経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

10/31の日経

2012年10月31日 | 今日の日経
 昨日の9月の家計調査の結果は衝撃だったね。6、7月と天候不順もあって落ち込み、8月に戻したものの、逆戻りである。9月も、長い残暑とか、学費支払い時期のズレといった特殊要因はあるものの、消費失速の原因を考えなければなるまい。

 一つ考えられるのは、今年前半の生産回復が、4月からの年少者控除の廃止、公務員給与のカット、子ども手当の削減といった「デフレ促進策」を覆い隠していたかもしれないことだ。心配はしていたが、影響が見られないことに安堵していたが、ボディーブローのように効いていて、生産回復の波が去った時点であらわになったのかもしれない。

 今や景気対策の必要性が叫ばれているが、消費を減らす「デフレ促進策」をしておいて、全国防災のバラマキをするのかと思うと、日本の経済運営は何なのかと思ってしまう。景気回復局面における波及力の弱さを再認識させられた。家計消費は10月には多少戻すようにも思うが、踊り場局面となり、拡大への動きは緩慢なものになろう。

(今日の日経)
 日銀が11兆円の追加緩和、政府と初の共同文書。展望リポート14年度0.8%見通し。エコノミスト出身者が異論。景気、後退局面の懸念、生産落ち込み、雇用にも陰り。自民総裁・消費税上げ難しい。予算執行抑制に年金が候補。中国、太陽電池を救済。火力建て替えに東ガス応募。大機・日中エリゼ条約。経済教室・ネット集合知・西垣通。都内出生率6年ぶり低下。

※エコノミスト出身者が踏ん張ったようだね。良くぞ政治的圧力をはね退け、1%を切る見通しにしてくれた。むろん、これでは消費増税は1%アップがせいぜいである。
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10/30の日経

2012年10月30日 | 今日の日経

(今日の日経)
 中国リスクが収益圧迫。北海道節電7%軸、今夏並み。予算案は来月中旬に骨格。全国3万棟の節電支援。一目均衡・その後のボーダフォン。JR東海が上方修正。経済教室・自社株買い・テキリンユ。やさしい経済学・法人税は私たちが負担・佐藤主光。

※税は立場の弱い順に負担する。立場は経済状況による。法人税が好まれるのは、儲かってない企業は負担が軽いからで、消費税が嫌われるのは、低所得者も否応ないからだ。負担者が分かりにくいからではない。
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Gゼロ時代は来るのか

2012年10月29日 | 経済
 「Gゼロ後の世界」という本を書店で見かけたのだが、米国が衰退すれば、当然、そうなるのであって、特別、興味も覚えなかった。ところが、今週の日経ビジネスに著者のイアン・ブレマー氏が登場し、中国にとって「日本は敵に回してよい国」なのだそうだ。これがとても目を引いた。穿った捉え方だと思う。

 さて、問題は、本当に中国がペースを落としつつも順調に成長し続けられるかである。1980年代に強勢を誇ったソ連は、石油価格の下落とともに1991年に崩壊した。米国を買えると言われた日本のバブルはうたかたで、ハシモトデフレで墓穴を掘り、15年もゼロ成長をさ迷っている。覇権が交代すると言われるときは、それが頂点だったりするのである。

 筆者は、中国経済の消費比率から、早くから6%程度の成長が妥当としてきた。いまや、そうした説も珍しくなくなっている。むろん、これは経常状態のことであり、これまでの高投資の反動で、いったんはこれを突き破る低下を示した後、回復して到達する水準である。経済運営のよろしきを得れば、深い谷を経ずに行き着くことも可能ではある。

 とは言え、経済運営は、何かと政治やイデオロギーに引きずられ、拙いことをやってしまいがちだ。日本だって、財政再建至上主義による、猛アクセルと急ブレーキの財政運営をしていなければ、今のような惨めな状態にならずに済んだ。ソ連だって、外貨が豊富な時に、軍備に蕩尽せず、民生産業の振興に充てていれば、歴史は別のものになったに違いない。

