経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

8/28の日経

2024年08月28日 | 今日の日経
 景気動向は、景気動向指数を見るのが基本だが、製造業が軸になっていることから、6月の確報値は大きな低下になり、ソフト指標の消費者態度や景気ウォッチャーとは食い違う形となっている。輸出が景気を動かしていたなごりだが、今の景気は内需の動きにかかっている。もっとも、鉱工業指数の予測値は7月が反動増になっていて、その結果が週末に出ることになる。

(図)



(今日までの日経)
 米、利下げ恩恵株に勢い 不動産などけん引。韓国の受験競争、少子化招く 中央銀行が改革を提言。料理配達員の稼働時間「週20時間以上」は5割。

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次の世代が挑む総裁選

2024年08月25日 | 経済
 岸田首相、茂木幹事長、高市元政調会長、小池都知事、細田前衆院議長には共通点があり、いずれも沖縄相を務めていた。これは偶然ではなく、小泉政権から政権交代が起こるまで、若手有力政治家の登竜門になっていたからだ。必ずしも中央を快く思わず、外交安保が交錯するところをいかに治めるか、力量が試された。今回の自民党総裁選は、そんな育成を受けた世代に、次の世代が加わり、新たな展開を見せている。
………

 今回の総裁選では、清新さが第一なのだろうが、当面の課題をどうするのかも聞きたいところだ。外交安保に差し迫ったものはなく、内政では、年金改正が次の通常国会での争点になる。大きな負担増はないものの、前提の出生率が落ちており、これで持つのかという議論になる。防戦一方では苦しく、攻め手が必要だろう。また、物価高対策と定額減税は、あっさり打切りで済ますのか。財政再建目標の一応の到達という新たな状況の下、これまでとは違う財政の舵取りが求められる。

 政策の形にすると、当面の軽減措置を財政で措置しながら、適用拡大を一気に進めるとか、非正規の女性にも育児休業給付を拡げるとかになるが、そういうテクニカルなところまで行き着けるほど、低所得の若者の支援をしたいという熱意があるかどうかになる。もっとも、小泉政権では、「自民党をぶっ壊す」として人気を博し、景気にそぐわない緊縮路線で苦境に喘ぐことになったが、かえって、「改革なくして成長なし」の痛みに耐える路線で支持されたのだから、世論とは分からないものではある。

(図)


………
 7月の消費者物価指数は、総合が前月比+0.3で、このところの傾向は変わらずである。財は+0.5、サービスは+0.1であり、サービスも少しずつであるが伸びていて、景気としては順調というところだろう。米国の利下げが明確になって、円安局面は終わりを迎えたので、財は減速しつつも、サービスは保たれるという形が理想的展開だが、そこは低所得層の可処分所得と消費の強さ次第となる。


(今日までの日経)
 総裁選、世論人気が追い風に。中国、脱炭素で「一帯一路」。米金融政策 転換点 9月利下げ。米金融所得、最高の540兆円。機械・素材、攻めのCM展開。

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8/22の日経

2024年08月22日 | 今日の日経
 「平成14年度 企業行動に関するアンケート調査報告書」がレファレンスの8月号で引用されていて、懐かしかったね。古いデータだが、経営者は、金利なんて見てなくて、需要で設備投資を判断しているというものだ。収益水準も見てるけど、平たく言えば値段で、値引きしなくても売れるかである。他社の動向も割とあるのは、儲からなくても投資しないと負けてしまうからだ。

 その後の日本は、緊縮で需要が波及しないものだから、輸出と設備投資の相関関係が強くなり、予測値がGDPの1次速報より正確なんてことまで起こった。景気を予測する立場からは、シンプル過ぎてバカバカしくなるほどである。これで金利が投資を調節するという説を信じろと言うほうが無理で、金融政策は、円安による輸出増という経路でしか効かないという結論になる。

 7月の輸出は、実質を示す数量では低下傾向が続く。でも、足下では、消費が伸びて景気は上向いてきた。輸出次第の日本にとっては、珍しい現象だ。回復局面なのに減税なんて変わったことをしたからだろう。いずれにせよ、成長率を高めるには、金利でなく、需要のビックプッシュが必要で、いつもは輸出だったものが、今回はコロナ後の名目での急増だったというわけである。

