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経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

世代会計は少子化の日本には適用できない

2014年09月30日 | 社会保障
 今日は更新しないつもりだったんだが、経済教室が年金だったのでね。言いたいことは、タイトルのとおり。世代会計を研究したい若手は、本コラムの2011/11/28「世代間の不公平を煽るなかれ」と2011/12/3「世代間負担論の到達点」を読むことをお勧めする。それでもしたいのなら止めはしないが、短いし難しくもないから、読まずに後悔することのないように。

 世代間の「不公平」の原因は、すべて少子化にあるので、少子化を緩和すれば、大きく削減できる。少子化を放置し、それに適応させて社会保障を縮減していったら、それは人口崩壊という破滅の道だ。若い世代への社会保障を充実させ、少子化を克服する他に、救われる道はないのだよ。

(今日の日経)
 ローソンが成城石井を買収。迫真・新卒が足りない。円下落110円に迫る。政労使会議・首相賃上げを、企業は業績に格差。J・フランケル教授・消費増税は1%ずつが良かった。しまむら下方修正。8月車生産6.9%減。ファミレスの客足戻らず。経済教室・年金改革・給付削減こそ国民目線、世代会計軸に見直せ・吉田浩。

※百回の道徳より、一度の人手不足だ。※円安のせいで、株価は上がっているように見えるが、ドルベースで見ると変化がないらしいね。※消費増税の尻拭いを企業がせよというわけか。賛成したのだから当然だろうな。※米国ではこういう人がCEA委員。※低所得層が相手の企業は苦しいね。消費増税で落ちてきた中所得層を拾えたところは良いが。※増税に強いとされた外食もこれか。
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「上げないリスク」の詭弁

2014年09月29日 | 経済
 物事は、代案と比較しなければ、優劣が分からないものだ。消費増税の計画をまったくの白紙にしてしまったら、それは「上げないリスク」があるだろう。しかし、増税に反対する者を、すべて「白紙化」論者と決めつけ、増税しかないとするのは、「わら人形」の詭弁というものである。

………
 消費税の追加増税を1年遅らせると、2015年度予算では、税収半年分の2.7兆円の穴が空くことになるが、日経の滝田洋一さんによれば、2014年度の補正予算では、国債の追加発行なしに4兆円の財源が用意できるそうだから、それをバラ撒かず、2015年度予算に組み込めば、むしろ、財政再建が進むのではないだろうか。

 補正予算を見送って、公共事業を追加しなければ、デフレ要因になり得るが、執行が逼迫し、民間工事に支障が出ている状況であるから、弊害は少ない。予備費を用意し、状況を見て追加するようにしておけば、もし、「息切れ」が来ても対応できる。逆に、消費増税で、所得と消費を抜いてしまうと、これらを後で追加することは、ほぼ不可能である。

 国債リスクというのは、増税すれば減るというものではなくて、成長率を落とすことでも生じる。債務比率が低く、プライマリーバランスも黒字だったイタリアが国債金利の急騰の危機に見舞われたのは、成長力を失ったと見なされたからである。これが、日本の財政当局以外では大きな教訓になっている。いまや、格付け会社さえ、単純に増税を評価しないのは、このためだ。

………
 むろん、増税計画を形だけにしない工夫もいる。それは、一定の成長率や物価上昇率となったら、1%は必ず上げるとし、2020年までには10%にすると約束することだ。上げ幅を調整可能にし、一定の範囲内で時期を選べるようにするのは、ある意味、景気条項のリファインである。あとは、2%成長を維持すれば、2025年には、追加の消費増税がなくても、PBの赤字解消に到達できる。

 さらに、金利が一定以上に上がった場合には、利子・配当課税を20%から25%に引き上げると宣言しておけば、万全である。こうしておけば、支払い金利を税収増で賄えるようになるからだ。25%は諸外国に例のある税率であり、決して異常な水準ではない。こうして、成長の範囲内で、税収増が着実に図られるとなってこそ、国債への信認が増すのである。

………
 「上げないリスク」には、まったく兆候が見られないのに対し、3%上げた結果は、1.5%成長からゼロ成長への転落であった。そして、今度はゼロ成長の下で2%上げることになる。増税のリスクは、顕在的かつ破壊的である。これでどうして、リスクを比較して思い悩むのか、合理性の見地からは、理解しがたいところである。

