経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

原発被害の試算と財源論

2011年04月25日 | 経済
 今日は日経センターの復興への提案が掲載されていた。そのうち、無税特区はいただけないが、原発事故の処理費の試算は役に立つものだ。政府がしない中で、まともな試算は初めてではないかな。その賄い方の提案も傾聴に値する。本紙も、こちらの方を見出しにすれば良いのにね。クロウト好みなのかな。

 センターが試算する処理費は10年間で6兆円。これに対する財源は、東電の引当金と剰余金で3.7兆円を用意するともに、年間0.4兆円の原子力予算の中から、その半分を捻出。0.2兆円×10年=2兆円か。さらに、核燃料再処理工場の操業凍結で、12兆円の積立金の一部を充てるという内容である。増税や電気料金の引き上げは無用というのがポイントだ。「復興税だ!」と慌てふためいている人は、これを見て、少し落ち着いてはいかがか。

 無税特区の提案は、産業立地を知っている者からすれば、切り札になるような性質のものとは思われない。むろん、ペーパーカンパニーなら、いくらでも呼べるだろうが、それでは復興にならない。普通の企業立地でも、有力な案件には補助金などを使い、実質無税にすることは珍しくない。それでも、なかなか来てもらえないのが現実だ。

 来てもらうには、無税どころか、工場建屋を公費で作って賃貸するくらいまでしないといけない。だいたい、立地から数年は、なかなか利益が出ないもので、利益が出ていなければ、無税にしたところで何のメリットもない。だから、補助金などが必要とされているのである。実は、宮城県はその先進地であり、センターに教えてもらうまでもないのだ。

 震災を機に特区をという声は強いが、特別な制度なぞ、そういくつもできるものではない。その中で一つ最優先で実現したいのは、被災地の公費での借上げ制度である。これは、元自治次官の松本さんが提案したもので、日経の記事にもあるように、復興会議部会でも取り上げられている。これで、被災者への生活資金の提供と計画的な土地利用が両立できる。

 センター提案の風力発電は、この土地ですれば良かろう。電力会社は、風力に後ろ向きだったが、それは原発で揚水発電を賄うためだった。風力に揚水を組み合わせれば、安定供給が可能になる。東電に変わって政府が投資し、発電で借地料を賄う枠組とする。売電価格と電気料金は、政府が決められるのだから、必勝ビジネスになるよ。

 さて、今日は、経済教室にも触れておこう。畑農先生の論は、筋が良いからね。まず、バローの課税標準化理論という基本をきちんと踏まえている。償還期間を長くすれば、増税幅が小さくて済むという指摘も的確だ。基本も踏まえずに、財政赤字におののき、復興費用を3~5年で償還しようという学者が多くて困っていたから、ありがたいよ。日本でも、異常でない、ごく普通の財政論をしてほしいものだ。

 この際、先生の論について課題を述べておくと、まず歳出抑制という「標準理論」を超えることだろう。法人税の動向をみれば、リーマンショック前の2006年レベルの成長を達成するだけで、10兆円もの増収になることが分かる。そこに到達するのに、どのような財政運営をすれば良いか「道筋」を考えるべきだ。単に「歳出抑制すれは良い」と唱えるだけなら、誰でもできる。筆者なりの方法は、基本内容の「雪白の翼」のとおりだが、他にもあろう。期待してますよ。財政学は実学でもあると思うのでね。

(今日の日経)
 パソコン3割節電、MS自動プログラム配布。イエメン大統領退陣へ。展望リポート成長見通し0.8%軸に。日経センター・東北3県を無税特区に。復興会議・水没地借り上げ提案。新興国通貨二極化進む、レアル高が国内圧迫。中国EVタクシー炎上。太陽電池変換効率75%へ構造解明。経済教室・財政再建、成長回復が必須・畑農鋭矢。

※危機になると知恵は出るものだ、民間では。日銀は強気だが、それでも2012年度で2%後半では消費税はムリだな。日本の技術は凄い、実用化は先でもここまで行くとは。

コメント
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