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経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

基礎年金への危険な行為

2010年11月30日 | 社会保障
 財政当局は、「埋蔵金」が底をついたため、国債発行44兆円枠の拡大を回避しようと、基礎年金の国庫負担を下げようとしている。貯金の取り崩しも、借金の積み増しも、純債務の増大においては同じことなのだから、素直に国債発行を拡大すれば良いことである。ところが、この経済的には無意味な枠を守ろうとして、大きな問題を作ろうとしている。

 国債枠の拡大の代わりに、基礎年金の国庫負担を下げても、年金積立金がバッファーになるため、給付を下げたり、保険料を上げたりする必要はない。ある意味、年金積立金を「埋蔵金」の代わりに取り崩すということである。問題は、国庫負担の引き下げは、基礎年金の最低保証に影響してしまうことである。

 低所得で保険料の全額免除を受けた場合でも、月額6.6万円の基礎年金の1/2の給付は受けることができる。これは、1/2国庫負担が根拠になっている。保険料を払わなくても、税の分だけはもらえるという理屈だ。これが日本の年金の事実上の最低保証である。以前は、これが1/3であり、あまりに低いということで、引き上げられた経緯がある。

 国庫負担を下げるということは、最低保証が逆戻りすることを意味する。民主党は、マニフェストで最低保証を引き上げようとしていたから、逆のことをするわけだ。他方、法人減税をするようだから、基礎年金の最低保証を下げ、企業を助けるという、およそ政治的には考えられない構図となる。

 国庫負担を下げるとなると、常識的には法改正が必要である。ねじれ国会で法改正ができなければ、今度は穴埋めのために、予算修正に追い込まれる。これは政権崩壊となりかねない重大時である。どうして、このような「時限爆弾」をセットするようなことを、財政当局がしようとするのか理解できない。もしや意図的なものなのか。 

 法的なテクニックを弄すれば、法改正なしに国庫負担の引き下げができるのかもしれないが、少なくとも、政権批判の大きな論点を作ることになる。他方、国債発行44兆円枠の拡大は、埋蔵金の代わりであれば、経済的には何の変わりもないことだし、「基礎年金を守るため」と言えば、国民の納得も得られるのではないか。

 そもそも、国債発行44兆円枠を作った時から、税収状況は大きく変化している。今年度でも補正予算において税収見込みを2兆円上方修正したし、来年度は更に3~4兆円の増収になろう。基礎年金の国庫負担分くらいは、楽に出る勘定である。財政当局は、これを隠して、基礎年金に手を着けるという政治的に危険なことをさせようとしているわけだ。

 財政のことばかりを考え、政府全体の制度運営やマクロ経済運営を考えない究極の姿がここにある。どうして、日本の財政当局は、こうもダメになってしまったのか。かつての栄光も、今は昔であろう。

(今日の日経)
 マツダ、メキシコに工場。北海道、森林取引に届出制。特許使用権保護を強化。社説・年金積立金に頼るのは禁物。武器禁輸の緩和提言。基礎年金、財源先食い。戸別補償見直し着手。来年度予算の71兆円枠財務省が圧縮検討。待機児童へ200億円。エジプト最大野党惨敗か。ホルムズ回避パイプライン稼動。ユーロ圏1.5%成長に減速。HV小型トラック燃費5割。生鮮品の直接調達拡大。債権相場1.2%目前に。ビジネスホテル稼働率改善。経済教室・整理解雇、日本の現実、通説とは差、神林龍。
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1年間を超えて

2010年11月28日 | 本コラムについて
 このブログを一般に公開するようにしたのは2009年の8月だから、1年3か月が経過したことになる。途中、海外での仕事のために長期にわたって休載したりしたが、それでも、掲載は365本を超えている。

 筆者は、政策について、政治家や官僚、ジャーナリストにも話をすることがあるのだが、このブログで掲載している先端的なことを説明しても、キョトンとされるだけである。「おもしろい」とか、「なるほど」とかは言われるが、次のセリフは、決まって「本当ですか」と来る。つまり、納得はしてもらえても、世間の常識を超えているために、俄かに信じがたいという感じなのだ。

