経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

11/30の日経

2016年11月30日 | 今日の日経
 昨日、10月の家計調査と商業動態が公表された。消費について、家計は低下、商業は上昇という、大きく乖離する結果だった。これは読むのが相当に難しいね。「だから、家計調査は信用できない」という話になるかもしれないが、家計調査は、サンプルが少ないので、フレが大きいし、消費性向に十分留意することも必要だ。

 このところ、消費性向がやけに低い。そこで、消費性向が一定だったらということで、計算すると、他の統計とも似た形になる。消費性向が低い理由として考えられるのは、一つは、たまたま、二つは、雇用回復によるサンプルの変動といったところか。いずれにせよ、統計改革では、簡易項目の調査でサンプルを増やしてほしいね。

(図)



(今日の日経)
 人手不足、正社員で対処 10月の伸び、非正規上回る。 米、3.2%成長に上振れ 7~9月改定値 消費伸び、利上げに追い風。
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立場を超える経済学のすすめ

2016年11月27日 | 経済
 佐和隆光先生の『経済学のすすめ』(岩波新書)を面白く読ませていただいた。国立大の文系学部廃止論に対して、文系の学問、中でも、経済学は何の役に立つのか、考えさせられる内容だった。その役立ち方は、立場によって変わってくる。体制の擁護にも、批判にも、両方に使える一方、建設的な答えがあまりないのが経済学の特徴だろう。

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 私の持論は、「常識は高校で習い、大学では常識を超える真実を学ぶ」というものだ。経済学で第一に挙げられる「真実」は、アダム・スミスの「見えざる手」で、私利の追求が社会の豊かさを実現するというものだろう。常識では、強欲は社会の害悪とされるからだ。当然ながら、この考え方は、持てる者がますます持つことを肯定するのに役立つ。問題は、この考え方が現実的かどうかである。

 徹底的に私利が追及されているのなら、世の中には、余資も失業も存在しないはずだ。低金利と低賃金は組み合わされ、価値が産み出されなければおかしい。しかし、現実には、カネ余りと職不足は、しばしば、同時に発生する。論理としては完璧でも、現実に当てはまらなければ、それは、思想であっても、真実ではない。思想として生き残っているのは、「現実は金融と規制の緩和が足りない」という抗弁があるからだ。

 経済学の第二の「真実」は、個々が正しいことをしていても、総体では不合理が発生することがあるとするケインズの言説てある。大恐慌という極端な現実が発生したとき、第一の「真実」を修正するものとして生まれた。しかし、個々と総体とをつなぐ論理にギャップを抱えている。実際、財政出動は、効果があるのだが、なぜ効くのかは、必ずしも明確ではない。ゆえに濫用も防げずにいる。

 実は、個々は完全に正しいことをしているのではなく、大きな損失を受けるリスクを避けるために、わずかに利益を捨てるという誤った行動を取っている。これが自己組織化され、社会的な不合理に発展してしまう。経済学では、こうした比較的新しい理系の考え方が十分に取り入れられておらず、リスク回避の不合理を癒すのに需要の安定が必要という「真実」に至っていない。それで自由か平等かという、価値観を言い合う建設的でない論争が続くのである。

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 普通の人々が経済学に期待することは、景気を良くする処方である。しかし、金融緩和なのか、財政出動なのか、見解は分かれる。コンセンサスがあるのは、構造改革による成長力の増強というのでは、結核に対して、休養と栄養で体力をつけろとしか言えなかった頃の医学と同じだ。病原に直接に効く手法が特定されていないのである。「経済学とは何だろう」という疑問が湧くのも仕方あるまい。

 もし、病原が需要リスクに対する不合理な行動と分かれば、「ひたすら金融緩和、とにかく財政出動」という、力任せの手法に走らずに済む。自由とか、平等とかの価値や権利に訴えて、政治的に押すのでなく、不合理の修正という技術的立場から、政策手段を選び、分量を調節することができるようになる。例えば、仕事と子育てを両立したい女性は、生涯賃金が多くなるのだから、老後にもらう年金の一部を乳幼児期に前倒しで受給できるようにし、保育費用を賄えるようにする。需要が不足しているのなら、こうして確保すれば良い。

