経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

2/27の日経

2019年02月27日 | 今日の日経
 今週前半は、主な統計の発表はなかったので、前回のコラムの関連で、一般政府の部門別勘定から、「受取利子-支払利子」を貼っておくよ。2006年度までは、中央政府の利払が減るのと対称的に、社会保障基金の受取が減るという構図だった。地方政府は、2000年以降、利払は減り続けている。アベノミクスの下では、社会保障基金の受取が増加に転じたことによって、一般政府の利払が過去25年で最も少なくなっている。国の予算の利払費の推移とは、また違った動向が分かると思う。

(図)



(今日までの日経)
 中国の対米輸出 日本が付加価値 日本の部品使い完成品 総額では3.8兆円「貢献」。

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消費増税は何のため・失われた20+α年

2019年02月24日 | 経済
 財政収支の指標としては、プライマリーバランスがよく使われるが、それに限られるわけではない。GDPの部門別勘定における「貯蓄(純)」も、実態を知るために、とても貴重なものだ。そこから見えるのは、デフレと本物の財政危機をもたらしたのは、消費増税を中心とする緊縮財政だったという、やるせない事実である。消費増税自体が目的ではなく、手段だとすれば、一体、何のために行うのか、よく考えるべきだろう。

………
 そもそも、貯蓄(純)とは、プライマリーバランスを算出する下地になるものであり、これに「資本移転」、「固定資本形成」等の増減を調整した上で、利子の受け払いを差し引いたものだ。ざっくり言えば、財政収支から公共事業を除いたイメージである。公共事業は、国債で賄うとしても、インフラの実物資産が残り、次世代の便益にもなるから、これを除いた収支にも十分な意味がある。

 意外にも、貯蓄(純)は、1997年に消費増税をするまでは、黒字だった。確かに、中央政府は赤字だったが、地方政府がトントンで、社会保障基金が黒字を出し、これらを総合した一般政府は、若干の黒字になっていた。この1997年度には、消費増税だけでなく、特別減税も廃止し、社会保険料を上げ、公共事業まで削減して、12兆円ものデフレ圧力をかけたが、こうした度外れた緊縮財政を焦って打つ必然性は何もなかったのである。

 そして、悲惨なことに、名目雇用者報酬がピークの1997年度から2003年度までに25兆円も減少し、これがベースの社会保険料が伸びなくなり、社会保障基金の収支は見るみる悪化して、一般政府の赤字は27兆円にまでなってしまった。賃金が伸びなければ、当然、消費も増えず、物価も上がらない。日本の経済構造が壊れ、雇用の劣化で社会は変質した。過激な緊縮財政によって、デフレと本物の財政危機が現実のものとなったのである。

(図)



………
 愚行から時間が経つと、生々しい実体験の記憶が薄れ、「デフレ転落は、消費増税でなく、大型金融破綻やアジア通貨危機のせいだ」とする説が生まれてきたが、これらは緊縮に端を発する一連のもので、責任回避に利用する以外に、あまり意味はない。少なくとも、リーマンショック前後の2007年度から2009年度にかけて、実質輸出が14兆円減少したのに匹敵する需要ショックを自ら課したわけで、無事で済むはずがない。 

 1997年の悲劇は、当時、鈴木淑夫先生が記した「月例景気見通し」で分かるように、大型金融破綻が勃発する前に、在庫の激増、生産見通しの急速な低下、機械受注の停止、賃金・雇用の悪化が見られ、本格的な景気後退は確実視されていた。金融危機の金づまりでは往生させられたが、この頃には設備投資の意欲は失われており、そこに輸出の失速が重なって、恐慌状態に陥るのである。

 2014年の場合も、警戒にもかかわらず、在庫が急増し、生産低下から雇用調整になりかける冷や汗ものの経過をたどった。幸いにも、順調な輸出が支えとなって、逆回転に至らずに済んだが、いつもツキに恵まれるとは限らない。現在の経済の構造は脆弱で、輸出が停滞へと変わった2015年と2018年には、ゼロ成長状態に陥った。今年の消費増税は、緊縮幅は前回より小さいにせよ、輸出の見通しは厳しく、大きなリスクが潜んでいる。

