「こんな膨大な財政赤字を、いつまでも出し続けてはいられない」。それは、そのとおりである。では、どこまでなら大丈夫で、もし限界を超えたら、どうなるのか、今日は、ちょっと、そんなことを考えてみよう。
まず、日本国債は、円建てである。少なくとも、予想し得る将来において、外貨建てで資金を調達しなければならない事態はないと言って良いだろう。仮に、貿易赤字が続いたとしても、日本は世界一の債権国であり、多額の金利収入を得ており、しばらくは持つ。対応への時間的余裕はあるということだ。
国債発行の目的は、輸入のための外貨の調達ではなく、国内における社会保障などの支払いに必要な「円」を確保することである。したがって、日銀が市場から国債を買い上げる限り、無限に発行が可能だ。直接、日銀が国債を引き受けなくても、日銀に転売できると思えば、銀行は、いくらでも国債を政府から買うだろう。
問題は、そうなったとき、お金があふれるために、インフレが起こらないかということだ。もちろん、社会保障給付を受けた高齢者が、まったくお金を使わず、ただ溜め込むだけであれば、何も起こらない。インフレは、お金を使おうとするときに、需要過多の状況が生まれて、発生するからだ。
日本が膨大な財政赤字を出しつつもデフレであるのは、社会保障給付を増やしている割には、高齢者がお金を使ってくれないことが一つの理由だろう。そして、もう一つの理由は、本来、お金を必要とする企業が、さっぱり設備投資をしないことである。お金が使われなければ、インフレにはなり得ない。
企業が設備投資をしないのは、需要の伸びに不安があるからだ。日本の財政当局は、景気が少し上向くと、すぐに緊縮や増税をする。これでは、とても怖くて設備投資はできない。こうしたことは、この15年間、何度も繰り返された。2010年度では、景気対策打ち切りで支出は5.7兆円減らされ、自然増収で税収は2.9兆円増やされた。これだけ需要を抜けば、デフレが続かない方がおかしい。
逆に言えば、日本は、早期の需要の吸い上げを行うことによって、企業の設備投資の意欲をくじき、資金を余らせることをしており、それでもって国債を低利で発行することに成功しているのである。日本の財政当局が緊縮と増税に先走るほど、ますます企業の設備投資は衰え、成長は停滞する一方、政府債務は更に巨大化することになる。
これが終わるのは、企業が萎縮し切って、国内では縮小再生産を繰り返し、ついに設備投資の原資となる資金を十分手元に持てなくなったときであろう。ここで、国債は引き受け手を失い、お金が市場にあふれ出し、インフレへと向かう。むろん、設備投資の衰退によって、既に成長力は失われているので、スタグフレーションとなる。
インフレへと向かえば、それに紛れて増税は容易にできる。インフレのために実質値での社会保障給付も抑制されるだろう。こうしたことで、インフレを破裂させないことは十分に可能だ。政策手段はあるということなのだ。そして、残されるのは、疲弊しきった生産力であり、失われた成長性である。放置された少子化によって、労働力の損耗も激しいだろう。一言で表せば、「疲弊の日本」である。
こうして見れば、日本は、更に巨額の政府債務を積み上げたあげく、企業の衰退を経て、ようやく中程度のインフレが始まり、それを抑制する過程で財政再建が成されることになる。需要は超過ぎみだから、設備投資は刺激されるものの、金利は高く、労働力不足もあって、成長は思うに任せないだろう。
顧みれば、日本の財政赤字は、ハシモトデフレ以前は、まったく問題が無かった。財政の赤字は、社会保障基金の黒字で埋められていたからである。将来、高齢化で社会保障基金が赤字化すれば、需要増によって税収が増し、財政が黒字化するという、ただ、それだけの構造であった。しかし、ハシモトデフレをしたことで、賃金が伸びなくなり、保険料が集まらないようになって、社会保障基金まで赤字へ転落した。
現在は、デフレによって企業にせき止められたお金を、財政が国債で吸い上げる形となっている。日本の財政当局がしていることは、緊縮と増税によって、企業の設備投資の意欲を衰えさせ、成長力を奪うことによって、企業にお金が溜まらない構造に変えるものだ。社会保障基金の次は、企業を壊そうというわけである。
こうして、お金の溜まりどころを次々に破壊し、ようやく市場にお金が溢れるようなって、インフレに始まる財政再建が可能になるのである。社会保障が壊され、企業も潰されて、「焼け野が原」となった日本で、財政だけが健全化される。日本の財政当局が連れて行く未来は、なんと凄まじいものであることか。先走りをせず、成長とデフレ脱出を待ってから緊縮と増税をすれば、こうはならない。わずかな経済運営のタイミングの違いが国の将来を分けるのである。
(今日の日経)
想定レート80円大勢に、企業は円高定着に備え。フェイスブック開国迫る。投機筋の円買い膨張。リスク確率論の軽視の代償・太田泰彦。メガソーラー陣取り合戦。復興消費が旺盛、支援者流入。読書・ポスト・マネタリズムの金融政策、日本のソブリンリスク。
