消費増税の駆け込みの反動減があるので、10-12月期がマイナス成長になるのは確実で、世間的にはともかく、専門家的には、どのくらいの深さになるかが焦点である。そして、次の1-3月期は、反動減からの戻しがあるから、明確なプラスになるのが順当である。ところが、12月の経済指標が非常に弱く、ゼロ成長にとどまるおそれが出てきた。これに、2月以降は、新型肺炎の影響による下押しが加わる。消費増税の税率の重さは深刻であるのに、一時的な要因に紛れて、普通の人には実態が分からないものになっている。
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金曜にCTIマクロが公表され、12月の実質は99.1と前月比-1.1だった。これで10-12月期の前期比は-3.5にもなる。2014年の消費増税の2か月後は、99.5だったから、これを下回り、アベノミクスでの最低水準である。前回増税では、3か月以降、反動減からの戻りは見られなくなったので、今後は、この12月の水準で推移すると予想される。すると、1-3月期は、ほぼゼロ成長に止まることになる。
1-3月期は、反動減で大きく下がった10月を含む10-12月期との比較になるから、上がって当然なのに、ほぼ変わらない水準となるのは、低調さの証である。その意味で、12月のCTIの低迷は、非常に痛い。前回増税では、その後、輸出の好調を背景に、消費も少しづつ回復していったが、今回は、輸出の停滞どころか、新型肺炎が下押しする形となる。増税によって、ただでさえゼロ成長なのに、マイナスへと引き込まれる恐るべき展開となろう。
10-12月期のマイナス成長に続く、1-3月期でのゼロ成長のリスクは、鉱工業指数でも見られる。12月の出荷は96.4と、10-12月期の97.0を下回っているからだ。これも、かなりまずい。鉱工業出荷は、7-9月期の前期比が-0.0と駆け込みらしきものが見られなかったにもかかわらず、10-12月期は前期比-5.2ものダウンに見舞われた。その後がゼロ成長では、あまりに打撃が大きい。その中でも低調なのが消費財であることは言うまでもない。
台風の影響の後で、新型肺炎の前の12月がこの有様では、消費増税の打撃は大きかったと考えざるを得ない。しかし、GDPは四半期ごとなので、10-12月期は反動減と台風、1-3月期は新型肺炎と、印象的な出来事に引っ張られ、普通の人には実態がつかめないと思う。12月の景気動向指数は、リーマンショック以来の5か月連続の「悪化」という深刻なものだったが、これが続いても、災害だから仕方ないという受け止めになるのではないか。
(図)
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アベノミクスは、消費を圧殺し、輸出とインバウンドに頼ってきたので、消費増税を敢行したタイミングで、新型肺炎による中国経済の急減速に見舞われるのは大きな痛手だ。とは言え、一般に、災害による経済への打撃は一時的で、東日本大震災の後の日本もそうだったように、収束後は元のトレンドに戻るべくV字で回復するものである。いまだに収束のめどは立たないものの、それまでの辛抱だと覚悟することが大切である。
ただし、重くした消費税率が元に戻ることはない。景気や所得が回復しても、消費の回復は鈍いだろう。より強いブレーキにした以上、回復が遅くなった2014年の増税以降と比べても、更に低いものとならざるを得ない。経済対策も、消費増税への対処で伸び切って、新たに有効な手段を探し当てるとは考えがたい。こちらは、緊縮財政を当然視する価値観を改めぬ限り、終わりなき戦いとなる。
(今日までの日経)
中国依存 もろ刃の剣 生産100億ドル減なら国外影響67億ドル。景気指数「悪化」5カ月連続 12月、リーマン危機以来 個人消費も停滞。パート賃金が頭打ち 昨年の毎勤統計 時給最高も「年収の壁」。