………
 結局、なぜリスクを取るのかである。日銀・資金循環の動向からすれば、2018年度の貯蓄(純)は、前年度同様の改善を見せ、財政収支の赤字は、GDP比2%を切り、過去20年で最善のところまで行くだろう。財政再建を焦って、失われた20年を更に延ばす危険を犯す必然性は何もない。2014年の賭けをしのいだと言って、賭けを繰り返すのは愚かだ。自然増収で地道に財政収支の改善を進めれば良いだけのことである。民主党政権が仕込んだ急進主義の呪いに縛られることはあるまい。


(今日までの日経)
 住宅価格 世界で頭打ち 経済の下押し要因に。生産判断40カ月ぶり下げ 2月の月例報告 電子部品の出荷が減速。

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2/21の日経

2019年02月21日 | 今日の日経
 景気動向は、黄信号が灯ったね。1月貿易統計が公表されて、日銀・実質輸出は前月比-5.9となり、10-12月期平均からは-6.2も下がる。変動幅も大きいし、水準もかなり低い。春節の影響を見るため、2月に確かめる必要はあるが、それで数字が悪ければ、もう赤信号だ。来週末、1月の鉱工業指数が出るから、その予測指数によって、見通しもついてくるだろう。ついに、チャイナショックが始まったというところかな。ハチに刺されたくらいで済めば良いのだけれど。

(図)



(今日までの日経)
 対中輸出、アジア各国で減 米中摩擦長期化で加速も 日本、1月17%減

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2/19の日経

2019年02月19日 | 今日の日経
 12月機械受注の発表があり、10-12月期の民需(除く船電)は、やはり、前期比-4.2%と6期ぶりのマイナスとなった。1-3月期の見通しも、達成率が落ちたこともあり、-13.0%とマイナスになった。内閣府は、基調判断を「足踏みがみられる」に下方修正している。輸出が停滞しているのだから、製造業が下がるのは、やむを得ない。むしろ、非製造業が健闘していると思えるくらいだ。2014年増税の際は、3四半期くらい前から「駆け込み投資」が見られたので、今回も粘りを見せるかもしれないが、むろん、後が怖い。

(図)



(今日までの日経)
 上場企業3期ぶり減益へ 車・部品や電機失速。機械受注が急失速 1~3月もマイナス予想。日銀「爆買い」に限界論。
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10-12月期GDP1次・2018年間はマイナス成長を記録

2019年02月17日 | 経済
 バレンタインデーに公表された10-12月期GDP成長率は、実質年率で+1.3%だった。前期の災害に伴う急落からのV字回復が期待されたが、半返しにとどまり、見た目とは違って、かなり重大な局面に至っている。実際、2018暦年の実質GDPは、前年10-12月期と比べ、わずかながらマイナスとなり、この1年間、まったく成長していないことが示された。輸出の増加が止まり、GDP比1%強の緊縮をした結果がこうであれば、次の2019年は、輸出が減退する可能性が高く、消費増税も敢行するわけで、再びのマイナス成長が懸念される。

………
 10-12月期の実質GDPは534兆円と、前年同期とほぼ同じになり、2018暦年でも534兆円にとどまって、この1年間は、まったく成長できなかったことが示された。一般的な暦年どうしの比較だと、2017年内の成長が影響するため、+0.7%成長となるが、直近の1年間はゼロ成長というのが実態に即した見方となる。そこで今回は、2018暦年と1年前の2017年10-12月期の数字を比較することによって、実態の分析を試みたい。

 まず、輸出は、ほぼ横バイである。2017年は勢い良く伸びていたのが失速した形だ。また、住宅投資も、貸家建設の節税ブームが去って、減少に転じた。さらに、公共投資は、2017年7-9月以来、6期連続の減少を続け、景気の足を引っ張っている。公的需要は、若干の増となった政府消費と合わせても、マイナスに終わり、この1年、成長にまったく貢献しなかった。他方で、税収や保険料が大きく伸び、財政収支は大きく改善している。

 次に、家計消費(除く帰属家賃)は、年の後半に、多少、上向いたものの、微増にとどまった。暦年の238兆円というのは、アベノミクスの始まった2013年1-3月期の239兆円よりも低い数字である。アベノミクスは、金融緩和で円安にして、輸出でGDPを伸ばし、緊縮で財政収支を劇的に改善した一方で、国民の生活水準は、少しも良くできなかった。2018年もまた、政策どおりの結果を如実に表したとしか言いようがない。

