経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

アベノミクス・足下の停滞と先行きへの期待

2018年09月30日 | 経済(主なもの)
 ネゴシエーションで大切なのは、何を否定していないかを読み取ることだ。「交渉中は、制裁関税はない」というのは、「交渉が打ち切られたら、制裁関税がかけられる」という意味だと考えておく必要がある。だから、油断は禁物である。自律的成長は、とば口に立ったばかりであり、輸出の支えを失うわけにはいかない。難しいのは、年末の予算編成で消費増税が確定してから、日米交渉が本格化することだ。それまでに、どれだけ内需が育っているかが運命を分かつことになる。

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 金曜に8月の経済指標が発表され、7-9月期の鉱工業生産は、どうも前期比マイナスになりそうだ。7,8月平均が前期比-1.2で、9月予測は前月比+2.7だが、埋めきれない。災害続きで思うように生産できない面はあるにしても、輸出の減速で下地が弱まっているためである。ただし、設備投資を占う資本財(除く輸送機械)は、やや強めのように思う。これが自律的成長に向けた動きとなる。週明けには9月短観が出るので、企業の設備投資への意欲を確かめたいところだ。

 こうした生産での停滞があるせいが、8月の労働力統計の男性雇用者数は前月比-3万人となり、この3か月は横バイの状態である。むろん、女性は着実に積み増しているが、景気動向については、男性、特にアラウンド40(35~44歳)に表れる。他の年齢階層の就業率が少しずつ増えているのに、この3か月は足踏みしている。製造業の新規求人の前年同月比を見ても、増加してはいるものの、このところ、勢いが衰えている。なお、悪天候のせいか、宿泊飲食については、低下が大きい。

 一方、消費に関しては、商業動態の小売業は、前月比+0.9と3か月連続の増加となり、直近のピークを更新した。これで7,8月の平均は前期比+0.9となった。むろん、8月の消費者物価の財は、前月に続き+0.6と大きく上がったため、実質では大きく目減りするものの、悪環境の中で健闘していると言えよう。9月の東京都区部の消費者物価は、生鮮を除く総合の前年同月比が遂に+1.0に達し、生鮮エネ除く総合も+0.7に高まった。サービス(除く帰属家賃)は+0.7と安定的に推移している。

(図)



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 トランプ大統領の経済政策は、中国と貿易戦争を展開したりする無茶なものだが、財政による刺激については効果を発揮し、賃金も物価も上がりだして、長期停滞という議論は聞かれなくなったようである。本来の経済は、そういうものであり、緊縮の中で停滞を嘆くことの虚しさを実感させる。こうした中、FRBは金融緩和の正常化を進めているわけで、アベノミクスも、本当に異次元緩和の出口戦略に道筋をつけたいのであれば、緊縮をやめて、内需を育てれば良いだけのことである。


(今日までの日経)
 日経平均27年ぶり高値圏 割安感と安定感、海外マネー呼ぶ。日米物品協定 車関税、協議中は回避。TAGは国内配慮の言い換えか。
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9/26の日経

2018年09月26日 | 今日の日経
 今日は、経済分析の基礎知識を一つ。成長の原動力は設備投資であり、設備投資は需要を見ながらなされる。日本の場合、最大の要因は輸出だ。その際に見るべきは、「輸出」なのか、それとも、輸入を差し引いた「純輸出」なのか。正解は「輸出」だ。「純輸出」はGDPの会計上の概念であって、現実の経営者は自分が獲得する「輸出」しか念頭にない。実際の経済は、輸出を増やすために設備投資をし、生産に必要な原材料を輸入するという連関になる。また、輸入は、設備投資とは無縁の要因にも左右されるから、輸入に影響される純輸出と設備投資とが合わない局面も生じる。

 ところで、昨日今日の日経の経済教室は、消費増税をテーマにした2回シリーズだった。佐藤主光先生が2014年の消費増税について「景気が著しく落ち込んだ」としていたことは、印象深かったね。他方、「消費税は経済活動に及ぼす歪みは小さい」とするが、2014年の消費増税では、起こらないはずの設備投資にまで駆込みと反動減が見られた。足下で税収が伸び、消費増税なしでも2025年度の財政再建目標を達成できそうなのに、これだけ経済全体に大きな悪影響を及ぼすものを敢えてする必要があるのか、筆者は疑問である。