 それも無理はないと思う。「増税なしに大規模な少子化対策ができる」と聞かされても、年金数理を駆使しているので、なじみのない説明である。筋の通った内容だとは分かっても、初めて聞けば、信じていいものか疑念を持っても不思議ではない。このブログを公開したのは、そんな中で、一般の方にも広く事実を知ってもらいたいという趣旨からである。

 むろん、現行の公的年金が採用する「賦課方式」を正しく理解し、改良することが、日本の最大の課題である少子化を解決することにつながると考えるからでもある。正しい理解があれば、少子化は、あっけないほど容易に解決できる。運命などではなく、制度設計の在り方一つなのである。難しいのは、むしろ、蒙を啓くことだと考えている。 

 然るに、この1年を振り返ってみると、民主党政権は、子ども手当の創設という、少子化解決の絶好のチャンスに恵まれながら、肝心の0~2歳の乳幼児の支援を外すという、悔やみ切れないミスをしている。論壇も、積立方式への転換という、既に専門家の間では無意味さが数理的に証明されたシロモノが、一部の声の大きな学者によって、未だに世間に流布されている。混迷は深まる一方だ。

 最近の筆者の心境は、高橋亀吉なり、石橋湛山のそれである。彼らは、戦前、旧平価での金解禁に反対したり、植民地放棄の小日本主義を唱えたりした。いずれも、意見が取り入れられていれば、恐慌や敗戦といった悲惨な運命を避けることができただろう。だが、当時の「常識」である金本位制や植民地主義を乗り越えることができずに終った。

 おそらく、公的年金の積立金を活用して少子化対策を行うことは、10年も経てば、世界の社会政策の常識となっていよう。しかし、そのときには、日本は毎年100万人も減少する「人口崩壊」に見舞われていて、もう手のつけられない状況になっている。そして、高橋や石橋のように、思い出されるのである。どうして、正しい道を見つけていたのに、それを選ぶことができなかったのかと。

 その意味で、筆者は歴史を変えたいと思っている。「日本よ、雪白の翼を再び」(11/16)は、そんな思いで執筆したものである。どうだろうか。読んでも不審に思われただけだろうか。無理の少ない策より、サディスティックでさえある消費税増税の方が遥かに強く支持される、それが今の日本なのである。

(今日の日経)
 設備投資、今年度11.5%増、当初計画を維持。法人税を実質減税。ミャンマーに日本の鉄鋼大手誘致。日本郵便が電動バイク。米韓演習きょう開始。台湾・得票率で民進党が上回る。消えるグローバル人材。重粒子線新照射法。読書・ベトナム経済発展論、不均衡進化論。

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11/26~27の日経

2010年11月27日 | 経済
(11/26の日経)
 独歩改革、賃貸住宅融資、奨学金返済軽減。社説・環境に配慮しつつ環境税に道を。エコポイント駆け込み過熱、7000億円。中国、反米の軍が台頭。介護保険改革、見えぬ道筋。給与所得控除3案。輸出額7.8%増。ホンダHV比率2割強。経済教室・公立病院改革・松山幸弘。夕刊・消費者物価0.6%低下。

(11/27の日経)
 補正成立、問責可決。社説・高所得者増税。韓国図書引渡し見送り。農産物高騰国内に波及。日米長期金利に上昇圧力。スペイン国債利回り上昇。中国監視船、再び尖閣に。外食、外装投資を拡大。乗用車生産、前年同月比9.4%減。夕刊・現代アートの原石発掘。
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財政再建の犠牲者

2010年11月25日 | 経済
 昨日、たまたま見たNHKクローズアップ現代は「新就職氷河期」がテーマだった。大卒54万人のうち、パートアルバイト2万人、未就職9万人、留年7万人だという。 翻弄される若者の姿に、我々が残してやれる社会が、かように悲惨なものかと思うと胸が痛む。彼らは、一体、何の犠牲になっているのだろうか。

 日本は、雇用より財政再建を優先している。そうでなければ、前年度予算から10兆円も削減したり、3兆円以上もの今年度の税収増を隠したりしない。明日にも成立する5兆円規模の補正予算の雇用拡大効果は約50万人とされているから、どれほどの雇用を犠牲にしようとしてきたか、明らかであろう。

