「マスクも、PCR検査も、今、増やしてます」と聞かされるより、「輸入が途絶えた以上、国内生産が立ち上がるまで耐えてほしい」、「能力に限りがあるので、優先度をつけて検査せざるを得ない」と正直に言ってくれた方が良かったと思う。日本の強みは現場にあるので、「代わりに布マスクを手作りしよう」、「それならCTで肺炎を見つけていこう」といった工夫や努力が素直に現れ、焦燥感に苛まれずに済んだのではないか。危機においては、やってる感の演出より、正直に現実を語り、協力を呼びかけるリーダーシップが大切だ。
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この1週間の推移で、1日当たりの新型コロナの感染確認数は、増加が収まったように見える。これを分析するために、日々の変動が大きく、曜日による周期性も感じられるので、7日後方移動平均をかけたのが、下図である。この図では4/14がピークになっていて、緩やかに低下していることが分かる。変化が現れるのが遅れる後方移動平均の特性を踏まえれば、本当のピークは3日前の4/11だったと考えられる。
4/11の2週間前は3/28であり、ちょうど、小池都知事が週末営業の自粛を呼びかけ、夜の街の危険を説いていった頃だから、そうした対応は、局面を転換する大きな効果があったと言えよう。その後、4/7に非常事態宣言が出され、全日の強い自粛が始まり、2週間と3日ほど経った。低下傾向の加速が期待される時期に来たわけだが、ここに来て兆候が見られ、過去7日間の平均で-3.0%のペースとなった。
単純に、このトレンドを伸ばすと、非常事態の期限である5/6では1日当たり90人弱となり、東京都の医療供給体制の目安となる80人まで、あと一歩となる。おそらく、このレベルにならないと、自粛を緩めるのは難しかろう。さらに、その半分の40人を切るには、6月始めまでかかる計算だ。ピークから9日間の緩い低下傾向は、政府の専門家会議が示した65%の接触削減の場合の見通しに似た形だったが、この2日でやや速まっている。
(差替図)
振り返ると、感染が加速して20人を超えたのは、3月の3連休の直後だった。3連休に自粛が緩んだせいとも言われるが、感染確認までのタイムラグを踏まえると、その2週間前の欧米からの大量の帰国の折に、火種は撒かれたように思う。そこに人との接触が増える年度終わりが重なったのだろう。もし、韓国や台湾のように、帰国者の管理がもっと強力だったらと、後知恵ながら、悔やまれるところである。
むろん、衰退途上国の弱体な検疫を責めるのは酷である。停留させるホテルを確保する強権もなければ、個別管理のためのITシステムもない。4/21に日経は、「強力な司令塔 コロナ抑制」と、日米韓台の感染症対策機関を比較してくれたが、人口の小さい韓台からも大きく立ち遅れている。これが衰退国の劣後する行政の現実だ。手薄な体制で、何とか感染拡大を抑え込もうと奮闘している方々には、頭の下がる思いである。
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筆者は、経済のプロであっても、疫学の専門家ではないので、前述の分析は、あくまでも、現状を把握する上でのヒントと受け取ってほしい。今後、緊急事態宣言以降の強い自粛によって、感染者数の低下が加速することを願わずにはいられない。政府の専門家会議が示す80%の接触削減ができていれば、そうなる希望がある。現実が厳しくとも、正直に語ってもらえれば、どんな困難にも立ち向かえるものだ。今は苦しいが、先に明かりも見えてきた。もうひと踏ん張りである。
(今日までの日経)
米欧コロナ感染 公表値の10倍も 抗体検査で判明。家賃支援、与野党協議入り。コロナ検査 機能不全 結果まで1週間も。国内景気「悪化」11年ぶり 4月月例報告。ベトナム、外出禁止解除。綱渡りの中小支援 33都道府県が協力金、資金難なお深刻。
※追記 面倒なので、単純なトレンドで本文は説明しているが、参考までに、日々の予測値を、前週の値に直近7日間の平均減少率を7乗することで作ると、差し替え後の図のようになる。結果は、トレンドと大して違わないが、5月の連休には80人以下の値が現れることが分かる。感染加速前の水準である20人を初めて割るのは6/6だ。予測値は、データが加わるつど変わることには留意されたい。