経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

早くムダだと悟ってほしい

2010年08月31日 | 経済
 日銀の臨時会合の開始で、一時、円安に振れたものの、金融緩和の内容が発表された頃には、元へ戻って先週末より円高になる始末。夕刻に経済対策の基本方針が決定されても反応はなかった。金融緩和も経済対策も効果がなかったわけである。結局、円高に歯止めをかけたのは、先週の小沢氏の立候補表明と米国の金融緩和遅れの観測ということになった。

 つまり、今の局面というのは、米国の景気減速の懸念が払拭されるか、日本の国内需要の増加でデフレが遠のくかでないと、変わらないということである。我々が米国経済を変えることはできないのだから、補正予算を組んで需要を維持し、デフレの期待を取り払わなければならない。

 日経の新実さんは、「小出し対応を続ける余裕が日本にあるのか」とFRBの元幹部の言葉を引いているが、日経の論説も小出し対応を掲げていて、補正予算は眼中になく、政府・日銀とは五十歩百歩である。違いは、「効果が疑問視される」と日経自らが書く、為替介入くらいのものだ。

 日経お勧めの対策は法人税の引き下げだが、政府は、企業には既に200兆円の手元資金があるのだから、これを投資せよと言い出して、牽制している。だいたい、日経は、法人減税でこの資金を更に積み増せば、企業が設備投資を始めるとでも思っているのだろうか。

 政府は、今回の経済対策で環境関係の立地補助金を用意し、企業に資金を与えれば、どの程度の投資をするものかを試すことにした。つまり、効果があれば、これを広げれば良いし、無ければ、もっと間接的な効果しかない法人減税には意味がないという証拠になる。暗に、「法人減税は効率が悪いから諦めなさい」と言っているのだ。

 日経自身だって、今日の「一目均衡」で「需要のある場所で生産するのが原則」と言っているではないか。どうして、補正予算などの需要政策を毛嫌いし、小出しの経済対策を是認し、効果の望めない政策に固執するのか、筆者には理解できない。

 資金はあるのに海外にばかり投資する。これに悩んでいたのは、英国のケインズも同じだった。ケインズは、需要のないところに企業は投資しないと悟り、有効需要の大切さに気づく。日経には、昨日のような対策の無意味さを認識し、一日も早く悟ってほしいものだ。

(今日の日経)
 インドに環境型製鉄所。民主、無投票決着探る。経済対策基本方針・家電エコポイント延長。日本の小出し対策に不安FRB元幹部・新実傑。社説・この円高対策で一件落着とはいくまい。日銀内ではエコカー期限へ警戒。法務省・特別枠で矯正施設・1割削減未達。需要不足なお25兆円。誤算の日銀追い込まれ。中国大手銀の融資増に市場懸念。三井物産、在宅で入力業務。動画配信サービス強化。円高が招く日本素通り・西條都夫。
コメント

常識を超える経済政策とは

2010年08月29日 | 経済
 日経ビジネスで田村賢司さんが良い記事を書いているので紹介しよう。「見切られた円高対策の限界」というもので、マーケットは、「日銀の打ちそうな手はほとんど織り込み済み」であり、「政府が検討する追加経済対策も1兆7000億円規模なら効果は小さい」と見ているというのである。

 この記事を、日経本紙の論説にも読ませたいものだ。マーケットに見切られている策しか掲げていないのは、政府ばかりでなく、日経や各紙も同様だからである。各紙はともかく、マーケットの近いはずの日経が、マーケットの状況も確かめずに、理屈だけで論説を書いているとしたら許されないだろう。

 本コラムでは、最初から、1.7兆円を超える対策でなければ意味がないとしてきた。日本の経済運営が上手くいかないのは、政府が「無力」というだけでなく、それを批判するマスコミすらも、まったく経済の実情に通じておらず、時宜に合った政策を選び出すことができないところにある。日本経済を巡るトップエリートの「病」は深い。

 この根底にあるのは、財政赤字に対する意味の無い不安である。本コラムは、決して「有効需要を増やせば、すべて解決」といった安易な考え方は持ってない。その時々において、必要な需要管理、それは長期金利が跳るといった無理が生じない範囲でのもの、がどのくらいかを考えつつ提言している。