 また、今日の宇南山卓先生は、「現状であれば所得効果は緩やかに消化できる」とするのであるが、消費水準は未だ2014年の増税前を取り戻せておらず、除く生鮮エネの消費者物価上昇率が0.5%以下という今の状況では、なかなか苦しかろう。物価上昇率は、消費増税の実質消費の引下げ幅くらいはほしい。いずれにせよ、日本経済が消費増税をこなすには、内需の低下を補い、設備投資を支えるだけの外需がいる。幸い、2014年は、それに恵まれ、退潮した2015年は景気低迷に悩んだ。そして、今度、どうなるかは、日米交渉の行方同様、誰も分からない。

(図)



(今日までの日経)
 通商は大統領に聞いてくれ 強硬派勢い 視界不良に・滝田 洋一。エコノ・単身 無職が最多 しぼむ4人家族。財政による追加刺激で長期停滞という議論は聞かれなくなった・前ダラス連銀総裁リチャード・フィッシャー。
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緊縮速報・10%消費増税が打ち砕かれるとき

2018年09月23日 | 経済(主なもの)
 自民党総裁選が終わって、10%消費増税は既定路線になったかに見えるが、これにストップをかけるとすれば、おそらくトランプ大統領だろう。制裁関税や自主規制によって、輸出というアベノミクスが頼り切っている武器を奪われ、内需まで捨てる消費増税をしたら、景気は墜落してしまい、それは安倍政権の退陣に直結しかねない。「消費増税があるので待ってくれ」という理屈が通用する親父でもあるまい。最悪は増税の進退窮まる段階での発動だ。

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 木曜に4-6月期の日銀・資金循環統計が公表され、一般政府の資金過不足のGDP比を4四半期移動平均で見ると、前期比-0.1%の-2.4%となり、若干の低下という結果であった。それでも、前の1-3月期が+1.6%の飛び抜けたプラスだったことを踏まえれば、順調に改善の道を歩んでいると言えよう。中央+地方政府の改善のトレンドを延長すれば、基礎的財政収支が概ね均衡するGDP比-1.0%の水準には、2021年度末には到達する計算だ。むろん、これは10%消費増税を前提としないものである。

 次の7-9月期に関しては、財政資金対民間収支によれば、7,8月の租税(受)が前年同月を6800億円上回って、税収は好調に推移している。9/9のコラムでも記したように、2018年度の税収は、前年度比+2.5兆円と過去最高の61.3兆円に達すると予想しており、今後も財政収支の改善が続くと見込まれる。歳出についても、当初予算は前年度補正後より1.4兆円も少ないため、秋の国会で災害対策の補正予算が組まれるにせよ、抑制された水準に収まると考えられる。

 また、水曜には8月の貿易統計が公表され、既報のように、輸出は、後退こそしていないが、伸び悩む状況にある。アベノミクスでは、スタートの2013年1-3月期から直近の2018年4-6月期までの間に、実質GDPが+34兆円となったが、これは+21兆円の輸出が牽引したものだ。設備投資の増加も大きいが、輸出向け生産のためと見るべきものだ。これに対し、家計消費(除く帰属家賃)は、わずか0.04兆円の増加に過ぎない。改めて指摘するまでもないが、輸出はアベノミクスの命綱である。

(図)



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 アベノミクスは、輸出に頼り、財政収支を大幅に改善する緊縮によって、消費を潰してきたのであり、したがって、最大のリスクは、輸出の失速ということになる。来る内閣改造では、対米交渉関係の閣僚は動かさないらしいが、それも当然だろう。ここが政権運営のアキレス腱になるからだ。交渉で最も望ましいのは、日本が輸入を増やす拡大均衡だが、ここでネックとなるのは、内需を抑制する消費増税である。

 米側からすれば、財政収支の赤字は大幅に縮小し、消費増税をせずとも、十分、2025年度までに財政再建目標を達成できるのに、なぜ、わざわざ内需を抑制し、輸入を減らす緊縮財政をするのかとなる。対日貿易赤字を拡大均衡で直す気がないとなじられるのは当然で、それなら、とにかく対米輸出を削減しろという論理にしかならない。こうなると、特に自動車産業は、輸出規制に加え、消費増税による需要減のダブルパンチに見舞われる。それで景気が吹っ飛び、政権が揺らごうが、凶事を重ねるのは日本の勝手であって、米側の知ったことではない。

