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経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

非正規の地位向上を考える

2009年07月30日 | 社会保障
 非正規労働者は正規でない労働者だから、雇用形態も、実態もさまざまである。一つの典型は、短時間勤務のパート労働であり、もう一つの典型は、フルタイム労働だが、雇用期間が短く限られる、請負派遣と言われるものである。

 パートの場合、失業、健康、年金の社会保険に加入できないことが問題であり、母子家庭の母のように、夫の持つ社会保険でカバーされない人は、厳しい境遇にある。他方、請負派遣は、フルタイムである以上、一定以上の雇用期間があれば、社会保険の適用対象になる。したがって、建前では、社会保障の安全ネットが存在することになっている。

 ところが、製造業の大手企業にとって、請負派遣の最大のメリットは、雇用管理に責任を持たずに済むことだ。つまり、仮に請負派遣元が社会保険に加入させないという違法を働いても関知しないのである。社会保険料は、健康、年金など合わせると賃金の25%近くにもなる。請負派遣の労働者は、低賃金で生活が苦しいから、社会保険に加入しないことを了承しがちである。それをいいことに、請負派遣元は、その分を掠め取り、安く労働力を供給するわけである。

 請負派遣のような雇用期間を限定された労働者は、賃金の見えないダンピングを受けている。雇い止めのリスクがある以上、本来は、それを保険的にカバーし得るだけの割高な賃金が必要である。だが、現実はそうではない。リスクという目に見えない不利益にだまされて、つい労働力を安売りしてしまうのだ。

 本来、請負派遣は、労働力のスポット販売なのだから、割高になるはずである。実際、バブルで人手不足になったときは、期間工の方が高い賃金を得ていた。請負派遣は、不況が長引く中で、目に見えない形で賃金をダンピングするための手段であった。その賃金がたとえ労働力を再生産するのに不十分なものであったとしても、不況のときには食べるために受け入れざるを得ない。

 結局、非正規の地位向上を図るには、まずは適正な需要管理で経済成長を確保しなければならないし、低賃金の労働者が敬遠するような重い社会保険料の軽減という再配分政策も必要である。規制の在り方で済むような問題ではない。

(今日の日経)
 4-6期営業損益ホンダ日産黒字転換。成人18歳適当。自民公約案・幼児教育3年で無償化、給付型奨学金。議員定数1割減。厚労相・母子加算除き生保母子東京月額27万円、自助精神が必要。個人に現金は効果疑問、現物がよい。介護認定理念なき転換。同床異夢のG2。上海株急落。村田製、一転黒字に。経済教室・リスク非正規にしわ寄せ・太田聡一。JFEライフ・エコ作。アクアライン実験フェリー困惑。
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成長政策・戦略の失敗学

2009年07月26日 | 経済
 失敗から学ぶというのは大切なことである。そこで難しいのは、失敗から学ぼうにも、失敗そのものを認めないことが多いということである。しかも、重大な失敗は、そこから生じがちなのである。

 森谷正規著「戦略の失敗学」では、企業経営での様々な失敗の事例が紹介され、いくつかの要因にまとめられている。それらについては、まったく同感なのだが、失敗の別の側面が見えてきた。

 その典型は、液晶ディスプレイと超LSIメモリDRAMである。日本が圧倒的な優位を持っていたこれらの産業で、韓国、台湾の逆転を許した理由として、著者は、技術の流出と設備投資競争での敗北を指摘する。まったく、そのとおりである。しかし、更に踏み込んで、なぜ技術流出が起こったのか、なぜ設備投資に消極的だったかを考えると、背景となる経済事情が浮かんでくる。

 逆転が起こったのは、1990年代後半である。実は、この時期は、日本がハシモトデフレでマクロ経済の運営に失敗した時期なのである。極端な政策で、需要急減と金融危機が勃発し、日本企業は、大胆な設備投資をするところではなかったし、減量経営に追い込まれて、技術者を手放したり、設備会社と疎遠になったりした。企業戦略も然ることながら、経済環境の要因も大きいのである。