(図)



(今日までの日経)
 国債利払い、来年度10.9兆円に増加。健保財政、つかの間の改善 「扶養家族」10年で1割減。最低賃金、16都道府県1000円超す 人手を確保できなければ売り上げがあがらない。セブン&アイ、買われるリスク。米企業、労働分配率、最低水準に。「デジタル赤字」は過去5年で約2倍に。

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4-6月期GDP1次・消費主導の成長とは

2024年08月18日 | 経済
 実質成長率は年率3.1%、家計消費(除く帰属家賃)が前期比+1.2%となり、名目だと+1.8%に達した。可処分所得が増し、消費が成長したことを素直に喜びたい。雇用者報酬が伸びているのに、負担増で可処分所得を削り、消費を低迷させていた2023年から脱却したことになる。もっとも、日経は、消費主導を訴えつつ、緊縮財政を望んでおり、とことん現実が見えてない。成長には消費、消費には可処分所得が必要なのであり、よほど成長が憎いようだね。

………
 経営者が、金利でなく、売上に従って設備投資をするのは、売上を得られないと、会社の屋台骨を揺るがしかねないからである。シャープの堺液晶パネル工場の失敗例を引くまでもない。マクロ的には、投資をしたところで、政府に緊縮で売上を奪うことをされると、経営に窮してしまう。景気回復の局面で財政出動を絞るのは当然だが、程度の問題で、無闇にやれば、成長にブレーキをかけてしまう。それがデフレ期の政策の特徴であった。

 売上に従う行動は、卑近なものだが、マクロ的には、いったん低成長に陥ると、金融緩和をしても低迷が続き、なにかで高成長になると、引締めても、なかなか減速しないという困った事態になる。その実例がリーマン後の米国であり、コロナ後の米国である。もはや、長期停滞論や日本化は聞かれなくなり、その間、財政の有用性が指摘されたり、後にはやり過ぎが批判されたりした。十年一日、緊縮財政を詠唱する日本の学者とはリアルさが違う。

 今期のGDP速報では、設備投資の名目前期比は+1.9%と、驚くほど伸びた消費を上回る。GDP比率は、リーマン前やアベノミクス期のピークを超えており、過去30年なかった投資ブームとなっている。これ以上の投資促進策が必要なのかと思えるレベルだ。あとは、年率+3%の設備投資がほしいなら、+3%の消費増、可処分所得増、政府支出増を確保するという態度で経済運営をすれば良い。金利ある世界だから緊縮なんて言っている場合ではない。

(図)


………
 しょせん、一つの四半期の結果に過ぎず、単に自動車生産が戻っただけの一時的なものかもしれないが、久々に成長軌道に入ったことを期待させるものになっている。何が良かったかと言えば、世論を気にして物価対策に財政を使い、自民党総裁選を前に定額減税を打ったところか。しかしながら、成長軌道の転換の結果が出た日の夕に、岸田総理は退陣を表明するに至った。余計な改革などせず、庶民の財布への聞く耳を持っていたのに、残念なことである。


(今日までの日経)
 学生、自給自足の「推し活」。社説・消費主導の経済回復を本格的な流れに。公的年金や医療保険、外国人の納付実態調査へ。投資、7~9月も景気下支え エコノミスト予測 GDP実質1.7%増。米小売売上高、7月1.0%増 市場予想を上回る。岸田首相退陣へ 自民総裁選に不出馬。

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8/14の日経

2024年08月14日 | 今日の日経
 官僚がダメになったのは、リアルさを失って改革に狂ったからだよ。需要が足りないのだから、いろいろ問題はあっても公共事業で補うしかないという現実を切って、1997年に一気にプライマリーバランスを達成するというギャンブルをやり、危機にあって財政出動もするんだけど、緊縮を急いで成長を低迷させることになった。安定的に需要を保つという平凡さを失い、改革に道を求めたがゆえだ。異次元緩和は円安誘導の方便でなく、行き過ぎでリフレの信奉が露呈したとき、官僚の変化を感じたよ。

(図)