 育児や教育といった人的投資は、超長期のものなので、目先の雇用情勢などで、不合理に低い水準に陥りやすい。資金調達のため、人生を通じて過不足を均すよう社会保障を整えることは、ムリ・ムラをなくす合理的方策である。人口や人材の確保は、企業にとっても、長期的には不可欠なものだ。木を切るばかりで、木を植えない行為を、利益最大化とは呼ばないだろう。

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 書店を歩くと、マイナス金利の話題性もあって、金融政策の新刊が次々に出ている。日経にも多くの記事が並ぶ。これは、今の経済学が金融政策で経済をコンロールできると考えていることの反映である。他方、需要管理の状況がどうなっているかは、ほとんど関心を持たれない。それが経済を動かす重要なファクターと思われていないからだ。

 しかし、無関心をよそに、政府の資金の吸い上げは、図のとおり、2015年以降も、着々と進んでいる。特に、社会保険の収支が改善している。雇用が回復しているのだから当然だが、その分、家計に残る所得は減るわけで、消費を低迷させることにもなる。金融緩和しか見ていなければ、景気低迷は謎だが、消費増税後も緊縮財政が続いていると知れば、不思議でも何でもない。

 学問は何を見るべきかの枠組みを提供する。世の中の在るべき姿について、論理で以って語るのも学問の役割ではあるが、学問としての経済学の一番の課題は、枠組みが狭いことにあるように思う。これを広げられれば、語るべき内容も豊かになり、社会的合意に貢献することを通じて、立場を超えた役割を果たせるのではないだろうか。

(図)



 
(今日までの日経)
 福島廃炉・賠償費20兆円。配偶者控除は1120~1220万円で段階減額。雇用保険料0.6%に下げ。年金法案 衆院委で可決。来年度予算、97兆円前後。配偶者控除 上限150万円。国債発行、8年ぶり低水準。来年前半、金利目標を引き上げ、国債買い入れ減額を・白井さゆり。

※大きく円安になり、米金利も上がって、いよいよ出口に向かう時が来たか。金融も財政も極端から変わりつつあるね。
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11/23の日経

2016年11月23日 | 今日の日経
 月曜に9月の全産業活動指数が公表され、7-9月平均は前期比+0.6だった。前年10-12月期からの推移は、-0.2、0.1、0.3、0.6となったわけで、徐々に景気は加速している。7-9月期のペースを維持するだけで、次の10-12月期は2%成長だ。そうなれば、景気は本格回復と評されよう。また、10月の日銀実質輸出も順調に伸びており、10月のスーパーは良好、コンビニ、百貨店も前月よりはマシだった。 

 今週の毎日エコノミスト(11/29号)の斎藤太郎さんの論考は、なかなか興味深かったね。11/8号の藻谷俊介さんとは、また違った見方だ。ポイントは、「輸出数量は為替より世界景気に左右される」こと。これがあるから、「異次元緩和で円安にすれば、輸出が増えるので、消費増税も大丈夫」という考えは甘いわけだ。世界景気がどう転ぶかは分からず、輸出に頼った経済運営は失敗の素となる。


(今日までの日経)
 ドル1強 マネー集中、円下落111円、株1万8000円回復 新興国からは流出。 10月輸出、季節調整値で1.6%増 緩やかに拡大。TPP漂流 トランプ氏が離脱明言。
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7-9月期GDP・異常かつ当然の帰結

2016年11月20日 | 経済
 11/14公表のQEで、日本のGDPは535兆円に達し、駆け込み需要に沸いた2014年1-3月期に並んだ。むろん、過去最高水準だ。他方、家計消費(除く帰属家賃)は247兆円と、消費増税直後の落ち込み時の2014年4-6月期と変わらず、まったく生活は良くなっていない。この247兆円は、6年も前の2010年7-9月期と同じだ。成長したのに、恩恵がないという異常さは、金融緩和に緊縮財政を組み合わせたアベノミクスの当然の帰結である。

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 消費増税前の家計消費は255兆円程だったから、約8兆円減っており、ちょうど消費増税で取り上げられた分に相当する。消費増税の影響を軽視する人たちは、これをどう評価するのか。しかも、それまでの緩やかな増加トレンドが失われてしまった。増税ショックの落ち込みが、一時的でなく、2年半にも渡って続いていることは重大だ。なぜ、消費の「成長力」は消えたのか。 