(今日の日経)
 日本郵政・年金債務7000億円一括処理。エコノ・円安でも輸出伸びぬ謎・高級車値下げせす、家電は競争力低下。主婦で節約する92%。吉野家の非学歴体質。もっと減速する中国経済。経済教室・宇沢弘文追悼・岩井克人。

※外貨をどちらが取るかの生き残り競争で家電は負けたんだよ。値引きしない高級家電というジャンルは乏しかったからね。
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意識は現実より難し

2014年09月28日 | 社会保障
 「歴史上の悲劇は、社会意識の変化が現実より遅いときに起こる」というのが、本コラムの一つのテーマにもなっている。近頃は「向き合う」という言葉が万能になってるように、日本人は意識を改めさせることが大好きだけれど、これほど変わり難いものはない。そこから始める改革などというものは、とても成り立つようには思えないほどだ。

 『人口回復』(岩田一政・日本経済研究センター編)には、「出生率の回復に8兆円の支出を」ということが書かれているが、筆者のような古い人間からすると、ようやく意識が変わったなという感がある。団塊ジュニア世代が出産適齢期にあった頃には、少子化の克服は兆円単位の予算が必要だから「無理」と言われていた。幸運の女神の「後ろ髪」をつかめるのだろうか。

………
 言うまでもなく、今からでも少子化の克服は始めるべきだ。ただ、「少子化克服には巨額の予算を割く価値がある」という意識に、やっと到達したところで、いわば、入り口に立っただけである。これが財政再建や法人減税に優先する火急の課題とされるには、まだ時間がかかろう。まして、財政や成長へのリターンが大きい政策になるという「真実」に目覚めるまでには遥かに遠い。

 年金制度では、少子化が起こると、巨額の「損」が発生する。裏返せば、克服には、大きな「得」があるわけだ。この原理を応用すれば、新たな負担なしに、月額8万円の乳幼児給付を捻り出すことも可能である(「雪白の翼」参照)。要は、20代で納めた保険料を、育児期に前倒しで給付するだけのことで、老後の原資は減るが、女性が仕事を辞めなければ、十分に取り返せるという仕掛けである。

 この話は、まっさらな市井の方にすれば、割と納得してもらえるのだが、「少子化対策には消費税増税が不可欠」という意識に凝り固まっている人には、かえって話が通じなかったりする。「消費増税を完遂し、財政再建にメドをつけた後、本格的な少子化対策をする」というのでは、人口崩壊へまっさかさまであろう。

………
 『人口回復』では、女性活躍の形としてオランダの例が挙げられ、成功の秘訣はパートとフルタイムの賃金や社会保障の無差別であるとする。問題は、パートへの社会保険の適用拡大さえ思うに任せない日本の現実を、どう変えていくかである。それには、負担増となる企業をいかに説得するかという、カネの話を解決しなければならない。

 戦略としては、国が肩代わりする形で社会保険料を減免し、まず、無差別を実現し、名目成長率が加速する中で、社会保険料の減免を薄れさせていくという手順が必要になる。実は、必要な財源は、補正予算や法人減税からすれば、大したものではない(「2兆円の理想」参照)。ネックになるのは、こういう負担減の提案は、お役所からは絶対に出て来ないということだ。

 その意味で、岩田先生や日経センターには、もうひとがんばりしてほしい。民間が知恵を絞らねば、道は開けない。社会保険料の引き上げは徐々に行われて来たので、ゆで蛙の例えではないが、中小企業や低所得者の肩にかかる痛みは、なかなか意識されない。消費増税の負担軽減策と連結させて、お役所の縦割り意識を変える役割も必要である。

………
 『人口回復』では、日本経済の復活のため、①雇用の壁、②資本・規制の壁、③人口減少の壁、④エネルギーの壁の4つを打破することが必要としている。特に、資本・規制の壁の撤廃が成長の加速に最も寄与するものだとする。筆者も、対内投資を促すために規制の改善を図ることの必要性は認めるが、一つ見落としがあるように思う。

 それは、マクロ経済の安定的な運営だ。例えば、リーマンショック後、日本へ投資したとしよう。すると、底入れから回復に向かったところまでは良かったが、民主党政権は、景気対策を一度に10兆円も切って、成長を失速させ、ドル安円高に見舞われた。大震災では、復興増税に拘泥し、阪神の時にはできた迅速な対策が打てず、ズルズルと後退した。そして、復興とアベノミクスで伸びて来たかと思えば、一気の消費増税をやって、ゼロ成長へ転落である。

