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経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・偽りの晴れ間での出港

2019年06月30日 | 経済(主なもの)
 晴れてほしいと思っているとき、雲間に光が差してくると、喜び勇んで出発してしまうが、やはり、悪天に変わりなく、急な雨に見舞われたりする。山や海での判断は、幅広く見ることが大切であり、景気の把握も、また同じだ。5月の鉱工業生産は予想外の上昇で、これらを基にする景気動向指数も「下げ止まり」になりそうである。しかし、在庫が積み上がる中での高生産とは不自然だし、5月の輸出も、景気ウォッチャーも、大きく低下しているのでは、疑うには十分であろう。

………
 5月の鉱工業生産は、季節調整値の前月比は+2.4と、市場の事前予測を大きく上回るサプライズとなった。ただし、今月は、改元に伴う10連休で、季節調整が難しくなっているため、普段は見ることの少ない原指数もチェックすると、下図のとおり、前年同月比が-1.8と、4月の-1.1より低下幅が拡大している。さらに、6月の予測指数も-2.3という状況だ。これでは、「下げ止まり」どころか、天候の悪化が続いていると考えざるを得ない。こちらが他の経済指標とも整合的であり、登頂や出港は控えるべきであろう。

 同様に、資本財(除く輸送機械)の前年同月比で、設備投資の動向を探ると、4月は-6.4、5月は-4.3と、引き続き低調である。2019年の水準は、2年前の2017年に重なる有様で、好調だった2018年から、すっかり逆戻りである。季節調整値で見れば、4,5月平均の前期比が+2.5となり、回復をうかがわせるものの、それですら、1-3月期の-6.8の半分も埋められない。やはり、原指数が2年前と同じ水準にとどまるのでは、復調の実感がまったく伴わないのも、当然と言える。

 今後については、生産予測の原指数を見ると、7月は、製造工業の前年同月比が+2.0となるの中で、鉱工業用生産財が-0.3、非耐久消費財が-0.5と低迷するのに対し、建設財が+5.4、耐久消費財が+10.6と分かれる形になっている。もはや、消費増税の3か月前となり、駆け込み需要への対応が始まると思われる。したがって、この点でも、夏に晴れ間があるように思えて、実のところ、基調は厳しいままと考えられる。むろん、増税後には、駆け込みの反動まで加わることになる。

(図)


………
 「下げ止まり」に反するような数字は、雇用にも表れている。5月の労働力調査では、失業率は2.4%と横バイであるものの、就業者数の前月比は2か月連続の減少となった。特に、女性は、これまで順調に増加してきたものが、伸びを失い、就業者、雇用者とも、2月の水準を超えない程度でしかない。また、新規求人倍率は、2.43倍と前月比-0.05と大きめの減少である。とりわけ、「除くパート」の2.18倍は、昨年12月以来の低さだ。景気ウォッチャーで、5月の雇用関連が大幅に低下したことがうなづける内容である。

 新規求人の前年同月比の増加数も、除くパートでの低下が著しい。全体では、3か月連続となる20,300人減で、そのうち製造業が5,800人を占める。これで5月に大幅な増産がされていたとは思いがたい。全体の増加数の3か月移動平均がマイナスに突っ込んだことは、消費増税後にも見られたが、今回は、それを突き破るような低下になっており、底入れどころか、悪化が加速している。建設業と医療福祉は別として、マイナスは非製造業にも広がっており、非製造業とて安泰ではない状況にある。

 他方、5月の住宅着工は90.0万戸で、前月比-3.1万戸となった。2014年の消費増税の際は、3か月前まで増加が見られたが、半年前の4月の時点で減少に転じている。こちらも、鉱工業の建設財生産を押し上げるような状況になく、一進一退の状態である。そして、5月の実質輸出は、既報のとおり、前月比-4.9もの大幅減になっており、続く6月上旬分の輸出総額の前年同月比も、5月の-7.8と同水準の-8.0にとどまる。いずれも、景気ウォッチャーの住宅関連や企業動向関連の5月の落ち込みぶりを裏書きするものだ。

………
 週明け月曜日には、6月短観が公表される。市場予測は多少の減で済むとの見方だが、景気ウォッチャーのような大きな低下にならないか心配である。消費増税が本決まりになってから、崖が見えるという皮肉な展開になりかねない。報道によれば、1-3月期GDPが輸入減による形だけのものにもかかわらず、2%成長の「晴れ間」に見えたことが、消費増税を決行する判断に結びついたらしい。反対に、4-6月期GDPは、輸入増でマイナス成長が避けられないが、公表は8月だから、どんな結果にせよ、消費増税をやめられるような時期ではない。崖だろうと飛び込むしかないところまで、既に来ているのである。