 しかも、消費増税は、対米交渉での大きなハンデにもなる。消費増税を動かせなくなった段階で、当面の輸出を減らさないために、どんな米国の要求も呑まざるを得なくなるからだ。それで満足させられずに、結局、輸出まで削られるおそれもなしとしない。輸出というアベノミクスの命綱を失い、日本経済のクラウンジュエルたる自動車産業を犠牲にし、消費増税で内需まで捨ててしまったら、リーマン並みの危機を自分で招くことさえ、決して絵空事ではなくなるのである。

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 米国は、日本のマスコミや有識者とは違い、最新のデータも見ずに財政危機を叫ぶような間抜けではない。相手を自分たち並みとナメていたら、痛い目に合う。これから、消費増税の需要ショックに対処するための各種施策が練られるだろうが、対米交渉を抱える内は、いつでも消費増税を停止できる構えを持つことが、外交上も経済上も不可欠である。当然、米側が最も嫌な局面で持ち出すことは、想定せねばなるまい。輸出を挫かれた時に何をすべきか、言わば、これは緊急脱出プログラムである。


(今日までの日経)
 貿易戦争、生産・調達見直し 日本企業、影響長期に。NY株、貿易戦争でも最高値。中間配当最高、4.9兆円。
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9/20の日経

2018年09月20日 | 今日の日経
 貿易統計が公表され、日銀・実質輸出は前月比+2.3であったが、7,8月の平均は前期より-0.5低い水準だ。輸出は後退こそしていないものの、伸び悩む状況にある。他方、輸入は、日銀・実質で見ても、前期の減少の反動もあり、7,8月の平均が前期比+2.1と高い。輸入はひと月遅れで輸出の動きを追う傾向もあるので、この感じでは、7-9月期GDPの外需は、マイナス寄与が避けられないのではないか。いよいよ内需が大事になってくる。

(図)



(今日までの日経)
 東南ア製造業 生産に勢い 1-6月伸び率、中国に迫る 拠点シフトで恩恵。
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9/18の日経

2018年09月18日 | 今日の日経
 ついでに、法人企業統計の人件費も出しておくよ。人件費の全体は増加が加速しているのに対し、従業員1人当たりでは、それほどでもないというところ。従業員の確保具合で、企業間のバラツキが大きいのかもしれないね。サンプルの入れ替えによる段差は、統計調査では、ある意味、宿命的なものだし、段差の調整には、一つの正しい答があるわけでもない。専門家は、それが分かっているから、一つの数字で実態を判断したりしないが、これを、段差は素人を惑わすから、あってはならないとされても、素人には分かりにくい技術的説明を長々するしかない。あげく、「それで、どれが正しいんですか?」と返されるのが、よくあるオチ。

(図)



(今日までの日経)
 膨らむ邦銀、海外投融資410兆円に。中国株、人民元ショック後最安値。
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4-6月期GDP2次・自律成長へGO!

2018年09月16日 | 経済
 またぞろ、統計批判が世上を賑わせておるようだね。日頃、若手に言い聞かせてきたのは、「統計は真実の一側面、真実は多面体」ということ。経済の実態をつかむには、個々の統計の問題点も知りつつ、複数の統計を眺めて総合的に判断しなければならない。さらには、「数字の選り好みは、真実を捨てるに同じ」、「矛盾する数字こそ、新たな発見のカギ」というのは、理工系の方なら、身にしみて分かるはずだ。

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 確かに、毎月勤労統計の現金給与総額は、この3か月は特に高めに出ていると思う。しかし、その根拠となる参考の系列の低さが正しいとも限らない。こちらには、前年が高めだったウラが出ている可能性がある。また、もし、毎勤が虚像なら、やはり高めに出ている家計調査の勤労者世帯の実収入はどう解釈するのか。今年の春闘の結果は、経団連、厚労省の集計とも数年来の高い数字だったし、バイトの時給は、一層、高まっている。結局、前にも記したように、程度は別にして、賃金は上がってきていると判断するのが妥当と考える。

 実は、先週のコラムは「伸びる税収、伸びない消費」を仮題にしていた。それで数字を眺めると、従来の認識は修正が必要だと気がついた。とかく人は自分の考えに沿った数字を集めがちなもの。失敗の経験を糧とし、心して事に当たらねばならない。ビジネス全般でも、当てはまることではないだろうか。むろん、消費の浮上の背景には、必ず賃金の向上がある。考えてみれば、認識には矛盾も潜んでいたわけだ。「まずは数字や事実を受け入れる」という態度がいかに大切かということになる。

