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経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

10/28の日経

2015年10月28日 | 今日の日経
 軽減税率の議論は大変なようだね。貧困層への再分配を弱め、一律のバラマキを志向するのだから当然だ。いっそ軽減税率の対象を全品目に拡大し、その財源は後の消費増税で賄うことにしてはどうか。つまり、2017年度には9%、2019年度に10%にするわけだ。何をバカなと思われるかもしれないが、再分配を見送っても、いずれ必要になる。その時には、消費税を上げてとなるだろう。軽減税率の本質とは、徴税負担を重くし、税率を高めるということである。「軽減するくらいなら、上げなければ良い」という分かりやすい議論に耐えられるのだろうか。

 他方、軽減税率の見合いに社会保障の充実を潰すのに対し、補正予算ではバラマキをすることになる。補正は恒久財源にならないという「財政の論理」では、国民は納得するまい。「今年限り」と主張しても、これまでも毎年して来たし、消費増税を前にして、これからやめられるものでもない。消費増税をしないなら、補正を緊縮できるが、消費増税を段階的にするなら、補正の2.5兆円分は恒久財源になるという「常識の論理」に早く気づいてほしい。批判を浴びるうちに、そういう方向にならざるを得ないのだから。


(今日の日経)
 独禁法違反を自ら是正なら処分せず、TPPで導入。税額票導入は20年度にも。軽減税率、財源上積み難航、たばこ増税か、年金加算見送りか。
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子供の貧困対策とアベノミクス

2015年10月25日 | 経済
 『子どもに貧困を押しつける国・日本』(山野良一著)は、タイトルを見て告発調なのかなと思ったら、基本になる数字を、よくある疑問に即して丁寧に説明した良書であった。同時に、厳しい生活に置かれる子供たちの声を紹介しつつ、数字の意味するところを浮かび上がらせている。最近の政策動向にも触れており、社会問題に関心のある方はもちろん、アベノミクスの行方を知りたい人にも、手に取ってもらいたい一冊である。

………
 豊かなはずの日本で、子供の貧困率は16.3%と、6人に1人にも上る。一世代前の1985年には10.3%であったから、6割増しになっている。特に、1997年以降は、貧困線の所得が下がる中で、貧困率が上昇しており、一層、深刻である。これは、消費増税でデフレに突っ込み、雇用が悪化して、非正規が大きく増えたことが背景になっている。一昔前の低失業率で若年層には仕事があった時代とは、様相が一変している。

 ある意味、日本においても、若年層に失業がはびこる「欧米化」が進んだとも言えるだろう。そこで問題になるのは、山野さんが指摘するように、再分配前の所得では、先進諸国と比べて、それほど不平等ではないのに、再分配後になると、大きく順位が下がることだ。つまり、日本における子供の貧困は、経済の変化以上に、社会保障の対応の不十分さが理由になっている。

 そうなったのも、1997年の大規模な緊縮財政で、日本経済をデフレに突き落とし、却って財政赤字を悪化させ、社会保障を新なた分野に広げる余裕を失わせたからだ。こんな失敗がなければ、子供に関する社会保障の充実は着実に進められ、少子化が続いて成長力を落とすこともなかったろう。日本の財政当局は、一人で経済も社会も壊し、何重にも国民を苦しめている。

………
 しかし、今、一つの転機を迎えようとしている。おそらく、2015年度は5兆円規模の補正予算が組まれる。2016年度以降も、アベノミクス新第1の矢の名目GDP600兆円を目指して、穏健な緊縮財政に路線転換がなされると、補正を一挙にやめる選択肢はなくなり、2020年度まで、2.5兆円程度は維持する必要が出てくる。すなわち、事実上の恒久財源が生まれるのだ。アベノミクスが新しい第2、第3の矢に再分配の政策を掲げるのは、偶然ではない。

 子供に関する社会保障は、あれもこれもみすぼらしいが、一つ改めるとすれば、進学支援がある。貧しい子供の高校進学率は低く、中退率は高く、専門学校や大学への進学は著しく見劣りする。これを解決しなければ、貧困の連鎖を断つことができない。そのためには、例えば、高校の3年間に15万円ずつの「奨学金」を出し、卒業して就職や進学を果たしたら、返済を免除するといったことが考えられる。

