経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

高齢化すると財政は黒字に

2010年04月28日 | 経済
 ギリシャの財政危機がニュースになっているせいか、日本の財政破綻が雑誌の格好のネタになっている。今週のアエラでは、破綻を期待する記者に、多くのエコノミストが「ない」と答えて水を差し、記者の残念がる様子には苦笑させられた。

 リスクはあっても慌てる必要はない。国債のほとんどを国内で消化する日本については、そう見るのが当然であり、むしろ、「イタリアより悪い」と、慌てて過激な緊縮財政に走って失敗したハシモトデフレの教訓を活かすべきだろう。

 それでも、当面は良いにしても、「日本の財政は今でも大赤字、これで高齢化が進んで歳出が膨らむと財政は破綻する」と不安に思う方もいるかもしれないが、その心配も無用である。高齢化が進むと、今度は増税ができるようになるからだ。

 高齢化が進んで貯蓄を減らすようになると、確かに国債の国内消化は難しくなる。しかし、貯蓄を減らすということは、消費を増やすということであり、経済にはインフレ圧力がかかる。したがって、物価が上昇する中では、消費税の増税は容易になるし、それは物価安定の観点からも必要なことになる。

 日本の消費税率が諸外国より低いのは、国民の増税アレルギーとか、政治のだらしなさとかではなく、デフレぎみで経済的に無理があったからである。インフレ傾向になれば、賛成は得られやすくなるし、賛成が得られないとしても、インフレで購買力は削減され、財政赤字も軽減されることになる。

 前にコラムで書いたように、日本の財政赤字は、公的年金の黒字と裏腹のものであった。将来は、それが逆になるだけのことである。もっとも、厚生年金の最新の財政検証では、中期的には黒字のようなので、まだ、しばらく先のことになりそうではあるが。

 経済政策は、総需要を調整し、デフレになったり、インフレになったりしないようにすることが目的である。将来を先取りして今から緊縮財政にしたり、物価と切り離して増税しないと宣言したりするのは正しくない。国・地方の財政と社会保障を連結しつつ、時に応じて行うものなのだ。

 こういう当たり前の経済政策は、雑誌のネタになるような面白みはないが、安定を通じて日本経済を成長させ、資本と労働をフルに使う経済構造を作ることになる。これが本当に将来に備えることになるのである。

(今日の日経)
 ギリシャ格付け3段階下げ。産業ロボ・リーマン前5割強の水準。経済新論・井手英策。韓国・好況享受は一部大企業。金属熱処理「車以外」を開拓。経済教室・GSE危機・武田洋子。都内人口1300万人。
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