 むろん、財政再建も大事である。しかし、今年度予算を前年度並みにしていたら、国債金利が急騰して財政が破綻していただろうか。少なくとも、常識的な税収の伸びを予測し、今回程度の補正予算は、夏の参院選前に打っておくべきだった。このことは、あと知恵ではなく、本コラムでは夏の頃から再三指摘してきたことだ。

 理解してほしいのは、財政再建のために払った犠牲である。若者たちを困窮させてもすべきものだったのか、その痛みに見合うものだったのか、それほどまでに犯してはならないリスクだったのか、そういう評価をせず、なんとなく、「これ以上は国債を増やせない」という気分だけで経済運営をしてきたように思う。

 5兆円の補正予算の効果は、たった50万人と思われるかもしれないし、1人当たり1000万円もかかる勘定になる。他方、完全失業者は10年9月で340万人もいる。それでも、早い時機に打っておけば、来年度の新卒雇用は緩和され、かつての就職氷河期は上回らずに済んでいたかもしれない。

 財政再建を強調する決まり文句に、「子供たちに借金を残すな」というものがあるが、残さない代わりに与えているのは、失業なのである。筆者は、次の世代に本当に残せるのは、紙切れではなく、実物だと考える。職業能力や生産基盤を残してやれば、借金の後始末は、知恵で何とかなるものである。逆に、成長力を培わずに、借金など返せるものではない。

 幸い、消費動向は、世間で思われているより、良いものが出る兆候が出てきた。景気対策は何とか間に合うかもしれない。あとは、来年度予算を今年度補正後よりも減らすような「雇用削減策」を取らないことである。環境税も検討されているが、段階的に導入し、それこそ、問題の法人減税の先行実施と組み合わせればよい。それなら、環境投資を促進する効果が見込めるというものだ。

 政策は、より良い社会を残すことを起点に考えなければならない。成長と環境の組み合わせは、そういう観点からである。あるいは、環境と子育ての組み合わせが必要かもしれない。財政再建は、債権管理の性質上、まずは資産課税との組み合わせを考えるべきものだ。再建すべき対象は、財政ではなく、経済であり社会なのである。

(今日の日経)
 米韓が圧力、軍事演習に空母派遣。補正、明日にも成立、問責は採決後。超電導線を量産。みんなが尖閣映像をネット公開。環境税に段階導入論。百貨店売上高2年8か月ぶり増。08年度医療費2.0%増で34.8兆円、税負担37%。会社員の時給減少止まらず・熊野英生。ユーロ一時110円台。ASEAN+3の社債保証設立。変わらぬ課題・ロシア近代化。アイルランド財政赤字1.6兆円削減。米個人消費0.4%増、住宅8.1%減。薄型テレビ出荷2.4倍。IT派遣時給に底入れ感。経済教室・足踏み後に実感なき回復へ。

(お知らせ)
 都合により、数日休載いたします。
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アジェンダと年金財政

2010年11月22日 | 社会保障
 政治家が課題を設定し、処方箋を官僚が考えるというのが、本来の姿なのだろうが、日本の場合、これが逆になっている。しかも、設定される課題が愚にもつかないものだから、何とも言葉がない。今日の日経トップにある基礎年金の国庫負担は、そんな問題だ。

 まず、財源の調達だが、国債でしようと、特別会計の「埋蔵金」を取り崩そうと、実質的には同じである。一般の方には分かりにくいかも知れないが、貯金を取り崩して賄うのも、貯金に手を着けず、別途に借金して賄うのも、貯金から借金を差し引いた「純債務」の大きさは、どちらも同じということだ。

 国の財政の場合、特別会計の「埋蔵金」は、一般的に国債で運用されるから、取り崩すには、それを売らなければならず、市場に引き受けてもらうという意味で、国債の発行と同じことになる。どちらでも需給圧力に違いはない。むろん、細部には差もあるが、基本はこうなのだ。だから、「埋蔵金」がどれだけ残っているかという議論は、大して意味がない。

 こうしてみれば、基礎年金の国庫負担は、埋蔵金がなくなれば、国債で賄えば良いだけのことであり、「埋蔵金がなくなったので、どうしましょう?」と、官僚が課題を設定すること自体がおかしいのである。

 だいたい、09年度予算で国庫負担を1/2に引き上げ、国債の発行を44兆円まで膨らませて危機感を煽ったのは、誰なのか。国庫負担を引き下げれば、2.5兆円分の余裕ができるのだから、歳出削減を緩めてくれるとでもいうのだろうか。

