経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

生産性の向上策と政治家

2010年04月11日 | 経済
 ある政治家から、「経済を成長させるために生産性を向上させたい。特に、国際的に見て生産性の低いサービス業などを引き上げるには、どうすればいいのか?」と聞かれたことがある。正直、これに明快に答えられる経済学者はいないだろう。筆者も、適当にごまかしてしまった。

 むろん、生産性向上に「資する」方法なら、いくらでも挙げられる。低金利、政策融資、規制緩和、投資減税、技術支援等々である。しかし、経済学の現状は、ストレプトマイシン発見前の結核治療のようなものである。特効薬はなく、ただ単に、環境の良いところで静養し、栄養を取って体力をつけていけば、きっと治りますよと言えるだけだ。

 その政治家は、生産性に目をつけるあたり、経済を分かっているほうである。生産性向上には設備投資が必要で、経済学の見地からは、一応、低金利にすれば、引き上げられることになっているが、そんなことを言っても、現在の超低金利の下では説得力ゼロである。経済学は無力だとしか思われないだろう。

 特に、サービス業は、製造業と違って、輸出需要で設備投資が伸びるとも言えないから、困りものである。サービス業は内需型産業だから、現実には、輸出から景気が回復し、内需が増えると設備投資が増すことになるが、「成長させるために生産性の向上を」と言われているのに、「成長したら生産性が向上する」となり、順序が逆というものである。

 実は、この辺は、結構、重要な問題で、景気が回復すると、全要素生産性が伸びるということとも関わっている。サービス業は、人件費の塊であるから、手待ち時間や客単価が大きく影響する。例えば、飲食店でお客が増え、高いものを注文してくれるようになると、人や資本を増やさなくても、生産性が急速に伸びるわけだ。

 もちろん、サービス業でも、景気と関係なく生産性を伸ばす企業もある。日経ビジネスで紹介されたクリーニングチェーンの喜久屋は、季節物の預かりサービスを考案したことで、季節的な仕事の波を平準化して生産性向上に成功した。こうした例もあるが、マクロ的な政策として用意できるものとは違う。

 日本のサービス業は、米国より生産性が低いと言われたりもするが、それは金融関係のサービス業の大きさの違いである。まさか、米国のようにバブルにすれば、サービス業の生産性が向上しますとも言えないだろう。なかなか、政治の要請に、経済学的に応えるのは難しいものなのである。

(今日の日経)
 ホンダが電動バイク。宿泊・飲食業…供給超過、日銀短観。コニカ、有機EL照明を年度内に実用化。改正労基法が今月施行。読書・年金と子ども手当・高山憲之。新党「たちあがれ日本」発足。
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