経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

緊縮速報・2025年度の過剰達成は2.7兆円

2024年07月30日 | 経済(主なもの)
 昨日、中長期の経済財政試算が公表になり、2025年度には基礎的財政収支が+0.8兆円になるとされた。2023~25年度の2年分の名目成長率が+5.8%のところ、国の税収は+6.5%の設定でやや高めではあるが、企業業績の見通しからすると+8.0%になりそうなので、いつものごとく+1.9兆円上ブレして、+2.7兆円の過剰達成になるだろう。

 見逃せないのは、公的年金は既に2023年度で+3.6兆円の資金超過になっていて、こんなに政府が貯蓄を増やしてどうするのかと思う。消費が鈍く、投資を増やそうと躍起になっている中で、貯蓄を余らす政策って、何が目的なのだろう。緊縮は常に善で、金利の低下による自動的な投資の増加で調整されるという机上の経済学を信じているのだろうが、ナイーブ過ぎるよ。

(図)



(今日までの日経)
 「3年目でこんな高給?」デフレ離れの若者 二極化する消費。基礎収支うたかたの黒字 25年度試算、大型補正なら瓦解。三菱自、ホンダ・日産と合流。

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消費が伸びなければ、成長はできない

2024年07月28日 | 経済
 今週は、1-3月期の家計GDPがオープンになり、可処分所得は前期比+2.7%と高い伸びとなった。要因は、低所得層向けの物価高対策によって、社会給付が前期比+7.2%と跳ねたためである。その割には、既報のとおり家計消費(除く帰属家賃)は、前期比+0.16%と平凡だ。細かく見れば、給付の翌2月に消費は高まったので、効果はあったものの、3月には加速した物価高に食われてしまったというところか。

………
 成長戦略というと、産業政策を使って、設備投資を伸ばすことばかりなのだが、経済は、消費が54%を占めるのだから、消費を伸ばさなければ成長しない。ついでに言えば、政府消費がほかに21%ある。成長するには、消費を伸ばさなければ話にならないが、そちらは、まったく視野の外であり、負担増で可処分所得を抑制しておいて、なぜ成長しないのかと言い出す始末である。 

 今週は、中長期の経済財政の試算が漏れ、2025年度には基礎的財政収支の均衡に到達するという話が聞こえてきたが、まだまだ緊縮が必要という論調である。補正まで含めれば、まだ赤字という議論は分からないでもないが、補正さえやめれば、均衡させられるという経済政策上の意味は大きい。成長のために再分配で可処分所得を追加する手段を得ているわけである。

 現実の経済というのは、政府が黒字を出せば、企業がすぐに投資を増やして吸収してくれるというような単純なものではなく、むしろ、可処分所得の抑制で消費が鈍れば、設備投資を躊躇するようなことが起こったりする。「試算」の外にある公的年金は、既に黒字になっていて、雇用増と適用拡大で、ますます強まる。経済にとっては、将来、使う貯蓄だからといって、今の投資の状況に合わないことをされてはたまらない。

 財政は、全体状況を見ながら、貯蓄投資の調整速度を考えつつ、ゆっくり動かしていくのが基本で、財政の都合だけで、やりたいだけやって、あとは神の見えざる手が調整してくれると思っているようではダメである。そうは言っても、成長戦略と銘打っても、投資促進しかないように、一所懸命で全体戦略が欠けている日本人にとっては、最も不向きなことかもしれない。

(図)


………
 5月の人口動態速報の出生は、前年同月比-3.9%、当月含む過去1年間の前年同月比は-5.4%と、合計特殊出生率は1.15人レべルだ。ただ、若年層の経済状況が改善されてきたせいか、婚姻の過去1年間は-1.5%と、まだ水面下ではあるにせよ、緩んできた。財政が黒字になったら、まずどこに返してやらなければならないかは、明らかなんだけど、それは、全体が見えていればの話である。


