な企業減税も、同様に欠かせない。今回の消費増税で得られた教訓は、消費増税をこなすのは尋常な技ではないということだ。そして、このことは、自然実験の結果として、誰もが知るところとなっている。

 すなわち、2年後、政府が今回並みの経済対策で済まそうとするならば、当然、「なぜ、マイナス成長に転落しないのか」という批判が出ることになる。民間調査機関も、ごく普通に、マイナス成長の予測を出して来る。まっとうなら、今回のマイナス成長を再現できない経済モデルを持ち続けたりはしないからだ。

 結局、2%アップの再増税は、よほど景気が過熱していない限り、急ブレーキと猛アクセルを同時に踏み込む愚策としか評価されまい。こういう愚策を、必ず実行しますと約束したところで、マーケットが評価するわけはない。むしろ、始末に困るような硬直的な方針は、実行可能性に疑念を生むだけである。

………
 今回、財政当局は、再増税の延期を受け入れる代わり、安倍首相に景気配慮条項の削除を呑ませたと聞く。彼らは、政治力には長けていても、経済を計量的に見る能力には乏しいのだろう。そうでなければ、実行に難のある条件を敢えて付けようとするはずがない。たぶん、経済運営を誤った上に、無能さをさらしている自覚すらないのではないか。

 誤解のないように言っておくが、筆者は、社会保障を維持・強化するために、消費増税は不可欠だと考えている。大事なのは、その凄まじい破壊力をよく認識し、成長を阻害しないよう、1%ずつに刻むなどの知恵を絞り、安全かつ着実に実行できる工夫をすることである。政治問題だと勘違いし、上げられる時に押し込むでは、とても話にならない。

 第一次安倍政権のときには、苦境に陥ると、その浮揚のために、足を引っ張った社保庁が血祭りに上げられた。好調だったアベノミクスは、一気の消費増税を許したがために、暗転することとなった。ここで景気が踏み止まってくれれば良いが、後退によって民心が離れたりすると、また同じ様なことが起こるのではないか。歴史は繰り返すのである。


(昨日の日経)
 衆院解散、アベノミクス争点。中国が利下げ2年4か月ぶり。小売り前年割れへ・14年の既存店販売額。

(今日の日経)
 再生エネ買い取り再開へ。長野で震度6弱。社説・経済再生へ「アメ」より改革案を競え。両国高・生徒が勝手に教えあう教育。


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11/21の日経

2014年11月21日 | 今日の日経
 今日の日経の「経済対策ずれる思惑」では、増税延期の内幕が描かれている。内閣府は10月半ばに政権幹部には「景気は厳しい」との見方を伝えていたようだ。また、ロイターによれば、8月鉱工業生産で、強気だった政策担当幹部の顔色が変わったらしい。表面的には、天気のせいと言いつつ、本音は別だったわけである。

 本コラムでは、8月指標が出た直後の10/5に、「血の気が引くような内容だったろう」としていたから、正確な情勢分析を読者にお届けできていたと思う。その後、9月指標は小康だったが、油断はできない。11/18改定の消費総合指数は、下方修正によって、9月は6月の水準と変わらなくなっている。10月は、百貨店、コンビニ、スーパーとも、あまり良くない。

 どうも、内閣府幹部は「経済対策が先決。解散どころではない」としているらしいね。無理もあるまい。だから、本コラムは、8/3に臨時国会で「敗戦処理」をせよと言っていたのに。解散がなくても、補正は年明けの通常国会とされていたのだから、何を今更だ。読みどおりなのに、ちっともうれしくない。貿易統計で輸出が持ち直したのと原油安は救いかな。

(今日の日経)
 利益の大半を株主配分、配分額10兆円に。東芝・人口光合成で世界最高。子育ては増税前も充実策。輸出持ち直しの兆し、前月比2.2%増、現地価格下げる。10月コンビニ1.1%減、スーパー1.9%減。
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11/19の日経

2014年11月19日 | 今日の日経
 まあ、一個ずつしか進歩できないということだね、政治というのは。バンザイ突撃のような再増税を回避できたのだから、良しとせねばなるまい。「アベノミクスで成果。だけど、一気の3%消費増税は失敗。でも、2年後には景気に関係なく2%上げます」というのでは、訳がわからない。

