物価上昇が懐疑の中で育っている。1年前の自分に、「資源高と円安で物価高となり、それに連れて名目消費が伸びて、賃金上昇にまで至るよ」と話したら、「何なの、そのシナリオは」と呆れていたと思う。異様な円安になっても意固地に金融緩和を修正しなかった黒田前日銀総裁に、先見の明があったかのような成り行きに、経済を読むことの難しさを思わざるを得ない。もっとも、現実になっても、読めぬままの人も多いけれど。
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4月の消費者物価(東京都区部)は、総合が前月比+0.5で、生鮮エネ除きで+0.7と強い。サービスも+0.2とついてきており、今年に入って明らかに潮目が変わっている。1-3月期の商業動態・小売業は、前期比+2.8とジャンプアップした。今年の春闘での賃上げは、連合集計で+3.69%と30年来の高さである。正直、予想外の展開で、アベノミクスで政府が旗を振っても動かなかったことがウソのようだ。
なぜ、賃上げができたのか。売上げが伸びているからだ。法人企業統計では、消費増税前のピークに近い。コスト高だろうが、収益がなかろうが、売上げが伸びていれば、何とかできるものだし、無理をしてでも人手を確保しないと、商売が立ち行かなくなる。そうすると、名目であっても、消費が伸びていることがいかに大きいかとなる。実質でも1-3月期は堅調だ。こうした消費の伸びの背景には、ここまでの名目の可処分所得の地道な上昇がある。
アベノミクスでも、増税と円安によって物価高となったが、社会保険料のアップで可処分所得を抑制していたから、賃金上昇の割に消費が弱く、デフレ脱却とはならなかった。しかし、可処分所得が堅調なら、値上げに応ずることができる。名目での消費が増え、売上増から賃金増へ波及してきたのであり、2%はともかく、持続的な物価上昇への移行は、十分、あり得る。起きてしまえば、当然の流れに見え、何が拙かったのかも分かる。
1-3月期の鉱工業生産は、前期比-1.8と、2期連続のマイナスであり、資本財(除く輸送機械)も-6.4、建設財も-1.7と、投資は、まったく冴えない。輸出の停滞が影響しており、輸出で景気が良くなるいつものパターンからは外れている。雇用も、量的には、1-3月期の労働力調査の雇用者は+5万人にとどまり、新規求人倍率が1-3月期は若干のマイナスになるなどしている。それでも、物価も賃金も上がっている。
(図)
………
植田日銀は、過去25年の金融緩和の検証をするようだが、1997年の緊縮財政による需要ショックでデフレに転落し、輸出で景気が上向くたびに、緊縮で需要を抑制し、消費、売上、賃金、物価を低迷させてきた経緯をたどることになる。余計なことをしなければ、自然に需要が循環し、消費、売上、賃金、物価が加速していくという現実を目の当たりにしつつ、金融緩和の意味を考えることになろう。
(今日までの日経)
日銀、25年間の緩和検証へ。ホンダ、国内に電池工場 GSユアサと EV向け4000億円規模。コロナ、感染対策自主判断に 来月8日「5類」決定。
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4月の消費者物価(東京都区部)は、総合が前月比+0.5で、生鮮エネ除きで+0.7と強い。サービスも+0.2とついてきており、今年に入って明らかに潮目が変わっている。1-3月期の商業動態・小売業は、前期比+2.8とジャンプアップした。今年の春闘での賃上げは、連合集計で+3.69%と30年来の高さである。正直、予想外の展開で、アベノミクスで政府が旗を振っても動かなかったことがウソのようだ。
なぜ、賃上げができたのか。売上げが伸びているからだ。法人企業統計では、消費増税前のピークに近い。コスト高だろうが、収益がなかろうが、売上げが伸びていれば、何とかできるものだし、無理をしてでも人手を確保しないと、商売が立ち行かなくなる。そうすると、名目であっても、消費が伸びていることがいかに大きいかとなる。実質でも1-3月期は堅調だ。こうした消費の伸びの背景には、ここまでの名目の可処分所得の地道な上昇がある。
アベノミクスでも、増税と円安によって物価高となったが、社会保険料のアップで可処分所得を抑制していたから、賃金上昇の割に消費が弱く、デフレ脱却とはならなかった。しかし、可処分所得が堅調なら、値上げに応ずることができる。名目での消費が増え、売上増から賃金増へ波及してきたのであり、2%はともかく、持続的な物価上昇への移行は、十分、あり得る。起きてしまえば、当然の流れに見え、何が拙かったのかも分かる。
1-3月期の鉱工業生産は、前期比-1.8と、2期連続のマイナスであり、資本財(除く輸送機械)も-6.4、建設財も-1.7と、投資は、まったく冴えない。輸出の停滞が影響しており、輸出で景気が良くなるいつものパターンからは外れている。雇用も、量的には、1-3月期の労働力調査の雇用者は+5万人にとどまり、新規求人倍率が1-3月期は若干のマイナスになるなどしている。それでも、物価も賃金も上がっている。
(図)
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植田日銀は、過去25年の金融緩和の検証をするようだが、1997年の緊縮財政による需要ショックでデフレに転落し、輸出で景気が上向くたびに、緊縮で需要を抑制し、消費、売上、賃金、物価を低迷させてきた経緯をたどることになる。余計なことをしなければ、自然に需要が循環し、消費、売上、賃金、物価が加速していくという現実を目の当たりにしつつ、金融緩和の意味を考えることになろう。
(今日までの日経)
日銀、25年間の緩和検証へ。ホンダ、国内に電池工場 GSユアサと EV向け4000億円規模。コロナ、感染対策自主判断に 来月8日「5類」決定。