 貧困状態にある子供は約330万人、1学年当たりで約18.3万人であるから、これに要する予算は、たったの824億円である。山野さんの著書にもあるように、生活が厳しい家の子は、弟や妹を助けるため、自分の進学の望みをあきらめ、身を捨てて尽くしている。これが低い進学率が意味する現実だ。そうした悲しい自己犠牲を強いないようにし、辛い涙を流させないため、どうしても必要なお金である。 

 補正予算を社会保障に使うなどあり得ず、そのとき限りのバラマキに終始し、これを毎年繰り返してきた。そうした財政当局の手前勝手な理屈と見通しのなさを変えねばならない。貧困削減の数値目標を掲げたとしても、当初予算で自然増を下回るキャップをはめられれば、子供の貧困対策のために、難病対策を削るか、障害者施策をやめるかということになりかねない。補正でのバラマキとは対照的である。

………
 来年は参院選がある。消費税の軽減税率では、その代わりに社会保障関連の自己負担額の上限を設ける低所得者対策を見送るようだ。野党に知恵があるなら、同じ財源で低所得者に2.5倍手厚くできる給付金方式を、マイナンバー抜きで増税当初に一律支給する形に変えて、ぶつけて来るだろう。こちらの方に合理性があるだけに、政策論争では適わず、人気を博すのも難しい。いよいよ劣勢となれば、増税延期に追い込まれるのではないか。

 やはり、消費税を2%も上げながら、軽減税率をするのは、根本的矛盾がある。それくらいなら、1%にとどめて、軽減税率の論争を避け、それと同時に、補正予算の2.5兆円分を恒久的財源と位置づけ、軽減税率の本来の趣旨の低所得者への再分配に充てるべきである。その際、子供の貧困対策は象徴的な課題となる。こうした状況を早く見て取った側が主導権を握り、選挙での勝利を得ることになるだろう。 


(今日の日経)
 東芝が旧経営陣を提訴へ。足踏みする国内投資・滝田洋一。
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米国の日本経済を見る目

2015年10月22日 | 経済
 米国の財務省による半期に一度の為替報告書が公表され、ロイターは、「日本が財政健全化目標に固執すればデフレに舞い戻りかねないとし、柔軟な財政政策を講じれば、金融緩和への過度の依存を軽減できる」(10/20)と報じている。半年前にも、ロイターは、「米為替報告書、日本財政「緊縮的」緩和依存高いと批判」(4/10)としているところだ。

 日本では、本コラム以外、緊縮財政の実態を指摘しないのに、米国は、実によく見ており、半年前の「日本の景気回復の持続性や内需の強さには、依然疑問が残る」という危惧は、的中した形である。「そのとおりにしていたら、日本は破産する」という政府筋の見解には、苦笑させられる。どちらが経済を分かっていないのか。

 先日、紹介した寺村証言でも、バブルの背景となったマクロ経済の問題点を「はっきり言ったのはアメリカ」であることが明らかにされている。また、1997年の消費増税を始めとする過激な緊縮財政に関して、米国が諌めるのを押し切って敢行し、今のデフレ経済へと転落したのは有名な話である。

 むろん、米国は、自分の利益にもなるから言って来るのであって、小泉政権下の緊縮財政と金融緩和の組み合わせについては、それが円キャリによる低金利という恩恵を米国にもたらしたから、反対したりなどしていない。ただ、日本人は自分がしていることも分かっていないのに対し、彼らは日本人がしていることを正確かつ冷徹に見ているということだ。正直、日本の財政当局の無能さには、情けない思いがするよ。


(今日の日経)
 中央アジアで2兆円受注。訪日消費は年3兆円超へ。家計調査の精度めぐり論戦。みなし課税方式が浮上。

※爆買も踏まえず家計調査を批判していたのか。精度を高めたかったら、記入者に謝礼ができるよう予算を付けたら良い。そのつもりで批判しているのだろうね。
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バブル失政と今