 結局、財政当局との妥協によるもので、無条件増税を受諾することで、体制護持に協力させるという、あまり胸を張れない取引なのだろう。もし、一気増税路線からの離脱を宣言していれば、1997年以来の転換を実現するものであり、池田勇人の高度成長と並ぶ、エポック・メイキングになるところだった。世界史的にも、緊縮主義の誤謬を証明し、政策を進歩させた先例として評価されただろう。

 合理性に立脚すれは、物価や賃金の上昇の範囲内で、消費増税を実施するのは当然のことである。景気に関係なく上げるよう縛るのは、政治に知性を認めない考え方であり、不合理なことをする政治には、不合理なルールを押し付けるしかないという思想なのだ。むろん、目指すべきは、合理性に従った政治ができるよう、制度や意識を育てていくことである。

 たとえ、大義が訳が分からないものでも、選挙の帰趨は相対的なものであるから、より優れた経済思想を示す者がいなければ、勝ててしまう。日本にはポピュリズム的な勢力はあっても、欧米のようなリベラルな政策で対抗できるところはないから、十分なのかもしれない。競争が乏しければ、進歩の歩みが遅いのも致し方ないところであろう。

(今日の日経)
 21日解散、増税延期、10%17年4月「再延期」せず。地方に生活支援交付金、数千億円規模で。欧米、増税先送りに理解。

※:景気条項がなくても、2%アップは経済的にハードルが高いと見なされ、結局はマーケットからも疑念を持たれてしまう。1%ずつなら、無理がないから、政治もスキップさせるインセンティブが働かない。「政治的にチャンスがあれば少しでも高く」という財政当局の愚かな考えは、いつになったら改まるのやら。

※第一生命の新家さんの2014年度の成長率予測は、とうとう-0.8%になったよ。民間エコノミストのコンセンサスもマイナス圏に下方修正されるだろう。この教訓を踏まえて、2%アップをどう評価すべきか。「天気の良い年に増税せよ」ではダメだよ。経済予測にも進歩は必要だね。
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争点は一気増税路線からの離脱

2014年11月18日 | 経済
 異次元緩和もやった、5兆円の補正予算も組んだ、投資・法人減税の成長戦略も打った。だが、一気の消費増税という愚策は、どうにもならなかった。これが率直な見方だろう。二期連続のマイナス成長を前にしても、まだ目が覚めないのか。

 したがって、総選挙の争点は「一気増税路線からの離脱」になる。一気増税の惨憺たる結果を直視できず、一気増税に未練を残す勢力を、民意に問うことで、オーバーライドするのだ。裏返せば、「上げないリスク」について、国民のマンデートを得るのが目的となる。

 ここで、「2017年4月には無条件で2%上げることにする」という悪魔の囁きに耳を貸してはならない。これを許せば、何が失敗の原因で、誰に責任があるのか分からなくなる。過激な緊縮財政を押し付けた者に、過ちを思い知らせることが欠かせまい。

 「2%なら景気条項付き。削るなら2017と19年に1%ずつ」である。1%であれば、経済対策でカバーが効くし、2年毎にすると、年1兆円の社会保障費の自然増と相まって、緩やかな緊縮で済むからだ。急進的な財政再建からの決別こそ、日本の将来を決める。

………
 今回の7-9月期GDPは、予想し得る下限の数字だった。筆者は、11/13に、最弱気かつ更なる下ブレもありとする第一生命の新家さんの予想を紹介したが、これがほぼ的中した。在庫減は、2次速報で見直され、より予想に近づくこともあろう。新家さん、さすがだよ。詳しくは、今日の日経3面の説明が良く出来ているので、そちらに譲る。 

 GDPの解説は巷に溢れているので、一つだけポイントを言っておくと、7-9月期の実質成長率は、原系列の前年同期比で-1.2%になったことだ。すなわち、消費増税を潜り抜けた結果、1年前と比べて、経済は縮み、国民は貧しくなったということである。パイを小さくしてまで、財政は家計から所得を奪い取ってしまった。これが腰折れでないなら、何を言う。

 増税前の前年同期比は、2013年の1-3月期から順に、+0.1%、+1.2%、+2.3%、+2.5%と加速してきていたから、アベノミクスは成功していたと言えるだろう。ただ失敗は、緩和も補正も減税もあるからと、財政タカ派に惑わされ、一気の消費増税という逆噴射を許してしまったことにある。正しく総括するならば、総選挙での勝利は堅い。