 さて、月曜公表の4-6月期GDPの2次速報では、設備投資が大きく上方修正され、実質成長率は年率3.0%に達した。1次速報の段階で、設備投資が主導する自律的成長への転換点を迎えたという見方を示したが、それが更に鮮明になった形である。図で分かるように、設備投資は、輸出などの追加的な3需要とパラレルに動いてきたことが分かる。需要が不足気味の経済では、需要リスクが最大の決定要因になるので、需要に従う形となる。ところが、これまでとは矛盾する数字が現れだした。

 3需要が4四半期も横バイが続いたにもかわらず、設備投資の増勢には変化が見られない。しかも、この2四半期は、3需要の中核たる輸出まで伸び悩んでも、むしろ、設備投資の勢いは増すほどだ。今後については、設備投資の先行指標である機械受注は、木曜公表の7月分でも順調に推移しており、日銀短観、政投銀調査での企業の設備投資の意欲は高い。そして、消費にも3需要を離れて伸びる動きがあり、GDPの名目値では消費増税後の最高を更新した。すなわち、総合的に判断して、設備投資が需要を増やし、需要が設備投資を促す、自律的成長への変化を見つけることができる。

(図)



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 アベノミクスの是非が喧しいけれど、あれもこれも否定してかかるのは、よりマシな政策の選択には有害無益である。アベノミクスの失敗は、消費増税で消費を落とし、伸びを失わせたことであり、アベノミクスの成功は、金融緩和による円安で企業収益を増やし、補正後歳出の抑制と巨額の税収増で財政赤字を大幅につめたことだ。こうした事実を踏まえれば、更に消費を圧迫する増税を行う選択など、冷静に考えたら、到底、理屈が立つまい。

 しかるに、アベ批判の先鋒に立つ大手紙ですら、「予算の膨張が止まらず、緊急支出の余力が乏しい」と書く始末だ。ストックの「借金比率」のようなおなじみの数字に浸かってしまい、フローの基礎的数字を調べず、当局発表の当初予算の数字しか見ないからだろう。来週は、前回、季節調整値ながら、政府の収支が「黒字」になったことを示した資金循環統計の4-6月期分が発表される。あれもこれも見たい筆者は、実に楽しみだ。


(今日までの日経)
 ドル16年ぶり高値。労働生産性 改善続く。欧州中銀 資産購入 来月から半減。QBネット 値上げ 試行錯誤。バイト時給 飲食業も1000円超え。

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9/12の日経

2018年09月12日 | 今日の日経
 やれやれ、景気ウォッチャーがようやく底打ちしたね。8月の現状は前月比+2.1となり、年初の水準まで戻した。先行きも+2.4と同様に上昇している。7月の消費がまずまずであった後に、こうした明るい兆しが見られたことはありがたい。関空の機能不全や北海道の震災もあり、インバウンドや生産活動は思うようにいかないかもしれないが、景気の基調、すなわち内需は温まってきた感はある。

(図)



(今日までの日経)
 郵便配達 平日のみに 人手不足で効率化。景気、7~9月は鈍化へ エコノミスト予測、災害・貿易摩擦に懸念。地方配慮 法人事業税で。
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伸びる税収・ボーっと緊縮してんじゃねえよ!

2018年09月09日 | 経済
 これは、消費増税が不要になるほどの大きな税収上ブレになるね。今週、相次いで公表された7月税収実績、4-6月期法人企業統計、9月企業業績見通しを眺めた率直な見方だ。政治的には、消費増税は既定路線で、議論の対象ですらないらしい。財政再建が大事なら、税収の動向くらい気にすべきだろう。そこから見えるのは、路線墨守の無意味さだ。消費増税には見過ごせないリスクがあるにもかかわらず、この国は、数字も確かめずに、「空気」で決めてしまうのだろうなあ。

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 国の税収は、7月が所得税の最大納付月であり、消費税の納付も始まる。7月分までの累計額は年間の1/6弱を占めるので、当年度の税収を予測できるようになる。2018年度のそれは、既に前年度を6500億円も上回った。最終的には、前年度決算比+4.3%で2.5兆円上回る61.3兆円になると予想される。過去最高の税収はバブル期の1990年度の60.1兆円だったから、軽く超えて28年ぶりの新記録達成となろう。予想の方法は、シンプルかつ堅実なもので、所得税は名目成長率、法人税は企業業績見通しの経常利益増加率、消費税は消費増加率、その他税は物価上昇率で伸ばし、7月分までの実績を反映しただけだ。この方法だと、所得税は少し控えめに出る。ちなみに、政府予算の税収は、決算比+0.5%の59.1兆円でしかない。