 この課題は、財源を国債で賄っても、年金会計の積立金で賄っても、他の埋蔵金で賄っても同じである。解決策は、記事にあるとおり年金積立金で賄うという厚労省の案で十分だ。財務省が難色を示すのは、予算編成の枠組みが狂うからであろう。年金特会での借金を部分的にでも許せば、それを使って、いかようにも国債発行44兆円枠をごまかせることがバレてしまうからだ。

 そもそも、この44兆円枠自体がマクロ経済を運営していく上で何の意味もない。意味があるのは、政府セクターの支出と税収の差し引きが、前年度と比較して、どの程度のプラス・マイナスになるかである。これが経済へのデフレ圧力を決める。

 これをまじめに算出すると、この1両年は法人税収が相当伸びるので、支出を拡大しなければならない話になる。日本経済にとって、それは必要なことだが、財政再建しか視野にない者にとっては、知られたくない「課題」である。

 結局、官僚が財政運営に関する無意味な課題をいろいろと設定し、政治に突きつけているという構図なのである。政治は、それに振り回され、日本経済を悪くする方策として、どれを選ぶかに頭を痛めている。「政治とはアジェンダ(課題)の設定である」という政治学の言葉を知る人は多いと思うが、現実に、こういう重たい意味があるのである。

(今日の日経)
 基礎年金の国庫負担維持財源見えず。車7社は利益の1/3失う。米特別代表、急きょ訪問。領海警備強化調整難しく。専門職外国人日本を素通り。買い物難しい高齢者対策に助成。核心・新しいアジアのドラマ。子連れ専用車両導入を。インドネシア国営企業改革。米食品・外食価格に転嫁、金融緩和の副作用。冬ボーナス10業種でプラス。経営の視点・ベトナム原発に米の支援・中山淳史。太陽光発電の造水機。Li電池をナトリウムで代替。理研など国立機関に再編検討。課長時代・貿易研修センター。経済教室・有期雇用・鶴光太郎。バスケ日本代表が公認会計士試験に合格。
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怨念の渦巻く経済政策

2010年11月21日 | 経済
 本コラムの論陣は、法人税減税を強く批判し、需要管理の安定を求めるところに特徴がある。今の流行でないことは承知しているが、オールド・ケインジアンでもない。政策的な特徴は、穏健な需要管理による設備投資の誘発ということになろうか。逆に言えば、批判しているのは、経済政策における極端さである。

 日本経済をダメにしてしまった最大の原因は、財政当局の極端な緊縮財政にある。では、なぜ、財政当局は、そんなことをするのか。それは、政治的な財政出動に対する反動である。そして、なぜ、それが必要になるかと言えば、極端な緊縮財政をするからである。つまり、極端から極端への揺れ動きが、日本経済を疲弊させているということになる。

 現在のデフレ局面は、前年度に比較して2010年度予算を10兆円も削ったためである。なぜ、それをしたかと言えば、麻生内閣がリーマンショック対応で、巨大な経済対策を打ったからである。それは危機対応としては正しかったが、「骨太2006」に代表される、それまでの緊縮財政への反動もあった。

 「骨太2006」は、安倍政権当時、サブプライム・ショックで輸出の伸びが止まったときに、並行して4兆円の国債発行を削減するという緊縮財政をもたらしたものだ。これが「格差批判」を呼び、安倍政権は、参院選で惨敗し、崩壊した。

  この「骨太2006」を生み出した小泉政権の特徴は緊縮財政だが、これは、その前の小渕政権の金融危機時の大規模な経済対策の反動である。小泉政権時は、米国景気による輸出によって日本経済は支えられたが、これがなければ、発足当初の悲惨な状態を抜けられずに、早期に倒れていただろう。

 そして、小渕政権の経済対策は、橋本政権の極端な緊縮財政による経済危機の発生に対処したものである。橋本政権の極端さは、バブル崩壊後に相次いだ景気対策で積み上がった国債の膨張が背景である。そのバブル景気は、円高に対する極端な緩和政策が原因だ。その前は、鈴木政権による緊縮財政と、時間は、第二次オイルショック後にまで遡る。

