経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

復興院に権限は無用

2011年04月22日 | 経済
 管政権は震災関係の会議や本部がやたらに多いと批判されているが、世間では「復興院」を創設すべしという主張が盛んだったりする。「実質より、組織いじり」という日本のトップリーダーの悪癖は、どこも変わることはない。自民党も同様のものを出してきたからといって責められはしないが、辟易とさせられる。

 日本の政治家、マスコミ、有識者は、組織というものが分からないらしい。会社では社長がすべての権限を握るが、それで社員を思うように動かせるかというと、幻想だろう。各省庁の「既存」の権限を一つにまとめたくらいでは、とても動きそうにない。おまけに、復興までの時限組織では忠誠心も得られまい。しかも、肝心の使える予算額があやふやだ。

 そんな中、朝日によれば、国交省が被災者に賃貸住宅をあっせんしようとして、トラブルになっているらしい。厚労省が災害救助法に基づいて家賃を出せるかどうかで揉めているのだ。厚労省はカネのない役所なので、おおかた、財政当局からOKをもらえないのだろう。これを「復興院」なら解決できるのか。それは一体「いつ」のことなのか。

 大事なのは、組織よりカネである。被災者の住居対策として、復興基金を用意して1000億円ほど割り当て、復興構想会議でも、本部でも構わないから、そこで了承したら、県や市町村に流せるようにすれば良い。これなら、地元の要望に沿って、すぐに実行できるし、使い途をオープンで決めることができる。これが政治主導というものだろう。

 本来、復興会議や本部の役割は、地元の要望を聞いて、臨機応変にカネを流すことであり、自治体に思う存分に腕を振るわせることである。抽象的な構想など、何の役にも立たない。構想なら、地元の発想を超える雄大なものを「予算つき」で示すくらいでなければ無意味だろう。組織いじりとは、責任を押し付ける先を作るだけのものである。

 現実の政治主導は、増税計画ばかりのようだ。しかも、消費税を上げて3年という短期間で償還することを目論んでいるらしい。災害復旧の期限は3年間となっているから、おそらく、財政当局の入れ知恵だろう。しかし、これほどの大災害で、単なる復旧ではなく、新たな姿へ「復興」させるのなら、5年以上かかるだろう。現に、宮城県知事は、そうした発言をしている。

 そうなると、せっかく復興税で集めたカネが、執行上の制約で一時滞留することにもなりかねない。経済に大打撃を与えかねない大幅な増税で用意するにも関わらずである。日本の財政当局は、どうして、これほど愚劣で現場を見ないないのであろうか。いやいや、復興のために無理なく財源を用意しようという気はさらさらなく、財政再建への増税の下心があるだけなのだ。国債に合わせた10年償還では、増税幅は1/3以下になるからね。

 今日の経済教室では、OECDのグリアさんが日本経済の見通しを語っている。震災からの再建が強い推進力を与えるとするが、2011年の成長率は1%を下回り、2012年でも2%を超える程度である。これでは、どう考えても物価上昇率は1%以下であり、消費税を1%引き上げることも難しい。上げるにしても2013年以降になるだろう。

 今回の震災で、東北地方の農林水産業は大打撃を受けたが、日本全体でもGDPの割合は1%以下である。他方、観光業のGDPはその2倍はあり、消費の停滞により、全国規模で大打撃を受けている。足元の需要減少による経済への悪影響は大きい。日経が実報中で指摘するように景気の先行きが焦点なのだ。復興院や増税の論議で遊んでいる場合なのか。

(今日の日経)
 自家発電150万kw拡大、関東1640万kwの設備、昨夏稼働率5割強。いすゞ・VW提携交渉。復興再生院を創設・自民党。品不足で値上がり続々・需要盛り上がらず。計画区域の退去説得へ。漁業保険940億円。対日輸出、アジアで停滞。コニカ・フィリップスEL照明を販売。隠れ電源生かせ・西條都夫。経済教室・復興の課題・アンヘル・グリアOECD事務総長。被災船再出港に壁、かさむ移送修理費。

※自家発電容量は思ったより大きい、西條さん解説も良いね。年間20ミリシーベルを1時間当たりに割れば2.3マイクロになる。大熊町で毎時100マイクロ超とは。
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