 そして、これをベースに、同じ方法で2019年度の税収を予想すると+4.3%の63.4兆円となる。さらに、単純に、弾力性1の名目成長率(2.8%)で伸ばして、2020年度の税収を計算すると65.2兆円である。これに対して、政府の税収の予想は、消費増税を前提として、2020年度は66.0兆円になるとしている。つまり、消費増税をせずとも、目標の税収に、あと0.8兆円まで迫るということだ。予想は控えめだから、その差は更に縮むだろう。裏返せば、たった0.8兆円多く得るために、前回、消費を3兆円減らし、3年も低迷させた消費増税のリスクを、再び犯すのかという話になる。

 消費増税をやめたとしても、予定していた税収と大して変わらない額が上ブレで得られるわけだから、財政再建の計画上は何の問題もない。こうなると、消費増税のための消費増税としか言いようがなくなる。もしや、消費を圧迫してデフレを呼び戻し、異様な金融緩和を続けて、資産価格を高く保ち、米国への超低利の資金供給を途切らせないためというわけでもあるまい。おそらく、そんなウラの事情もなく、ボーっと緊縮しているだけと思われる。もはや、消費増税は条件反射の「念仏」と化していて、戦略的に財政を再建する思考そのものが失われている。

(図)



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 4-6月期の法人企業統計では、営業利益(除く金融保険)が前期比5.8%増の18.1兆円と急増した。バブル期のピークが12.8兆円、リーマンショック前のピークが14.8兆円であり、これらを大きく上回る。他方、設備投資(除くソフト)は、前期比+6.9%の11.6兆円と、未だリーマン前の13.2兆円には及ばないものの、勢いを増している。特に、製造業は、リーマン前の9割近い水準となった。4-6月期GDP1次速報では、設備投資のGDP比率が16.3%と、既にリーマン前の水準を上回っており、2次では上方修正されるだろう。

 今後の企業収益については、野村、日興の9月企業業績見通しを見ると、2018年度の経常利益の増加率は、+9.9%と+9.7%であり、2019年度が+9.0%と+7.6%となっている。2017年度の+15.3%と+15.0%という2桁増ではないにせよ、引き続き、好調に推移するものとなっている。また、2017年度法人税の増加率は16.1%であったことを踏まえれば、今年と来年についても、企業業績見通しに準じて伸びると見込まれる。企業も、財政も、大いに潤っているわけで、消費増税の後遺症に苦しむ家計消費とは対照的だ。

 その家計消費に関しては、金曜公表の7月指標は、まずまずの内容だった。家計消費(除く帰属家賃)は、消費増税直後の極端な落ち込みから3四半期後の2015年1-3月期に237兆円台になったものの、これ以降は停滞を続け、そこから脱したのは、実に9四半期後、公共事業の追加で緊縮が一時的に緩んだ2017年4-6月期のことだった。その後、再び後退し、直近の2018年4-6月期になって、ようやく戻したところである。7月は、これに連なる形となり、統計局・CTIマクロが実質で前月比+0.1、日銀・消費活動指数が同+0.4であった。それぞれ前期より+0.4、+0.3高い水準である。災害続きであるが、何とか順調に行ってほしいと思う。

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 今度の消費増税は、軽減税率もあるから大丈夫と言われたりするが、どうやら、穴埋めに増税が検討されているようで、これでは何のための軽減なのか分からない。しかも、消費に影響の少ない金融所得課税ではないようだ。企業は最高益を更新しているが、2017年度の法人税収は12.0兆円と、リーマン前の14.9兆円に遠く及ばない。民主党政権が決めた1兆円の純減税を実行に移したことが大きな要因である。企業や財政の余裕ぶりは目に入らず、脆弱な消費を痛めつけるようなものばかり出てくる。3年の時を経て、なんとか立ち直った消費だが、税収の上ブレなど誰も気にせず、ボーっと緊縮するうちに、1年後には再び消費増税で潰される運命にある。


(今日までの日経)
 米雇用統計、8月は20万人増 月内利上げ濃厚に。北海道停電ほぼ解消へ。待機児童4年ぶり減。猛暑消費、賞与増が支え 7月家計調査。北海道地震、広域停電で被害広がる 最大震度7。関空再開、滑走路1本で まず国内線、全面復旧は遠く。自民税調会長「軽減税率に0.6兆円必要」 金融所得課税に慎重。
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9/6の日経