 極端を繰り返す中で、スパイラル的に日本経済は悪くなってきている。悪くならない方がむしろ不思議だと言えよう。これは、財政出動に対する財政当局の怨み、経済苦境に対する政治と国民のつらみが相互に渦巻いた結果である。怨みつらみで舵取りをすれば、国運が傾くのも当然だろう。

 もし、今、法人税率を下げてしまうと、財政当局は、財政再建の唯一のよすがを失う。それは、一層、極端な政策を生み出すだろう。今日の日経にあるように、企業収益は好調であるから、来年は、「企業は高収益を上げているのに、税をさっぱり納めず、国民にツケを回している、国内への設備投資も大して増えてない」というキャンペーンが始まる。財政当局は、そのくらいの力は持っている。次は、大企業がバッシングの対象だ。

 これは不幸なことである。法人減税は、するとしても、配当課税の特例廃止など、資産課税の強化の範囲ですれば十分だろう。国が傾きだすと極端なことが注目され、それが一層、国をおかしくしてしまう。苦しくなると、他人の論理など視野に入らなくなるものだ。日本は今、そういう状態だ。本コラムが穏健さを唱えるのは、そういう理由なのである。

(今日の日経)
 欧州ミサイル防衛計画にロシア協力。上場企業の利益水準は危機前の96%、07年上期の最高益の8割、損益分岐点13%引き下げ、過去25年で最大。製造設備の高齢化進む。NTT株3%売却へ。日銀、財政政策も補完。中国が物価抑制策。利上げ排除できず。タイに投資加速、中国依存を引き下げ。エジプト議会選28日投票。袋小路の日ロ領土交渉。読書・軍事大国化するインド、大いなる不安定。スメサーストの高橋是清。死刑要望つらく葛藤。
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真実を語るべき場所

2010年11月20日 | 経済
 旧ソ連の有名な笑い話(アネクドート)に、赤の広場で「ブレジネフはバカだ」と叫んだ男が逮捕されたが、警察に罪状を問うたところ「国家機密漏洩罪だ」と言われた、というものがある。今回の法相発言の顛末は、これに似ていなくもない。 

 答弁は2つのパターンで足りるとする国会軽視の発言は、批判されてしかるべきだが、答弁が形式に流れていて、国会が実のある議論の場になっていないことは、大方が認めるところだろう。法相は「国会はバカだ」と叫んでしまい、野党に捕まってしまった。この罪状は何だろうか。国会の実態を国民に誤解させた罪か、それとも、真の姿をさらしてしまったことなのか。

 筆者は皮肉屋だから、法相は陳謝などすべきでなかったと思う。「発言は冗談に決まっている、真に受けないでくれ」と、かわすべきだった。陳謝などしたら、本当に、そう思っていたことになる。国会を侮辱したと責められているが、「事実に反する言説で名誉を毀損した」と非難されていないのは、悲しむべきことだ。

 そんなありさまで、補正予算は、未だに成立していない。10月29日に提出され、1か月がたとうとしている。日本経済は、今年度後半が景気を維持できるか否かの勝負どころである。「1日も早い成立」は答弁パターンの一つだが、これが本当に求められている。経済のことだけを考えれば、失言騒ぎをしている場合ではない。

 さて、師走の足音が近づいてくると、予算や税制の骨格が次第に明らかになってくる。今日の日経の記事は、そんな風物詩である。民主党税調は、配偶者控除の縮小に慎重で、法人税は実質減税にするという。それは、そうだろう。法人減税をしたら最後、他の増税はできなくなる。「企業のために犠牲にした」という批判が必ず出るからである。 

 マクロ経済的に言えば、現在は景気回復の初期であり、企業の賃金や金利の負担は軽い。大事なのは、法人減税で更に収益性を高めることではなく、先行きの需要を安定させることである。おそらく、法人税は、来年は更に4兆円近くの増収になるだろう。したがって、これを見込んで、来年度予算は10年度補正後の歳出規模を確保すべきである。そうしないと、デフレ圧力がかかってしまう。

 結局、日本は、するべきことをせず、しなくてもよいことに血道を上げている。どうして、自然体で経済政策ができないものなのか。本当は、補正予算の審議の中で、政策需要の見通しが明らかにされるべきである。こういうことが未だに「国家機密」になっているから、国会の議論は形式に過ぎないと思われるのである。