 中国経済の最大の課題は、しばしば言われることだが、貧富の格差の是正である。成長率が低下すると、成長の果実は富裕層にばかり行き、貧困層はゼロ成長ということになる。これは社会不安を呼ぶから、中国共産党にとって恐怖の事態である。当然、最低賃金の引き上げなどで再分配を図ろうとするだろうが、減速経済でどれだけ浸透するやら。また、最低賃金だけでは、食料物価の上昇という副作用も心配しなければならない。

 理想は、中間層を厚くすることだが、これが経済政策では一番難しい。日本の高度成長期では、大企業の労働組合がこの役割を果たしたりした。サービス業の育成の過程で避けがたい生産性格差インフレを受け止められる民主政治もあった。こういう社会的な基盤は、一朝一夕に作れるものではない。

 今の中国にできることは、公共投資などで需要を追加することだろう。もっとも、リーマンショック後と異なり、素材などの設備投資には波及しないから、孤独な戦いになる。また、地方は資金難のようだから、中央政府の背負うものは重い。家電や車の普及策で補おうにも、既に先食いをしている。当然、極端で効き目の薄い政策への反対論も強かろう。

 基本的には、政府需要を拡大しつつ、累進所得税や資産・金融課税を強化して、再分配を進め、インフレを緩和する必要がある。むろん、共産中国だって、これに抵抗する既得権勢力がある。理想的な経済政策を進めることは、政治的に厄介な事柄なのだ。最善の経済運営をして、実現可能な最大限のパフォーマンスを発揮すれば、中国にも着実に大国へと向かう道はある。

 しかし、そうはならないものなのだ。結局は、経済よりも、政治やイデオロギーが優先されるというのが、これまで繰り返されてきたことである。循環で得られる経済力と、堰き止めで得られる政治力とは相克し、与えることを惜しむがために繁栄は霧散していく。それは政治体制のいかんに関わらないのである。

(今日の日経)
 新興国マネーが日本買い。貯蓄性の保険を増やす方向に。核心・徹頭徹尾サイエンスの市姿勢を・滝順一。中国、年内に格差対策案、8年間、成案出ず。新雑誌が40年代独身女性に的。三菱重工は利益と雇用安定を追う。起業で独自のものづくり。デフレの責任は政府61%、日銀20%。中国・所得の20倍でも買える富裕層がいるからバブルが怖い。経済教室・株主期待・川北英隆。科学部を中学に。

※滝さん、限界まで踏ん張った良い論説です。
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10/27の日経

2012年10月27日 | 今日の日経

(今日の日経)
 日本車が中国で年2割減。米は年2%成長に改善・7-9月期。アジアにもう一つ銀行を。広がるミニ後退説。赤字国債は瀬戸際・12月に停止。米消費・懸念は冬籠もり。竹島提訴は先送り。経済対策7500億円・防災減災が目を引く。3メガ銀の最終利益4割減。韓国経済に内憂外患。車の国内販売9月-4.3%に。LIXIL独自エコポイント。官公需4年ぶり1兆円超。

※日本は1996年の好調を見て、翌年に財政の崖をやったからね。※新家さんには悪いが、筆者は宅森派だな。9月の家計消費が何とも読めん。首都圏物販やレジャー・サービスは悪くない気もする。世界経済は、米国すら油断できず、中国はまったく楽観できない。※自民が降りたら株が上がるよ。※本予算の一律削減をして、補正ではロクなものが出せずか。やれやれ。※税収に響くかも。※意外に車の減りは少なかった。
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非正規の低年金

2012年10月26日 | 社会保障
 やはり、日本も、バッドスタート・バッドフィニッシュか。今日の高山先生と白石さんの経済教室である。なかなか得がたいパネルデータを年金定期便に見出した意義ある研究だ。非正規の年金をどうすべきかは、注目されないが、本当に大きな課題である。高山先生がおしゃるように、年金制度の見直しに限界はあるとしても。

 根本は、日本の成長を再開させ、正規の職を多く作らなければならない。世代間の不公平論に踊らされ、増税や負担増、緊縮や社会保障カットを喜ぶ若い人達の姿を見ると、インフレを恐れる資産家や年寄りではあるまいにと思ってしまう。国が正規への転職を支援したところで、おのずと限界がある。

