経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

経済戦略は誰が作れるのか

2010年04月14日 | 経済
 経済同友会と日本経団連は、相次いで「成長戦略」を公表したが、果たして戦略と言えるのか。格好よく「戦略」と名づけただけで、政権への要望書であり、希望の事項を羅列しただけと割り切れば良いのかもしれないが、それでは、誰が、日本の経済戦略を作れるというのだろう。

 会社の経営会議の場に、「経営戦略」を出す場合、何を、どのくらい、いつまでに達成するかという内容は必須だ。販売先50社、総額10億円増を2年で達成といった具合である。むろん、それに乗せられる新たな商品や販売手法のアイデアも欠かせない。逆に、販売増に結びつきそうな諸々の事項を、量的な説明もなしに何十並べたりしたら、担当はクビだろう。 

 どうして、会社でしていることを、日本のためにしてくれないのだろうか。政策には、専門知識や情報が要るから無理なのか。しかし、官庁と大新聞を別にすれば、それだけのマンパワーがあるのは、日本では、経済団体とその構成企業だけであろう。大学や学者は個人プレーであり、政策の「量的な」内容を推計するには限界がある。

 例えば、同友会は、成長戦略の一つとして、法人税率の引下げを掲げるが、それで、どのくらい設備投資が増え、いくら経済成長が高まるかが分からないと説得的ではない。同様に、消費税を上げて国民の安心感が高まれば、どの程度、消費が増えるというのだろうか。

 同友会は、消費税増と保険料減をセットにする構想を明らかにしているが、それでも経済にショックを与えるだけに、それで得られるものを明確にする必要があろう。なお、年金の安定は、そうした危険を犯さなくても可能なことは、本コラムの「小論」に示してあるとおりである。

 また、同友会、経団連ともに、足元の経済政策をどうするかに言及しないのは問題がある。そこから中期的な戦略へのつながりが見えないのだ。例えば、10年度予算は、09年度補正後より10兆円も少なく、1兆円の予備費も使途が決まっていない。カギになるのは、10から12年度にかけて、民需がいくら増えるかを置いて、政府がどれだけ増減できるかである。

 つまり、成長率2%で、年々10兆円の民需が出るとして、政府は、どの程度、財政を縮小してもよいかである。これに社会保障基金と地方を含め、拡大と縮小の要因がどのくらいあるかを見極めなければならない。その先に、戦略が対象にしている、税財政、社会保障の一体改革はあるのである。

(今日の日経)
 中国海軍、沖縄近海に。日・EU、EPA困難に。経済3団体・民主の成長戦略に提言。先進国株式市場投資マネー回帰、中印引き締め観測で。米住宅市場、政府頼み、新規着工数年低迷。マンション底入れの兆し。電子部品・品薄でも設備投資慎重。
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