(今日の日経)
 配偶者控除縮小に党は慎重、法人税は実質増税。介護利用料、所得多い高齢者2割負担。預金準備率を中国0.5%上げ。子ども手当3歳未満2万円に、上乗せ分の財源が焦点。FRB議長、為替管理国に矛先。ノーベル賞・インドネシアも欠席。10月の電力需要前年比4.8%増。求人広告単価が上昇。柳田法相辞任へ。
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なぜ家計は貧しくなったのか

2010年11月19日 | 社会保障
 先日も、ほめたばかりで、ちょっと気が引けるが、良いものは良いからね。第一生命研のHPに掲載されている熊野英生さんの「なぜ、家計は貧しくなったか」という論考は、読ませる内容だ。アカデミズムの研究者も見習ってほしいものである。

 家計所得が1998年以降、下がる一方だということは、よく知られている事実である。熊野レポートは、その内容を分析したものだ。そこには、いつくもファクツ・ファインディングが含まれている。まず、高齢者編では、無職世帯の可処分所得が勤労者世帯以上のペースで減少しているとしている。その理由としては、年金支給年齢が引き上げられる一方、定年後の就労が困難になっていることを挙げている。

 熊野さんの問題意識も同様だが、この事実は、「高齢化が進んだから、ジニ係数が上昇し、格差が広がるのも仕方ない」とする従来の見方では、問題の本質を十分捉えていないことを意味する。格差の拡大は、人口構成の変化だけでなく、年金や雇用など、政策的な要因もあるということなのである。

 また、リポートは、勤労者世帯でも、60歳以上の勤労者は、その黒字率が趨勢的に低下しているとし、高齢者雇用の厳しさを指摘する。その上で、高齢者は求職をあきらめがちで、雇用の厳しさがデータに表れにくいと、的確に評価している。加えて、高齢者の場合、公的年金が自営業を続ける補助金の役割を果たしているとするのも示唆に富む。

 さて、以上のような事実を踏まえて、政策的なインプリケーションを考えるなら、一つ言えるのは、高齢化が進んでいるからといって、貯蓄率や成長率の低下を、簡単にあきらめてはいけないということであろう。むろん、高齢化による仕方のない部分もあるが、そうでない部分が十分にあり、それは政策次第なのである。

 気をつけたいのは、安易にライフサイクル仮説などを持ち出し、貯蓄率の低下を分かった気になってしまうことである。問題意識を持って、データを探せば、本当の姿が見えてくる。熊野レポートは、それを示している。

 問題意識は、「合理的な行動の結果と考えるにしては、どうにも悲惨な状況ではないか」というところから生まれてくる。経済学にウォーム・ハートが必要だとされるのは、そういうことなのだ。問題意識があり、データの検証があり、そして理論化である。合理性を前提にした理論や数式から、真実が導けると思ってはいけない。

 おっと、余計なことを書いて、紙幅が尽きてきた。熊野レポートは、給与所得者編の方も、なかなかのもので、「正社員といえども、パーアワーでは稼ぎが低下してきている」という指摘をしている。正規・非正規の格差から、正社員を批判する論には、一石を投じる内容だ。

 おわりに、熊野レポートに、一つ注文を付けるとしたら、タイトルの「なぜ」の部分に、真に答えていないということだろう。つまり、1998年に屈曲が生じたのは「なぜ」なのかである。これについては、本コラムでは、よく触れていることなので、今日のところは割愛する。

(今日の日経)
 日経平均1万円台回復、中国から資金シフト。低価格衛星を官民で7割安く。GMが17か月ぶり再上場、公的資金の全額回収は遠く。思いやり予算の有効期間5年に。環境税来年度に、5割上げ2400億円の増税。介護保険・看護と介護バラバラ、洗濯と掃除。台湾、9.9%成長、消費も回復。スペインへの連鎖回避を。半導体・液晶製造装置の受注がマイナス。ワタミ高齢者向け稼ぎ頭に。内需型企業も輸出に力。経済教室・国際関係システム・保井俊之。無視させぬ信号変わる。
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世代間不公平の内実