(今日までの日経)
 賃上げも鈍い氷河期世代。トヨタ、福岡に電池新工場 アジアの輸出拠点に。バイト時給、地方も上昇。米消費、低価格品にシフト。産業投資、財源を「備蓄」。国内旅行は近場が人気。運輸・建設、DX投資加速 人手不足で。基礎収支、25年度に黒字 政府試算、物価高で税収上振れ。国立大授業料、標準53万円の妥当性検証。東南ア貿易、日本のシェア20年で半減。

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7/24の日経

2024年07月24日 | 今日の日経
 今週は統計の谷間なので、輸出数量指数としよう。日銀実質輸出は、底入れした感が出ているが、こちらは全然だ。米国以外は水準も、かなり低い。外需はインバウンドのサービスもあるけれど、単価アップで対応していて、投資して供給を増やそうとはなっていない。日本では、輸出を成長加速の原動力にしてきたが、2018年以来の再現ができる力が残っているのかな。まあ、円安よりも海外の景気次第ではある。

(図)



(今日までの日経)
 日鉄「大地の子」半世紀に幕。中国、止まらぬ「国債バブル」。成長率0.9%、3年連続減速 今年度実質を下方修正。円、156円台前半に上昇。夏ボーナス3年連続最高 中小の伸び7.8%、大手上回る。

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7/17の日経

2024年07月17日 | 今日の日経
 5月の第3次産業活動指数は前月比-0.4となり、一進一退の状況が続く、物価高で消費が振るわないのだから当然だが、インバウンドで好調だった宿泊業も失速ぎみだ。水準は高いのだけれども、人手不足の中、供給を絞って単価を上げるという動きかも知れない。医療・福祉も頭打ちの状況になっており、これらに伸びる余地がないと、第3次産業全体が高まらないのは無理もないところだ。

(図)



(今日までの日経)
 中国経済、先行き不安再び 4~6月 4.7%成長に減速 名実逆転 5四半期連続。

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緊縮速報・税収は国・地方で3.4兆円の上ブレ

2024年07月14日 | 経済(主なもの)
 2023年度の地方の税収は45.7兆円で、予算にあたる地方財政計画額を0.8兆円上回った。国の税収は当初予算より2.6兆円多かったことが判明しており、合わせて3.4兆円の上ブレである。他方、協会けんぽは0.5兆円の黒字だし、GPIFの利子・配当収入は前年度比+0.4兆円だ。税収の上ブレにより、2025年度の財政再建目標は、クリアはもちろん、1.8兆円ほどの過剰達成になりそうだ。家計が疲弊し、結婚も諦めてるのに、吸い上げ一方で良いのかね。

………
 2023年度の税収をベースにして、名目成長率や企業業績見通しを基に、2024,25年度の税収の増加率を+3.9%,+3.8%と置くと、国は77.8兆円、地方は49.7兆円になる。今年1月の中長期の経済財政試算では、GDP比で0.2%足りなかっただけだったので、税収が上ぶれすれば、目標を超えることになる。もっとも、今月末に公表される7月の試算では、いつもどおり税収を低いまま出してくるので、そんな説明にはならないが。

 日本経済は、なんだかんだで、名目成長率が伸びる普通の経済に変化し、当然、税収や保険料もいや増すことになる。かつてのように、必要以上の税収や保険料をどう還元していくかが経済政策上の課題になる。還元先としては、生活の苦しさから低所得者の結婚が困難になり、異様な少子化の加速によって、人口崩壊と年金底割れの危機にあるのだから、これが喫緊だ。

 来年の最大の政治の山場は年金改正になりそうで、足下の少子化では代替率50%の底割れが目に見えているのに、ぬるい改正で済むのかが争点だ。野党に、ここを衝かれると、相当なダメージになる。正解は、補助金で低所得者の保険料を軽減し、一気に適用拡大を完成させ、底割れを未然に防ぐことだ。過剰達成の税収でできる範囲だし、50%割れとなれば、どのみち財政を入れざるをなくなる。病状が悪化してから入れるのは愚かだろう。

