経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

2/26の日経

2020年02月26日 | 今日の日経
 あまり目立たないが、建設投資の状況も、かなり拙いことになっている。2/21に12月の全産業活動指数が公表され、建設業活動指数は7か月連続のマイナスだった。企業と住宅の建設投資が急減しており、まだ底が見えない。駆け込みが少なかったはずの住宅では、前回の増税並みの底へ崩落している。公共のみ、良く言って小康で、推進力はない。新型肺炎と関係の薄い部門がこれでは痛い。消費増税の恐ろしさは、消費への深手のみならず、悪影響の広さにもある。

(図)



(今日までの日経)
 企業・自治体 対応急ぐ 風邪症状で休み・イベント中止。新型肺炎「1、2週間が瀬戸際」 日本政府の専門家会議。

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10-12月期GDP1次・消費墜落、回復不能

2020年02月23日 | 経済
 10-12月期GDPが公表され、家計消費(除く帰属家賃)は、前期比-3.7%と墜落した。これは年率に換算すると-13.9%にもなる。前期の駆け込みの小ささを考えれば、2014年の増税時の落ち込みに匹敵し、消費は再び大打撃を被った。それでも、増税のせいだとは言わず、台風や暖冬によるとする人もいる。「緊縮は良いものだから、悪いのは災害に違いない」という信念は揺るぎないようである。

………
 1/12のコラムで、10-12月期の家計消費の前期比は-3%を超えるおそれがあるとしていたが、残念ながら本当になってしまった。その水準は、アベノミクスで最悪だった2014年4-6月期を下回り、民主党政権下の2012年より低く、今期以下は、東日本大震災の打撃も冷めやらぬ2011年4-6月期まで遡らなければならない。更に言えば、日本経済が初めてこの水準に達したのは、2006年1-3月期で、実に13年前への逆戻りとなる。

 それでも、次の1-3月期に浮上できれば良いのだが、CTIマクロ、消費総合指数とも、12月の前月比がマイナスになっていて、新型肺炎の前から、まったく回復力を失っている。1月の消費者態度も、基準日が1/15と早いのに、前月比横バイである。つまり、新型肺炎がなくとも、ゼロ成長の基調にあり、そこに新型肺炎が加わって、マイナス成長へと転落するという構図なのである。

 設備投資については、2期前の輸出・住宅・公共の合成値とパラレルに動くものなので、新型肺炎の前から、低下傾向にあると予測されていた。この予測から見ると、10-12月期の前期比-3.7%という大きめの低下は、7-9月期の増加の反動減であり、1-3月期には、低下の半分程度の戻しが期待できる。そして、これに新型肺炎という新たな要素が加わって、予測よりも下振れすることになる。

 新型肺炎については、未だ収束は見通せないが、災害の経済に与える影響は、一過性のものであり、収束後は、トレンドに向かって、V字で回復して行く。災害は、経済の構造を変えるものではないからだ。他方、消費増税による高い税率は、消費を抑制する新たな構造を作ったものなので、トレンドを寝せてしまう。2014年からの8%の消費税率は、消費の増加速度を極めて緩慢にしたが、2019年以降の10%税率は、ほぼゼロにすると見込まれる。

(図)


………
 新型肺炎の影響によって、輸出とインバウンドが低下し、1-3月期もマイナス成長は避けられないだろう。景気対策も叫ばれようが、定番の公共事業は、消費増税への対策で伸び切っている。アベノミクスは、2度の消費増税によって、消費が増えない経済構造に改革してしまった。これは経済成長の放棄とほぼ同義である。経済成長より財政再建を優先し、家計を犠牲にして赤字の削減に励むうち、行き着いてしまったのである。


(今日までの日経)
 外出自粛、消費にブレーキ 新型肺炎で 大阪など人出急減。
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2/20の日経

2020年02月20日 | 今日の日経
 予想していたとおり、10-12月期GDPの家計消費(除く帰属家賃)は、-3%を超える急落となった。やはり、消費増税の破壊力は、凄まじい。設備投資も、鉱工業指数の資本財出荷が相当悪かったので懸念していたが、そのとおりになってしまった。昨日公表の12月の機械受注では、製造業は、輸出の停滞を受けて、相変わらず低迷し、非製造業は、前月の反動減で大きく下がった。1-3月期の見通しが-6.7%と、製造業以上に悪いのも痛い。増税で消費を潰したのだから当然で、これで成長が保たれると考える方がどうかしているわけだが。

(図)



(今日までの日経)
 設備投資腰折れ懸念 外需停滞、内需に波及 機械受注、1~3月も減少予想。増税後景気、増す不安 GDPゼロ%台予測 1~3月、弱い消費に肺炎追い打ち。

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出生数の減少と若者の生活条件

2020年02月16日 | 社会保障
 2019年は、出生数が86.4万人と、前年より5.4万人も減少した。合計特殊出生率は、2016年、17年、18年と3年連続で低下してきたが、19年も低下すると思われる。2016年以降の特徴は、出生年齢の上昇幅が縮小しながら、低下してきたことである。こうした傾向は、1997年~2001年の景気後退局面でも見られたものなので、若者の生活条件の改善があまり進んでいないのかもしれない。