 実は、消費の動向は、外挿的に決まる3つの需要を足し合わせたものと、よく似ている。この「3需要」とは、民間住宅、公共事業(公的固定資本形成)、輸出の3つだ。消費と3需要の動向が似かよう理由は、3需要の生産活動が高まると、追加的な所得が増え、その分、消費が押し上げられるからだろう。では、消費と同じく、増加トレンドを失った3需要は、どんな経緯をたどったのか。

 それは、複合的なものである。まず、増税前の景気づけをしていた公共が消費増税を前に減少に転じ、次いで、増税を境に、住宅が、駆け込みと反動により、下落した。そして、増税後も支えていた輸出が2015年春に失速する。こうした動きが重なり、3需要も、消費増税以降、まったく増えない形になった。教科書的には、金融緩和をすれば設備投資が増え、経済は成長するというものだが、現実は、随分と様相が異なるのである。

(図)



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 さて、そうすると、消費や成長のために、3需要を伸ばせば良いと思われるかもしれないが、事は、そう簡単でない。確かに、2015年春以降、輸出が失速しているに、公共の手を抜いたのは、ボーンヘッドだったにしても、輸出は、世界経済次第の水物であるし、建設関係の需給は、毎日エコノミスト(11/15)で日本総研の枩村秀樹さんが指摘するように、逼迫していて、これを吹かすと空回りしかねない。

 そもそも、本来、3需要は景気回復のスターターでしかない。3需要と、これが加える消費増が、設備投資のリスクを癒し、投資増、所得増、消費増と波及して、好循環に移行する。これを消費税や社会保険料の負担増でせき止めるのは、セルモーターだけでクルマを動かそうとするようなもので、エンジンをかけないでいると、そのうちモーターのバッテリーがダウンしてしまう。緊縮財政は、こういう問題を孕むのだ。

 政府の働き方改革では、配偶者控除の改革が課題になっているが、財政当局が税収中立という理屈を振り回したために、袋小路に入ってしまった。所得税は、2013年度から2015年度にかけて2.3兆円も増えているのに、これを還元しようという発想はない。おまけに、人的控除の範囲での中立に拘泥するから、利子・配当所得への増税で補おうといったことは、及びもつかない。成長も社会もそっちのけの財政至上主義の現れであろう。

 またぞろ1000万円超の高所得層の負担増で賄おうとしているが、児童手当も与えず、高校無償も外し、配偶者控除もなくすといったことを続け、財源確保策だと言って社会制度での選別を強めれば、国民の間に分断を生む。トランプ現象を目の当たりにしても、危機感はないようだ。消費増税でデフレに転落させ、回復の芽を摘む緊縮財政の繰り返しで企業の成長志向を去勢し、いよいよ社会連帯の堀り崩しへと進む。

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 金融緩和と緊縮財政の組み合わせでも、ある程度の成長は得られる。しかし、その成長は不公平なものと見られがちだ。米国では、日欧に比べれば、リーマン後の経済運営が比較的、上手く行っていたのに、働く低所得層に不満が鬱積していた。オバマ政権が十分な財政措置を取れず、金融緩和に頼らざるを得なかったのは、共和党の反対によるもので、しかも、景気は加速しているのだから、選挙結果は何とも皮肉である。

 7-9月期GDPの結果は、金融緩和と緊縮財政の組み合わせを象徴するようなものだった。米国の社会分断の噴出は「他山の石」にせざるを得まい。幸い、足元で3需要は上向いている。輸出は増加基調にあり、住宅の上乗せは難しいものの、補正予算の公共事業が補う形になろう。大切なのは、こうした回復の芽を育てると同時に、働く低所得層への還元を図って、社会連帯を保つことである。


(今週の日経)
 国債 消えるマイナス金利。新興国通貨安 景気に影。中国の車市場、減税バブル。日銀 利回り指定で国債無制限購入。人民元安、リーマン前迫る。配偶者手当の縮小求める 会員企業に経団連。減税含む財政拡大必要 浜田宏一氏。
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11/15の日経

2016年11月15日 | 今日の日経
 7-9月期GDPの1次速報は、年率で実質2.2%成長だった。世間的にはポジティブサプライズだったが、本コラムにとっては見込みどおりの結果である。エコノミストの平均が0.85%というところで、2%成長もあるとしていたのだから、価値があったかと思う。まあ、ラッキーだったということさ。