 それでも、若者を採用した事業主の社会保険料負担分を雇用助成金によって実質的に免除するのは一つの方法だろう。雇用助成金を使うと財源が必要になるが、年金は単純に保険料を免除するのでも構わないのではないか。それでも、単純に年金財政が悪化するとは限らないからだ。

 なぜなら、それが追加的な雇用であれば、当面の保険料は増えるし、将来的に年金財政に貢献できる給与水準へ伸びるかもしれない。もし、そうならないとしても、その分を年金受給者全体で薄く負担しても良いではないか。ある程度の保険機能は認められるはずである。また、正規雇用の増大は、結婚確率を高め、出生率を押し上げて、年金財政を好転させる効果もある。

 もっと巨視的に見れば、追加的雇用によって長期的に経済が良くなるのなら、社会的な厚生を高めることになる。労働力をムダにしない経済運営は、最も効率的なものであり、少なくとも、財政赤字の縮減を経済運営の目標に据えるより遥かに有効である。まあ、予算のムダ使い叩きに血道をあげる殺伐とした世相では、そうした発想も湧きがたいと思うがね。

(今日の日経)
 日本郵政が15年秋にも上場、株売却益7兆円。追加緩和に基金増額10兆円軸。復興予算支出54%どまり。なでしこ銘柄選定へ・経産省・東証。中国・口先だけの1兆元投資。ウィンドウズ8発売。キンドルストア開設。大機・真の中小企業支援・春日。経済教室・非正規の低年金が深刻に・高山憲之・白石浩介。

※中国は景気対策をしないのではなく、できないという説が濃くなってきたね。
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負担論の倫理的な考察

2012年10月25日 | 社会保障
 「賦課方式の年金で少子化が起こったら、子供のない人に2倍の負担を課さないと、年金財政の収支は均衡しませんよ」という話をすると、半ば反射的に、「子供を持つか持たないかの権利に干渉するものだ」と来る。もう、慣れっこになった。数理的な事実を言っているだけだし、筆者の政策提言は、2倍負担ではなく、少子化対策の充実なのだが、そこから、一切、耳を貸してもらえなることもしばしばだ。

 賦課方式というのは、親世代の年金を子世代が負担するとともに、子世代が更に次の世代を産み育てる「人的投資」も行うことで成り立っている。つまり、保険料と子育てという二つの負担をしなければならず、保険料を払っただけでは、老後の給付は確保されない。2倍負担は、支えてくれる子供がいなければ、代わりにお金を自分で用意しなさいという理屈を示すものである。

 もちろん、子供のない人に2倍の負担をさせることだけが政策の選択肢ではない。現実には、国民全体で負担している。筆者は、これが正しいと思っている。この結果、給付より負担が多くなる「損」は避けられないが、それは仕方のないことだ。積立方式に転換したとしても、移行期において、親の年金を負担しつつ、自分の年金の積立を始めるという「二重の負担」が生じる。この「二重の負担」と先の「損」は数理的に同じものである。

 「子供のない人の権利を侵害するな」という主張も分からないでもないが、子供のある人にとってみれば、親の年金を支え、子育てもし、更に子供を持たなかった人の年金の負担までしなければならない。これが現実である。子供のない人に特別な負担をさせない選択肢は、子供のある人に、より重い負担をさせることで確保されている。こちらは、権利の侵害にはならないのだろうか。

 結局、「損」だろうが、「二重の負担」だろうが、少子化を解決するしか脱する道はない。現実には、少子化対策をすることで、それらを減らそうとしているし、子供のある人の年金での負担を実質的に軽いものにしている。筆者の概算では、出生率を1.75まで回復させれば、「損」は解消できる。それは若い世代の希望をかなえれば、届く数字だ。だから、若い人には、年金の損得や方式で騒ぐより、少子化の解消を考えなさいと説いているのである。

※なお、積立方式をめぐる学説史は、権丈先生の「勿凝学問381」を参照したら良い。

(今日の日経)
 デジタル家電が半年で半額。防災計画なければ再稼動は困難。国債発行来月にも停止。米が日中仲介へOB外交・春原剛。韓国は隠密介入を武器に。転嫁拒否なら公取委勧告。ロシア陰る成長。中国・消費変調。日本郵船・船増やさぬ勇気。大機・安倍対日銀・横風。経済教室・都市安全へ税・福井秀夫。放射性物質拡散予測マップ。