(今日の日経)
 景気足踏み、回復うかがう、消費に足元は薄日も・GDP2期連続マイナス成長。日経平均517円安。在庫急減かく乱・民間予測の想定外。経済対策2~3兆円。点検会合・増税賛成の声多く。7-9月消費関連企業調査・売上高45%が下振れ。

※これだけ経済が悪いと、増税先送り法は1週間で通すから、総選挙は回避し、早く補正予算を組んでくれという声が出そうなものだ。今月末の10月指標次第で、小康から暗転しかねない危うい局面なのだがね。まあ、政治のことはよく分からんよ。もっとも、点検会合の有識者でさえ、危機感のある者は少ないようだしね。
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アベノミクス・解散総選挙へ

2014年11月16日 | 経済
 消費再増税は、解散総選挙をもって、阻止される。10日前には、まさかと思われていたことが現実となった。政経エリートの間では、消費低迷を見てもなお、再増税やむなしが大勢だったから、民意で押し切るという判断なのだろう。増税は日本経済の腰を折り、再増税は首を折るところだった。災厄を未然に防いだ者は評価されぬのが世の常ではあるが、意義は小さくない。
………

 日本経済は、2012年、2013年と1.5%成長を遂げてきた。この状況で、GDPの1.5%に相当する一気の消費増税を実施し、家計から所得を抜いたら、どうなるか。おそらく、学部の1年生なら、あっさり、ゼロ成長と答えるだろう。しかし、政府の年度の経済見通しは1.2%成長、日銀の年初のそれは1.4%であった。民間エコノミストでさえ、「ゼロ回答」は、ほとんどいなかった。

 これが、政経エリートの集団幻想でなくて、何だろうか。読み間違えの最大の原因は、外需が伸びなかったことだ。それは、民間の「予想屋」なら許されるが、政策担当者にはあってはならない過ちである。外需は相手のあることであって、アテが外れたら瓦解するような経済運営は、本来、行ってはならないものである。

 もっとも、政府見通しでは、外需寄与度は0.1しかなく、どうして、それほど内需に強気なのか、理解しがたかった。強気を支えたのは設備投資であり、これで所得と消費も保たれると考えたのだろう。現実には、大規模な投資減税に加え、法人減税の前倒しまでしたのに、7-9月期の機械受注は、前年同期からほとんど増えておらず、来期はマイナス予想である。

 経済学の教科書を鵜呑みにするエリートにとって、企業減税の効果は絶対なのだろうが、世の経営者は、需要が乏しい中で投資する危険は犯さない。今年度、円高に恵まれた製造業は増益でも、非製造業は減益の見通しである。スーパーや、セブン以外のコンビニが投資計画を下方修正するのは、ごく当たり前の行動だ。

 それでも、内閣官房参与の浜田先生は、大幅な法人減税があれば、再増税は可能と言い続けてきた。その宗旨替えをしたのは、11/4の再増税に関する点検会合の前日である。10/31に異次元緩和第2弾もあったのに、「おやっ」と思ったが、おそらく、この時点で、官邸は、先送りと解散総選挙の判断を固めていたのだろう。そして、首相の外遊出発後の11/8に読売一面トップ記事となる。

………
 再増税の見送りは、アベノミクスの失敗だとする向きもあるようだ。それでは、どうすれば良かったのか。5兆円の補正予算では足りなかったのか。確かに、5兆円では、前年度の予算規模を保つだけであり、増税の悪影響を相殺する力はなかった。前年度との予算規模の比較もしないで、効果に期待するエコノミストも居たことは、筆者も情けない思いがした。

 とは言え、10兆円の補正予算が組まれていたとして、とても執行できなかったろう。公共事業の前倒しで、4-6月期GDPを浮上させる試みは、不発に終わっている。そもそも、消費増税額を上回るようなバラマキは、増税の意義を疑われかねない。結局、一気に消費税を3%も上げるという戦略は、余りに愚劣で、戦術で補うことなど不能だったのである。そんな戦略に縛りをかけた人々は、反省が必要だろう。