2015年10月19日 | 経済
 四半世紀前、日本に株・土地バブルを発生させた失敗は、異次元の金融緩和をしている我々に、何を教えてくれるのか。このほど、軽部謙介さんが著した『検証バブル失政』は、そういう読み方をされると思う。確かに、金融緩和は、昔も今も、株価を押し上げ、円高の是正に力を貸した。そして、物価を上昇させていない。実は、そのことが道を誤った大きな要因なのである。

………
 物価上昇は、消費の需要が供給を上回ることで生じる。今、物価が上昇していないのは、消費増税によって家計の所得を抜き、需要を下げてしまったからである。円安による輸入品の値上がりによっても物価上昇は生じているが、国民の生活水準を下げるだけの「悪い」物価上昇に過ぎない。

 一方、1980年代の物価安定は、なぜ生じたのか。実は、これも緊縮財政によるものだ。ただし、引き締めていたのは、財政ではなく、社会保障基金だった。厚生年金を始めとする公的年金が、毎年、GDPの2.5%もの強制的貯蓄を行い、当時、盛んに言われた「内需不足」を起こしていた。

 この事実は、内閣府のHPで確認できるし、これだけ大規模な貯蓄をすれば、消費に影響がないとは、誰も言えないだろう。消費を抑圧すれば、内需不足になり、貿易黒字は拡大して、円高傾向ともなる。こうした視点で、当時の日本経済の問題状況は、きれいに説明できるが、一般には、まったく知られていない。

 これは、日本では、国、地方、社会保障の三つの財政を連結して見る習慣がなく、公的需要を安定的に管理しようという発想もないことが背景にある。国の財政赤字しか考えない視野狭窄にあり、それは全体状況より深刻に見えるため、過激な緊縮を平然とすることになる。そもそも、緊縮をしても成長には影響しないという思想も強い。

(表)



………
 『検証バブル失政』に登場する日銀の面々は、株と土地の高騰に危機感を募らせ、低金利からの脱出を試みるものの、物価が安定しているために、大蔵省をなかなか説得できず、バブルの膨張を許してしまう。バブルの元となった低金利は、米国の内需拡大の要請を断り切れず、円高を防ぐためもあって、やむなく踏み切ったものだった。つまり、内需不足で、米国への輸出に依存していたがゆえに、窮地へ追い込まれたわけである。

 当事者が振り返っても、その状況下で、できるだけのことはしたというのが率直な気持ちだろう。大事なのは、その状況がどうして生じたのかを考えることである。内需が強ければ、円高を恐れる必要はなかったし、米国の利下げの圧力を退けることもできた。円高を呼んだ巨額の貿易黒字にならなかった可能性さえある。結局、全体を見ない無理なマクロ経済の運営が、成功の見込みのない戦いを日銀に強い、当然のごとく敗れたのである。

 今も、全体を見ない無理なマクロ経済の運営は続いている。デフレ経済で無理に財政再建をしようとするから、金融政策に負荷がかかり、とうとう異次元緩和という極端なところまで来てしまった。日本人は、良くも悪くも一所懸命である。与えられた場所で努力するのは立派だが、どうして、そこで戦うことになったのかを考えることも必要だろう。少なくとも、国を担うエリートには必須の資質であるように思う。


(追加 10/20)
※公的年金による貯蓄超過に関しては、『検証』のエピローグ・注(2)でも触れられている。そこで引用される原典の内閣府ESRI「バブル/デフレ期の日本経済と経済政策」(歴史編 第3巻 時代証言集)における寺村信行証言(P.215)は、ネットでも閲覧可能である。


(今日の日経)
 大卒内定5年連続増、銀行・保険けん引。
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10/16の日経

2015年10月16日 | 今日の日経
 鉱工業生産は、あまり確報で動かないのだけどね。しかも、速報より0.7も下がるネガティブ・サプライズだ。投資財は速報から変わらなかったが、消費財は1.1も下方修正され、速報段階の上向きが横バイになった。消費財の出荷増と在庫減という傾向に変わりはないにしても、生産の低迷は、回復が先伸ばしになったことを示している。その水準は、政権交代があった2012年12月とほぼ同じである。消費増税は、アベノミクスの成果をすべて奪ったのだ。