(今日までの日経)
 景気判断「下げ止まり」も 5月、鉱工業生産上昇受け。国民年金免除・猶予が4割 高齢者の貧困拡大懸念。税収、最高の60.5兆円弱。

※年金の「不足」が何かと話題になっているが、現実的な対応策は、より長く働くしかない。これに関して、ニッセイ研の斎藤太郎さんの「平均退職年齢はすでに70歳」(6/25)は、見慣れた数字から新たな認識を引き出す、大変、優れたレポートだ。希望のある内容だしね。

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6/27の日経

2019年06月27日 | 今日の日経
 なぜ、日本は、第二次オイル・ショックを上手く乗り切れたのかについては、議論のあるところなので、前回コラムでは、「一般に」という言葉を付けておいた。筆者の見解を申せば、「雇用より物価」という政策を選択できた理由がポイントだったと考える。当時の日本企業は雇用維持に努めていたから、政府は、大量失業による社会不安を危険視せずに、ブレーキを踏めた。企業は、残業やボーナスによる賃金の調整ができたし、組合も、企業別だから、経営状況を踏まえ、物価上昇をそのまま賃金に上乗せする無体な賃上げに拘泥しない。こうした雇用関係の柔軟な構造が奏功したと言えるだろう。

 ところが、この後、誤った教訓ができてしまう。ブレーキを踏めたのには、日独機関車論で、ある程度、景気が温まっていたこともあったのに、財政出動の効果が道半ばで終わったことで、「財政は効かない」となったのである。インフレを乗り切った後は、年金が大きな黒字を出しているとも知らず、財政再建路線に移り、成長をくすぶらせることになる。ここから抜け出せたのは、レーガノミックスの下での輸出拡大と、その後の円高不況対策での過剰な金融緩和だった。これでバブルへ向かう。安定的な財政運営をしておけば良いところで渋ったことが、金融政策に無理をかけ、大きな弊害を生むのである。

 さて、アベノミクスにおいても、金融緩和と緊縮財政の組み合わせで、金融政策に無理がかかっていることは同じである。限界まで使っているから、余裕がなく、米国の金融政策の動向でドル円が振られてしまう。そもそも、緊縮で内需が不振でなければ、円安による輸出に頼るまでもない。足元では、輸出の減退で外需の景況が急速に悪化している中で、内需を圧殺する消費増税に挑む方針が固まった。政治に対する国民の不安の敏感さは、年金問題だけではないように思える。昔と違い、雇用関係はドライになり、アベノミクスで増えた雇用は、脆い構造にあるからである。

(図)



(今日までの日経)
 円の理論値は107円台 均衡為替レート、日経など算出。経済教室・金融・財政より労働改革 急げ・伊藤隆敏、「労働流動化」の絶対視 避けよ・猪木武徳。エコノ・物価上昇 省力化が阻む?。

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財政赤字の不可欠性とコントロール

2019年06月23日 | 経済
 財政赤字と言うと、「赤字」という言葉だけで、何やら悪いもので、少ないほど良いとイメージされがちだが、赤字と黒字は表裏一体であり、MMT論者がよく指摘するように、誰かの赤字は誰かの黒字だから、赤字のみを減らすことはできない。すなわち、財政の赤字を減らそうとするなら、企業、家計、海外のいずれかの黒字も減らさなければならない。財政赤字の削減は権力で可能でも、「民間黒字」を削減するために、設備投資、消費、輸出を無理やり増やすわけにはいかない。こうした非対称性への無理解が成長を度外視する財政再建論を生むのである。

(図)


………
 主流派の経済学では、財政赤字を削減すると、資金需要が減って、金利が低下し、設備投資が刺激され、緊縮で失われた需要が補われると考える。これが本当だと、設備投資の増加で成長が加速するから、財政再建は「良いこと」でしかない。ただし、日本の場合は、金利に低下の余地がないので、このメカニズムは否定される。してみると、現状で財政再建を主張する日本の財政学者は、主流派の経済学さえ受け入れない特異な人達となる。