※春原さん、読ませるね。※ロシアも中国と道連れだ。※30km圏の人口の多さよ。
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10/24の日経

2012年10月24日 | 今日の日経

(今日の日経)
 日産がタイ生産を倍増。超円高を修正、過度の米欧悲観論が薄れる。スペイン、市場が不安視。コメ値上がり所得保障で作付け減少。日経DI・流通・サービス急落、中下位苦戦で格差、底堅い住宅、好調なレジャー。住宅ローン減税・最大500万円に。現代重・ポスコ苦戦、中国減速が影。経済教室・都市集約化・前川俊一。復興工事の入札不調相次ぐ、工事多すぎ。

※税を投入して高い食料を作るか。※現場の記者は「増税控え消費を選別」としているが、論説はどう見るつもりか。増税の安心感から消費が増えるのかね。韓国企業は日本以上に苦しいな。※法務省は3000万円のムダ使いで袋叩き、増税狙いで無謀な巨額予算にした財政当局はお咎めなしか。日本人がいかに戦略に弱いか良く分かるよ。
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10/23の日経

2012年10月23日 | 今日の日経
 今日の経済教室は、山田篤裕先の最低所得保障だった。まず、最低賃金だが、その引き上げは、経済的には難しくないように思う。最低賃金は、地域格差を広げないために、政治的に大都市を抑えているから、東京などを大きく引き上げれば良い。これによる雇用数減の弊害は少ないはずだ。

 住宅扶助が課題なのは、筆者も同感だ。社会保障が手薄な米国でも住宅には力を割いている。また、米国と違って日本は食料費が高いので、農業の自由化も隠れた課題である。国が成長しなくなれば、土地持ちにまで資源を回す余裕はないし、保護費が高いのは、生計費が高いからという側面もある。

 低賃金労働者の生産性を上げるには、社会保険料の段差の解決が必要なことも指摘しておきたい。社会保険料があるために、8時間フルタイムの仕事がなく、4時間パートのダブル就労を余儀なくされている人もいる。時給もパートの方が高かったりするのだ。制度的な工夫の余地は大きい。

(今日の日経)
 企業の自家発電を拡大、送電規制を緩和。医療費うなぎ登りは治療・薬のイノベーション・大林尚。4か月連続で売上高減・コンビニ。イノベーション・西條都夫。大機・中国の曲がり角・追分。経済教室・最低所得保障・山田篤裕。

※この程度の非対称規制もしてなかったのか。※高齢化は峠を越えようとしているのだよ。
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共働き世帯の時代に

2012年10月22日 | 社会保障
 今日の日経のエコノフォーカスは、「共働き世帯主流に、妻の就労で年金目減りは補えず」である。久々に、社会保険料の段差の問題を扱ってくれたように思うね。この問題ついては、10/13の「社会保障の知られざる課題」で書いたところだ。これからの年金制度は、段差をなくし、共働き世帯の時代に合わせたものにする必要がある。

 共働き世帯の時代に向けた改革というと、従来、専業主婦が保険料を払わなくても年金がもらえることが挙げられていたが、2004年の年金改革後に様相が変わってきていることには注意したい。マクロスライドを続けていけば、代替率が下がり、高所得世帯では、専業主婦が居たとしても、払った分程度しか還ってこないようになるからだ。給付水準は、基礎年金がタダでもらえるから有利に違いないと安易に考えず、代替率で見る必要がある。

 また、基礎年金の国庫負担分が1/2に引き上げられたことも、専業主婦の優遇を薄れさせている。税を財源に、保険料なしで、誰でももらえる部分が拡大したからである。専業主婦の優遇は、中低所得層、すなわち、パートで保険料を払っていない人たちのものになっている。それだけに、低廉な保険料で厚生年金に加入できるようにすることが、生活保障と労働意欲の両面で極めて重要なのである。