(図)




(今日の日経)
 TPP関税・工業品87%即時撤廃。育児支援で企業に追加負担。鉱工業生産1.2%低下、13年6月以来の低水準。
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10/14の日経

2015年10月14日 | 今日の日経
 消費動向指数で注目すべきは、「雇用環境」と「収入の増え方」だ。家計調査などとパラレルなのが分かるだろう。今回の停滞局面で先行性はなかったけどね。9月の景気ウォッチャーが厳しかったが、10/9公表の8月の消費総合は意外なほど水準が高かったので、7-9月期はどうなるかな。GDPの民間予測は0.55%まで下がり、マイナス成長の予想者が増えたようだ。

 アベノミクスで雇用だけは改善していると言われ、求人倍率の高さが指摘されることも多い。消費動向指数とは食い違っているわけだ。これは、公定価格に縛られる低賃金の保育士や介護士が多いからではないか。施設が増えて人手は不足していても、賃金を上げられないから、求人が積み重なることになる。ここを底上げしないと、消費は盛り上がらないだろう。

………
 いよいよ、補正予算が必要になってきたが、2014年度決算の純剰余金が1.6兆円あり、2015年度は税収が3.2兆円ほど上ブレしそうなので、工夫次第で最大4.8兆円が組める。来年の参院選を前に3兆円で済むとは思えんよ。そうすると、消費増税直前の2016年度に補正をしないまま、4.8兆円全部を剥落させられるわけがなく、消費増税の影響が残る2017年度に補正をやめて緊縮するのも無理だ。この先、ある程度の補正が恒久的に続くことになる。 

 だったら、半分の2.4兆円くらいは、そのとき限りのバラマキに使わず、再分配に充てるべきである。9/11の諮問会議も、アベノミクスの成果の税収増を子育て支援に還元するとしており、今後、どれだけ充てるかが政治的焦点になる。先日のコラムでは、その答えをいち早く出してあげたわけだ。これは、中長期の経済財政の試算とも矛盾しない。待機児童の解消には0.3兆円あれば十分とされるから、2.4兆円を再分配の何に充てるかを差配するのが「一億大臣」だとしたら、大変な権限である。ネーミングだけでバカにしてはいけない。


(今日の日経)
 VWがエコカー戦略転換。足踏み景気・雇用好調でも消費低迷。税収増で自治体の1/3が実質無借金に。消費者心理2か月ぶり悪化。民間予想・実質0.55%に低下。中国9月輸入20%減。9月工作機械受注が国内も減少。
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穏健財政による次世代投資

2015年10月11日 | 経済
 「一億総活躍」なんて、権力者臭さを漂わせてどうするのかね。かつての「所得倍増」は、所得を倍増させるという意味だった。今度は、一億を活躍「させる」つもりなのか。言われなくても、多くの国民は活躍したいのであって、それを阻む「壁」があるゆえに、困っているのだ。取り組む「壁」を示さないのでは、政治目標とはなり得ない。もっとも、10/9の日経によれば、スローガンを思いついただけで、中身はこれからのようだ。

………
 アベノミクスを総括すると、大胆な金融緩和で円安・株高を実現し、財政出動で景気に勢いをつけたものの、一気の消費増税で成長を失わせ、国民生活を低下させてしまい、今年度も追加増税を取りやめたのみで、8兆円の緊縮財政を敷いたために、原油安の天恵にもかかわらず、経済を低迷させたとなる。第三の矢の法人減税は、財政に穴をあけても、投資や雇用の促進には目立った効果がなく、企業の滞留資金を更に増やすに終わった。

 したがって、アベノミクス第二ステージにおいては、名目GDP600兆円達成を掲げることにより、度が過ぎた緊縮財政を否定することにしたと思われる。すなわち、「穏健財政」への転換である。これは、1997年のハシモトデフレ以来の政策転換であり、財政再建が最優先目標から下ろされたことは、歴史的変化と言えよう。立案者に、そうした意識は、あまりないにしても。