 これで、日本に投資しろと言う方が無理であろう。こんな経済運営をやる国には、成長に与ろうとするより、苦境につけ込み、技術や資産を安く買おうという輩が集まることになる。法人税を下げたはいいが、高く売り抜けられただけというのでは、目も当てられない。彼らも厚意ではなくビジネスであり、大事なのは本社本国なのだから、良客を呼べるようにすることが肝要である。

………
 9/14のコラムでは「批判は鋭いが、救いもほしいね」と贅沢なことを書いたが、『人口回復』は、救いの具体策を求めて、果敢に挑んだものだ。高い目標と思えても、必要があれば、明言するというのは勇気のいることであり、高く評価したい。日経センターには、現実的で魅力ある具体策の提案によって、日本の社会意識をリードする役割を担ってほしいと思う。

 これまで、日本は、「緊縮財政と金融緩和で成長できる」という意識を変えられず、失敗を繰り返してきた。また、「少子化対策は財源とセットで」という意識は、ここまで事態を悪化させている。アベノミクスの惨めな失敗と、10万単位の人口減を目の当たりにして、さすがに転換点を迎えるのであろうか。むろん、その兆しはある。しかし、悲劇に至らずに終われるかは、まだ定まっていない。





(昨日の日経)
 中国電が西日本全域で販売。イオンの営業益4割減、増税・悪天候で。パスタソースは米国の味ポン。8月消費者物価が鈍化。アークス横山・コメ戻らず、50均が人気。経済予測上位・第一生命新家、ニッセイ斎藤。金融市場のカナリアが警告・三反園哲治。

(今日の日経)
 介護職員の賃上げへ。ASEAN・戦火と対立を融和で癒す・太田泰彦。経済論壇・土居丈朗。

※頼りとする両氏が上位とは、誠にめでたい。※小黒論文を他の学者も評価するとは意外。※9/26の内閣府「消費税率引上げ後の消費動向等について」はアッサリとしたものに変わった。あれほど「持ち直し」の声をちりばめていたのに寂しいよ。iPhone6で回復と書けただろうに、お役所は学者ほど拘りはないようだ。
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追加増税の処方箋とやら

2014年09月25日 | 経済
 消費増税の処方箋ねぇ。追加増税を1年延期する代わり、補正予算用の余剰財源4兆円を、丸々2015年度予算に組み込み、少子化対策などを約束どおり実施するというのが、現実的な策だろうね。景気の雲行きがおかしいので、できれば、少子化対策などは年度内から執行を開始したい。ちんたら議論してないで、さっさと厚労省に準備させるんだな。

 増税を前提にすると、補正は10兆円規模が必要になる。5兆円だと前年度並みでしかないから、財政支出を維持するにとどまり、追加増税の悪影響をまったく相殺できないからね。「5兆円の補正で大丈夫」などと言うような、ロクに勘定もできないエコノミストは、ハナから呼ばないことだね。

 「法人減税で行ける」というような輩には、増税で、少なくとも3.2兆円(増税額の6割)は減るであろう消費を、設備投資の上乗せで埋められるのか、聞いてみたらよい。自然体の1.5%増に4.5%も上乗せするのは、しんどいよ。バブル景気の米国への輸出で沸いた2006年度の設備投資の伸びだって5%台だったんだからさ。

 正直、この程度の経済運営の舵取りで、人数を集めて延々議論をするなんて、無能をさらすようなもの。本当は、低所得の若者や女性への再分配を、どんな形でするのが効果的かといった、経済社会の在り方でも議論しないと。在庫急増でデフレスパイラルの危機が勃発 しかねない情勢で、増税マニアのお勉強のために、時間を費やすなんて情けなくないか。

 もっとも、前年度並みにも足らない補正予算を、効果が望み薄の法人減税に突っ込んで、一度、決めたことだからと、「バンザイ突撃」を敢行するというのが、一番、日本的だ。外国人投機家の格好の稼ぎ場になりそうだよ。

(今日の日経)
 パナが車部品の欧州大手を傘下に。軽で未使用車が膨らむ。増税点検前倒し、処方箋も。温暖化対策を米中が主導権。経済教室・地方再生はコンパクト化・大西隆。

※未使用車だったとはね。事実を掘り起こした良い記事だったよ。※コンパクト化は分かるんだが、年寄りは頑として立ち退かなかったりするからねぇ。
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9/24の日経