まず、日本国債は、円建てである。少なくとも、予想し得る将来において、外貨建てで資金を調達しなければならない事態はないと言って良いだろう。仮に、貿易赤字が続いたとしても、日本は世界一の債権国であり、多額の金利収入を得ており、しばらくは持つ。対応への時間的余裕はあるということだ。
国債発行の目的は、輸入のための外貨の調達ではなく、国内における社会保障などの支払いに必要な「円」を確保することである。したがって、日銀が市場から国債を買い上げる限り、無限に発行が可能だ。直接、日銀が国債を引き受けなくても、日銀に転売できると思えば、銀行は、いくらでも国債を政府から買うだろう。
問題は、そうなったとき、お金があふれるために、インフレが起こらないかということだ。もちろん、社会保障給付を受けた高齢者が、まったくお金を使わず、ただ溜め込むだけであれば、何も起こらない。インフレは、お金を使おうとするときに、需要過多の状況が生まれて、発生するからだ。
日本が膨大な財政赤字を出しつつもデフレであるのは、社会保障給付を増やしている割には、高齢者がお金を使ってくれないことが一つの理由だろう。そして、もう一つの理由は、本来、お金を必要とする企業が、さっぱり設備投資をしないことである。お金が使われなければ、インフレにはなり得ない。
企業が設備投資をしないのは、需要の伸びに不安があるからだ。日本の財政当局は、景気が少し上向くと、すぐに緊縮や増税をする。これでは、とても怖くて設備投資はできない。こうしたことは、この15年間、何度も繰り返された。2010年度では、景気対策打ち切りで支出は5.7兆円減らされ、自然増収で税収は2.9兆円増やされた。これだけ需要を抜けば、デフレが続かない方がおかしい。
逆に言えば、日本は、早期の需要の吸い上げを行うことによって、企業の設備投資の意欲をくじき、資金を余らせることをしており、それでもって国債を低利で発行することに成功しているのである。日本の財政当局が緊縮と増税に先走るほど、ますます企業の設備投資は衰え、成長は停滞する一方、政府債務は更に巨大化することになる。
これが終わるのは、企業が萎縮し切って、国内では縮小再生産を繰り返し、ついに設備投資の原資となる資金を十分手元に持てなくなったときであろう。ここで、国債は引き受け手を失い、お金が市場にあふれ出し、インフレへと向かう。むろん、設備投資の衰退によって、既に成長力は失われているので、スタグフレーションとなる。
インフレへと向かえば、それに紛れて増税は容易にできる。インフレのために実質値での社会保障給付も抑制されるだろう。こうしたことで、インフレを破裂させないことは十分に可能だ。政策手段はあるということなのだ。そして、残されるのは、疲弊しきった生産力であり、失われた成長性である。放置された少子化によって、労働力の損耗も激しいだろう。一言で表せば、「疲弊の日本」である。
こうして見れば、日本は、更に巨額の政府債務を積み上げたあげく、企業の衰退を経て、ようやく中程度のインフレが始まり、それを抑制する過程で財政再建が成されることになる。需要は超過ぎみだから、設備投資は刺激されるものの、金利は高く、労働力不足もあって、成長は思うに任せないだろう。
顧みれば、日本の財政赤字は、ハシモトデフレ以前は、まったく問題が無かった。財政の赤字は、社会保障基金の黒字で埋められていたからである。将来、高齢化で社会保障基金が赤字化すれば、需要増によって税収が増し、財政が黒字化するという、ただ、それだけの構造であった。しかし、ハシモトデフレをしたことで、賃金が伸びなくなり、保険料が集まらないようになって、社会保障基金まで赤字へ転落した。
現在は、デフレによって企業にせき止められたお金を、財政が国債で吸い上げる形となっている。日本の財政当局がしていることは、緊縮と増税によって、企業の設備投資の意欲を衰えさせ、成長力を奪うことによって、企業にお金が溜まらない構造に変えるものだ。社会保障基金の次は、企業を壊そうというわけである。
こうして、お金の溜まりどころを次々に破壊し、ようやく市場にお金が溢れるようなって、インフレに始まる財政再建が可能になるのである。社会保障が壊され、企業も潰されて、「焼け野が原」となった日本で、財政だけが健全化される。日本の財政当局が連れて行く未来は、なんと凄まじいものであることか。先走りをせず、成長とデフレ脱出を待ってから緊縮と増税をすれば、こうはならない。わずかな経済運営のタイミングの違いが国の将来を分けるのである。
(今日の日経)
想定レート80円大勢に、企業は円高定着に備え。フェイスブック開国迫る。投機筋の円買い膨張。リスク確率論の軽視の代償・太田泰彦。メガソーラー陣取り合戦。復興消費が旺盛、支援者流入。読書・ポスト・マネタリズムの金融政策、日本のソブリンリスク。