 日経は、今日の社説で、長期金利が一時1%に戻したことを「悪い金利上昇」見ているようだが、それでは、適正な金利水準をいかほどと見ておられるのか。1%割れしたのは、8月に入って米国景気の先行きに不安が出てからのことだ。この水準は、来年の経済成長の見通しや潜在成長率からしても低すぎ、むしろ、デフレ懸念を緩和し、政策的に押し上げることの必要性を示していよう。

 「とにかく財政出動はダメ」という日本のステロタイプな思考は、完全にマーケットに読まれていた。長期金利に先安観が立ち、債券高が望めるなら、円高が止まるはずもない。これを壊したのは、小沢前幹事長の代表選への出馬というサプライズだった。それ以外の要因は織り込み済みだったはずだ。これで日本経済に必要なものを悟らねばならない。

 もし、今年度予算を10兆円も詰めずに、潜在成長率の半分のGDP1%にあたる5兆円程度にとどめておけば、日本経済の今年度後半の減速懸念は、生じなかっただろう。今から5兆円規模の景気対策を打つようなものだからだ。経済にマッチする水準を考えず、「できる限り緊縮財政」という単純思考しかないことが、日本経済を危うくしている。

 日経ビジネスの田村さんは、「円高の背景にはドル余剰」の構造があるとし、「政府・日銀が市場の常識を超えた対策を迫られる場面が出てくる」とする。しごく当たり前の需要管理という「日本の常識」を超えた対策が必要であろう。

(今日の日経)
 企業資金の国内投資促す。希土類輸出規制で溝。経済語れぬ政府、進む円高に無力さらす。社説・追加緩和を視野に収めた日米金融当局。風見鶏・違和感さそう外交復帰・秋田浩之。円高是正に重い試練、金利差縮小も。南米主要国V字回復へ。封印された消費税・菅野幹雄。運動記憶、練習漬けより適度な休憩。財政再建と経済成長の両立・福田慎一。読書・アジア連合への道・天児慧。日経ビジネス・見切られた円高対策の限界・田村賢司。
コメント

景気対策をチャンスに

2010年08月28日 | 経済
 長期金利が大幅に戻り、これで債券高は一服だろう。ドル売り円買いによる債券投資がしにくくなったこともあり、円高も緩和に向かっている。ある意味、小沢さんの「威力」は凄いものだ。日銀も週明けに臨時会合を予定しており、奇しくも、金融緩和と「財政出動」が揃った形である。

 さて、景気対策だが、政府が検討しているものは、企業支援と雇用促進が柱になっているようだが、どうも焦点がズレている気がする。昨日発表になった労働力調査では、就業者数が30か月ぶりに増加に転じた。中身を見ると、建設業の減り方が大きく、医療・福祉の伸びは今一つである。他方、家計調査の結果は、消費者物価指数が、除く生鮮食品で、17か月連続のマイナスで下落幅も拡大している。

 こうした状況から言えるのは、必要な政策は、サプライサイドより、デマンドサイドではないかということである。設備投資を促そうにも、需要が見込めなければ、企業はするものではないし、雇用は量的に増えてきたのだから、質も重要になってくる。

 デマンドサイドで景気対策をする難しさは、将来ビジョンが求められる点にある。需要の追加は、これから必要になるものを先取りするのでなければならない。例えば、公共事業であっても、学校耐震化のように、いずれしなければならないなら、景気対策として済ませておけばよい。これで建設業の就業者数の減少を緩やかにできる。

 また、福祉や保育では、労働需要は多くても、低賃金がネックになっていて就業者を伸ばせないでいる。これをサポートするには、介護や保育で働く人の社会保険料の肩代わりの措置をとれば良い。これは低所得層全般にも必要なことであり、いずれ消費税を引き上げるときの手当てとしても役立つだろう。

 消費需要の拡大については、すべての住宅への太陽光パネルの普及を例として上げたい。三洋は3~4年でグリッドパリティに到達できるとしており、太陽光パネルは、環境に良いだけでなく、経済的に見合うものになる。つまり、これもいずれ達成が必要なものになっているのだ。米、中のメーカーは、欧州景気の陰りで収益が低下しており、日本国内の需要拡大は日本メーカーに強い競争力を与えよう。