 2018年の成長で、一人気を吐いたのは、設備投資であり、1.8兆円増の+2.1%となった。背景には、景気を牽引する輸出が、停滞しつつも、小康を保ったことと、ゆっくりとではあるが、経済活動のレベルが着実に高まり、人手不足が進んできたことがある。景気拡大の段階としては、スターターの輸出等の3需要から自立し、設備投資が先導し始め、消費がついて来るという、在るべき姿に移行している。これを増税で壊すのは、もったいない。

(図)



………
 今後については、10-12月期は消費と設備投資が成長を支えたが、次の1-3月期だと、なかなか厳しいものがある。まず、家計消費(除く帰属家賃)は、消費増税前でさえ前期比+0.4位だったから、今回の前期比+0.65は、さすがに出来過ぎであり、消費総合指数の推移では、反動増の10月が高く、12月には、9月並みに戻ったため、あまり伸びないと見るべきだろう。加えて、1月の消費者態度や景気ウォッチャーが大きく落ち込んでいることも悪材料だ。

 また、設備投資に関しては、先行指標の機械受注は、12月分の公表前ではあるものの、10-12月期は、低下が見込まれる。製造業の設備投資に影響する輸出も、1月は下落する可能性が高い。残るは、鉱工業生産の資本財(除く輸送機械)の予測指数が上向きなだけだ。設備投資の自律的成長は、輸出が増えないまでも、崩れないことが前提であり、これが変わると、緊縮で弱々しい内需では支え切れず、景気の局面転換まで至るおそれがある。

 結局、「アベノミクスは、戦後最長の景気拡大」とされつつも、2018年7-9月期がピークだったことになるかもしれない。今回のGDP速報では、名目の原系列だと、2四半期連続のマイナス成長に陥っている。迫りくる景気後退の中、消費増税に挑むという、極めてまずい展開となりつつある。3月初めに、2019年度予算の衆院通過によって自動成立が確定し、悪い経済指標が出始めたら、緊急脱出プログラムを検討すべきだ。

 こんな情勢では、チャイナ・ショックでも、ハード・ブレグジットでも、避けられないのなら、早く起こってもらいたいくらいだ。誰もが知る目立つ出来事があれば、リーマン並みでなくとも、政治情勢は大きく変わるだろう。野党が面倒な条件を付けずに、増税延期への協力を申し出れば、与党は耐えられないのではないか。思えば、教育無償化が一気に具体化したのも、あの希望の党が増税凍結を言い出したことへの対抗からであった。

………
 アベノミクスの6年間で分かるのは、緊縮の下にある日本経済は、輸出が鈍ると、成長が滞るという単純な事実だ。2018年は、輸出増が停止し、ゼロ成長に陥るという、まさに典型となった。そんな日本経済で、輸出が崩れたら、マイナス成長へ転落すると見るのは、素直な見方ではないか。しかも、消費増税まで背負おうというのだ。日本経済は、いつも、なされた政策どおりの結果を残している。思いどおりにいかないと感じるのは、実際に何をしてるのかを知らないだけのことである。 


(今日までの日経)
 中国企業、ドル調達苦戦。日本の通信23位に転落。中国、住宅市場に変調。内需堅調、輸出に影 1~3月GDP 実質1.3%増。富裕層厚み、高額品攻勢 資産1億円世帯26%増。

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2/14の日経

2019年02月14日 | 今日の日経
 昨日、内閣府・消費総合指数が公表され、12月の消費指標が出そろった。日銀・消費活動指数とは動きが分かれたので、今日、発表のGDPがどう出るか楽しみだね。そんな中、総務省・消費水準指数は、この12月が最後の公表となり、CTIに道を譲る。使いにくいと散々に批判された家計調査の指数だが、移動平均を使えば、十分に動向は分かる。要は使い方であり、物価上昇に弱いクセを知っていれば、むしろ、庶民の敏感さが役に立った。他方、新しいCTIは安定していて、誰でも使いやすい。こんな地道な改善に感謝しつつ、あって当たり前と思わず、統計を利用したいものである。