(今日までの日経)
 ギグワーカー働きやすく 賃金・休日、基準明確に。上場企業、今期1%減益予想。工作機械受注額7月8%増 輸出堅調、国内減補う。日本の住宅価格、実は割安。東南アジアの「中立国」、中ロに接近。欧州経済、回復失速の兆し。官僚離れの処方箋・待鳥聡史。

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キシノミクス・上向いてきた消費

2024年08月11日 | 経済(主なもの)
 6月のCTIマクロが公表されて、4-6月期の名目の前期比は+0.5となった。この間、尻上がりに伸びているのも良い傾向である。むろん、物価上昇を受けて、実質では、前期比-0.2になってしまうが、今週、公表される4-6月期GDPで、事前予測のコンセンサスどおりの高い伸びになるかが注目だ。いずれにせよ、賃上げや減税で可処分所得が伸びており、今後も消費の加速が見られれば、この1年の停滞から脱する景気の節目となる。 

………
 この国では、投資をあがめて、消費をいじめるという不思議な経済政策をする。どちらもGDPを構成するし、消費の割合は高いのだから、可処分所得を削り、消費を抑制すれば、なかなか成長しなくなるのは道理だが、成長戦略という名の下で、可処分所得の動向は顧みないという無理が通ってしまう。企業は、需要が増えないと、とても設備投資はできないという卑近な現実があり、産業政策は空回りする。

 脇田成先生は『日本経済の故障箇所』で、企業が貯蓄して賃上げをしないから、成長が停滞したという指摘をされていたが、企業にしてみれば、いかに儲かっていても、売上が増えていないと賃上げは厳しい。還元するにしてもボーナスだ。この2年、打って変わって賃上げができたのも、名目だけにせよ、売上が増えたからである。設備投資にしても、売上が見込めるからこそやれる。

 1997年以来、アベノミクスの消費増税に象徴されるように、景気回復期に消費を殺ぐ反成長政策が取られて来たが、今回は、たまたまにしても、物価高補助や定額減税が取られて、そうならなかった。日銀が、物価上昇の見通しを持って、円安バブル潰しという、本来、求められる政策に舵が切れたのも、こうした背景があればこそである。その意味で、CTIの4-6月期の名目の上向き、実質の底入れは、とても重要なのだ。

 もっとも、一時的な所得増は、耐久財に偏りがちで、クルマは生産制約、家電は半分が輸入と生産増に結びつきにくくなっているし、旅行などのサービスが増えるにしても、供給を増やすより単価アップという感じで、さらに次へと上手く回って行くかは課題もあるものの、7月の景気ウォッチャーの現状が+0.5になった上、先行きも+0.4になっており、希望が持てる展開になっている。

(図)


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 筆者が経済研究を深めたのは、社会人を経験してからなので、金利などのインセンティブが設備投資を動かすとする経済学はまったく信用していない。デフレ前から、そんな経営者は見たことがないからである。経営者が見ているのは、何を判断するにせよ、売上ばかりだ。カネを貸す銀行だって、売上が立つのかを気にかける。経済学的には合理性に欠ける行動かもしれないが、現実は、そういうものなのである。


(今日までの日経)
 企業成長「第2の死の谷」増収率、米欧の半分。南海トラフ 巨大地震注意 初の臨時情報。日本、海外資産が稼ぎ頭に 所得収支19兆円黒字。オフィス供給、過剰感解消。

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8/8の日経

2024年08月08日 | 今日の日経
 日銀の金融政策が批判されるとしたら、円高株安にしたことではなくて、今年前半に消極的でバブルを作っていたことだろう。土地に及んでなくて良かったというところか。まさに、弾けてみないと分からない。金融政策は為替に割り当てるべしというウラの鉄則が証明されたように思う。もっとも、金融政策の自由を捨てたら、ドル円をコントロールできるものでもなく、財政も含めて米国と政策協調しないといけないだろう。コロナ後に「出羽の守」で積極財政をやっていればということになる。足下では、6月の家計調査は定額減税もあって可処分所得が跳ね上がった。これで日銀も消費も物価も堅調と見通して、利上げができるわけである。
 
(図)