 補助金と言っても、事業者に保険料を取らないでもらうだけなので、少なくなった保険料の分を年金特会に入れれば済み、低所得者への給付のような執行上の面倒さはない。当然ながら、名目賃金が上昇していけば、軽減の対象者が減り、財政負担も逓減していく。底割れする年金にズルズルと財政が引っ張りこまれるより、財政運営上の筋が良いし、少子化が緩和すれば、財政にも貢献することまで期待できる。

(図)


………
 適用拡大は、正規・非正規の壁を取っ払うものだから、労働市場の分断を解消し、供給を合理的にする。リスキリングで誤魔化すよりも、遥かに威力がある。経済政策は、年金だけ、財政だけ、労働だけ、少子化だけ、あるいは、金融や為替といった手段だけを見ていてはダメで、全体状況を把握し、統合的に取り組まなければならない。場当たり的に糊塗するばかりだから、若い人が現状打破の歯切れの良いデマゴーグに誘われることになるのである。


(今日までの日経)
 老いる世界、人口減早まる 2080年代にピーク103億人。地方税収昨年度45.7兆円、3年連続で最高。バイト時給2%高 6月1181円、過熱感は一服。

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7/11の日経

2024年07月12日 | 今日の日経
 5月の機械受注は、基調判断が下方修正になったけれど、製造業は順調で、民需で見れば、レベルも高い。物価高からすれば、このくらいでないといけないけれどね。ドル円は、金利差が開いたわけではないのに円安に振れていたが、ようやく崩れてくれた。これで局面が変わるかもしれない。そうなったとして、企業収益が減る一方、レベルを下げた消費が簡単に増えてくれるとは限らないところが悩ましい。

(図)



(今日までの日経)
 円急騰、一時157円台。日経平均、初の4万2000円台。セブン&アイ、49%減益 国内外コンビニ不振 物価高で消費停滞。就業調整、賃金も年金も損・権丈善一。「年金より今の現金」 難路のパート加入拡大 「牛歩」探る政府、緩和は一部か。ドル安に逆らう円相場。強まる楽観、日米株最高値。
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7/9の日経

2024年07月09日 | 今日の日経
 5月の毎月勤労統計では、現金給与総額が前月比+2.1と跳ねた。今春の大幅な賃上げがようやく反映された。稼働日の少ない5月での回復生産のためか、労働時間も前月比+5.2となっている。これを受けて、6月の景気ウォッチャーは、4か月ぶりに家計動向がプラスになり、企業動向も製造業はプラスに転じた。今年に入ってからの物価高に伴う景気後退も底打ちとなってほしいものである。

(図)



(今日までの日経)
 半導体再興へ5兆円計画。新NISA人気、円売り拍車。授業料と大学の未来 一律には上げられない。日本が忘れた家族主義、120歳米鉄鋼の復活導く。

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緊縮速報・2023年度税収 黒字財政への転期

2024年07月07日 | 経済(主なもの)
 2023年度の国の税収は、補正予算額を2.5兆円上ぶれる72.1兆円だった。これを受け、2024年度は、予算額を2.9兆円上ぶれる72.6兆円と見込まれ、2025年度は、定額減税の剥落により、前年度予算より8.1兆円多い77.8兆円になると予想される。おそらく、財政再建目標を達成するのみならず、1.6兆円ほどの黒字になるだろう。家計が疲弊して、異次元の少子化を起こしているのに、それで良いのだろうか。

………
 名目成長なくして財政再建なしというところだろう。他方、物価高で生活が苦しくなり、2024年の合計特殊出生率は1.15人まで下がって、人口推計の低位並みになり、年金の代替率は50%割れの危殆となる。これを取り戻すため、厚労省は、遮二無二、適用拡大を進めるだろうが、低所得層への重課は、ますます、少子化を進めかねない。一将功成りて万骨枯る、国強くして竈に煙立たずとは、まさにこのことだ。