(図)



(今日までの日経)
 工作機械 内需も減少鮮明 1月受注額18%減 中国向けなお低迷。不祥事対応の第三者委報告書 公表リスク、悩む企業。

※製造業の企業収益の下方修正も相次いでおり、景気の先行きが心配だ。
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緊縮速報・賃金伸び悩みの原因とは

2019年02月10日 | 経済(主なもの)
 売上が立たねば、賃金も上げられない。政府が緊縮を敷き、GDP比で1%超も資金を吸い上げていたら、内需が伸び悩むのも道理であろう。政府ができることは、緊縮を加減して内需を伸ばし、賃上げを促すことだが、政府予算案の緊縮度合いについては、ロクに議論もされず、去年の実質賃金がマイナスだったか否かで白熱しているようだ。アベノミクスが、輸出を増やした反面、内需を低迷させたことを踏まえ、どう直すかの主張があって然るべきだと思う。

………
 2/1に公表された国の税収の12月実績によれば、2018年度の累計額は、前年同月比+4.2%となっており、補正予算の見込む税収額59.9兆円(前年度決算比+1.9%)を大きく上回るのは、確実な情勢である。その分だけ予定外の緊縮となるわけで、本コラムの予想額は、法人税の増加率が企業業績見通し並みになるという設定で、61.1兆円まで上ブレすると見ており、緊縮幅は1兆円超に及ぶだろう。

 同じく緊縮の状況を、日銀・資金循環統計の一般政府の資金過不足で見ると、2017年にGDP比-3.5%の赤字だったものが、2018年は、最新の7-9月期までの4期移動平均の水準が維持されると仮定すれば、-2.1%まで改善すると見込まれる。昨年は、輸出が衰える中、内需も緊縮で低迷させたわけで、実質成長率が0.7%程に落ちるのも仕方あるまい。してきたことに照らせば、賃金の伸び悩みを嘆くより、赫々たる財政再建を誇るべきところだ。

 1/30に公表された「中長期の経済財政に関する試算」では、基礎的財政収支の赤字をゼロにするのが、目標の2025年には1年遅れるものの、従来より1年早まることが示された。しかも、「試算」の税収は、実勢より低い予算額を出発点に計算されているため、税収の上ブレによって、基礎的収支は、更に上方へシフトする可能性が高い。本コラムの税収予想を基にすると、下図の緑線のとおりで、2024年には、財政再建の目標を前倒しで達成できることが分かる。

 税収予想については、2018年度はともかく、2019年度は不確定要素が多いものの、少なくとも、現下の財政状況には多少の余裕があり、景気失速の恐れを犯してまで、緊縮を進める必要はない。つまり、緊縮を緩め、非正規への育児休業給付を実現して出生率を高めるといった施策への還元は十分可能であり、そうした議論こそが内需を高め、賃金上昇を促進することにつながるのである。

(図1)


………
 一方、緊縮は、国・地方の財政ばかりでなく、2019年度は、社会保険でも、しっかり行われる予定である。日本では、政府全体の収支は視野の外に置くため、こうした事実は、指摘されることもない。社会保険で大きな黒字を出すのは年金なので、1/28公表の「平成31年度予算の説明」から、厚生年金の収支を取りだすと下図のとおりとなる。前年度より更に収支差が狭まり、約0.4兆円の緊縮になっていることが分かる。

 保険料収入は、前年度比+0.6兆円(+1.9%)と、2018年度が+1.2兆円(+3.3%)だったことを踏まえると、やや控えめな設定である。他方、保険給付費等は、前年度比+0.4兆円と、2018年度の+0.8兆円から半減しており、支給開始年齢引上げの効果がうかがわれる。過去の傾向から、保険料収入等は低めに、保険給付費等は高めに見積もられていると考えられるので、決算ベースでは、2018年度に収支が均衡し、2019年度は黒字が拡大すると予想される。

 厚生年金の給付額については、2018年の消費者物価上昇率が+1.0%だったのに対し、2019年の改定は+0.1%に抑制され、実質的に0.4兆円ほど目減りする。物価指数の上昇幅は、2012年から+5.1にもなるのに対して、年金額の改定幅の累計は、-0.8と逆に下がっている。負担と給付のバランスを取るために必要なこととは言え、60歳以上の世帯主が半数を超える現状では、賃金が上昇しても消費が伸びない原因の一つである。