 「穏健財政」を具体化すれば、2012,13年の成長率が1.6~1.7%であったことを踏まえるなら、緊縮は0.5%程度にとどめるというものになろう。したがって、今年度は5兆円の補正予算を組み、締め過ぎを戻す必要がある。そして、2016年度は2.5兆円の補正予算を予定し、2017年度は1%の消費増税と2.5兆円の補正予算の維持とする。2018年度は消費税の悪影響が続くので、補正予算は継続せざるを得まい。そして、2019年度に再び1%の消費増税と補正予算の維持、2020年度も補正予算の継続である。むろん、経済は生きものなので、状況に応じて調整する必要がある。

 2014年度の一気増税の結果を踏まえれば、理性ある人なら、「今後は刻むしかない」となるはずだ。また、こうすれば、軽減税率の問題は、2020年度まで先送りできる。補正予算も、「来年はやめられる」と考えるのは幻想でしかなく、続けざるを得ない以上、そのとき限りのバラマキに使うのはもったいない。2.5兆円は、ほぼ恒久財源なのだから、再分配に充てられるし、貧困化を踏まえれば、そうすべきでである。

 他方、成長の復活による金利上昇への備えとして、利子・配当課税の税率を25%にしたり、株や土地にバブルが発生した場合に、臨時に法人増税ができるよう準備したりする必要がある。国債金利が上昇しても、自動的に税収も増えるようにして、利払費増加の不安を払拭するわけである。また、異次元緩和の後始末を終えるまでは、副作用の勃発に備えることも大切だ。(参照:均衡管理)

………
 以上のような現実的な財政計画を立てれば、新第二の矢で実施する少子化対策の財源が2.5兆円も出てくる。その使い途だが、「ニッポンの理想」で示したとおり、若者・女性が中心の低所得層に対する社会保険料の軽減をお薦めする。これにより、130万円の壁も解消され、非正規から正社員への移行も容易となる。非正規から脱する道を作らずに、「活躍せよ」とは虚しい。これは、労働供給の面で、成長力を高めることにもなる。

 少子化の最大の要因は、「働けない」ことにある。非正規に押し込められ、低所得に喘いでいては、結婚できるわけがない。夫婦で稼いで賄おうとしても、保育所が不足している。不足は、保育士は非正規だらけで賃金が低く、人手が集まらないのが理由だ。「ニッポンの理想」のように、低所得層に財源を集中すれば、たった1.6兆円で、最大16.8~22.9万円もの負担軽減が可能であり、諸所の問題を一つの手段で好転できると考える。

 しかも、社会保険料の軽減は、経済が順調に成長し、名目賃金が上昇していけば、必要な財源は急速に減っていく。財政の負担は、一時的なものだ。労働供給を高め、少子化の緩和で長期的に国力を強くし、財政の重荷にもならない。こうなるのは、社会保険料の軽減が「次世代への投資」だからである。これまで、目先の財政収支の改善に苦闘し、国の将来を捨ててきた。我々が戦うべき場所は別にある。

 残る新第三の矢の介護離職は、どう解決するのか。実は、130万円の壁の解消は、これにも役立つ。壁がなくなると、労働時間がフレキシブルになるからだ。企業にとっては、社会保険料がかかるのに、6~8時間しか働かないのが最も効率が悪い。だから、労働者が介護と仕事を両立させようとしても、辞めてくれとなる。それでパートに落ちれば、生活苦に陥る。こういうジレンマは除かれるのである。

 「穏健財政による次世代投資」は、安定的な財政運営を行い、社会の再生産に支出を充てるという、先進国では、ごく当たり前の、平凡な政策の考え方である。むしろ、成長力を無視し、度外れた緊縮財政を繰り返し試みるという、日本の財政当局の行動は、常軌を逸している。アベノミクス第二ステージは、マイナス成長への転落という惨敗を経験し、ようやく、官僚組織の狂気から、政治が脱しようとする試みと位置づけられる。