 政府は、多子世帯の支援を拡充するようだが、非正規へ育児休業給付を拡げるのはどうか。雇用保険で行うものなので、中期的に保険料率を引き上げれば良いから、当面の財源問題はないし、若者の生活条件の改善、特に低所得層に効くため、少子化対策としては、最も効率が高いと思う。こども手当や教育無償化の際に無視されてきた乳幼児期の支援の強化になり、保育需要を下げることにもなる。

(図)



(今日までの日経)
 厚労相、国内感染「従来と異なる」。早期発見・治療に重点 新型肺炎、市中で感染拡大か 水際対策から転換。「子ども複数」世帯の支援拡充 政府が少子化で追加対策。新型肺炎 国内初の死者 神奈川の80代、渡航歴なし。中国就航の国際線67%減 観光・高額消費に打撃。

※新型肺炎について、東北大の押谷仁教授が言われる「熱や咳のある人が無理して出社して職場で感染を拡げるというようなことは絶対に避けなければならない」は、企業経営にある者が特に心したいものだ。

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2/12の日経

2020年02月12日 | 今日の日経
 1月の景気ウォッチャーは、前月比+2.2となったものの、基調的な雇用関連が-1.0と未だ下げ止まらない状況にある。全体的に見て、低下のスピードが遅くなったくらいに過ぎない。新型肺炎の影響は、調査時期が下旬なので1月の「現状」にも及んでいるが、「先行き」が前月比-3.7と大きく低下する要因となった。1月の「現状」の「合計」の水準は、既に民主党政権下の2012年の底を下回る。そこにネガティブな要因が加わることになる。

(図)



(今日までの日経)
 中国、特許9分野で首位 AIや再生医療、日米を逆転 質は米企業上位。米財政赤字「5年で半減」 トランプ政権。上場企業の減益幅拡大 今期予想 増税 非製造業も減益。

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マイナス成長のちゼロ成長

2020年02月09日 | 経済
 消費増税の駆け込みの反動減があるので、10-12月期がマイナス成長になるのは確実で、世間的にはともかく、専門家的には、どのくらいの深さになるかが焦点である。そして、次の1-3月期は、反動減からの戻しがあるから、明確なプラスになるのが順当である。ところが、12月の経済指標が非常に弱く、ゼロ成長にとどまるおそれが出てきた。これに、2月以降は、新型肺炎の影響による下押しが加わる。消費増税の税率の重さは深刻であるのに、一時的な要因に紛れて、普通の人には実態が分からないものになっている。

………
 金曜にCTIマクロが公表され、12月の実質は99.1と前月比-1.1だった。これで10-12月期の前期比は-3.5にもなる。2014年の消費増税の2か月後は、99.5だったから、これを下回り、アベノミクスでの最低水準である。前回増税では、3か月以降、反動減からの戻りは見られなくなったので、今後は、この12月の水準で推移すると予想される。すると、1-3月期は、ほぼゼロ成長に止まることになる。

 1-3月期は、反動減で大きく下がった10月を含む10-12月期との比較になるから、上がって当然なのに、ほぼ変わらない水準となるのは、低調さの証である。その意味で、12月のCTIの低迷は、非常に痛い。前回増税では、その後、輸出の好調を背景に、消費も少しづつ回復していったが、今回は、輸出の停滞どころか、新型肺炎が下押しする形となる。増税によって、ただでさえゼロ成長なのに、マイナスへと引き込まれる恐るべき展開となろう。

 10-12月期のマイナス成長に続く、1-3月期でのゼロ成長のリスクは、鉱工業指数でも見られる。12月の出荷は96.4と、10-12月期の97.0を下回っているからだ。これも、かなりまずい。鉱工業出荷は、7-9月期の前期比が-0.0と駆け込みらしきものが見られなかったにもかかわらず、10-12月期は前期比-5.2ものダウンに見舞われた。その後がゼロ成長では、あまりに打撃が大きい。その中でも低調なのが消費財であることは言うまでもない。

 台風の影響の後で、新型肺炎の前の12月がこの有様では、消費増税の打撃は大きかったと考えざるを得ない。しかし、GDPは四半期ごとなので、10-12月期は反動減と台風、1-3月期は新型肺炎と、印象的な出来事に引っ張られ、普通の人には実態がつかめないと思う。12月の景気動向指数は、リーマンショック以来の5か月連続の「悪化」という深刻なものだったが、これが続いても、災害だから仕方ないという受け止めになるのではないか。

(図)


………
 アベノミクスは、消費を圧殺し、輸出とインバウンドに頼ってきたので、消費増税を敢行したタイミングで、新型肺炎による中国経済の急減速に見舞われるのは大きな痛手だ。とは言え、一般に、災害による経済への打撃は一時的で、東日本大震災の後の日本もそうだったように、収束後は元のトレンドに戻るべくV字で回復するものである。いまだに収束のめどは立たないものの、それまでの辛抱だと覚悟することが大切である。 