 現役世代の減少を踏まえれば、年金給付の抑制はやむを得ないにせよ、その分、政府全体での財政収支の健全化が進むわけだから、これを活かして、少子化対策を拡大する発想が求められる。緊縮の一本槍では、成長を抑制するだけになるため、成長の基盤となる人的投資に還元し、出生率を高めれば、ストレートに年金給付の改善につながる。そうして成長が高まるなら、財政再建も早まるというものだ。

(図2)


………
 金融緩和によって、輸出や民間の建設投資を高め、雇用の量を増やしたことは、アベノミクスの成果と言えよう。他方、緊縮財政によって、財政再建を進め、内需を弱めたことは、利点でもあり、欠点でもある。世界経済の減速によって、輸出の雲行きが怪しくなる一方、財政収支は、既に大きく改善しているのだから、現実主義に基づいて、軌道修正を図るべきである。その具体策の提案が求められる。


(今日までの日経)
 貿易戦争 デフレ圧力招く。超高級車販売 5年で国内3倍。自動車・非鉄、2割減益 中国減速、下方修正相次ぐ。欧州景気、減速鮮明に。核条約の死 日本の選択は。中国企業の失速鮮明 18年、1000社減益 赤字も1割。

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2/6の日経

2019年02月06日 | 今日の日経
 金融緩和はヒモで押すようなもので、不況には効き目が薄いというのは、ケインズの時代から言われていたことで、アベノミクスも、その轍を踏んでいるだけである。金融緩和の直接的な効果は、輸出と住宅に及ぶに過ぎず、これらが「不発」に終わった上に、緊縮を重ねたことがアベノミクス失敗の理由である。

 他方、財政出動も効果がなかったという説も根強い。事実として、「失われた20年」では、拡張は一時で、緊縮が大半だから、話にならないのであるが、赤字があるうちは、赤字が縮小しても緊縮ではないという誤った感覚が強いようで、この上は構造改革しかないと、あらぬ方向へと迷走してしまう。 

 事実をGDPの年次推計でプライマリーバランスを見れば、下図のとおり。過去20年のうち、一般政府の合計が下向きの拡張になった年度は、1998、2002、2008、2009年の4回だけ。1998年は、前年に度外れた緊縮財政を試みて経済構造を壊し、自ら本物の財政危機を招いた時で、2008~09年はリーマンショックのときだ。

 リーマン前は、成長を輸出に頼り、緊縮で内需を育てなかったために、輸出の崩壊で元の木阿弥となった。アベノミクスも基本は同じである。したがって、最も怖いのは輸出を失うこと。日本経済は、賽の河原をしているように思える。現実から目を逸らさず、財政無効説から早く脱してほしいものだね。

(図)



(今日までの日経)
 「日本製」アジア輸出加速 資生堂、九州に新工場。中国減速、企業業績に影 10~12月、日本・アジア減益 米欧も伸び鈍る。

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アベノミクス・景気後退期にある可能性

2019年02月03日 | 経済(主なもの)
 災害のあった前期の反動増で高めに出るはずだった10-12月期GDPは、落ち込みを埋めることもできそうにない厳しい状況にある。そうすると、次の1-3月期次第では、景気のピークは前々期の4-6月期だったことになってしまい、今は、既に景気後退期にあるという位置づけとなる。1-3月期の成長が年率1.6%を超えて来れば、景気拡大は続いていることになるにせよ、簡単ではない。そして、景気維持の最後の砦は、消費になるが、10月には増税で着実に潰す予定だ。この国は、一体、何を目指しているのだろう。

………
 12月の鉱工業指数は、出荷が前月比+0.3となり、10-12月期の前期比は+1.9と、わずかながら、前期の減を埋め切れなかった。図でも分かるように、昨年春頃のピークを超えられずにいる。今後についても、生産予測を見る限り、良くて横バイで、低下する可能性が高い。特に痛いのは、設備投資の動向を示す資本財(除く輸送機械)が勢いを失っていることだ。長く続いた在庫の低下も止まり、上昇の兆しさえうかがえる。