 景気対策は、苦境に対処するためのものであるが、将来の社会のあり方に需要を役立てるチャンスでもある。

(今日の日経)
 日銀が週明けにも臨時会合。FRB議長が公演で追加緩和を検討。争点はいつも「小沢」。新安保懇報告書で中国の脅威重視。3歳未満で負担多く、民主の試算。長期金利急上昇、一時2週間ぶり1%台。世界貿易、新興国が急速に伸び鈍化。中国食糧供給10年で試練。TV用LED需給緩む。米中販売伸び悩み。
コメント

経済政策の転換はあるか

2010年08月27日 | 経済
 これで分からなくなった。もし、民主党の小沢前幹事長が政権の座に着けば、経済政策が変わる可能性が高い。マニフェストの順守を掲げているのだから、積極財政となって、デフレは緩和されるだろう。筆者はディーリングをしないが、こういう見通しが出てくると、もう円高や債券高には賭けない。これだけでマーケットの潮目が変わるかもしれない。

 みずほ証券の林秀毅さんが言うように、財政出動がなされれば、「日本の国債や円が売られる可能性がある」わけで、円高を阻止したいのなら、日経は、これに賛成してはどうだろうか。むろん、国債については、日銀の金融緩和もあるだろうから、急落(金利急騰)は考えにくいところだ。

 今日の西田さんの論説のように、積極財政には財源論が言われるが、「抜本的な税制改革」など不用である。「名目成長率が3%に達したら、消費税を徐々に引き上げる」の一言だけで十分だ。この方式は、本コラムで以前から提案しているが、この程度は誰でも考えつく。成長率の到達は3年以内と決まっていないから、マニフェストにも反しないし、経済合理性に基づく政策になる。  

 財政当局の発表しか聞かない人は認識してないだろうが、そもそも、今年度予算は、昨年度の補正後と比べて10兆円も少ない。前年度並みの予算にするだけで、マニフェストは簡単に達成できてしまう。埋蔵金は枯渇しているが、埋蔵金で賄うのも、赤字国債で賄うのも、政治的にはともかく、経済的には違いがない。

 元はと言えば、今年度後半に景気が息切れしそうなのは、10兆円も財政を詰めてしまうからである。日本の潜在成長率は2%弱とされるから、景気回復期で高めの成長が見込めるとしても、それに匹敵する規模の歳出削減をすることには無理があった。詰めたとしても、5兆円が良いところだったろう。

 小沢氏は田中角栄の「末裔」らしいが、そうだと積極財政は相似形になる。田中政権時はインフレにあって積極財政は禁物だったが、今はそれが必要とされている。「ねじれ国会」にあるから、補正予算は難しいとか、マニフェスト修正が求められるとかの心配もあるようだが、経済の難局は、かえって協力を得るのにふさわしい場となるだろう。

(今日の日経)
 菅首相・小沢氏一騎打ち、景気・公約巡り論戦へ。この国をどうするか・西田睦美。仙谷外しで決裂。経済対策の民主政調案、環境・育児支援柱に。財政の行方を市場注視、小沢氏なら債券・円売りも。東南アジア高成長続く。主要5か国年率8.6%。太陽電池の新興国勢が過当競争で赤字相次ぐユーロ安響く。8月新車販売7割増。大機・借金大国は別物。経済教室・アジアのインフラ・荒川博人。
コメント

円高と単調な日本

2010年08月26日 | 経済
 米国の悪い指標が出るたびに円高が進む展開は、既に8/14に記していたとおりである。この円高局面は、米国景気の減速を背景にした日米の金利差縮小によるものなので、これを崩さない限り円高傾向は続くだろう。金融政策と為替介入だけでは、大した成果は上げられないと見る。 

 日経始め各紙は、金融政策と為替介入だけを主張し、財政政策は否定している。つまり、あまり効果がないことを掲げているわけで、筆者とすれば、政府・日銀には、早く効果がないことを実証して見せて、次のステップに移ってもらいたいと考えている。やって見せなければ、日本人は分からないだろうから。

 こういう状況は、投機をする側にすれば、非常にやり易いと言える。介入があって一時的に円高が戻すとしても、円高傾向は続くわけだから、取り返しが効く。むしろ、介入は円を買うチャンスにすら見えるだろう。しかも、円買いによって円高に持っていくほど、日本の景気は悪化してデフレが進み、日米の実質的な金利差が広がることで、更なる円高要因になるから、円買いは自己実現的な行動になる。