 内需は、細かく言うと、思ったより、設備投資が伸びず、在庫は低下しなかった。予想がバラけて、相殺されたわけだ。いずれも、法人企業統計が出れば、2次速報で動くものでもある。ポイントは、消費について、予想の範囲の中で強めを採ったことかな。足元は回復局面にあるという認識から導かれる判断だ。

 社説は、「消費停滞は若年層の貯蓄優先」とし、「社会保障制度の持続性を高めて不安を和らげろ」としているが、子育てや教育などでの若年層への社会保障給付を増やせと主張するのが普通の発想だろう。奨学金の返済も「貯蓄」に当たるのであり、それは選択の余地なくなされている。


(今日の日経)
 成長 危うい外需頼み GDP7~9月 年2.2%増 消費・設備投資さえず。社説・ 将来不安を映す民需の低迷。
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マクロ経済についての「超予測力」

2016年11月13日 | 経済
 トランプ支持の表明は世間体が悪いのだから、世論調査の数パーセントのリードでは、クリントンは危ういというのは、結果が出てみれば、すぐに思い当たる。これを事前に、可能性として明確に指摘できていれば、クリントン優位とされていても、番狂わせという言われ方はしなかっただろう。予測において、意外なことが起こったと想定し、そうなる理由を考えてみるのは、極めて有用な方法である。

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 テトロック&ガードナーの『超予測力』は、なかなか魅力的だね。専門家の予測能力はチンパンジー並みのお粗末さとする一方、CIAの情報分析官をも上回るボランティアの「超予測者」の一群も存在すると言うのだから。しかも、超予測者は、知識や才能に恵まれているからではなく、予測に向かう思考法に特徴があるとする。まずは、「訳者あとがき」で概観されると良いだろう。

 実は、冒頭のような予測の方法は、巻末の「超予測者をめざすための10の心得」の5番目に「自らと対立する見解を考えよ」として出てくる。予測に限らず、物事の本質を見極めようとする場合、多角的な見方を持つことは欠かせない。むしろ、新しい見方はないかと、探すくらいの好奇心を持つべきだ。本コラムでは、緊縮財政の悪影響を指摘することが多いが、別の可能性も考えつつ、診断を下している。

 テトロックらは、最終章で、リーマンショックの際のケインズ派と緊縮財政派の対立を取り上げ、予測と実際を比較して、誤っていた人は意見を修正すべきとする。残念ながら、実際は不毛な応酬が続いていて、検証に程遠い。ミクロ的基礎づけを絶対視し、必ずしも真実を求めてはいない経済学の実態からすると、仕方がないように思える。もっと単純な2014年の日本の消費増税ですら、悪影響を認めず、従来路線を変えようとしない人が多いわけなのでね。

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 本コラムでは、消費増税後、2014/1/12に「底をはう展開になる」などと記し、実際、そのとおりとなった。「増税イコール不景気」と単純に考えたわけでなく、予測を覆す可能性として、外需の動向を考慮しつつ診断した。それというのも、小泉政権の緊縮路線では、意外な外需の到来によって、予想を違えたことがあったからだ。本コラムの予測力は、過去の失敗の反省に基づくものである。

 また、増税ショック批判の一辺倒ではなく、2014年秋冬には小康を得たことや、次いでゼロ成長状態になったこと、2015年秋に一段の落ち込みがあったこと、2016年2月頃から回復してきたことなど、景気の「微地形」を的確に指摘してきたと自負している。この間、予測はできないにしても、景気が足元でどうなっているのかすら、よく分かっていないというのが世間の在り様であった。

 本コラムが的確に状況を読めた理由は、需要のリスクが経済を動かすという理論に基づいていることにある。教科書的には、金利でコントロールできると考えるので、世間とは違いが鮮明な見解を示しているのに、的確な読みになっている。例えば、2月からの回復局面は、3,4月の時点で指摘した。今となれば、景気動向の先行指数で明らかだが、熊本地震やブリグジットの攪乱もあり、回復局面にあったとの見方が強まったのは最近になってからである。