2014年09月24日 | 今日の日経
 「人口病」というネーミングが切ないね。穏健な財政運営さえすれは、デフレも少子化も克服できるのにな。「人口減は深刻、でも財政再建が優先」というのを、17年やり続けた結果がこれだよ。しかも、財源がないから、低所得の若者や女性の社会保険料の軽減や、乳幼児への給付ができないわけではない。法人減税をする財源はあるのだから。

 別にこれは、「企業から福祉へ」を主張しているのではない。若者や女性を人材として大事にしている中小企業の経営者から話を聞くと、「保険料が重い」、「育児中の給付がほしい」というのは切実なものがある。「企業第一」の観点からも必要なことで、外国人株主に流出する法人減税とどっちが効果的なのか、よく考えてほしいね。

 地方における人口減への危機感は、1/14「リーマンショック後の出生率動向」で説明したことが背景にある。輸出型製造業が衰退したところは苦しい。日本全体が沈む中で、「知恵」で復活させようというのは、とても難しいし、原因を「知恵」のなさにすり替えているような気もする。マクロ的な政策の杜撰さを、現場でリカバーリーできない。日本人がいつも陥る構図だがね。

(今日の日経)
 人口病に克つ・噴出する痛み、街を小さく強く。ばらまき効果ない。
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9/23の日経

2014年09月23日 | 今日の日経
 景気回復の初期に、恩恵が低所得層や大都市外に行き渡らないのは、いつものことでね。問題は、行き渡る前に緊縮財政をしてしまい、成長を弱めたり、終わらせたりすることなんだよ。行き渡らせるには、ある程度のインフレや金利上昇も覚悟しなければならない。これに極めて警戒的な経済思想が格差是正の障害になるし、物価高より資産高が急速に進むことを許す税制などの構造改革も必要だ。

 大した再分配なしに、成長だけで平等を実現したというのは、日本の高度成長期が稀有の例だろう。5~7%の物価上昇率の下で成長を追及するというのは、政治的にも、なかなか難しい。中国は、物価高による民衆の反乱を恐れ、貧困の削減には成功しても、格差の是正までは行き着けなかった。食料価格の抑制という技術的問題も然ることながら、不満を受け止められる民主主義がないからね。

 消費増税を1%にとどめていたら、成長は失速せず、恩恵は徐々に行き渡っていただろう。成長が保たれるから、1年半後に2%、更に1年半後に2%と、難なく追加増税もできていたはずだ。そうすると、自然増収だけで、2025年度にはPBは黒字化していた。こういう財政の見通しも立つから、少子化対策も充実していけるし、それは、出生率を上昇させ、一層、成長率の見通しを高めただろう。

 成長の見通しが高まれば、企業は、法人税率なんか関係なく設備投資をするし、人材確保のために、若者や女性を大事に扱うようになる。人の寄り付かないブラック企業なんて生き残れまい。経営者だって、ROEの数字を追うより、会社を大きくする方がずっと楽しいものだ。度外れた財政運営を放置して、「改革だ、痛みだ」と血道を上げる風潮は、一体、いつまで続くのか。

(今日の日経)
 ダイエーが完全子会社へ。自社株買いが6年ぶり高水準。シニアの共働き広がる、女性の就労増。日銀の株保有7兆円、年内に日生超えも。消費の格差鮮明・都市復調と地方低迷。消費税10%なら社会保障充実に1兆円。海外資金が日本国債に流入。コンビニ5か月連続減。一目均衡・ROE最大化は規模拡大を犠牲、マクロ最適でない・北沢千秋。

※法人減税の成果がこれかい。※シニアの実情を表す良い記事だ。※補正に社会保障と増税派も必死だね。思わず「成長」を差し出したくなるよ。※百貨店、スーパーはまずまずだった。※ROE経営の本質を突いてるよ。
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物理的実態としての確率分布

2014年09月21日 | シリーズ経済思想
 指数分布やべき分布が観測される社会的実例が載っているだけで、筆者にとっては十分に魅力的だったが、矢野和男著の『データの見えざる手』は、なかなか興味深く、未来も感じさせる内容で、楽しく読ませてもらった。日本の愚劣な経済運営を論じていて、嫌気が差して来たところだったので、知的関心を呼び覚ます、一服の清涼剤であった。