 本コラムの考え方は、緊縮をすると、経営者の需要へのリスク感が増大し、金利の低下では拭えず、逆に設備投資を減らしてしまい、経済は縮小均衡に向かうというものだ。需要に従う行動は、主流派の利益最大化の原理に反するため、異端に位置付けられる。これに対しては、生身の経営者は、人生が限られており、取れるリスクには制約があるため、いかに理性的になろうとも、利益機会を捨てざるを得ないと解釈している。

 需要に従う行動は、逆もまた同じで、設備投資が活発になると、需要が需要を呼び、金利では抑え切れず、インフレが加速することになると考えている。しまいにはブームが弾けて、長期的には利益が損なわれる。それでも、人生が短いゆえに賭けてしまうのだ。したがって、これを未然に防ぐ、財政による需要管理は必須である。政策的には、昔のケインジアンと変わりないが、需要への意味付けについて、独特のものがある。

………
 そうすると、不況時にはフリーランチが存在することになる。リスクのため、経営者は、不合理にも設備投資をせず、お金を貯め込むからだ。財政赤字は、政府がお金を代わって使うものである。供給力や労働力は、使われなければ、保存が効かずに失われるだけなので、ムダを無くして、社会的な厚生を高めることになる。そうして、需要を供給すれば、経営者の不合理な行動も癒され、合理的になって行く。

 むろん、政府が使われないお金を企業から法人税で吸収した上で使えば、財政赤字の問題は生じないが、政治的、技術的に難しい。赤字国債を発行し、借りた形にする方が容易である。供給力や労働力を資本に変えて保存するのには限度があるので、後で必ずしも返せるものではない。そこは、資産への課税で長期的に回収することになる。長期に及ぶ以上、短期的に問題が生じないよう、安定的に管理することも大切だ。

 こうして見れば、財政赤字とは、企業の不合理な行動の反映なのである。また、格差が拡大し、守銭奴的行動が増大すれば、これも財政赤字を不可欠にする。MMTを始めとして、財政赤字を是とする理論に対しては、フリーランチはないとの批判が展開されるが、利益最大化行動を過信し、現実を無視するものだ。他方、需要を追って、不合理にも過大な投資が始まり、フリーランチはおろか、空疎なバブルが醸成されることもある。こうならないためにも、需要管理は、金融政策とともに対応していかなければならない。

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 ケインジアンが信用を失ったのは、1970年代にインフレを加速させる失態を犯したからである。ハイパーインフレは、国家が破綻するような場合にしか起こらないにしても、二桁インフレは、経済運営の失敗と不運が重なれば、在り得る悲劇だ。MMTの論者は楽観的かもしれないが、先人の失敗に学んでも損はあるまい。一般に言われる教訓は、失業よりも物価安定を優先すべしというものである。

 1971年のドル・ショック後の日本は、円高の悪影響を懸念し、過度な金融緩和と拡張財政を行って、土地投機と物価加速を招いてしまった。そこへ、オイル・ショックに見舞われ、「狂乱物価」まで至る。これに対応して、急速な金融引締めと強力な総需要抑制策が取られ、後遺症の不況が長引くこととなった。猛アクセルの後に急ブレーキを余儀なくされる経済運営は、経済を不安定にし、成長を損なってしまう。

 しかし、第二次オイル​・ショックで、日本は際立つ対応を見せる。学習効果が働き、早めに金融引締めを進めるとともに、日独機関車論の拡張財政から転換し、公共事業の執行を抑制することで、石油高騰に伴う二桁インフレを短い期間で乗り切ったのである。この経験は、コンセンサスがあれば、財政も含めてコントロールし得ることを示している。「一度、財政を緩めると止められないから、緊縮を甘受せよ」というのは極端に過ぎるのである。

………
 現在の日本の財政構造は、景気が上向くと、強い緊縮が自動的にかかるようになっている。2018年度の国の税収は60兆円、地方が42兆円、厚生年金保険料が31兆円であり、名目成長率が1.5%だとすると、税収の弾力性が1だとしても、歳出を全体で2兆円は増やさないと、財政中立にならない。実際は、国は毎年の歳出増を0.5兆円に抑えられ、地方の一般歳出の伸びは1%弱にどどまり、年金でも歳出の伸びが歳入の伸びを下回って、収支が引き締まっている。これが金融政策に多大な負担をかけ、デフレ脱却を困難にしているのである。

 それなら、国の歳出増を1.2兆円に拡大して、少子化対策を次々に実現するなど、強過ぎるブレーキを緩めれば良い。このくらいでは、拡張財政とは言えない程度でしかなく、順調に成長すれば、税収の弾力性も高まり、収支は改善を続けるだろう。また、物価上昇が加速して、ブレーキが必要になれば、新規の施策である歳出増を見送れば良いだけだから、既存の施策を切るのと違い、政治的に調整が難しいわけでもない。背景とする理論はともかく、政策的には、元IMFのO・ブランシャール先生の提言と大同小異である。