(今日までの日経)
 副総裁発言で日経平均上昇 一時1100円超高。日経平均3217円高の3万4675円 上げ幅過去最大。実質賃金、6月プラス転換 賞与増加の効果大きく。設備投資計画22%増。 

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8/6の日経

2024年08月06日 | 今日の日経
 1987年のブラックマンデーのときは、暴落を知らせる夕刊が地下鉄ホームに散乱していたよ。不安がよぎったけれど、世界同時株安を東京市場が防波堤になる形になった。昨日のダウは続落だが、今日の日経平均はどうかな。先物は少し戻しているみたいだし。もっとも、暴落とは言っても、昨年末のレベルになっただけで、年明け後の円安・株高には食えないものを感じていた。4万円だって、誰も本気にしてなかっただろ。ちなみに、6月の労働力調査は、ついに就業者数がコロナ前の最多を更新した。このあたりも日米は逆向きだ。

(図)



(今日までの日経)
 日経平均4451円安 下げ幅ブラックマンデー超え。円急伸、7カ月ぶり高値 輸出企業の減益要因に。日経平均、底値模索続く 企業業績なお堅調。

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緊縮速報・厚生年金の不可解な決算報告

2024年08月04日 | 経済(主なもの)
 厚生年金の収支はマクロ経済に影響を及ぼすほど巨大なものだが、決算を読む人なんて、まあいない。2023年度決算の日経の記事も「積立金が47.6兆円も増えて良かったね」くらいのものである。しかし、賃金も物価も大きく上がっているのに、歳入が前年度比-0.2%、歳出が-3.6%なんて、あり得ないだろう。専門知識のない記者が異常に気づかないのは仕方ないが、決算の説明を「基礎年金を確実に支給するために必要と見込まれる額を組み入れた結果」という不可解なもので済ますなんて、決算報告の責任を果たせているとは思えない。

 歳出減は、基礎年金勘定への繰入を-2.1兆円も減らしたためだ。基礎年金の給付が前年度より増えはしても減るはずはなく、事業月報でも3%弱は増えている。すると、基礎年金勘定の財源は、厚生・国民年金勘定からの繰入と積立金受入なので、後者を予算額から倍増させたのではないか。予算とは大きく異なる経理なのだから、具体的説明があってしかるべきだろう。一般会計の決算概要では、基礎年金拠出金等年金特別会計への繰入で1.5兆円も不要を出したと明記している。

 こうしたイレギュラーな経理の下であるが、厚生年金は2.4兆円の緊縮になっている。2023年度は、可処分所得が増えず、消費が停滞したが、それを裏書きする形だ。マクロ経済を運営する者は、一般人のように「貯金が増えて良かった」と喜んでいるようではダメで、急な緊縮は成長に悪影響を及ぼすと見て、財政全体での調節を考えなければならない。もっとも、緊縮は常に善で、財政が作る貯蓄は自動的に民間が投資して吸収するという机上の理論を信奉しているようでは、何を言ってもムダであるが。

(図)



(今日までの日経)
 米景気不安が急拡大 7月失業者、2割増。米「質への逃避」加速 NY株連日の急落。日経平均2216円安 下げ幅歴代2位。GPIF、4〜6月の収益8.9兆円 3四半期連続プラス。年金積立金、過去最大の255兆円 23年度決算。


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8/2の日経

2024年08月02日 | 今日の日経
 4-6月期の消費を読むのは難しいね。6月の商業動態・小売業は、前月比+0.7と3か月連続の増加で、前期比+2.0と好調だ。CPI財が+1.6ときつく、差し引くと+0.4だから、実質もまずまずだ。日銀・消費活動指数も4,5月の前期比が+0.5だが、GDPに近い統計局CTIマクロが-0.1なんだよね。物価高にあると、実質の見積りは難しい。いずれにせよ、定額減税の6月が好調で良かった。7月の消費者態度も+0.3と上向いている。可処分所得を与えれば、消費は増すというシンプルな話であり、底堅くできたから、日銀は利上げができて、円安を戻せた。図らずも上手い経済運営になっている。

(図)



(今日までの日経)
 ニーズあるのに減便・閉店。FRB議長「9月利下げも」。日銀、0.25%に利上げ。自動車株 苦境はBYD発。

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