 それと、家計調査を重視しているのも特徴だろう。家計調査は、消費増税後の消費を過少に示していると、散々に批判されたが、まるで先行指数のような動きを示しており、そこから得られる情報は貴重だ。家計簿をつける几帳面な人々は、財布の中身や物価の動きをよく見て行動しているということかもしれない。家計調査は、フレが大きく、他の統計と読み合せねばならないが、そうした難点は、消費状況調査を拡大すれば、改善できることだ。

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 今週の統計では、10月景気ウォッチャーが大きく改善した。現時点の意外なシナリオは、秋に消費が伸びて、一気に景気が明るくなることである。もし、その結果が出たとき、消費性向が低かったから、求人倍率が高まっていたから、雇用者報酬が伸びていたからなど、いろいろと「後知恵」が出てくることだろう。メインシナリオは緩やかな回復だが、転換点となり得る現象だけに、予測に入れておくことは、価値があるように思える。

(図)



※本コラムが背景とする理論がどんなものかは、2014/2/162014/2/23を参照


(今週の日経)
 上場企業、2年ぶり増益 今期最終7%。パート主婦、年収150万円まで控除。警戒一変、市場一転 積極財政観測で米金利上昇。米大統領にトランプ氏。市場、トランプリスクが現実に 日経平均急落、円は乱高下。米大統領選 激戦14州、拮抗のまま決戦。円相場動かす主役交代 資金供給量から金利差へ。

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11/9の日経

2016年11月09日 | 今日の日経
 金融緩和は、外需と住宅に効く。そのメカニズムは、円安になって輸出が増えることと、住宅ローンの金利が低下し、住宅取得が増えることによる。これに対して、設備投資は、直接には金融緩和に反応しない。住宅が反応し、設備が反応しない理由は、住宅には、建てた人が住むという確実な需要があるからだ。金融緩和は、不況下になされるので、設備投資に見合う売上が得られるかはリスクが高い。住宅と設備の反応の違いは、「経済は、金利でなく、需要で動く」、「金利より、リスクが強い」ことの一つの証拠なのだ。

 もっとも、日本がデフレに陥り、超低金利になって、金融緩和で住宅を動かすことは難しくなっている。金融緩和によって得られる住宅は、需要の先食いになるので、高水準を維持するには、金利を下げ続ける必要があり、頼り続けられるものではない。アベノミクスにおいて、一応、金融緩和で住宅が増えたという評価はしているが、内実は、消費増税の駆け込みと反動からの戻りや相続税増税という要素が大きいと考えている。


(今日の日経)
 米大統領選 超大国どこへ、審判の日。
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敗北の異次元緩和、沖縄では大成功

2016年11月06日 | 経済
 日銀は、既に量から金利へ金融政策の枠組を変更していたが、11/1公表の展望レポートでは、2%物価目標の達成時期を、2017年度中から2018年度頃へと先延ばしし、事実上、異次元緩和の敗北宣言となった。期待を高めようと、いくら金融緩和をしても、それだけでは設備や人材への投資には結びつかず、賃金が伸びなければ、消費も増えぬままで、物価は上がるはずもない。当然の結果が出たわけだが、なぜか沖縄では様相が異なっている。それは、どうしてなのか。

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 沖縄では、昨年夏以降、毎月勤労統計の現金給与総額が急伸している。全国の低迷ぶりとの鮮やかな違いは、下図で一目瞭然だ。ブレを均すため、12か月移動平均を計算すると、沖縄の7月は5.4%増、8月が5.0%増である。全国の7,8月がともに0.5%であったから、実に10倍の差がある。沖縄の賃金水準は低いけれども、伸びの勢いは非常に強い。これを背景に、沖縄の百貨店・スーパーの販売額(全店)は、6-8月に前年比+5.5%となっている。

 そして、図をよく見ると、全国は、この半年ほど、円高と原油安による物価上昇率の低下を受けて、名目の線が実質の線の下にあるのに対し、沖縄には、そうした傾向が見られない。あまり明確ではないにしても、勢いある賃金の下、物価も弱まらずに推移していると言えよう。すなわち、沖縄においては、賃金が伸び、消費が増え、物価も崩れず、異次元緩和は「大成功」を収めている。