 さらに、インフレを未然に防ぐ手立てとして、抜群の冷却効果を持つ消費税の増税要件を明確にしておき、例えば、消費の前年比が2%以上で、物価上昇率2%以上なら、1%の増税といったコンセンサスを作っておけば、万全であろう。また、利子課税を25%に引き上げておけば、利払いを税収増で自動的に賄えるようになるので、金利上昇に伴う財政への不安を一掃でき、無用に長期金利が高まる事態も避けられる。

………
 蛇足だが、MMTのインフレ防止策である完全雇用プログラム(JGP)は、公共事業以外では制度設計が困難で、効きも緩いと考えられる。財政赤字を肯定するのに、ブレーキに現実味の乏しいところが弱点に見える。公共事業であれば、労働単価を据え置くと、インフレ時には執行が困難になって、ビルドインスタビライザーとなるが、同じことを介護事業ですると、待機者を増大させるという社会問題が発生してしまう。建設業のように、問題なく官から民へ労働力をスイッチできるものは限られる。

 また、従来型の需要管理のように、直接、公共事業の量を減らすより、労働移動で間接的に減らす方法は緩くならざるを得ない。労働移動による賃金や物価の安定は、農村の労働力、女性や高齢者、外国人を使う方法が従来からあり、相応の効果はあるものの、人手不足対策としての機動性に欠ける。他方、消費冷却と物価抑制なら、消費増税のように、恐ろしいほどの効果が実証済の手段もある。JGPでインフレを防ぎ切れるなら良いが、過去には強いブレーキが必要な場合もあったのだから、多重防御を否定することもあるまい。

………
 世の中に不変の真理などなく、あるのは現実だけだ。経済理論がどうであろうと、過去の教訓を蔑ろにすることは危ういし、将来に考えられる手立ては用意しておくべきだ。それが、相互作用によって、時として想定外の挙動を見せる現実への賢明な対処法となる。かつてのケインジアンの失敗は、理論が根本から間違っていたためではない。状況把握が十分でなく、手順が合っていなかったという、実践的な理由なのである。


(今日までの日経)
 中国、陰る外貨パワー 10年で130兆円流出 迫る対外純資産減。金利低下 世界に連鎖 米10年債2%割れ。

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6/20の日経

2019年06月20日 | 今日の日経
 5月の貿易統計が公表され、日銀・実質輸出入の4,5月平均で前期比を見ると、輸出は-0.4と下げ止まらず、輸入は+3.9の大幅増となっている。輸入は前期の大幅減の反動が出た形で、GDPへの寄与度は-0.5を超える。このままでは、4-6月GDPがマイナス成長になるのは、避けがたい情勢だ。ただし、それは実勢とは離れた動きなので、より重要なのは、輸出の低迷ぶりだろう。輸出が上向かないまま、消費増税を迎える公算が次第に大きくなっており、かなり苦しい展開になる。

(図) 

 

(今日までの日経)
 企業投資、最高の52兆円 昨年度。「村にトイレ・電気」劣勢覆す インド総選挙。見えぬ駆け込み、消費不安。中国、金融不安の抑止急ぐ。
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1-3月期GDP2次・参院選惨敗への軌跡

2019年06月16日 | 経済
 たしか、春から夏にかけて急速に景気が悪化したことが前にもあったね。そうそう、建築偽装やサブプライム問題があって、後半が下り坂になった2007年だ。もう12年前になるのか。この時も亥年の参院選があって、与党が惨敗したんだっけ。5月までは支持率も高かったのに、6月からの下落がひどかった。年金問題が直接の理由とされているけど、選挙イヤーなのに、新規国債を4.5兆円も減らしたなんて、緊縮を自慢したりと、おごりもあったんだよ。第一次安倍政権のことさ。

………
 月曜に公表された1-3月期GDPの2次速報は、法人企業統計で予想されたとおりの内容で、わずかに上方修正されただけであった。実質2.2%成長と言っても、輸入の減少と在庫増によるものであり、実質的には、ほぼゼロ成長である。1次速報でマイナスだった設備投資は、2次でわずかなプラスに変わったものの、法人企業統計で判明したことは、既に製造業はマイナスに転じており、たまたま非製造業が大きかっただけで、反動の出る次の4-6月期でのマイナス成長を予感させるものだった。