………
 ケインズ経済学の本質は、投資リスクへの理解にあり、そのリスクは指数分布やべき分布をしているので、持ち時間が有限である人間は、期待値に従った「合理的」な行動を取ることができない。これが投資不足で生じる不況の原因であって、その解決には、不合理なリスク回避を癒すよう、需要を政策で安定させれば良い。以上が「どうすれば解釈」である。

 こうした観点からすれば、本コラムが、一気の消費増税を難じ、流行の法人減税を冷やかすのは、当然であろう。もっとも、増税による実質賃金の低下で、消費不振に陥ることは、遅くとも連合のベア要求が1%しかないと分かった時点で確定的であったのだから、「解釈」以前の、引き算さえ分かれば予想のつく話であり、なぜ「合理的」に判断ができなかったのかが本当の問題であろう。

………
 さて、本書の精華は、名札のようなウエラブルセンサを開発して、ヒトの身体運動や対人交流を計測し、得られたビックデータを解析した結果、人間行動や社会行動の累積確率に、熱力学で見られるような指数分布(U分布)が多く現れるというところだ。矢野先生は、「やりとり」が繰り返されると、ポアソン分布だったものがU分布に変わるとし、これを「やりとりの平等なチャンスが不平等な結果をもたらす」と表現している。

 普通の読者にとって有益なのは、「身体活動の活発度は、動きの総数の制約の下、U分布に従うので、高活動域から低活動域までのすべての帯域の活動を、バランスよく使い切ることが大切であり、これが時間の有効な使い方になる」といったあたりだろう。あとがきに書かれているように、センサを使った時間管理手法も開発されていて、実用性もあるようだ。

 他方、筆者はオタクなので、巻末注釈の「U分布の特徴は、イベント頻度が指数分布に従い、イベント間隔の発生頻度がべき分布に従う」、「ボルツマン分布に従う物理的実態において、さまざまな物理量の関数形に指数関数以外の分布が現れるように、U分布は物理的な実態を指す」といった部分に引きつけられてしまった。

………
 続く第2章では、ハピネスの40%は積極的行動にあり、社員のハピネスを高めると会社は儲かるのだが、それをウエアブルセンサの身体活動の計測で把握できるという。これを使い、「休憩中の会話を活発にする」という意外な方策を発見し、コールセンターの効率を高めることにも成功している。また、ハピネスは伝染するものでもあるらしい。経験的に言われるマネジメントの要諦を客観指標で証明したことには大きな意義があろう。

 第3章では、人と面会する確率は、ポアソン分布にならず、時間に反比例して減少するとする(1/Tの法則)。電子メールを返信するまでの時間、安静から活動への遷移、行動の持続時間も同様であり、これらはU分布から導出できる結果で、ポアソン分布との方程式上の違いは時間間隔が一定か1/Tかになる。裏返せば、続けるほど止み難くなるという性質を示しており、とても興味深い。

 第4章も面白い。「運」とは人との出会いであり、仕事が上手くいくのは、人間関係の到達度が高い場合になるが、これもウエラブルセンサで計測し、ソーシャル・グラフを描くことができるのだ。このデータを基にした「リーダーの指導力と現場の自律は矛盾しない」とする議論には、なかなか説得力がある。数値化で具体的対応策が示せるのも魅力だ。

 第5章のコンピューターに仮説を作らせるという話は、技術もここまで来たかという感慨を覚えた。仮説と検証の職人芸の世界も、ようやく変わるようである。

………
 自由主義経済は、自律的組織で構成され、モノやサービスとカネが相互にやり取りされるシステムである。そこにU分布の物理的実態が存在するであろうことは想像に難くない。法人税率や金利政策で中央集権的にコントロールされるより、需要と価格のやり取りに強く支配されているのではないか。そういう想いを強くした。

 今回の消費増税は、デフレという経済の活動度が停滞している中で敢行されたが、それは財政破綻の懸念を軽くするという理屈上の具現化のない意味しかない。現実には、成長率を折り曲げ、実態的な経済の活動度を一層低下させて、人々のハビネスを損ない、生産性まで落としてしまうだろう。国民のハピネスを心に置いた経済運営が求められよう。

(今日の日経)
 バス・電車を地方にリース。G20・財政出動で米独に溝。法人減税2%分財源に・経産省。国債売り手主役は郵貯と年金。どうなる再増税・低価格も打開策にならず・セブン会長。アジア通貨危機・IMF介入が混乱に拍車。トポロジカル物質。読書・欧州リスク、高卒当然社会、ローズヴェルト。トリーズの発明原理40。

