経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

前知事の良識と政治

2011年04月01日 | 経済
 冷や汗ものだな。子ども手当の再可決である。もし、否決されていたら、6月の8000億円もの給付に穴があくところだった。もちろん、デフレと震災による需要減の中で、これが経済にどんな「人災」を引き起こすかを思えば、そら恐ろしくなる。

 直前の制度変更による自治体での混乱も避けられた。今は被災地へ、応援を1万人出そうとしているのだ。また、隣県では、被災者の受け入れも行っている。1人でも多く救援のために人を割くには、余計なことなど一切できる状況ではない。

 もちろん、子育てをしている人にとっては、給付の有無は、生活に大きな影響を及ぼしてしまう。年少扶養控除が1月から廃止されているので、子育て支援どころが、逆に大きく負担増になるところだった。国民生活の安定がかかっていたのである。

 今回の可決で、党議拘束に反し、賛成票を投じた寺田典城議員は、被災地の隣の秋田県の前知事である。国民生活と現場を念頭においた判断に基づき、勇気をもって行動したことに、心より賛辞を送りたい。日本の政治は、すんでのところで国民の信頼を失わずに済んだ。

 さて、復旧への特別立法がまとまりつつあるようだが、復興税だの、震災国債の日銀引き受けだのといった、復興の中身より財源論が先走っているようである。新税の導入は、必ず復興への不満を呼ぶことになるし、復興事業は順次実施されるものだから、急いですべきものではない。

 また、震災国債は、野党・自民党が国債特例法案に反対しているので、その代わりにするための方便に過ぎない。マーケットを通さない日銀引き受けは、資金の需給状況が分からなくなるため、混乱させるだけだろう。そもそも、数兆円の国債増発をしても、今は容易に消化できる地合だ。政治が余計な問題を作ることはやめてもらいたい。

 どうして、日本の政治と財政当局は、やらなくて良いことばかりに熱心なのだろうか。特別立法の中で重要なのは、被災者に復興事業を通じて仕事を与えることであり、津波にのまれた土地の買い上げなどによって街を早期に再建することである。こうした内容を深めるべきであろう。

 復興のアイデアは、船などの漁業施設の集約と共同利用、震災孤児向けの寄宿舎の建設など地元から次々と出て来ている。復興庁や委員会などの組織作りもいいが、こういう構想を即断即決で採用していき、パーツから全体を組み立てることが必要だ。

 筆者は、地元紙の報道から、復興費用は世間で言われるよりは少なく、阪神大震災のときと同程度ではないかとの感触を持っている。財源論や組織論を中心にせず、地に足がついた議論をしてもらいたい。

(今日の日経)
 復旧へ緊急の特別立法。子ども手当、可否同数で議長が決裁。震災国債、日銀引き受け市場は疑問。協調介入、日本は6925億円。韓国ウォン上昇、米金融危機前の水準に。ホンダ国内生産11日再開。応援消費始まる。南三陸町1000人超町外集団避難へ。
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