 そう言えば、第一次安倍政権のときの実質成長率の推移は、発足直後の2006年10-12月期の前期比+1.3がピークで、1-3月期が+0.7、4-6月期が+0.1と下り坂になり、7-9月期には-0.5とマイナスに突っ込んでしまった。今回も、2018年10-12月期は+0.5と順調だったのに、直近の1-3月期は形だけ+0.6で、実質的にゼロ成長であり、次の4-6月期はマイナス成長の見通しと、12年前と似たような下り坂をたどっている。2006-07年に関しては、福井日銀総裁による量的緩和の解除が批判されたりするが、緊縮が元凶であるところも同じである。

 こうした下り坂の類似性は、月次の景気ウォッチャー調査で見ると、もっと鮮明になる。第一次安倍政権の場合は、高い水準を保ってきたものが、2007年春以降、急速に下がっていった。支持率も同様で、5月までは小康状態だったのに、消えた年金問題があって、6月から転落が始まっている。今回も、高原状態にあった景気は、年末から年明けにかけて低下し、月を追うごとに切り下がり、「悪夢のような」民主党政権末期並みの水準となって、いまだに下げ止まらない。

 実は、3年前の2016年の参院選前にも、冬から春にかけて景気が低下する局面があったのだが、この時は、伊勢志摩サミットにおいて、各国首脳が戸惑う中、「世界経済が、通常の景気循環を超えて危機に陥る、大きなリスクに直面している」と強弁し、翌年に予定していた消費増税を先送りした上で、夏の選挙に臨んでいる。リーマン並みの危機と煽るのは、大げさにしても、景気の地合いが悪い状況で、選挙前に消費増税という重荷を捨ててから挑むのは、政治的には正しい戦略だった。

(図)


………
 足下の景気は、水曜に出た法人企業景気予測調査で、はっきりとした悪化が見られ、大企業製造業の景況判断が、やはり、民主党政権末期の2012年並みに低下している。おそらく、7/1に公表される日銀短観でも、大幅な低下は避けられそうにない。そこへ、ホルムズ海峡でのタンカー攻撃である。短観の回答基準日の6/11が過ぎているため。数字への影響は限られるにしても、景気に対する国民の不安は、更に強まるはずだ。

 もちろん、選挙の行方は、景気だけで決まるものではない。12年前と違って、支持率は改元奉祝で高揚している。しかし、既に5月の景気ウォッチャー調査では、10連休明けの不振を嘆く声が並んでおり、景気の地合いが悪いと、何かをきっかけに、大きく支持率が崩れかねない。こんな中で増税なんてしている場合なのか、本当に短観が悪くなったのに、それでも崖へ連れて行かれるという裏切られた気持ちは、なかなか収まらないように思われる。


(今日までの日経)
 米国企業は借り過ぎか。「老後2000万円」麻生氏謝罪。中国経済 5月工業生産伸び率 10年ぶり低水準。ホルムズ海峡でタンカー攻撃 日本の船も被害。

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6/13の日経

2019年06月13日 | 今日の日経
 機械受注の結果は、「持ち直し」に上方修正となった。製造業は伸びが大きかったものの、前月の減少の反動もあるし、はん用生産用機械だけが良く、底入れと言うには、まだ早い。非製造業(除く船電)は、2か月連続での高水準でも、横バイの範囲内であり、運輸郵便業が飛び抜けただけの面もある。民需や内需の図で分かるように、4-6月期としては、幸先の良さはうれしいけれど、まだまだこれからだよ。

(図)



(今日までの日経)
 機械受注、外需24.7%減 4月 中国停滞、下押しの恐れ。中国の債務 最高に 貿易戦争で景気対策。骨太素案、消費税「10月10%」明記 最低賃金「早期に1000円」。

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6/11の日経

2019年06月11日 | 今日の日経
 昨日のGDP1-3月期2次は、法人企業統計の結果を踏まえた市場の予測どおりで、小幅の上方修正だった。法人企業統計で判明したように、設備投資は、製造業が既に減少に転じており、たまたま非製造業の伸びが高かったために、わずかながらプラスを維持できたというものだ。したがって、次の4-6月期は、相応のマイナスを覚悟せざるを得ない。輸出も、引き続き5月上中旬が悪く、慎重なニッセイ研の斎藤太郎さんが4-6月期GDPをマイナス成長と見た上で、「輸出の回復が遅れた場合には、2019年度後半の日本経済は内外需総崩れ」と指摘する由々しき事態だ。