………
 かつての「所得倍増」は、単なるスローガンではなく、「健全なる積極財政」によって成長を促進すれば、十分に達成が可能なマクロの計画に基づいていた。これを主導したのは、お役所ではなく、首相となる池田勇人のブレーンとしての下村治博士である。今の財政当局は、「緊縮職人」でしかなく、「一億総活躍プラン」を作れと言われても、来年夏まで延々と「国民会議」を開き、有象無象の施策を羅列した分厚い報告書を出してくるだけだろう。

 もっとも、野党が公務員人件費の2割カットと消費増税の組み合わせという対案しか出せないのなら、その程度で十分かもしれない。しかし、それでは、困窮にある国民は救われまい。日本のリーダーが、総括が必要とか、手段が示されてないとか、批判するだけでは情けない。老骨でも、このくらいは書ける。下村博士は、当時40代だった。日本の未来図を描くのは、そこに生きる若い君たちの仕事である。


(今日の日経)
 法人税17年度に20%台、減税で国際競争力。

 ※現実に学んでほしい。円安でも輸出を増やさないのに、つける競争力とは何だろう。
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10/9の日経

2015年10月09日 | 今日の日経
 8月の鉱工業生産で資本財出荷が落ちていたのだから、機械受注が悪化するのも当然だ。動向に変化が見られることは、先月の段階で指摘していたところである(9/16)。中国が原因とされるが、製造業はそうだとしても、非製造業は、消費増税後の消費動向にパラレルである。9月景気ウォッチャーの低下も大きく、消費は更に厳しくなっている。

 金利や収益で設備投資が決まると考えるから、途惑うのであって、製造業は外需、非製造業は内需で動くと分かっていれば、迷ったりしないはず。経営者も、円安・原油安で高収益にあるから、投資したい気持ちにはなっているだろう。実際、海外やM&Aは盛んである。それでも、緊縮財政で売上が増えないのでは、いざ設備投資とはならんよ。

(図) 非製造業(除く船電) : 内閣府 機械受注統計



(今日の日経)
 TPP関税農水産品の半数で撤廃。9月街角景気・悪化続く。機械受注7-9月マイナス確実。旗印の一億総活躍にひと夏。
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8月毎月勤労統計に異変

2015年10月06日 | 経済
 速報だから、異変と言うには、気が早いかもしれないが、8月毎勤を季節調整済指数で見ると、給与総額が前月比-1.6にもなっている。若干残るボーナスの撹乱だと良いのだが、確報では、もっと下がる可能性が高い。指数の99.2は、7月の撹乱を除くと、3月以来の低水準である。また、常用雇用は、わずかながらマイナスとなった。マイナスは、3月に2年8か月ぶりの観測をしたが、また起こった。アベノミクスの失速は、賃金や雇用にも現れだしていると考えた方が良かろう。9月の消費は厳しいかもしれないね。

 ちなみに、毎勤は前年比で取り上げられることが多く、季調値で前月比を見ることは少ないが、アベノミクスの特徴を、端的に表す指標だと言えるだろう。すなわち、雇用は着実に増やしてきたものの、給与は横バイの状態であり、実質賃金は、円安と消費増税によって大きく下げ、いまだに低迷から脱していない。煩瑣になるので、図では省いたが、雇用×実質賃金で見ても、2013年平均をなかなか上回れないでいる。

(図)



(今日の日経)
 TPP大筋合意。ノーベル賞に大村智氏。

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アベノミクス・景気後退の認識と補正予算への道

2015年10月04日 | 経済(主なもの)
 消費増税以来、エコノミストは「次の四半期には回復」と言い続けて来たように思う。実際には、月次の経済指標が出るごとに、下方修正の繰り返しであった。しかし、今回は、7月指標が判明した段階で、ゼロからマイナスの見通しが出始め、もはや、8月指標ではコンセンサスとなっている。主因の消費低迷は2月からだったから、認識が改まるのに半年を要したことになる。ことほど左様に、認識とは現実以上に変わりがたいものである。