 こういうシナリオが覆るとすれば、日本が財政出動に打って出たときである。デフレ緩和で実質金利が縮小し、円高傾向が見込めなくなると、危険すぎて手じまいをしなければならなくなる。その点、財務省が消極的なのはいつものことだが、フリーな立場にある各紙まで、財政出動を否定しているのだから、これは安心材料である。世論を超えて政策を打つような切れ者が今の日本にいるとも思えない。

 こう言っては何だが、財政出動を否定する各紙の主張も円高要因の一つにもなっている。とかく日本は、一つの論調に染まりがちだ。一社でも、「金融政策と財政政策を組み合わせ、デフレに向かうシナリオと敢然と戦うべき」と主張していると、投機は仕掛けにくくなる。日本人は本当に甘い。

 日本が自ら財政出動をしないとして、最初から「手」を捨てているから、対応に多様性がなくなってしまう。変化に対応するには多様性が不可欠なのに、単調だから読まれてしまう。読まれやすいは、自然発生的に相手方に連合を作らせることにもなりがちだ。為替の世界は外交と同じ。単調な手を皆にさらしているようでは餌食になるだけだ。

(今日の日経)
 経済対策、今月中にも骨格。牛肉とオレンジは今。社説・株安連鎖、日本も行動を。円高対策、時機逃す懸念。個人、なお円売り。米住宅の低迷長引く、価格5~8%低くなれば差し押さえ多発。アルバック海外生産6割に。角川GHD映像事業が黒字転換。経済教室・東アジアにFTAの波・畠山襄。
コメント

経済思想が犯す危険

2010年08月24日 | 経済
 日経は新古典派ですな。米国でもニューケインジアンになっているのだがね。「世界標準」の経済政策は、金融政策と財政政策のポリシーミックスになっているが、財政政策は無用と考えているようだ。これを財務省が唱えるなら、「お立場」で済むが、自由な立場にある言論機関が言う意味は大きい。後世、経済史家は、こういう経済思想の下で、日本経済がどう没落していったかという枠組みで著すことになろう。

 日経のタカ派色は濃い。為替介入と金融緩和のみで円高を戻そうとし、法人減税と規制緩和だけで成長促進は可能だとする。財政政策を使うのは、景気の落ち込みがはっきりしてからである。日本経済の低迷は金融政策と財政政策のいずれかが欠けていたためという、アダム・ポーゼンの枠組みを裏書きするような内容だ。

 さて、今後の景気の見通しであるが、経済教室は、成長率を下方修正した上で、内需には期待できず、中国を中心とするアジア次第になるとし、11年度には、中国景気の再加速を主因に輸出の増勢が強まることで、日本の景気も回復するとする。

 果たしてそうか。これは新たなデカップル論である。つまり、米欧の景気が停滞しても、新興国経済によって世界経済の成長は保たれるというものだ。リーマン・ショックまでの危機でも同じことが言われたが、米欧へ輸出をしている新興国も停滞することになった。今回は違うというわけである。

 中国の消費率は35%ほどしかなく、日本や米国の半分しかない。つまり、異様なほど高い設備投資率は、海外需要に頼っているということである。したがって、海外が伸びなければ、設備投資には強い抑制がかかる。消費は、割合が小さすぎて、すぐには補えないだろう。住宅投資も、既にバブル気味で、金利を下げても思ったほど効果を持たないかもしれない。

 むろん、中国は、財政支出を拡大する余地も大きいが、それでも、成長率が半減するおそれがある。日本の過去で言えば、福田政権の時分、1970年代末の時期にあたる。当時、世界経済の「日独機関車論」が言われたが、不発に終った。世界経済が回復したのは、米国経済が回復してからである。

 歴史は同じ形で繰り返すものではないが、リスクは受け止めておいた方が良い。経済政策を運営する上で、「いったん沈んでも、再浮上するはず」というシナリオは、とても危険である。再浮上を当て込み、沈むことを安易に容認してしまい、それが致命傷になることがあるからだ。思想の奴隷になって、危険を犯すようなことをしてはなるまい。

(今日の日経)
 政権公約見直し相次ぐ。承認遅れの海外医薬品の保険適用迅速に。豆腐が500円になる日。社説・痛み止めより成長促進。円相場こう着3つの理由、海外買い一服。特別枠、削減分穴埋め優先。FT内需こそが日本を救える。ハイボールから高額品へ。経済教室・アジア支えに回復持続へ・竹内淳一郎。権威と権謀の監督術。国立大、越境で共同学部。
コメント