2018年09月06日 | 今日の日経
 月曜日の法人企業統計は、ポジティブサプライズだったね。設備投資が前期比6.9%増と大きく伸び、4-6月期GDPも上方修正は確実だ。製造業だけでなく、非製造業の設備投資が伸びているのも心強い。1次速報の時点で輸出等の追加的需要で予想されるより多い設備投資がなされていたが、これを更に上回ることになる。設備投資が主導する自律的成長へ、また一歩、踏み入れたと言えよう。

(図)



(今日までの日経)
 危機に学ばぬ当局・Mウルフ。設備投資、11年ぶり伸び幅 4~6月12.8%増 貿易摩擦で鈍化も。野菜が揺さぶる景気。

※被災地の皆様には心よりお見舞い申し上げます。
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アベノミクス・夏の停滞、出口はどちらに

2018年09月02日 | 経済(主なもの)
 今、景気は、踊り場にある。問題は、上り階段に向うのか、下り階段に通じるのかだ。停滞の一番の要因は、輸出の失速だ。他方、景気は、自律的成長が可能なところまで内圧が高まっており、輸出が崩れなければ、徐々に上向いて行くだろう。裏返せば、輸出が崩れる前に、早く上向いてもらわないと、せっかくのチャンスを逃すことになる。今は、どちらが先かの競争を、ハラハラしながら眺めているわけである。

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 7月の日銀・実質輸出は110.4と前月比+0.3にとどまり、7-9月期の輸出が前期を上回れるかは微妙な情勢だ。いつまでも続くものではないとは言え、1年半に及んだ好調の時は過ぎ、この3か月は、まったく推進力を欠いている。また、7月の鉱工業生産は、前月比-0.1と、小幅ながら3か月連続の低下となった。鉱工業生産も、昨年までの増加トレンドから、戻りの弱さを経て、停滞へと変化している。

 こうした今年から夏にかけての停滞感は、ソフトデータにも共通する。景気ウォッチャーは、季節調整値が年明けから低下局面に入っているし、12か月移動平均で見ても、春から低下傾向となった。8月分が判明した消費者態度指数も、季節調整値は春先が山であり、12か月移動平均も、この夏、とうとう低下し始めた。今年は悪天候と災害続きだが、それで理由付けをしていると、需要の趨勢的変化を見逃すことになる。

 一方、雇用については、今年に入ってから一段と強まっている。労働力調査の雇用者数には加速が見られ、これは、女性のみならず、男性にも広がっているためだ。ただし、7月は女性は伸びても、男性は横バイであった。7月の新規求人倍率には、前月の急伸の反動が出たものの、水準は十分に高い。賃金についても、毎月勤労統計には段差があって額面通りには受け取れないが、着実に伸びているようであり、家計調査の勤労者世帯の実収入も似た傾向だ。消費者物価もサービスについては、今年に入って上昇しており、景気の内圧は高まっている。

 物足りないのは消費であり、消費者態度と歩を合わせるかのように、勤労者世帯の消費性向が下がっていて、雇用や賃金の傾向が消費へと十分に結びついていない。それでも、7月の商業動態の小売業は前月比+0.1と、4-6月期水準より+0.5高く、まずまずの滑り出しだ。生鮮の値上がりでCPIの財が前月比+0.7にもなり、実質では大きく割り引かれるが、小売業の基調は悪くない。物価による攪乱があるにせよ、消費には、もうひと伸びがほしい。

(図)



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 今後については、鉱工業生産の予測指数は、資本財(除く輸送機械)が8月+13.1、9月-4.6となっており、もし、このとおりなら、7-9月期は前期比+2.5と順調に伸びることになる。機械受注も増勢を保っていることから、すんなり上り階段へ向うことを期待したい。建設財の予測指数も8月+4.3、9月-1.2であるから、こちらの下支えも見込めよう。

 人手不足が言われて久しいが、男性中年層の就業率は、リーマン前並みにはなったものの、デフレになる以前はもっと高く、今の水準は2000年頃にも及ばないことを踏まえると、まだ上がる余地が残っている。その意味で、景気は回復の途上であり、全般的に物価が上昇するようになるには、もうひと頑張りが必要と思われる。

 もはやデフレではないと、勝った気になっている向きもあるが、望みが低いのではないか。この程度の状況で、消費増税はできると慢心することこそデフレ慣れである。こんな心性が染みつき、輸出の牽引力が失われていいても不安を感じず、早々とブレーキを踏むのに平然としているから、デフレは終わらないのである。


(今日までの日経)
 厚生年金 パート適用拡大 月収要件 緩和へ。JAL、想定超すAI効果。
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