 この調子では、来夏には参院選もあり、大型の補正予算が組まれることになろう。補正予算は、消費増税前の2016年にも必要だし、足元の増税の悪影響の長引き具合からすれば、翌2017年にもやらざるを得まい。つまり、「締め過ぎてバラマキ」を3年連続でするのだ。これを繰り返して来たがために、肝心のところに予算が行かず、貧困が蔓延し、少子化も続いて、日本の劣化が進んだ。こちらには、いつ気がつくのだろう。

………
 毎月恒例ではあるが、緊縮ニッポンの不調ぶりを確認していこう。まず、8月の家計調査は、二人世帯の除く住居等の季節調整済指数が前月比+1.4であった。2か月連続のプラスだが、6月の落ち込みが大きかったため、5月の水準に戻っただけである。勤労者世帯の消費性向は「並」の水準で、猛暑で消費全体が増えたわけでもない。「並」へと回帰したことからすれば、この水準が9月も続くと考えるのが妥当だろう。

 消費を供給側の商業動態で見ると、8月の小売業は季節調整済指数が前月比0であった。2~6月にかけて落ち込んでいたが、7月に以前の水準を取り戻し、それを維持した形である。また、鉱工業生産指数の消費財出荷は、前月比+0.7で、前月に続き、緩やかに増加した。消費財については、在庫が低下し、増税前水準に戻ったことが目を引いた。普通なら、「これから景気が回復する」と言えるのであるが。

 以上を踏まえれば、未発表の8月の消費総合指数は5月並みに回復し、7-9月期の前期比は+0.3くらいと予想される。GDPへの寄与度とすれば+0.2ほどだ。消費の戻りで在庫が減れば、寄与が消えるとも考えていたが、中国の景気後退によって、投資財の在庫が膨張し、相殺されてしまった。これにより、在庫はGDPを下支えするだろうが、ツケは10-12月期に先送りされる。

 注目の7-9月期GDPだが、設備投資は、鉱工業生産の資本財出荷(除く輸送機械)では下降しており、公共投資と住宅投資は、建設財出荷で見ると横バイである。外需は、若干のマイナス寄与になりそうだから、今のところは、ゼロ成長からわずかにプラスくらいの見当である。むろん、2四半期連続のマイナス成長という「景気後退」を免れたとしても、在庫増で高めの成長だった1-3月期を含め、実態として、まったく成長できていないことに変わりはない。

(図)



………
 8月の鉱工業生産のネガティブ・サプライズは、中国のバブル崩壊を受け、堅調だった投資財がコケたことである。生産日数の少ない8月でもあり、フレ過ぎの感じはあるにしても、不調続きだった消費財がようやく上向き、賃金や雇用も着実に改善してきたところなのに、ここで失速とは痛手だ。しかも、事の性質からして尾を引きそうであり、悪影響は少なくとも年内は続くと考えるべきだろう。

 この調子では、2015年度の成長率は1%を割り、消費増税から2年経ってもGDPを増やせなかったという結果になる。2016年の参院選に、3年前の2013年のアベノミクスの成功だけで臨むのは、さすがに厳しい。もっとも、野田民主党政権の計画どおり、財政当局の言いなりに、この10月に10%消費増税をしていたら、中国のバブル崩壊とも相まって、需要の内憂外患で地獄を見るところだった。

 一気増税二連発という日本経済を壊すような過激な政策を財政当局が主導した事実を、結果が出た今、忘れてはなるまい。恐ろしいのは、1989年の消費税導入時は増減税同額、1997年は減税先行増税、2014年は純増税と過激さが増していることである。1995年の阪神大震災では迅速に経済対策を打ったのに、2011年の東日本大震災では復興増税で渋りまくったところにも、これは表れている。

 日本の財政当局の特徴は強い政治力にあるが、それは、デフレ下での緊縮のような経済的に無理のある政策を、政治力で押し通すという繰り返しで鍛えられてきた側面がある。そういう人材が評価される組織では、過激さはいや増していく。こうして、強い「教義」に組織が支配されると、失敗に直面しても、在り方を反省するのでなく、外向けの「布教」に熱心になったりする。そんな傾向が現れているのではないか。