 そうなった理由は明らかだ。異次元緩和がもたらした円安が沖縄への観光客を急増させているからである。海外からの観光客が大幅に増えているのはもちろん、円安による日本人の海外旅行からのシフトもあるようで、本土からの国内客も好調に推移している。観光は沖縄の基幹産業なので、景気ウォッチャー調査で見られるように、日本一景気が良いのも、十分にうなずけよう。

(図)



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 ここで認識すべきは、金融緩和は「外需」に結びつかなければ意味がないことだ。金融緩和が動かせるのは、外需と住宅投資の二つに限られる。この二つが及ぼす追加的需要が経営者の期待に働きかけ、設備や人材への投資を増やす。経営者は、金融政策ではなく、売上の動向を見て実物投資の判断を下すのだ。こうした認識に立てば、なぜ、全国的には、異次元緩和が失敗に終わったか、おのずと明らかだろう。

 11/8号の毎日エコノミストで、藻谷俊介さんが指摘することだが、日本企業は、異次元緩和に伴う円安時に値下げせず、円高時に値上げしないという「脱力するような」行動を取った。これが、円安で輸出数量減、円高で輸出数量増という、一見、矛盾したような結果につながっている。異次元緩和の失敗は、円相場の激動に懲りた企業の経験を無視し、「円安にすれば、輸出を増やすだろう」と、安直に考えたことにある。

 しかも、異次元緩和は、消費増税という大規模に需要を抜く逆風下で行われた。特に、住宅投資については、駆け込みと反動に見舞われ、増税後に金融緩和で浮揚させるべき大切な経路が潰れていた。外需と住宅という両翼をもがれた状態では、金融緩和によって消費増税を乗り越えることなど幻想でしかない。おまけに、第一生命研の熊野英生さんの10/31のレポートにあるとおり、「財政再建がデフレ圧力になって、働き手の低報酬、そして人手不足の一因」にもなっている。

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 臨時国会に提出された消費増税延期法案は、単に2019年10月に先送るものである。そこには、大規模に負担を強いて消費が屈曲する怖さ、「安全ベルト」たる金融緩和が効かない危うさといった貴重な教訓は反映されていない。なぜ異次元緩和が一敗地に塗れたかの反省も、うやむやなままだ。それゆえ、税率を刻むとか、住宅課税を時間差にするとかの在り来たりの工夫さえ、思い至らないのである。

 今度の新たな物価目標の期限が更に半年遅れるようだと、消費増税の2019年10月が間近になり、金融緩和を解除する見極めがつかなくなる。むろん、増税後は、当然、解除できないから、こうなると永遠に続く気がしてくる。幸い、足元では、輸出、住宅、公共の追加的な需要が上向いているので、無闇な緊縮財政を避けつつ、何とか「2018年度頃」に行き着きたいものである。需要を的確に確保すれば、賃金も消費も伸び、物価にもプラスになることは、沖縄が証明してくれたのだから。 (前回の沖縄のコラム2014/10/26)


(今週の日経)
 米賃金7年ぶり伸び 雇用は16.1万人増。雇用保険積立金 過去最高6.4兆円。米、追加利上げ見送り FOMC、来月の可能性示唆。 日銀総裁 「物価2%」先送り。 税収、7年ぶり前年割れ 上期4.8%減。上場企業4年ぶり減益。7-9月1%成長 民間予測3期連続プラス。「ゆとり世代」が物価2%の壁。名目労働生産性、8年ぶり最高 女性就労増加で。


<おまけ>
 今週は、9月鉱工業指数と商業動態が公表され、主な指標が出揃った。意外だったのは、建設財出荷が前月比-2.2も下げ、前期比が-1.6まで落ちたことだ。これでは、7-9月期GDPの住宅、公共投資は、厳しいかもしれない。ただし、8月までの建設業活動指数は好調に推移しており、9月が建設財出荷並みに下げても、前期比+0.5程は確保できる水準にある。
 また、消費不振から、流通在庫が膨らむかと思ったが、そうはならず、1次QEでは仮置きの仕掛品と原材料が寄与度-0.1程、製品在庫の-0.1程と合わせ、在庫全体の寄与度は-0.2程と思われる。したがって、先週、内需の寄与度+0.1の可能性は十分高いと書いたが、横バイくらいに下がった。GDPは年率1.6%が中心かな。まあ、これでも随分と強気だね。

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