 そして、足下の5月景気ウォッチャーは、「現状」が3年ぶりの低水準に下がっただけでなく、「先行き」まで-2.8にもなっている。コメントでも、「やや悪」を示す▲印が、かなり目立つようになってきた。むろん、ウォッチャーの数字も、「悪夢」のような民主党政権末期並みに落ちている。どうやら、政権への高支持率を頼みに、消費増税を抱えての参院選になりそうだが、世論は移ろいやすいので、景気への評価が厳しくなる中では、急変するおそれがある。特に、参院選では、有権者が「お灸を据える」ような行動を取りやすいため、経済、政治ともに予断を許さない展開である。

(図) 



(今日までの日経)
 参院選、来月21日投開票へ 衆参同日選、見送り強まる。中国公船、相次ぐ尖閣航行 60日連続で最長。街角景気 3年ぶり低水準 5月、前月比1.2ポイント低下。
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この国に必要な穏健な財政

2019年06月09日 | 経済
 骨太方針やら、参院選公約やらが固まり、10月の消費増税も本決まりの様相となってきた。アベノミクスの6年間の実質成長率の年平均は1.2%しかないのに、財政収支は1.2%も改善している。こんなに緊縮していなければ、成長率は2倍になって、とっくにデフレを脱却していたはずだ。それなのに、更なる緊縮を敢行するつもりらしい。この国に必要なのは、穏健な財政への転換である。

………
 世間の人々は、過激な緊縮が行われているとは、まったく思っていない。長年にわたって積み重なった公債残高の巨大さばかりが強調され、年々の収支の変化は、伏せられているからである。各界のリーダーや有識者であっても、マスコミを通じた官製の発表物に馴らされているため、本当の実態を分からないまま、財政の「危機的状況」に関する見解を再生産させられている。統計データを自らチェックする者しか、実情を知らないのである。

 財政収支を実態を、日銀・資金循環統計の一般政府の資金過不足でチェックすると、2012年に名目GDP比で-9%もの赤字だったものが、2018年には-2%にまで改善していることが分かる。実に、年平均で1.2%もの緊縮がなされていたわけだ。年額にして約6兆円、消費税の2%分に匹敵する緊縮を年々繰り返して内需を抑制していたら、デフレから脱却できないのも当然で、成長の中身は、輸出とそれの設備投資ばかりである。

 消費増税のあった2014年は別にして、これだけの緊縮は意外かもしれないが、メカニズムは単純だ。年々の歳出増を高齢化に伴う自然増の0.5兆円に抑える方針の下では、税収規模は約60兆円なので、名目成長率が0.8%を超えると、税収増が歳出増を上回り、自動的に緊縮が働くのである。同様に、地方財政も歳出増が抑えられ、厚生年金も保険料が増えても給付が連動するわけではない。こうしたデフレ構造が内蔵されている。

 したがって、デフレ脱却へ向けた処方箋は、穏健なもので済む。歳出増を1.2兆円まで拡大し、名目成長率2%までは、緊縮がかかりにくくにする。それでも、税収の弾力性は1より大きいので、それだけ収支が改善するし、地方や年金は、今までどおりである。結局、緊縮のペースを従来よりも落とすよう、構造を改革するということだ。歳出枠が0.7兆円拡大されれば、非正規女性への育児休業給付の実現など、少子化対策が次々に新設できる。

 従来は、税収が上ブレすると、補正予算で、そのとき限りのバラマキをしてきた。こうした使い方だから、いつまで経っても、少子化を克服できず、この国は、持続可能性を失ったままなのである。少子化が緩和されると、年金は長期的収支が大幅に改善し、年金を支える財政も楽になる。全体を見ず、目の前の歳出枠をケチって、デフレと人口崩壊をもたらしている過激な緊縮の構造を、今こそ転換しなければならない。

(図)


………
 アベノミクスでは、「リフレ」と称し、異様な金融緩和と過激な緊縮財政が貫かれて来た。その反動から、「財政赤字は、インフレ以外は問題にならない」とするMMTが注目されるようになっている。気をつけたいのは、金融緩和と違って、財政出動は効くため、量と質について、真面目に考える必要があることだ。「リフレ」の半面は、日銀の事務方が作ってくれたが、日本の財政当局は、需要管理の発想が欠け、歳出カット以外に能がない。