2010年11月18日 | 社会保障
 ある学会誌が届いたのだが、年金の積立方式への移行を唱える某教授の著書に賞を贈るとのこと。公的年金の本当の専門家は日本に10人もいないとは言え、既に無効性が数理的に証明されているのに、少しチェックが甘くはないか。

 この先生は、派手な厚労省批判で知られ、一般書を次々に出し、日経系のメディアにもよく登場する、とても有名な方である。しかし、基礎にしている理論には問題があると言わざるを得ない。その分かりやすい説明については、本コラムの「世代間不公平論の誤謬」(09/08/27)や「数理はとても酷なもの」(09/07/09)を御覧いただきたい。

 むろん、こうしたことは、筆者だけが言っているのではない。例えば、一橋大の小塩隆士先生の「人口減少時代の社会保障改革」(p.83)がある。この本は、若手の研究者には必読だ。積立方式の議論が下火になった理由も、はっきり書いてある。最近、世代間の不公平だの、事前積立だのと唱える若手がいるが、先行研究をしっかり把握しなければダメだ。

 正直に言って、米国と違い、少子化の激しい日本で、「世代会計論」を研究するのは要注意である。視野の狭い若手は、この論の陥穽に簡単に落ちてしまう。確かに、給付と負担を計算すれば、高齢世代は「得」で、若年世代は「損」という計算値は出てくる。そこで不公平を唱えたい気持ちも分かる。しかし、その「得」と「損」は、論理として、間接的にしか繋がっていないものであり、「得」を減らして「損」を増やせば解決するような単純なものではない。

 例を使って説明しよう。団塊の世代は、大きく「得」をしている。その理由は、兄弟が多いために、親を支えるのに1人当たりの負担が少なかったためである。つまり、「得」と言っても、潤沢な年金を得ているわけではない。2004年の改革で年金の削減計画も決まっているから、既に引退している団塊の世代に更なる負担を課すことには無理がある。

 次に、団塊ジュニアだが、親世代とは人数がほぼ同じであるから、支える負担が過重とは言えない。問題は給付であり、これを少子化で細った子世代に負担してもらわなければならない。少子化を起こしたのは、団塊ジュニアだから、その責任を取ってもらう必要があろう。十分な数の次世代を残すという「人的投資」を怠ったにもかかわらず、従前と変わらない年金をもらおうとするために、子世代に莫大な「損」が生じるからである。

 現在の世代間の不公平論は、あたかも、現在の30代や20代が「搾取」されているようなことを言う。しかし、本当に搾取するのは、この団塊ジュニア世代であり、本当に悲惨なのは、まだ幼児であるために何も言えない、その子世代である。

 今、団塊ジュニアは、「団塊以前の世代が、なぜ、もっと積立金を残してくれなかったのか」と不平を言っているが、20年後には、子世代から「少子化を起こしておいて、年金をもらうなんて虫が良い」と強く批判されよう。本当は、団塊ジュニア世代が「二重の負担」をして、積立金を積み増すという「損」をしなければならない。それが子世代の「損」を回避するのに欠かせないのである。

 団塊ジュニアの立場になれば、「就職氷河期だったし、非正規などで賃金も低く、結婚も満足に出来なかったのだから、少子化の責任を取れと言われても困る」と、世代特有の事情を言いたいだろうが、それは、彼らが、今の年金世代に対して、「貧しかった時代の負担の困難さを理由にするな」と、持ち出しを否定している理屈である。

 団塊ジュニアが負うべき「二重の負担」を助けるべく、それ以前の世代が、年金を減量したり、資産課税で負担を多くしたりすることは必要だし、すべきことである。しかし、結局、どんなに困難で、迂遠であったとしても、少子化を止めるしか、根本的な解決の道はない。本コラムは、そのために「小論」や「基本内容」で提案をしている。

 若手の研究者は、世代間の不公平論や、事前積立といった迷宮から早く出て、少子化対策の制度設計でも考えてはどうか。数式を作って展開し、インプリケーションを考えることぱかりしているから、社会問題の本質を見失うのである。政策科学とは、様々な論理と観点から考究する視野の広いものでなければ、意味をなさないものなのだ。 