 今日の日経の「大収縮」では、米国の金融政策における失敗の軌跡を描いているが、その背景にも、日本の円安政策や超低金利政策がある。日本のマクロ政策における異様な運営が、企業戦略や米国経済を狂わせている。産業における地位の逆転や長期のバブルの持続といった異様な結果は、日本の異様な政策がもたらしたものである。

 企業の成長力を高めるのに必要な第一の政策は、規制緩和でも、企業税制でもなく、安定的なマクロ経済の運営である。それを怠って、いくらミクロの政策を弄してもムダである。むろん、日本は、この異様な政策による失敗を反省していない。したがって、また、別の形で失敗をするであろう。

(今日の日経)
 「官と民」役割再構築・成長ではなく分配の話ばかり。社説・杉並区子育て応援券。政権公約自民もたつく。ASEAN楽園に目覚めた米中。パリ貸しEV4000台。大収縮・アジア通貨危機、ロシアデフォルト、LTCM破綻、金融緩和、01年ITバブル崩壊でも金融緩和。04年からの利上げでも長期金利上がらず。素材市況内需型底割れ。ETC特需途切れず。GND沖縄P・充電会社来年設立。日経B・サーチ理論工藤教孝。
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社会保障財源としての環境税

2009年07月15日 | 社会保障
 昨日、今日と日経の経済教室は社会保障財源を特集したが、お決まりの消費税ではなく、相続税や固定資産税が取り上げられた。関学の上村敏之教授、一橋の林正義教授の論文は、なかなか読ませる内容であった。

 まず、前者であるが、公的年金課税と相続税の強化を提言しており、これには賛成である。年金は、給付時に優遇なしに普通に課税されるべきであるし、相続税は、不労所得として利子並みに課税されるべきであろう。ただし、社会保障勘定を設けて、均衡を目指すという考え方には反対である。

 なぜなら、医療保険はともかく、公的年金には巨額の積立金があり、それをどの程度取り崩すかで、収支の均衡が変わってくるからである。昨日も述べたように、社会保障で均衡させると、何によって景気循環の需要調節を行うかという問題も生じる。勘定の設置は、国民に増税を呑ませるための「見える化」という側面が強く、経済を安定させるためには、使い勝手の悪いものになる。

 また、上村教授の論文で気になるのは、世代間の公平という「曖昧な概念」に引きずられているように思えることだ。少子化の状況次第で、世代間の公平は大きく変化してしまう。実物経済の観点から、異時点間の世代間の公平より、同時点での世代間の分配の公平を考慮すべきではないか。細かいことであるが、税を議論する際は、どのくらいの財源になるかの定量的な言及も不可欠である。

 次に、後者であるが、地方税制には詳しくなかったため、興味深く読ませていただいた。提言も具体的であり、地方分権について、既に持つ権限を発動して地方自らが増税すべきとの主張は新鮮である。地方法人二税を国税化する際の固定資産税の基幹税化も興味深い。固定資産税の標準税率の引上げ、商業地の優遇措置の見直しも説得的である。固定資産税の負債ポイント化についても賛成だ。今後は消費税より、相続税と並んで資産課税が重要になる。それは高齢者が保有する累積した国債の回収手段にもなるからだ。

 ところで、今回の特集では、欠落しているものがある。それは環境税である。経済を歪めないというのが、税制の重要な要素であるが、環境税はCO2を減らすという良い方向に歪めてくれる。これは他にない利点である。しかも、次世代の産業が普及する環境も作り出してくれる。財源規模も、2.5兆円の基礎年金の2分の1国庫負担分を賄えるだけの大きさがある。これに勝る社会保障財源はないはずだ。

(今日の日経)
 GS4-6期前年同期比65%増益。マンションなお低迷、来場増・即時完売も。インド携帯急増。イランが中国の最大原油供給国に、イスラエル、サウジ上空通過合意か。イスラム圏で対中民衆抗議。新日鉄高炉を再稼動。経済教室・固定資産税の活用・林正義。
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ハーベイロードを超えて