財政政策は普通の政策

2010年08月23日 | 経済
 当然のことを主張していても、日本では特異な位置になるので、ときどき自分を疑いたくなることがある。むろん、海外に論を探せば、同様の意見を見つけることは可能だ。今週の日経ビジネスに掲載されたFTの「FRBは全知全能にあらず」は、まさにそれだ。

 FTの論旨は、財政政策が伴わなければ、金融政策は孤立無援の状態になる、米国債の利回りは超低水準にあり、それだけ財政政策を活用できる余地は大きいが、景気刺激恐怖症が動きを阻んでいるというものだ。おまけに、日本の過去の失敗例まで引いてくれている。論旨は、筆者が8/13のコラムで述べたのと大差ない。

 さて、菅政権は、経済対策で赤字国債の追加発行もあり得るとした。経済状況を考えれば、その方向は自然である。他方、日経は、経済対策そのものに反対のようだし、読売以外の各紙も否定的で、赤字国債には反対である。今後も、各紙は、この立場を維持できるのか。政府の動きに合わせて口をつぐむのではないだろうか。経済記事を政治取材で書くから、こうなるように思う。

 また、各紙が、財政政策を軽視し、政府の新成長戦略を下敷きにして、サプライサイドに偏った政策を主張していることも気になる。成長が欲しいから、企業を支援すれば良いだろうと考えるのは、ナイーブに過ぎる。

 例えば、法人税減税や企業立地への補助金は、企業の手元資金を増やすだけで、設備投資に結びつかない可能性がある。今日の日経で、オムロンの作田社長が言うのは、経営者としては普通の感覚だ。企業支援策は、既定の設備投資を優遇するだけで、追加的なものを増やさないかもしれない。雇用に補助金を出すのも同じで、雇用量が増えなければ、企業が安く労働力を使えるだけになる。

 本当は、保育所や介護施設を増やすことの方が、企業支援よりも、雇用と需要の拡大には直接的な効果がある。そこまで行かなくても、企業は、需要を見ながら設備投資をするものなので、デマンドサイドの施策を軽視してはいけない。企業が円高で海外に移ったり、設備投資に慎重なのは、肝心の国内需要に信頼を置けないからである。

(今日の日経)
 エネルギー自給住宅、太陽光・熱で蓄電、11年初め発売。リン鉱石跳ね上がり高値圏。経済対策、与党に上積み論、1.7兆円超えも。社説・快適生活をアジアに、高級感で勝負。円高耐久力、加工型製造業25%海外、円建て決済41%。オムロン社長・法人税下げ賛成でない。米消費足踏み感強く、ショック前に肩並べたが頭打ち。ヤフー助けたグーグル・小柳建彦。海の栄養減りすぎ防止。経済教室・文化外交・渡邊啓貴。
コメント

円高が辛いのは不況だから

2010年08月22日 | 経済
 「円高は困る」というのも分かるが、もし、今、日本が好況にあるなら、円高は歓迎であろう。円高は、輸入物価を下げ、インフレを抑制する。輸出が落ちても内需に回せばよいから、企業も困らない。つまり、円高は、そのものが悪ではなく、不況にあることが問題なのである。

 あえて、こんなことを言うのは、円高への不安で視野狭窄になっているように思うからである。円高をどうするかではなく、現下の経済に必要な施策を打ち、景気を回復させることが、回り道のように見えても、結局は、円高という課題を解決することになる。

 さて、直接、円高を修正しようとして、金融緩和と為替介入をしても、十分な効果が得られないことは、エコノミストの一致した見方だろう。金利は、ゼロに近づいていて、下げる余地がほとんどないし、米欧は自国通貨安を容認しているから、介入に必要な協力は得られそうにない。

 そうすると、金融緩和に財政出動を加えることが必要になってくる。これは、昨日の日経一面で野村の木内登英さんが指摘するとおりである。筆者も、木内さんと同様、小規模なもので構わないと考えている。ポイントは、1兆円程度の国債の追加発行を行って、マーケットに対し、財政もデフレと戦う姿勢を見せることだと思う。