(今日の日経)
 大卒内定2年連続増、来春3.5%増。社説・企業内保育を広げるには。老いを背負う・藤川衛。エコノ・共働き世帯主流に、妻の就労で年金目減りは補えず。生活保護世帯の学生の介護職希望者に貸し付け。中国・供給過剰の解消見えず。核心・中国が公表しない2つの統計。勝つ快感を忘れた日本企業。経済教室・組織組み換え・柳川範之。被災地ツアーで新たな絆。

※こうして消費は伸びていく。※この社説には唐突感がある。実態を抉る報道がほしい。※心情のこもった印象的な記事だね。※生保脱出に是非とも実現させたい制度だ。
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ここだけ違うのはなぜ

2012年10月21日 | 社会保障
 10/19の日経ビジネス・オンラインに載った飯田泰之先生のインタビュー記事を読ませてもらった。飯田先生の主張には、筆者も賛同できるものが多い。例えば、日本は2%程度の成長は可能であり、それによって財政再建は可能だという点や、相続税増税の必要性、資産所得課税の強化などである。

 ところが、飯田先生も、年金制度の積立方式への移行論者なんだね。なぜ、こうなってしまうのか…。まあ、鈴木亘先生や小黒一正先生の本ばかり読んでいるのでは、そうなるのも仕方がない。権丈善一先生の本でも読んで、年金学説史を知ってもらえれば、見方が変わると思うのだが。そんなわけで、今日も年金財政の「説得論集」です。

………
 少子化が進んで、親世代よりも、それを支える子世代が少なくなれば、賦課方式の制度に無理が生じるというのは、そのとおりである。どういう無理なのかと言うと、少子化を起こした人は、支える子供を持たないので、彼らの年金を誰が負担するのかという問題である。だから、もし、彼らが「自分の年金は自分で積み立てる」なら、問題は解決である。

 つまり、少子化が起こったからと言って、子供のある人まで含めて、「全員」を積立方式に移行させる必要性はまったくない。子供のない人「だけ」を積立方式にして、彼らに2倍の保険料を払わせ、積み立てさせれば、それで十分である。こうした理屈が知られて、年金の専門家で積立方式を唱える人はいなくなった。未だに高唱するのは、事情を知らない専門外のエコノミストなのである。

 現実の年金制度は、子供のない人に積み立ての負担をさせる代わりに、国民全体で負担をすることにしている。財源は、既存積立金の取り崩しと、国庫負担という税金である。すなわち、現実の年金制度は、子供のない人の分については、「二重の負担」を既に行っているとも言える。つまり、「部分的」な積立方式には、もう移行済なのである。

 したがって、支え手を持つ「子供のある人」まで含めた「全面的」な積立方式を主張する人は、必要のない人まで積立方式にしようという無意味な議論を展開していることになる。しかも、その論拠が、子供のない人のために、国民全体で負担していることで生じている「損」=「二重の負担」を許しがたいとしたりするのだから、始末に負えないのである。

………
 当たり前の話として、少子化が緩和されるなら、国庫負担は大きく軽減される。今のままでは、子供のない人の年金を税で支えることになるが、同じく税を使うなら、保育を充実させて少子化を緩和する方が良く、負担も少なくて済むというのが筆者の基本的主張である。日本は、目先の保育予算を惜しみ、行く末の「子供のない人」の年金という重い負担を覚悟する選択をしている。

 「少子化なんだから年金はもたない」、「年金は自分で貯める方がいいよね」という単純な発想から、日本が抜け出せるのはいつか。そこから更に「カネを貯めるより、少子化の緩和が有効」というところまで進まなければならない。道は遠いな。飯田先生のような若きオピニオン・リーダーには、是非とも分かってもらいたいんだがね。

(今日の日経)
 電力5社が値上げへ。日中対立別次元・丹羽大使。中国・雇用底堅く軟着陸も。地球回覧・米富裕地域で独立ドミノ。重複遺伝子多いほど色々な環境に住める。読書・通貨戦争。北京大学・中国経済講義。

※中国企業の自生能力とは、外需をつかめたというだけのことでは。設備投資が需要に従うと分かっていれば、新しい話ではない。

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