 現下の経済情勢は、一刻の猶予もならない事態であり、再増税を先送りするために、色々と条件を満たしていくだけの余裕はない。惨憺たる消費の有様を前にしても、未だに目が覚めず、再増税の先送りが当然視されない政治状況に対して、むしろ、解散総選挙は欠かせぬものとなったと見るべきではないか。

 足元では、増税延期を先取りし、株価が高騰しているが、万一、9月に一息ついた鉱工業生産が10月に再び悪化するようなことがあれば、がらりと雰囲気が変わりかねない。10月の景気ウォッチャー調査の大きな落込みからして、それは決して杞憂ではない。この局面を、やむなく、総選挙の政治空白で過ごさねばならないのである。

………
 今回の経済と政治の動きを見ることで、日本の政経エリートには、一気の財政再建には無理があることを、今度こそ悟ってもらいたいと思う。なるほど、社会保障費は、毎年、1兆円ずつ増していく。それならば、2年に一度、1%の消費増税をするようにすれば良い。1%なら、戦術によって補える範囲となる。

 財政破綻が不安であれば、一定以上の物価上昇率なら、直ちに消費増税でブレーキをかけるというコンセンサスを形成したり、ある程度の金利上昇となったら、利子配当課税を20%から25%にするトリガーを用意するといった変化に対応できるシステムを用意したりすることが大切だ。嫌がる国民に押し付けることが財政再建と思っては、道を誤る。

 日本経済が2013年に順調に成長したのは、端的に言って、緊縮財政をしなかったからである。成長戦略の一利を興すは、緊縮の一害を除くに若かずなのだ。それでも、税の自然増収によって、財政は着実に改善した。もともと、リーマンショック前には、プライマリー・バランスの回復まで、あと一息だったのだから、当然である。

 税収の上ブレによって、今度の補正での国債増発は不要であり、来年度のPB半減の目標も、再増税抜きで達成できるようだ。地方や社会保障の自然増収も合わせれば、上ブレは更に大きくなる。一気の消費増税のため、上ブレは伏されていた。「入るを量る」財政の基本を怠っていた政経エリートは、認識を改めてほしい。

※最後から2番目のパラグラフの冒頭の部分を修正。コメントをいただいておいて、誠にすみません。(11/16 16:00) 「入るを量る」の誤字を訂正。ご指摘に感謝。(11/17 6:00)


(昨日の日経)
 上場企業が最高益に、今期経常3%増、内需減速で非製造業は5%減、製造業は8%増。セブンが出店最多を更新、ファミマ等は下方修正。経済対策は縮小3兆円規模。ユーロ圏0.2%成長、独0.1%。人口減放置なら-0.1%成長に。日銀誤算・遠のく出口、増税延期へ。中国、新車販売も鈍化、商用車は減。ティッシュ・需要減で原料高でも値上げできず。
 ※日銀誤算には幹部の経済思想がにじむ。緊縮財政の下ではデフレが続き、金融緩和の手じまいはできないのにね。増税が終われば、どうあっても手じまうつもりだったのかな。

(今日の日経)
 特許料最大1割下げ。衆院選来月14日投開票、予算の年度内成立めざす。
 ※今週の日経ビジネスの配当課税を巡る攻防はなかなか興味深かったよ。
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11/14の日経

2014年11月14日 | 今日の日経
 再増税という「バンザイ突撃」は、解散総選挙をもって、回避されるようだ。ここまでやらねば止められない、あるいは、非常手段を用いて止めたということか。景気条項を削除するなら、1%ずつ2年間隔にすへきと考えるが、政策も、認識も、一足飛びの進化は難しいということだね。

 それに、今回の増税の後始末も終わっていない。9月機械受注が発表され、7-9月期の「除く船電」(季調値)は、反動増によって、前期比+5.6%となったが、10-12月見通しは-0.3%だ。7-9月の受注額の水準は、1年前とほぼ同じ水準でしかない。円安で収益増の製造業は伸びたが、非製造業が足を引っ張った。需要を抜くと、法人減税や投資減税をしても、虚しい。

(今日の日経)
 消費税10%延期へ、17年4月が有力。景気もたつき誤算、回復から一転弱気。予算案編成は越年の見方。NTT株の売却で、住宅エコポイント再開。中国景気の減速感強まる、発電量1.9%増に鈍化。経済教室・円安を意図も効果に陰り・池尾和人。
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