 つまり、増発によって、マーケットに「これ以上の長期金利の低下はない」と思わせることが必要だ。筆者は、円買いドル売りで国債に投資し、短期的な値上がりを狙う筋があると見ているので、ある程度、これで円高が戻るだろうと考える。要は、国債投資にバブルがあると判断しているわけである。

 教科書的には、財政出動をすれば、自国通貨高になることになっている。マンデル・フレミング理論というものである。むろん、現実には、金融緩和との組み合わせになるから、理論どおりになるとは考えにくい。どうも、日経は、理論が気になって財政出動に否定的なようだが、取材に基づくマーケットの実態ではなく、理論で社説(8/19)を書いていることには、強い違和感を覚える。

 現在、日本はデフレにあるため、金融緩和に財政出動を加えると、名目金利は低めに維持されたまま、需要増によって物価が上昇に向かうことになる。これは、物価を加味した実質金利が低下することを意味し、円安に作用する。今日の日経が「デフレ続けば円に上昇余地」ということの裏返しである。

 カギになるのは、財政出動なのだ。デフレ状態にあるのに、エコポイントなどの景気対策の撤退を早々に決め、金融緩和を続ける日銀は置いてきぼりになっていた。これでは、円高の地合を作っているようなものである。円高にならなかったとしても、デフレ脱出前の財政の撤退は、時期尚早と言わなければならない。

 結局、需要管理の観点で必要な施策をすることは、景気を好転させ、物価を上昇に向かわせ、円高を防ぐことになる。必要な施策を怠ったことが、円高という症状に表れているに過ぎない。過去に日本が円高に振り回されたのは、需要管理を怠って不況のままにあったからである。一知半解のマンデル・フレミング理論などに惑わされず、実態に即した目を持つことが肝要である。

(今日の日経)
 食品安全庁創設へ。食糧需要7割増を誰がまかなう。新卒インターンに助成金。選挙、選挙で日本が沈む・坂本英二。財政、埋蔵金頼みに限界。中外・大学の悲鳴が聞こえるか・滝順一。政策迷走・円高に振り回されて。円高・デフレ続けば円に上昇余地。読書・デフレとの闘い・岩田一政、タイムトラベラー。興南連覇、沖縄勢の夏は初V。
コメント

日経は主張を明確に

2010年08月21日 | 経済
 やっぱり日経は経済対策に反対なのかね。今日の社説の「深刻な二番底に陥る場合に補正予算」というのは、どういう意味なのか。現時点ですべきでないというなら、ハッキリ書いてもらわないと。まさか、様子次第で「今が二番底」と変えるつもりじゃないだろうね。お役人みたいな、状況次第で解釈を変えられる言い方を社会の木鐸がしていてはいけない。

 まあ、論説委員の中でも意見が割れているのだろう。「長期の財政健全化目標を変えずに」という字句が挟まったりして、いかにも意見対立を調整してつくったような長ったらしい言い回しに「迷い」が表れている。だが、ここは、後で検証可能な明解な言説をすべきである。間違いを恐れていては言論は磨かれない。

 さて、今が二番底でないとして、二番底になってから経済対策をするのでは遅い。二番底とは、消費や輸出の減退がハッキリしている状況を指すが、この状況になると、設備投資は崩れ始めているから、需要を追加しても容易には戻らない。そうなる前に手を打たなければならないのであり、日経の「政策」は基本が間違っている。

 経済対策を取った場合、具体的には、予備費と決算剰余金で2兆円、これに国債追加1兆円を加えた3兆円規模で良いと思うが、これで何か財政に支障が生じるだろうか。長期金利が低下を見せる中で、この程度なら、まったく問題ないはずだ。もし、内外需が順調に推移したとしても、悪影響は考えにくい。まして財政破綻でインフレの心配などあり得ないだろう。

 国債の追加発行の1兆円分については、日経の社説どおり、学校の耐震化など予定している事業を前倒しすべきだ。来年度予算分の公共事業を前倒しすることにすれば、来年度予算が減るわけだから、長期の財政健全化目標にも背馳しないことになる。

 経済がどう推移するかは、神様しか分からないが、需要減退のリスクと、需要順調のリスクと見比べると、前者の方が可能性が高く、経済へのダメージも大きいのであるから、前者への対応を万全にしておくべきだ。経済政策の舵取りは、こうするものである。財政赤字が既に膨大だから、とにかく我慢しようという判断は誤りである。