 ただし、重くした消費税率が元に戻ることはない。景気や所得が回復しても、消費の回復は鈍いだろう。より強いブレーキにした以上、回復が遅くなった2014年の増税以降と比べても、更に低いものとならざるを得ない。経済対策も、消費増税への対処で伸び切って、新たに有効な手段を探し当てるとは考えがたい。こちらは、緊縮財政を当然視する価値観を改めぬ限り、終わりなき戦いとなる。


(今日までの日経)
 中国依存 もろ刃の剣 生産100億ドル減なら国外影響67億ドル。景気指数「悪化」5カ月連続 12月、リーマン危機以来 個人消費も停滞。パート賃金が頭打ち 昨年の毎勤統計 時給最高も「年収の壁」。

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2/5の日経

2020年02月05日 | 今日の日経
 今週前半は、主な経済指標の公表はないので、先週金曜の新規求人を取り上げると、下図のとおり。12月は底入れしたようにも見えるが、昨年12月が急伸したウラが出ているので注意が必要だ。むしろ、低下傾向の中で、消費増税後の10-12月期が一段と水準が落ちていることに注目したい。そして、今年に入って、新型肺炎である。消費増税で内需を潰し、輸出とインバウンド頼みになっているだけに厳しい。

(図)



(今日までの日経)
 新型肺炎、車生産に影響浮き彫り 現代自が工場停止。中国の戦略都市、機能不全 新型肺炎。春節商戦 百貨店の免税売上高2桁減。団体客40万人キャンセルか。

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アベノミクス・増税で景気は破断せり

2020年02月02日 | 経済(主なもの)
 12月の商業動態・小売業は前月比+0.2の微増にとどまり、早くも、反動減の戻しの勢いは消えた。10-12月期の前期比は-6.5にも及ぶ。2014年の消費増税時の-7.7よりマシに見えるが、前回の直前の駆け込みが+4.4だったのに対し、今回の7-9月期は+3.3と小さめだったことを踏まえると、種々の手立ての甲斐もなく、前回と同様の大打撃を被ったと評せざるを得ない。今後は、L字型の展開が予想されるところであり、増税という意図的な政策によって、景気は破断するに至ったという結論になる。

………
 10-12月期の商業動態・小売業は大きく下落し、鉱工業指数の消費財出荷も前期比-6.1と急減した。来週公表の日銀・消費活動指数のマイナスは4%にもなると見られる。比較的、安定しているCTIマクロでも3%弱のマイナスであろう。こうなると、GDPの家計消費(除く帰属家賃)は、アベノミクスで最低の2014年4-6月期を割るかはともかく、最低水準に陥るのは確定的だ。これは、民主党政権下の2012年さえ下回るものである。

 今後の消費については、1月消費者態度指数が前月比横バイであり、景気を先導する輸出などの指標が低迷していることから、L字型の展開になる公算が高い。アベノミクスの間に、消費税率で+5%、年金保険料率で+1.53%の引き上げがあり、緊縮財政が敷かれたのだから、消費がまったく増えないのは、むしろ、当然だ。それでも、輸出とインバウンドにより、女性と高齢者を中心に雇用増を確保できたことの方が特筆されよう。 

 その輸出は、日銀・実質輸出入で見て、12月は+1.9となったものの、10-12月期は前期比-0.8と減少しており、下げ止まりとは、まだ言えない状況にある。そこへ、新型コロナの蔓延だ。中国の生産活動の停滞と来日観光客の減少は、一過性であるにせよ、影響が出よう。前回の増税の際も、輸出が減退しただけで、消費はズルズルと低下した。今回はインバウンドが加わるから、拡がりは、それ以上である。

 もう一つの景気の先導役である住宅は、着工戸数が12月こそ前月比+1.8となったものの、10-12月期は前期比-4.4万戸と、4期連続の減少となり、下がり幅も大きい。頼みの公共事業にしても、建設業活動指数の11月までの数字を見る限り、ようやく底打ちをしたくらいだ。アクセルを吹かそうにも、人手不足で執行が難しくなっているため、せっかくの補正予算も、繰り越しの増加につながりかねない。

 また、今回の経済指標で特徴的なのは、設備投資関係の激しい落ち込みである。10-12月期の鉱工業指数の資本財(除く輸送機械)の出荷は前期比-6.6、資本財輸送用が-9.4、建設財建築用が-4.8である。増税の駆け込みの反動などの特殊要因が含まれるにしても、落ち込み幅は大きい。こうなると、設備投資は、製造業が輸出に従い、非製造業が建設投資をなぞるので、こちらにまで不調が及ぶのはやむを得ないところだ。

(図)


………
 今回の消費増税についても、「不運にも、増税に台風や新型コロナが重なった」と語られることになろう。しかし、消費増税の打撃からの立ち直りには、順調な環境が1年以上は必要で、時間を費やしているうちに、大なり小なりリスクが顕在化するのは避けられない。不運に脆弱な状況をわざわざ作るようなことをしていたら、やはり、不運に巡り合ってしまう。それは、悲劇というより、未必の故意によって招いた政策不況と言うべきであろう。


(今日までの日経)
 中国経済 春節明けも休止 新型肺炎 8割地域で生産再開延期。英離脱 戦後秩序に幕 EU、結束へ正念場。

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