 彼らは「次世代に負担を先送りすべきでない」と盛んに唱えるが、先送りが可能なら、次世代も次々世代に先送りすれば良いだけだろう。こんな内在する論理の破綻すら放置されるのだから、負担論の理解レベルは、推して知るべしだ。先送りで困るのは、次世代が細る少子化の場合だから、先送りを可能とする以上、どんなに財政赤字を膨らませても、少子化を克服すべきという帰結になると思うが、いかがだろう。

 失われた20年は、闇雲な緊縮財政のなせる業だが、他方で、過剰な拡張財政も、経済に混乱をもたらす。経済には、需要の安定が何より重要である。なぜなら、成長の原動力である設備投資は、需要リスクに敏感で、需要に従ってなされ、金利で直接にコントロールすることが極めて難しいからである。MMTの論者も、なぜ、需要が大切なのかの理由まで分かっているわけではない。

 こうしたこともあり、歳出枠の拡大という穏健な路線を提案する次第だ。もちろん、より機動的な財政運営も在り得るし、やり切れるほどの技量があれば別だが、今の日本の議論のレベルでは危い。少なくとも、消費の前年比が2%で物価上昇率2%なら、消費増税1%といったルールを確立したり、利子課税を25%に引き上げて、金利が上昇しても税収増で利払いを賄える仕組みを整えたりといった「安全装置」を用意してからにすべきであろう。

………
 金曜に公表された景気動向指数は、先行指数が更に低下し、アベノミクスの6年間で最低となった。民主党政権末期並みへの下り坂で参院選を迎えるのは、高転びする危険がある。もはや、消費増税の先送りは、時間的に難しいので、あるとすれば、追加の経済対策になるが、既に消費税対策で一杯の公共事業では消化不良を起こしかねない。むろん、お勧めは、先述の非正規女性への育児休業給付の実現だ。

 赤字国債は、国内で消化する限りにおいて、持つ者と持たざる者の間で負担の格差が生じるものの、全体としては差し引きゼロで、負担が増すわけではない。本当に負担が増すのは、財政赤字が過剰な消費を招き、投資を阻害する場合に限られる。投資の少なさが生産力増強を鈍らせ、次世代の消費可能量を減らしてしまうからだ。これは、緊縮財政で需要リスクを生じさせ、投資を阻害しても同じことになる。

 したがって、財政は、緊縮にせよ、拡張にせよ、投資を促進するか、阻害するかで判断することになる。赤字の大きさは本質ではない。主流派は、緊縮すれば金利が下がって、自動的に投資が促進されると、ナイーブに考えるから、袋小路に陥ってしまう。してみると、少子化を克服する以上に、投資を促進するものがあろうか。なぜなら、国の持続性を確保して、投資の収益期間を無限に伸ばすからである。

 逆に、健全財政を貫いても、少子化で国が衰亡するようでは、無意味である。日本の少子化対策は、あれこれやられているようで、最初に直面する乳幼児期の支援が最重要であるのに、教育無償化の対象外にされたとおり、財源論に煩わされて手薄になっている。非正規女性への育児休業給付の実現は、経済的格差の是正にもなり、社会的に不効率な乳幼児期の保育需要を冷やすにも有効だ。財政は、質も考え、次世代のためにこそ使いたい。


(今日までの日経)
 法人税どこに消えた デジタル経済、捕捉しきれず。衆参同日選、見送り強まる 消費増税予定通り 国会延長せず。18年の出生数91.8万人、最低を更新 出生率は1.42。バイト時給に天井感 業績悪化・人材確保、綱引き。年金減額見直し 難題 財源の手当てつかず。

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6/5の日経

2019年06月05日 | 今日の日経
 1-3月期の法人企業統計が公表になり、心配していた設備投資は、前期比+1.1%と、まずまずであった。製造業は-1.7%であったが、非製造業が+2.8%と高かった。非製造業は、やや出来過ぎの感があり、4-6月期は、なかなか厳しいのではないか。図では分かりにくいが、設備投資は、昨年4-6月期にピークをつけた後、伸び悩んでいるようにも見え、崩れないだけ良かったというところである。他方、4月の国の税収は、所得税が大幅増となった。2018年度税収は、過去最高の60.1兆円を更新しそうな情勢にある。あとは、5月の法人税収次第だが、法人企業統計の特殊要因を除いた経常利益並みの横バイなら良いのだけれどね。

(図)