 1月の中長期の経済財政試算では。目標達成にGDP比で0.2%、1.3兆円程が足りないだけだった。予想では、国・地方で税収が3.4兆円程上ぶれるので、2.1兆円の黒字になる。もっとも、税収は、いつも低めに見積られるので、ギリギリ達成くらいの打ち出しかと思う。実は、社会保険を含む一般政府では、1月の時点でも、既に赤字が解消されているが、視野が狭くて、誰も気にしていない。 

 普通の思考なら、税収の黒字を低所得者の社会保険料の軽減見合いの給付に充て、一気に適用拡大を実現して安心を得るという戦略に行き着くはずだ。非正規の育児休業給付まで実現しても、2023/1/1で書いたように1.8兆円たらずだ。プライマリ・バランスを達成してもなお、更なる緊縮を進めるだけが国家戦略なのか。「将来世代に負担をかけない」と標榜しつつ、少子化で将来世代を壊滅させていれば、世話はない。

(図)


………
 財政再建目標の頸木から解放され、政治は、いかに効果的な再分配をするかで評価されるようになる。社会保険料の軽減は、130万円の壁を撤廃することにもなり、労働時間を柔軟に変え、精一杯、働ける社会に変える。ジョブ型導入やリスキリングより、はるかに意味がある改革だ。お金をかけない改革ばかりで、憤懣やるかたない国民に対し、政治が政策立案能力を発揮できるチャンスでもある。総裁選や総選挙には旗印が要るだろうし、次の最大の政治課題である年金改正への武器も必要であろう。


(今日までの日経)
 給食無償化は困窮対策か。年金、高まるGPIF期待 5年運用収益が想定の6倍。協会けんぽ、4662億円黒字 賃上げで保険料増。高齢者世帯59%「生活が苦しい」過去最高。長期で上向く女性の年金額。

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2024年 年金財政検証・超少子化による打撃はこれから

2024年07月05日 | 社会保障
 今回の財政検証は、前回よりやや改善するという結果だった。前提となる将来人口推計の出生が大きく下がっておらず、外国人の移入が見込めるという内容から、今回の結果は、ある程度、見えていた。年金財政は人口次第なのだ。その点、問題は、経済前提が過去30年投影ケースで出生低位だと、中位で50.4%だった代替率が46.8%に大きく落ちることである。

 足下の出生は、中位の1.36人どころか、低位の1.13人さえも割る超少子化のトレンドにあって、相当、危いものがある。対抗して代替率を上げるには、適用拡大が有力だが、低所得者の保険料を重くすることを意味しており、出生に悪影響を与えかねない辛さがある。悪循環の泥沼に嵌りかねないのだ。いや既に嵌っているのかもしれない。

(図)



(今日までの日経)
 東証プライム、時価総額初の1000兆円。
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1-3月期GDP2次(臨時改定)・政府部門の寄与低下

2024年07月03日 | 経済
 建設工事受注動態統計の回答者の報告誤りによって、基礎統計の大幅な訂正が生じ、GDPも臨時に改定されるという異例の事態となった。1-3月期の実質GDPは555.3兆円から-0.5兆円少ない554.7兆円となった。公的資本形成が-2.2兆円、民間企業設備が+2.1兆円の改定となっている。これによって、2023年度の実質成長率1.20%のうち、政府部門が0.31%の寄与をしていた構図が崩れ、0.96%のうちの0.06%と、ほとんど貢献しない形になった。

 そりゃ、成長しないわけである。また、日本の設備投資は、輸出に連動しているが、住宅や公共からも影響を受ける。今回の改定によって、浮き上がっていた設備投資の予測値がマッチすることになった。成長戦略で設備投資の促進を叫ぶが、需要を確保して投資を引き出す面では、まったく御留守になっていて、ウラでは設備投資を阻害しているという実態を端無くも示している。

(図)



(今日までの日経)
 財政運営、試す国債市場。株高「NISA世代」支え。税収72.1兆円、4年連続最高。 

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