2009年07月14日 | 社会保障
解散・総選挙の日程も決まり、政治の季節が巡って来ることになった。そこで新聞各紙が「社会保障改革の中期プランや今後の成長戦略を示せ」とするのは、ごく普通のスタンスであるが、具体的にどういうことをイメージしているのであろうか、ただ単にお決まりのセリフを繰り返しているだけのようにも思える。

 社会保障の費用については、今後の高齢者の増加に従って、いつまでに、どのくらいが必要になるかは予測がつく。他方、負担については、それに合わせて増やせばよいという単純なものではない。負担増は、その時々の景気動向に合わせる必要があるからだ。不況の最中に消費税を上げて、景気に変調を来たしては元も子もない。

 もし、常に社会保障の収支を均衡させるようにすると、需要管理は別のものでする必要に迫られるが、かつてのように公共事業で調整しようという人は少ないだろう。社会資本の蓄積が進み、どんなインフラでも作れば役立つという時代ではない。むしろ、人口減に合わせて、漸減させていかなければならず、経済に占めるウエートは、小さくなっていく。やはり基本は、社会保障の給付を漸増させながら、不況のときは減税、好況のときは増税という政策が必要であろう。

 実は、一番良い方法は、年金保険料の増減で調節することである。子供給付によって少子化を克服してしまうと、年金制度は、払ったものが確実に返ってくるようになり、積立貯金に類したものになる。したがって、好況の金利の高い時期に多目の保険料を徴収し、不況の金利の低い時期には少な目の保険料を徴収することが可能になる。

そのような運用は、利回りを上げるには有利な方法であるし、税と違って、取られるのではなく、貯めるものなので、強制的ではあるが、納得の得やすい制度になる。むろん、少子化を克服できたらの話であり、日本にとって遥かなる希望だ。

ケインズの公共事業による需要管理政策は、「穴を掘って埋めても」という比喩を批判され、大衆迎合の民主主義の下では、好況時の増税は現実的に無理だとされてきた。では、社会保障ではどうなのか。物価上昇率とリンクさせて、自動的に調整するように設計することも可能である。それならば、ハーベイロードも渡れるように思えるのだが、いかがであろうか。

(今日の日経)
 社説・首相は政策の旗を。日産、中国で2割増産。ルネサス、マイコンフル生産。日経9100円割れ。月例・消費持ち直し。最賃、生保下回る地域拡大。インドP-8、AWACS配備。サハラで太陽熱発電。韓国EU、FTA最終合意。ポスコ稼動9割以上。コマツ4-6期50億円黒字。経済教室・富裕高齢層の課税強化を。EV都が差額の4分の1補助。
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数理はとても酷なもの

2009年07月09日 | 社会保障
 賦課方式の年金では、少子化が起こると、給付より負担が大きい「損」が生じる。積立方式の年金だと、そのようなことは起こらないが、賦課方式から積立方式に切り替える際に「二重の負担」が発生する。前世代に年金を支給するとともに、自分の年金の積み立てを併せて行う必要が生じるからだ。ここまでは、一般にも知られるようになってきた。

 実は、この「少子化の損」と「二重の負担」は、同じものであり、「二重の負担」の方がより大きい。したがって、「少子化で損が生じるから、積立方式に切り替えよう」という提案は「もっと大きな損をしよう」と言うのと同じで、改革案としては、論理的に破綻したものになる。二つの概念を数式で表すと、こうなる。

「二重の負担」=一人当たり給付額× 第一世代の人数
「少子化の損」=一人当たり給付額×(第一世代の人数-少子化後に残る世代の人数)

 ひと目で分かるように、「二重の負担」は、下線の部分の、少子化後に残る世代の人数がゼロになる場合と同じである。つまり、「少子化の損」は、少子化がひどいほど膨らむものであり、次世代が一人もいない極端な場合が「二重の負担」になるということである。