(今日までの日経)
 FRB 強まる利下げ観測。円上昇、一時107円台。待機児童3割減。GDP小幅上方修正か。デジタル人材 初任給優遇。設備投資 国内向け堅調 本社調査。訪問客、東南アジアから熱風。育休義務化 どうなの?。
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アベノミクス・悪夢まであと一歩の崖縁に

2019年06月02日 | 経済(主なもの)
 景気動向指数の先行指数は、3月改定値で95台まで下がり、「悪夢のような」民主党政権期に記録した95割れまであと一歩となった。そして、これに先行する5月の消費者態度指数は、消費増税後の最悪時以来の40を割れを記録した。40前後の数字は、政権交代に結びついた2012年の民主党政権期並みであり、アベノミクスに対する消費者の評価は、そこまで落ちているということである。これで、消費増税を抱えたまま参院選に臨むのは、なかなか厳しいのではないだろうか。

………
 週末に4月の経済指標が一斉に公表され、鉱工業生産は、前月比+0.6となったものの、3月の減を埋める程度に止まり、1月に急減して以来、低水準での一進一退が続いている。特に、設備投資を占う資本財(除く輸送機械)に至っては、2か月連続の減であり、下げ止まってないように見受けられる。この4月の100.5という水準は、2年前の2017年4-6月期をも下回り、景気は振り出しに戻ったような形である。

 鉱工業生産の予測は、5月+5.6、6月-4.2だったが、たとえ、このとおり実現しても、4-6月期は、前期の落ち込みを埋める程度にしかならない。在庫増の状況を踏まえれば、5月の急伸が実現するとは考えにくいところだ。今回は、季節調整が難しいため、原指数の前年同月比も確認すると、1月+0.7、2月-1.1、3月-5.0、4月-1.1という状態にあり、予測は、5月-2.1、6月-2.8と、楽観を許さないものになっている。

 政府の景気判断は、雇用や企業収益が堅調ということで、「緩やかな回復」を維持したようだが、労働力調査の4月の雇用者数は、前月比-30万人となり、頭打ち状態だった男性に続き、女性にも陰りが見えてきた。新規求人数では、「除くパート」の増加数の前年同月差は、製造業でマイナスが続いているほか、女性の多い卸小売業などでも、2か月連続のマイナスとなった。雇用も緩み出しており、堅調に見えるのは、遅行しているに過ぎない。

 また、「持ち直している」とされる消費については、4月の商業動態の小売業が前月比横バイに止まった。改元の10連休によって、サービス消費が増えている可能性は残るにしても、消費総合指数も、消費活動指数も、2月、3月と尻下がりにあって、4月がこの様子では、4-6月期は、まだマイナス圏であろう。そして、5月の消費者態度指数は、前月比-1.0と大きく下がり、消費増税の2014年以来の40割れとなった。

………
 機械的に判断が決まる景気動向指数は、3月に「悪化」となり、その改定値は、更に下方修正さている。4月については、第一生命研の新家義貴さんによれば、鉱工業指数等の結果を受けて、一致指数が2か月ぶりに上昇するものの、「悪化」のままになる見通しである。景気動向指数は、いち早く景気の変化を世に示したことで、にわかに注目されている。そこで、5月についても、速報性のある消費者態度指数を参照することで占ってみよう。

 下図のとおり、景気動向指数の先行指数と、消費者態度指数の雇用環境は、似たような動きを示す。消費者態度指数の総合値は、先行指数の10の構成項目の一つでもある。この動きからすれば、4月の景気動向指数は、やはり若干の上昇になろうが、5月になると、更なる低下となって、底割れする恐れがある。5月は、改元に沸き、旅行客も多かったので、消費者態度の底入れを期待していたのだが、心配な雲行きになっている。

(図)


………
 結局、景気動向指数の先行指数で見ても、消費者態度指数で見ても、「悪夢のような」民主党政権期並みのところまで来た。それでも、リーマン並みではないからと、4か月後に迫る消費増税という崖へ、我々は連れて行かれるのだろうか。少なくとも、アベノミクスに対する国民の評価が地に落ちている状況では、消費増税は、選挙において、かなりの重荷になる。浜口雄幸のようにデフレを貫いて「男子の本懐」を遂げるのも、政治の在り様ではあるが、名誉とは無縁の民草にとって、道連れはたまったものではあるまい。


(今日までの日経)
製造業、強まる停滞感 生産増も在庫は高水準/求人倍率維持も新規減。米関税で世界貿易急変 中国から生産移る。狂う回復シナリオ 中国、再燃する減速懸念。北朝鮮 ミサイル発射 ロシアの影。

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