 いまや、消費増税のために法人減税を差し出すといった、財政再建すら度外視するようなことまでするようになった。社会保障を敵視する一方、消費増税のためとなればバラマキも平気で、分裂ぎみだ。そして、今年度も、「締め過ぎて戻す」ための大型の補正予算が組まれることになる。これは、来年も、再来年も繰り返されるだろう。「緊縮教徒」に入信すると、貧困の蔓延とバラマキが同居するという世上を見ても、矛盾を感じなくなるようだ。

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 誤解がないように言っておくが、筆者は消費増税には賛成である。ただし、成長を阻害しない範囲で緩やかに行うべきものだ。軽減税率も、決して良いとは思わず、財政当局の主張のように給付でするのが適切である。拙速にマイナンバーに絡めたがために、保険料の重い福祉国家では必須となっている「給付つき税額控除」が潰えるのは誠に惜しい。

 おそらく、最初から、みなしで全員一律4000円の前払いとしておけば、ここまで混迷せずに済んだろう。4000円から大きく増やしたければ、消費量の測定が必要になり、その時にはマイナンバーを使用せざるを得ないと、将来の課題に位置づければ良かったのである。緊縮思想が強すぎ、欲張るあまり、政治的にも失敗したように見える。

 軽減税率のメリットは、痛税感の緩和とされるが、今後、物価上昇率が2%近くになれば、これに紛れて分からなくなる。実際、欧米では、そうである。そもそも、軽減の本来の目的は、痛税感より、貧困層の救済だろう。それなら、軽減税率に必要な1.3兆円の財源で、一律1万円を配る方がマシだ。食料品の税率を据え置くどころか、5%に下げるのと同じ効果がある。それほど、高所得層に恩恵が漏出する軽減税率は、効率が悪いのである。

 もちろん、最善は、本コラムが提案するような社会保険料リンク型の給付つき税額控除である。保険料リンクとは、所得と結びついてることだから、更に集中的に低所得層に再分配ができる。1.6兆円の財源で、最大16.8~22.9万円もの負担軽減が可能だ。桁違いの効果があり、中小企業も大歓迎だろう。130万円の壁が撤去され、母子家庭の母がダブルワークに苦しむことまで解消される。

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 繰り返して言おう。日本に足りないのは、財源ではない、理想である。補正予算を一時的なものにバラまき、翌年にはやめられると考えるのは幻想だ。需要不足の経済状況では、打ち続けなければならなくなる。それなら、意味あることに使うべきである。「ニッポンの理想」で示したように、1.6兆円でワーキングプアを一掃でき、少子化の逆転も可能だ。緊縮思想から脱すれば、それらの解決は容易ですらある。

 貧困層も、若者層も、日々の生活に追われて、理想を考える余裕などない。彼らに「言葉」を与えるのは、社会のリーダーの役割である。エコノミストの諸氏も、景気後退から補正予算という流れを、いつもの風景と思ってほしくない。惰性的政策から脱する転換点になるかもしれない。今日の日経によれば、野党は参院選に向けて再分配政策を並べるらしく、与党がTPPの農業対策のような従来型のバラマキなら、アベノミクスの敗北は必至だ。政権も、既にこれを意識した動きを見せている。

 財政当局の諸君だって、学生時代には理想を語っていたはずだ。「日本を良くしたい」が「財政再建」になり、「消費増税」に変質しと、次第に理想が狭隘になってはいまいか。積極財政に打って出るには、需要管理のための計測・予測という職人芸が必要だし、金利上昇に備えた資産課税の整備など安全装置も欠かせず、物価抑制のための消費増税というコンセンサスも作らねばならない。世の風が移る中、若き日の原点を想い起こしてもらいたい。



(今日の日経)
 通販を郵便局で受け取り。業種天気図・中国経済の減速響く。民主は底上げ型で勝負。読書・下層化する女性たち、弥生時代の歴史。
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