 この「少子化の損」を無くすのは年金数理上では簡単で、子のない人には年金を払わないようにするだけでよい。なにも全員が「二重の負担」で犠牲になる必要はない。そして、現実には、子のない人に年金を払わないのは酷なので、それに必要な分は、保険料で「損」をしないよう、税金で負担して払うようにしている。

 こうした数理的関係が知られるようになり、専門家の間では、積立方式への転換は議論の対象にならなくなった。十年ほど前は盛んに研究されたものだが、当時の分厚い本も、いまや紙屑同然である。数理上、無意味なことが証明されてしまい、膨大な研究がムダになることは、数学の世界では、ままあることである。

 そうした状況にあるのだが、いまだに積立方式への転換の提唱がなされたりしている。こうした誤った考え方が膾炙していて、日経の大機小機でも言及されているのを見て、やむなく書いた次第である。

(今日の日経)
 OSグーグル参入。ユドヨノ再選。与那国に陸自。自民公約減反堅持を明記。核軍縮・中国は増強。新疆封じ込めに軍動員。ボーナス商戦鈍く、景気対策支え。風力発電能力減。大機小機・世代間格差(カトー)。不用スーツ就活に。
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時間制約の経済学

2009年07月07日 | 経済(主なもの)
 経済危機に見舞われて、大きな影響を受けたのは、経済学も同様だった。新古典派の経済学こそが本流とされ、ニューケインジアンは傍流的扱いだったが、日本における評価は、様変わりしたようだ。しかし、そこにも正解はない。

 経済の大きな変動は、ミクロの経済行動にわずかに不合理が含まれているからであり、それが弱い相互作用で一方向に揃うことがあるために起こる。こうした現象は、物理学では珍しい現象ではない。ただし、物理学でモデル化できるからといって、実用的な精度で変動を予想できるとは限らない。

 経済におけるこうした現象は、人生が有限であるという、人間の時間制約によるもので、アニマルスピリットとも表現される不合理な心理的反応によるものではない。あくまで、制約された時間の中での、限定される合理性に基づいて行動している。心理的反応が原因だとすると、理性によってコントロールできるように思えてくるが、原因は人生の短さにあるので、根本的な解決は無理である。

 したがって、解決策は対症的なものとなる。例えば、不況は、十分に金利と賃金が下がっていても、需要の先行きに確信が持てないために、設備投資によって人生で取り返せないような大きな損を被るリスクを恐れ、小さな機会利益を捨てる不合理によって起こる。そうなると、解決策は、需要の先行きに確信を持たせればよくわけで、政府が需要を保障したり、部分的に供給したりすればよい。むろん、口先だけでは誰も信用しない。

 最悪なのは、政府が自分の庭先だけをキレイにしようと、財政赤字を忌避して緊縮財政を取ることだ。米国の大恐慌のフーバーや日本のハシモト・デフレが典型であり、政府が自ら恐怖を増幅させることで、国民に災厄をもたらしてしまう。

 誤解がないように言っておくが、政府の財政出動が良いとしているのではない。資本と労働力が余剰であることが条件であるし、需要に確信を持たせればよいわけだから、財政支出を使わずとも、例えば、電気自動車や太陽光発電への設備投資を政府が誘導しておき、思ったほど売れなかった場合には、販売補助金を出すことを約束するといった方法もある。極端な場合、環境税の導入でエネルギー価格を上げるという計画を決定するだけで、それらの需要が出るかもしれない。

 以上が小子の経済学である。読者には、ぜひ、昨日の日経・「経済教室」の若田部昌澄早大教授の小論を併せて読んでいただき、先端的な経済学の面白さを味わっていただきたい。

(今日の日経)
 米ロ戦略核弾頭を大幅削減。一致指数所定外労働時間増。機械受注増予測。コンビニ3社増益確保。自動車保険一斉値上げ、バイオでCO2削減おがくず11年で回収。
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