※増税下であろうと、開発費を投じて新商品を導入し、需要を集めてしまうという戦略は、セブンのような強者にのみにできることだよ。

※9/19公表の「消費税率引上げ後の消費動向等について」によれば、家電、飲食料品ともに9月平均は8月を下回る状態だった。おかしいなあ、9月に入って全国的に天気が良いのにね。スコットランド独立とか、FOMC後の円安とかが消費マインドを冷やしたのかな。増税以外のすべてが原因になるようだから。
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9/19の日経

2014年09月19日 | 今日の日経
 昨日、7月毎勤の確報が出て、いつもどおりの下方修正があった。給与総額は前年比2.6%から2.4%と大して下がらなかったのだが、所定内は0.7%から0.3%となった。これだと、実質賃金のマイナス幅は、また8月に開きそうだね。常用雇用は、季節調整値の前月比が4か月ぶりにマイナスの-0.2%になり、所定外時間は同0.3%と速報のマイナスからプラスとなった。雇用を絞り、残業で対応する形かな。

 8月貿易統計は、季節調整値の輸出が微減、輸入がやや減で大きな変化はなし。7、8月の感じからすると、7-9月期の外需の寄与度はプラマイなしというところか。FOMCを受けて108円台とドル高が進んだが、日経はあまり喜んでないようだ。金融緩和による資産高で都市部の地価は上がっても、輸出低迷で、輸入物価が上がるだけではね。「更なる金融緩和は望まれもすまい」という本コラムの1月のシナリオどおりの展開だ。

(今日の日経)
 円安効果、明暗くっきり。三大都市圏の住宅地が上昇、増税でペースは和らぐ。健保料を健康なら安く。設備投資・雇用減税を廃止へ。企業の資金調達拡大22年ぶり。日銀の国債シェア21%超。経済教室・産業の多層化・根来龍之。

※成長と雇用のための企業負担軽減というお題目さえ危うくなっとる。※増税で地価にもブレーキ、金融緩和の効果は減殺だ。せっかく資金調達も伸ばしたのにね。
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諮問会議の不思議な見解

2014年09月17日 | 経済
 日経によると、諮問会議の4人の民間委員は連名で、「駆け込み需要とその反動があった1~6月期の実質GDP(公共投資除く)を平均すると、13年10-12月期の水準よりも0.7%増えていると文書で指摘し、経済成長は途切れていない」と主張したそうだが、本気で、そう思っているのかね。

 4-6月期GDPには、消費低迷による大量の在庫増が含まれていて、その成長率への寄与度が1.4もある。仮に、これが1-3月期GDPの在庫減を補う程度の0.5であったとするなら、2014年上半期のGDPの平均は、ほぼゼロ成長だった。すなわち、「不良在庫」のかさ上げがなければ、ゼロ成長へ屈曲していたということだ。

 これが「景気の腰折れ」でなくて何なのか。経済運営の舵取りをする者が在庫状況を視野に入れてないとしたら、薄ら寒いものがある。政労使の会議もするようだが、本来は、賃上げの範囲内で増税はすべきものであり、増税を決めてから賃上げで埋め合わせようというのは、逆転した発想になるのだが、まあ、増税を焦る者には理解できまいね。

(今日の日経)
 高卒求人が製造業で拡大。諮問会議が景気を集中点検、政労使会議も。月例報告・景気基調判断下げへ、悪天候が消費に影。日銀総裁・円安は自然。首都圏マンション発売49%減。経済教室・アジア新競争時代・ケント・カルダー

※景気底入れに伴う求人のペントアップというところか。
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批判の鋭さと救いのなさと

2014年09月14日 | 経済
 「相変わらず鋭いですなあ」と思いつつ、それゆえ「救いのなさ」も感じてしまう。伊東光晴先生の新著『アベノミクス批判 4本の矢を折る』を読んでの感想である。円安株高は時流に乗っただけかも知れず、公共事業も言うほどでなく、成長戦略に具体策はないのかもしれないが、それではどうすれば良いのだろう。経済の停滞の原因として、人口減少が示唆されているだけに、甘受するしかないという帰結になってはよろしくあるまい。