 また、設備投資に先行する機械受注は、7-9月期まで増勢を保ってきたが、10-12月期は、6四半期ぶりにマイナスを記録しそうである。自律的成長は、設備投資が伸び、消費が追い、設備投資が応じる循環で進む。いったん、設備投資の伸びが止まっても、消費が持つうちは、再開の希望があるが、消費が崩れてしまえば、それも失われる。今年は、その消費を緊縮で抑制している上に、直接、増税で圧する予定であることがいかにも拙い。

 消費については、主要指標の公表はこれからだが、12月の商業動態を踏まえると、10-12月期は、前期比+0.8程の高いものになりそうだ。消費だけは、前期の減を大きく超える形である。内容的にも、景気上昇期に伸びる自動車や衣服等が好調だ。ただし、石油や生鮮の物価低下の後押しもあってのことで、今後は、1月の消費者態度指数が前月比-0.8と、3か月連続の低下になるなど不安がある。その中でも雇用環境の低下は著しい。

 実際、12月の職業紹介では、新規求人の前年同月比増加数が、災害の9月以来、3か月ぶりに、再びマイナスをつけた。労働力調査では、10-12月期の雇用者数は、前期比+5万人とどまり、増勢は明らかに下がっている。気になるのは、女性の雇用者数が、夏以降、頭打ちになっており、11,12月には低下していることだ。消費者態度や景気ウォッチャーが厳しさを増しているのには、実体的な理由がある。

(図)



………
 10-12月期のGDPについては、本コラムは、実質で前期比+0.3ほど、年率1.1%成長くらいと予想する。これはコンセンサスに近いのではないかと思う。消費が大きく伸び、設備投資も高い。ただし、災害後の回復生産で稼いだ分が多くを占め、むしろ、勢いは弱まっている。外需は、輸出が回復を見せたものの、それ以上に輸入が嵩み、大きめのマイナス寄与になりそうで、成長率を大きく下げる要因となる。加えて、公共投資は、大きく足を引っ張った前期に続き、マイナスは6期連続になると見られ、緊縮の成果がしっかり出る見通しだ。

 問題は、次の1-3月期である。反動増、物価安、ボーナス増など、消費を高めた一時的要因が抜け、地力が問われるわけだが、雇用環境の停滞を踏まえると、なかなか厳しい。輸出や設備投資でも、反動増要因の剥落があるため、多くは期待しがたい。住宅については、持家と分譲に消費増税前の駆け込みが出始めても、貸家は、融資が締まって、着工の底入れもできていない状況にある。

 おそらく、2019年度予算が成立する頃には、経済の厳しい実態が次第に明らかになって、「これで本当に消費増税なんてできるのか」となろう。そもそも、2018暦年の家計消費(除く帰属家賃)は、2013暦年の増税前水準を回復できない。他方、財政赤字については、2013暦年にGDP比-7.7%もあった一般政府の資金過不足の赤字は、2018暦年には-2.0%を切るところまで大幅に改善している。

 それにもかかわらず、まだ消費を犠牲に、緊縮を続ける様相だ。もっとも、こんなことをしている意識は、まったくあるまい。政治的な予算数字しか見ず、最新の統計データは無視されているからである。苦心の統計データも活かさねば意味がない。大隈重信が言うように「施政の結果を鑑照せざれば、利弊を知るに由なし」だ。財政整理の中で、統計の重要性を痛感し、整備に努めた故事は、未だ今日的である。


(今日までの日経)
 高齢者向け賃貸住宅 安いほど要介護者流入。日常的に医療ケア必要な子 10年で2倍。女性就業率5割超す。FRB、追加利上げ休止 資産縮小早期終了。

※ 総務省によれば、厚生労働省の統計職員数は、2009年から2018年の10年で46人減となっている。国家公務員の年収は約670万円だから、この間に節約できた人件費は、ざっと1.5億円程だろう。もし、毎勤統計のたった1人のプログラム担当者を二重にし、母数復元のミスを防いでいたら、労働保険の追加給付に必要な195億円の事務費は不要だった。少しの人件費を惜しんで巨大なリスクを犯す、やってはいけない合理化の典型だろう。

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