(今日の日経)
 1票の格差5倍違憲、雇用増やせば法人税控除。DVD特許に勝る秘伝のタレ。社説・仕分け迷走、欧州の再波乱。社会保障改革、当座しのぎ。来年度予算目標達成遠く。総合特区予算認めず。レアアース対日輸出正常化か。在日米軍基地を中国ミサイル攻撃可能。上海株4日で9.8%安。中国消費意欲落ち込む。米消費者物価の伸び最低。米住宅着工件数11%減。経済教室・サービスの科学・藤川佳則。
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世界経済の転機を見る目

2010年11月17日 | 経済
 日経は「円高ドル安に転機の兆し」と言うが、もう「転機」になっている。「G20会議後、流れに変化」と言っても、FRBがQE2を決定し、市場が反応した段階で変化しているのであって、政治的な会議は関係ない。会議では認識を共有しただけなんだがね。

 こういう「見出し」が出ると、日本のエコノミストの大勢は、揃って円高トレンドの見方を修正するのだろうな。QE2のときに、「まだ円高が続くおそれ」なんて言っていたのが誰か、チェックする良い機会だ。

 その点で言うと、第一生命研の熊野英生さんは傑出している。10/15の時点で、「円高の潮目は近い」と的確に分析し、QE2直後に「ドル安修正の予兆」としている。なかなかのものだ。熊野さんの分析は、基礎がしっかりしていて、いつも読ませる。11/15のドル建て日経平均の分析も、ぜひ欲しい思っていたものだった。今後の御活躍を陰ながら期待しています。

 さて、転機と言えば、韓国にも訪れたように思う。今日の日経の一連の記事は、興味深い。物価上昇圧が増し、昨日、韓国銀行が利上げをしたところだったので、「おや」と思っていたが、内需が拡大し、企業業績が拡大しているとの記事をみれば、ウォン安局面も終ったことが分かる。にわかに起きた「韓国企業を見習え論」も、これで一服であろう。

 改めて言うまでもないが、内需が広がれば、低金利を続けることは出来ないし、そうなればウォン高になる。これまでのような為替介入も難しい。むしろ、ウォン高にして資源価格の上昇を緩和することが、マクロ経済的には正しい選択だ。

 韓国というのは日本以上の格差社会であり、少子化も日本を超える深刻さであることを踏まえれば、国内厚生を犠牲にしてきた面は否定できまい。これは韓国企業の世界的な躍進の陰の部分である。ある意味、韓国は、日本を極端にしたような存在だ。

 これまで、韓国の電機大手が揃って好調だったのは出来すぎであり、こうしたことには、マクロ的ファクターがあると見なければならない。今日の日経で、「二極化進む」というのは、普通の姿に戻ってきたことを示している。内需こそが国の豊かさなのだから、「サムスンに良いことが、韓国にとって良いこと」とはならない。

 韓国の電機大手が成功を収めてきたのには、リスクの高い巨額の設備投資を行っても、「最後はウォン安がある」という後ろ盾があった。しかし、今後は、当たり前のリスク管理が必要になる。日経の商品欄にもあるように、液晶パネルが急落したりと、電子デバイスは全般に軟調だ。高転びに気をつけなければならない。

 そういう懸念はあるにせよ、韓国経済が全体として良い方向にあることは確かだ。内需を大事に育てていけばよい。間違っても、日本の財政当局のように、緊縮財政で内需の芽を摘むようなことをしてはいけない。まあ、そんな外れたマネをするのは、日本だけか。

 それにしても、予算要求では、無理な1割削減をした上、要望枠で出ださせて批判の的を作ったり、税調では、各界が最も嫌う対抗案を連発してみたりと、恨みを買うようなことばかりしているが、奢れる者は久しからずだ。自己認識はどうか知らぬが、権限にモノを言わせて、知恵のないことばかりしているのだから、謙虚さを忘れぬようにね。

(今日の日経)
 円高・ドル安、転機の兆し、G20後に変化。企業第6部・タイ工場に敗北、NTTD、郵船、日揮。新防衛大綱、島しょ強化。イトカワで採取確認。中国不動産に海外マネー急増。マグロ乱獲国を来年禁漁に。税制論議、財務省寄り鮮明。介護保険・賃上げで入職も。家電エコポイント10月は3倍に。米小売り持ち直し。韓国、内需型回復広がる。工作機械受注・中国は調整期。FED来冬にも量産。13大学が仕分けに反発。
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