………
 筆者は、オールド・ケインジアンだから、需要管理を極めて重視している。また、ケインズ理論の本質はリスクの捉え方だと理解している。結局、経営者は、金利や税率より、遥かに強く需要動向に設備投資の判断を左右されているのであって、追加的な需要の安定が決定的に重要であり、そのようにする経済運営が欠かせないと考えている。

 しかるに、アベノミクスは、政策の成せるものかはともかく、3月までは、所得や雇用を順調に伸ばしてきたのに、一気の消費増税によって、成長を失速させてしまった。増税を1%に抑え、緩やかに負担を増やしていたなら、成長は維持され、税率10%にするのが1.5年遅れたにしても、基礎的財政収支は、2025年頃には赤字を解消していただろう。

 裏返せば、容易なはずの「穏健な財政運営」が、なぜ、これほどまでに、日本はできないのか。いつも性急で過激さに走ってしまうのは、いかなる訳かを考えねばなるまい。民主党政権下でも、リーマン・ショックは一服したとして、いきなり10兆円の経済対策を撤収したりと、さかのぼれば、1997年以来、枚挙に暇がない。日本人も、今度こそは悟ってもらいたい。

………
 さて、第1章には、金利低下が効かない根拠の「オックスフォード調査」や「経済企画庁調査」があって、懐かしく眺めたりもしたが、やはり、新著でおもしろいのは、第2章の為替や金融緩和を巡る国際政治経済学だろう。アベノミクスの下での円安の背景には、為替介入と資金調達の時期のズラしがあったのではないかとする指摘は興味深い。

 他方、第2の矢に対する「国土強靭化計画は実現されない」という批判には、物足りなさを覚えた。実は、本コラムは、安倍政権の財政について、2013/1/20に、前年度と規模に大差がないと分析し、公共事業による押上げは期待できないだろうと判断していた。ところが、実際は、財政規模は変わらなくとも、ようやく復興予算の消化が進み、全国へのバラ撒きも執行に功を奏して、2012年に伸び悩んでいたものが、2013年には期を追って水準を上げて行った。

 これは、筆者も読み間違った意外な展開だった。その後の消費増税とセットで決めた2013年度補正の追加は、足元の官民の建設需給の逼迫ぶりからすれば、余計だったと言えようが、そうなるまでは、成長の引き上げに効果があったと評価できよう。特に、2013年の後半は、円安による物価上昇で停滞し始めた消費に代わって、成長を支える役割を果たしている。

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 アベノミクスの成果で不思議なのは、2013年前半の消費の急速な盛り上がりである。世間的には、円安株高による資産効果と言われたりするが、これには留保が必要だ。家計調査の勤労者世帯では、有価証券の売却収入は年間で1万円足らずであり、そもそも、2013年度の株式保有額は80万円に過ぎず、前年度から13万円、前々年度からは3万円しか増えていない。資産効果とするには、数字の上で苦しいものがある。

 そのため、本コラムでは、消費者態度指数を基に、景気底入れによる雇用環境の改善が消費の盛り上がりを促したという解釈をしている。ここで言いたいのは、2013年前半の成果を見て、金融緩和をすれば、少なくとも資産価格は上がるから、これで消費のテコ入れができるだろうと、安易に考えてはいけないということだ。資産効果は目立つものだが、百貨店の売れ行きだけで消費を牽引できないのと同じで、頼りにするには危ういのである。

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 アベノミクスの第1の矢は、時流に乗っただけ、第2の矢は、増やしてないのに成果を上げた。上手く行ったのは、あえて言えば、流れに棹を差したからで、逆らわなかったのが功績だった。そして、消費増税で逆行し、一敗地にまみれようとしている。成長を失ってしまうと、経済対策は、財政再建とのバランスの取り方が極めて難しくなる。一気の増税なぞしていなければ容易にできたことを、わざわざ難しくしているのだ。

 景気が失速していく中で、公共事業は逼迫して追加が難しく、法人減税をしたのに機械受注は下を向く有り様である。本当は、家計に購買力を追加することが必要になってきており、「2兆円でできる社会」に書いたようなことをしなければならないが、財政当局が「お天気さえ戻れば」と願いをかけているうちに、手遅れになりそうである。こうしておいて、米寿を迎えなんとする伊東先生に「救い」まで求めるのは、やはり甘えというものだろう。


(今日の日経)
 巨大銀に新資本規制。中国工業生産5年8ヵ月ぶり低水準。中国景気の減速鮮明。

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