 日経によれば、経財相は、「踊り場を排除できず、微妙な時に手を打った方が効果的」と言っているようだが、これが正しい。財務相のように「動向も見ながら判断すべき」ということをしていたら、間に合わなくなる。どうも、9月10日のGDP改定値が上方修正されることを期待する向きもあるが、問題にすべきは、過去の4-6月期の数字ではなく、今年度後半の需要の見通しである。問題の所在すら分からない人の意見など無意味だ。

 こうしてみると、日経のポジションは、経財相よりも財務相寄りの慎重派と言えまいか。日経は、「経済の行方読み、場当たりでない対策を」とするが、リスクを放置し、年度後半に景気が停滞して対策に追い込まれれば、対策の規模は、今するより大きなものが必要になる。まさに「場当たり」になると思うが、いかがだろうか。

(今日の日経)
 次世代送電網インフラ投資10年で6000億円。経済対策ものづくり中小支援。離島25を国有化。高齢者医療の難題先送り。成長鈍化・野村証券・木内登英。社説・経済の行方を読み場当たりでない対策を。普天間V字1本併記を日米政府確認。個人FX円高抑制。国際連帯税を創設。経済対策、政府に温度差、経済相前倒し、財務相慎重。中東和平直接交渉再開。台湾海外受注9.7%減。米国の苦闘、雇用に効く投資がいる、企業は海外、人を雇って罰を受ける。大和ハウス電池で先行。ネットサービス課金収入伸びる。無塾地帯の危機感。
コメント

経済低迷は新聞の責任

2010年08月20日 | 経済
 日経は、昨日の社説で微妙にポジジョンを変え、「財政面からの景気てこ入れ」を当然視する言い振りになった。率直に言って、日経は、今の局面で、どのような経済政策が必要かの定見を持たずに、政府の動きに引きずられている。これでは、政府の対策の遅れを批判することはできない。

 他紙を眺めてみると、読売の社説は明確で、4-6月期のGDP速報が出た後の8月17日に、財政出動を求め、公共事業や予備費を超えた対策にも言及した。読売は、それ以前にもエコカー補助金の延長を主張していたから、終始一貫している。現下は需要不足にあり、手を抜ける状況にないという明確な認識を持っている。他方、保守系でも、産経は、19日の社説で、国債増発に明確に反対し、財政出動も絞るべしとする。こちらは、金融緩和と為替介入に重点を置く主張である。

 朝日の17日社説は、財政出動には触れず、新規雇用のてこ入れ、企業の投資促進、規制緩和を求めている。意外にも、保守的な対応策にとどまり、危機感も感じられない。毎日は、17日社説で「短期的な変動に動揺して追加の景気対策に走るのは賢明ではない」とまで言う。需要刺激策の打ち切りを主張する一方、企業の設備投資を求める内容は、正直、経済に疎いとしか言いようがない。

 さて、景気というのは、設備投資の動向次第である。その設備投資は、需要を見ながらなされている。需要が決定的に重要なのは、経営者は、その動きにリスクを感じていて、利益水準の見込みより、遥かに強い影響を受けるからである。現実と教科書の最大の違いは、ここにある。

 したがって、経済政策の第一の目標は、需要を安定させることになる。未だ消費が十分に伸びてない段階で早々に需要支持策を撤退させてはならないし、円高で外需の失速が懸念されるなら、その分を補わなければならない。そうしているうちに、自律的に設備投資は回復してくるものなのだ。

 日本経済の低迷は、こういう経済政策の基本がなっていないことによる。それは、一義的には財政当局の責任ではあるが、社説という「世論」においても、その責任は、免れないだろう。記者ならば、どんな経営者でも良いから、聞いてみたらよい。「売上げの先行きに不安があっても、低金利なら設備投資ができるはずですよね」と。

(今日の日経)
 経済対策原案、環境軸に内需・雇用増。シャープ液晶パネル減産。円、米指標悪化で高値。トウモロコシ中国純輸出国に。社説・経済軽視し権力闘争。経済対策やっと始動。米先頭部隊イラク撤収。港湾・高速の新規事業再開。追加緩和、市場期待一段と。雇用創出米国の苦闘、建設・金融の縮小続く。中国、韓国国債買い拡大。GMスピード再建。超長期国債に短期買い。経済教室・太陽光発電の全量購入を・松村敏弘。
コメント